過去の『ゾイド』にはない、新生『ゾイドワイルド』はここが進化した
初代『ゾイド』を手がけたレジェンドクリエーター・徳山光俊さん、第3世代の若手クリエーター・片山周さんの2人から、『ゾイドワイルド』の開発秘話をうかがった!!
前回に引き続き、秘蔵ネタが満載だぞ!!
——過去作とはどういう所を差別化を図ったとか意識された所はありますか?
片山:
過去作のいい部分をもちろん残しつつ、さらにワイルドになって新しくしようという部分も当然ありますね。ゾイドが今回改めて生物的な位置づけになっているのでメカ生命体は残しつつも、今までの単なるコクピットから、目を付け加えることで、表情がしっかり出ているという部分は昔とは大きく違う所ですね。
——昔はそんなに表情っていうのは無かった?
片山:
以前までは無機質なコクピットっていう感じだったんですけど、今回からは動物のシルエットがハッキリして、それぞれ顔が違うっていう感じですね。
——なるほど。徳山さんから見て、昔と変わった所とかは?
徳山:
そうですね。片山君が今言ったように、もともとの原型のゾイドっていうのはコクピットがあったので、そこの変化は大きいですね。
『ゾイドワイルド』では獣自体のリアルな動きに結構力を入れました。
——獣のリアルさですか。
徳山:
はい。動物のリアルさ…獣に牙をどう剥き出させるかっていうのを考えましたね。“牙を剥く”ってよく言うじゃないですか、動物も。
——はい。
徳山:
人間も牙を剥くっていう訳で、じゃあそれが一体となって、今までになかったアクションをどう見せるか? デザインとギミックをどう一体化させるか? コンセプトは“牙を剥き出す”ってことになったので本能を解放させようということになりました。
——なるほど。
徳山:
今回はゾイドとライダーが人機一体ですから、ライダーがどうやって一体となって本能解放するかというのが課題でしたね。今回は目が入るっていう事と、人機一体でライダーが乗る、その一体感みたいなものをデザインした所が、過去作と変わった所であってポイントかなと考えています。
——人を乗せるっていうのが無かったらデザイン的に簡単だったなとかはありますか?
片山:
いえ、そこはあんまりないです。でもどこに乗せるとかは難しかったですね。人がいて自分だったら“どこに乗るだろう?”とかはライダーの気持ちになって考えられるのが面白いです。
徳山:
そういった面では片山君が一番最初にガノンタスをやったのはすごく良かったなと思ってて。カメって基本的にアーマーみたいな甲羅を被っているじゃないですか?
——そうですね。
徳山:
それは子供でも分かる部分で、カメの中には当然骨組みがある訳です。我々はボーンと呼んでいますが、その部分のデザインをしつつ甲羅=アーマーもデザインすると。
じゃあ今度、牙を剥いた時にこの甲羅が展開して、いわゆるワイルドブラストっていう今回のポイントが出る訳で、人機一体となって巨大な大砲が甲羅を割って出てくる。これを最初にベースから片山君がやったっていうのは、この先の指標となったんじゃないかなと思います。
片山:
自分たちもそうなんですが、改めて骨を知るというか。カメは甲羅に添うように骨が入ってるんですけど、そういうのをゾイドで初めて知るっていう子供は少なくないんじゃないかなと。そういうロマンを常に与えてあげたいなっていうのはありますね。
——片山さんは動物には詳しいんですね。
片山:
はい。とはいっても開発者全員詳しいですけど(笑)。
徳山:
結構この骨組みっていうのは、過去のゾイドって一応骨組みはあるんだけど、全体としてのデザインであったり、まぁバイクで言えばカウリングがあって中に精密な機械、エンジンみたいなのが見えてるみたいな、そういうリアリティみたいなものを追求していたんですけど、今回はカバーを外しちゃう訳だからエンジンも作るみたいなね、そういう感覚なんで。
——それはなかなか大変そうな…。
徳山:
ただゾイドの場合、我々はオリジナルとは言えいつも言っているように図鑑的な世界というか、やっぱりそのベースとなるものっていうのは、“小学館の図鑑NEO”とかあとは博物館に行ったりして骨組みの材料って結構ある訳だから。
——そうですね。
徳山:
そこをいかに今回のゾイドアレンジにするかっていう所で、そういった面ではカメはすごく面白いですね。今までカメの中身ってあんまり知られていないと思うので。
——そうですね(笑)
徳山:
そういった面でも興味を触発されると思うし、ただ我々は骨組みだけを作ってるだけじゃなくて骨格を発掘して復元して、それにアラシらを含めて“人間がどう関わるか”みたいな所でガワを被せている訳じゃないですか。
だからそういった面では、今のカットアウトしたようなこのデザインの手法っていうのが、今後のものにも近づいてベースになって。ただ骨組みだけで全部デザインしちゃうと今度は人間との関わりが…みたいな。
——なるほど。
徳山:
鞍とかが乗っかっている訳だから。やっぱりそことの上手いマッチングが、我々の中にある人馬一体みたいな馬車であったり、そういうものを描きながらアレンジしていくっていうのが、楽しみな所ですね。
——なるほど。ホビーの開発で、意識していたことなどはありますか?
片山:
そうですね。如何に子供に遊びやすくするかですね。パーツの数や、組み立てやすさとか。
——組み立てやすさは大事ですよね。今回はすごい簡単になっていて。
片山:
そうですね。
——この骨格だけ見ると、結構細かな印象を受けたのですが、これもそんなには難しくないんですか?
片山:
今出ているホビーが8種類ですが、その中ではこのガノンタスはちょっと難しめではあるんですけど、パーツ数はそんなに多くないんで、組み立てるのが大変とかはないですね。
昔のゾイドと大きく違うのが、例えば足のパーツは一つになっているんですよ。細かい部分はあえて無くして作りやすくしています。それでいてリアルな動きはもちろん出せるようにしています。
——これはすごいですね。
片山:
カメは短いのでちょっと分かりづらいんですけど(笑)。部位が一つのパーツになっているので結構組み立ても簡単ですね。
——テーブルに置かれているこのゾイドは、これは塗装したものですか?
片山:
いや、元々のグリーンは成型色です。手を加えているのは墨入れだけです。
——墨だけでこのクオリティなんですね!
片山:
はい、そうです。
徳山:
ある程度、我々が対象とするコロコロのユーザー層にも、グレードの高い完成品が出来るかと。
——すこし手を加えただけでこの完成度はすごいですね。
徳山:
今までのゾイドのファンの人達も、結構Twitterとかで改造してくれるんですよね。
——結構見かけますよね。
徳山:
そうそう。それも結構発売してから早い時期にきちゃうんですよ。それも早い方では発売から3日とかで。
——熱い人はすごいですね(笑)。
徳山:
ランナーが無い分、パーツは少ないんだけど、一つ一つのパーツに骨の意味合いというか、付加価値というか情報が入っているので、そういった面では、分からないパーツがいっぱいある訳ではないので。
発掘して復元して、尚且つランナーが無いので、旧ゾイドファンはまず塗装。あと35分の1っていうスケールサイズっていうのが他のプラモデルの部品を使えますので、そういった面ではカスタマイズの写真の投稿の量が本当に多くて、我々としては良い意味で盛り上がりを感じています。
——子供から大人まで、夢中になれるのは素晴らしいですね!
動物としてのリアルさ・骨格の意味合い…いろいろな話が飛び出したが、今回はここまで!
次回も『ゾイドワイルド』開発の貴重な裏話をうかがっていくぞ!!
第3回に続く
徳山 光俊(とくやま みつとし)
『ゾイド』立ち上げに携わったスタッフのひとり。『ゾイドワイルド』ではゾイドの
デザイン原案を担当。溢れんばかりの『ゾイド』愛を若い世代に伝えるべく奮闘中。片山 周(かたやま しゅう)
『ゾイドワイルド』から開発に携わる若手の第3世代。これまでになかった新世代のゾイドの数々をデザインしている。サソリなどの不気味なモチーフのデザインが得意だとか。