【プロセカ】ボカロPに直撃! “獅子志司”さんが語る“ビビバス”と、オリジナル楽曲『虚ろを扇ぐ』について!【ボカロPインタビュー企画 #48】

獅子志司さんの曲作りに迫る!

 2020年9月のサービスイン以来、コロコロオンラインがひたすら追い掛け続けているセガ×Colorful PaletteのiOS/Android向けアプリ『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』。

 リリース当初からこのコンテンツを追いかけてきたコロコロオンラインプロセカ班は、2023年10月に『プロセカ』3周年を記念した大特集を実施するなど、担当からほとばしる圧倒的な“プロセカ愛”をカタチにし続けてきた。 

『プロセカ』3周年記念特集は下記の画像をクリック!!
 

 そんなコロコロオンラインプロセカ班がとくに情熱を注いで追っているのが、このゲームの根幹でもある楽曲……そして、それを制作されている“ボカロP”と呼ばれる“才能たち”であります!!

 “子どもが将来なりたい職業ランキング”において、ゲームクリエイターやユーチューバーらと並んでボカロPが上位にランクインし、コロコロの読者層との親和性もめちゃくちゃ高いということで、前述のプロセカ1周年特集の際にボカロ界のビッグネームにつぎつぎとインタビューを敢行!! その内容の濃さは業界内外に衝撃を与え、このたび……不定期連で、さらに多くのボカロPの皆様にご登場いただき、ナマの声をお届けできることになったのです!!

 『プロセカ』はゲーム内容はもちろん、楽曲のすばらしさが高く評価されて現在の人気を確立したと言っても過言ではない。それらを生み出したボカロPたちの考えかた、作品への向き合いかたを掘り下げたこのインタビュー連載を読まれることで、ゲームを遊ぶだけでは知りえない情熱や、楽曲に対する想いを知ることができるはずだ。その結果……さらに登場キャラやユニット、『プロセカ』そのもののことが好きになること請け合い!!

 そしてインタビューの後半では、“いかにしてボカロPになったのか?”という、将来この道に進みたいと思っている読者の皆様の道しるべになるような質問もぶつけているので、とにかくあらゆる人たちに読んでいただきたいなと!!

 さて今回ご登場いただくのは、“Vivid BAD SQUAD”(ビビバス)にオリジナル楽曲『虚ろを扇ぐ』を提供された“獅子志司”さんだ。

 『虚ろを扇ぐ』が書き下ろされたイベントストーリー“Walk on and on”は、青柳冬弥がキーキャラクターの物語。“静と動”をテーマに各チームが曲を作ることになったが、冬弥はかねてから力強い“動”の音をイメージできずにいた。そんなとき、冬弥に助言を与えてくれたのが、入院中で音楽活動ができずにいる颯真。それを受けて、冬弥は何かをつかんでいく――。

 ビビバスらしい“相棒とは?”という問いに真っ向からぶつかっていくストーリーに書き下ろされた『虚ろを扇ぐ』には、どのような想いが込められているのか? 獅子志司さんに、たっぷりとお聞きしたぞ! 

※インタビューはオンラインで実施したものです。

巧みな“韻”の秘密

――まずはたいへん恐縮なのですが、簡単に自己紹介をお願いいたします。

獅子志司 わかりました。ボカロP兼自分でも歌ったりしております、獅子志司と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

――ありがとうございます。さて今回は『プロセカ』にオリジナル楽曲『虚ろを扇ぐ』を提供されたわけですけど、依頼を受けたときはどのような心境に?

獅子志司 最初の感想は、「自分なんかで大丈夫かな……」というちょっとネガティブなものでした。というのも、僕にお話が来たときにはすでに『プロセカ』は大きなコンテンツになっていて、名だたるボカロPの皆さんがすばらしい楽曲を提供されている状況でしたから。そのため不安が大きかったんですけど、徐々に「ボカロPとして、この上ないチャンスかも……!」と思えるようになってきて、うれしさがこみ上げてきた記憶があります。

――おっしゃる通り、いまや『プロセカ』は有名ボカロPはほとんど参加しているのでは……っていうくらい、豪華な面々がそろっていますしね。

獅子志司 そうなんですよ……! 凄すぎですよね。

――そして獅子志司さんはビビバスに楽曲提供をされたわけですけど、彼らを初めて見たときにどのような印象を受けられましたか?

獅子志司 「なんてイケイケなグループなんだろう……!」というのが第一印象ですね。こんなかっこいい子たちに本当に曲を書いていいんですか!? って思いました(笑)。でも、僕はもともとかっこいい系のジャンルが好きなクリエイターなので、ビビバスの楽曲制作のお話しを頂けてうれしかったです。

――なるほど! 『プロセカ』にはほかにもいろいろとユニットがありますけど……。

獅子志司 僕はもう、ビビバスがいちばん好きです!

――おおお……! これ、ビビバス推しの人たちには嬉しいコメントだろうな~~~!

獅子志司 あははは。

▲2019年に投稿された獅子志司さんの代表曲『絶え間なく藍色』。プロセカにも収録されており、セカイver.ではKAITO、東雲彰人(CV.今井文也)、青柳冬弥(CV.伊東健人)が歌唱しているぞ!

――なかでも、『虚ろを扇ぐ』を書き下ろされたイベントストーリー“Walk on and on”のキーキャラクターは青柳冬弥ですけど、彼についてはどんな印象を?

獅子志司 いやぁ~~~……めちゃくちゃかっこいい子ですよ、冬弥君は。すごく優しいし、天然のように見えて心の内では熱い魂が滾っている感じで。『プロセカ』の登場人物の中で、もっとも好きですから。

――冬弥のことがいちばん好きなボカロPが、『虚ろを扇ぐ』を作ってくれたんですね……!

獅子志司 はい、そうなりますね(笑)。

――そこでぜひお聞きしたいのが、『虚ろを扇ぐ』のテーマです。振り返ってみて、いかがでしょうか?

獅子志司 確か……。“肩を並べる”とか“追いつきたい”という気持ちをイメージして作り始めたと思います。なかでも強く意識したのは“相方・相棒”という言葉。これを中心に作りたいな……と思ったのがスタート地点でした。

――はい。

獅子志司 「また隣に立ちたい」とか「肩を並べたい人がいる」というイメージを形にしようと思ったときに、“飛べなくなった鳥が、舞うことをあきらめきれずに空を見上げている”という場面が思い浮かんで、そこから掘り下げていった感じです。

――なるほどー……!! このイベントストーリーは、“静と動”をテーマにした楽曲を作るために冬弥たちが奮闘する……という内容ですけど、それも考慮されたりしたのですか?

獅子志司 いえ、じつは静と動に関してはまったく意識せず、あくまでも僕の中のイメージで作り上げていった感じです。

――冬弥とこはねがそれぞれ、曲作りにおいて、相方の彰人と杏の力になりたいと強く思うことも、このイベントストーリーのテーマですもんね。

獅子志司 そうなんです! 加えて、バイプレイヤーの新(あらた)と颯真(そうま)も、同じような立ち位置じゃないですか。

――新と颯真はコンビで活動していながらも、颯真が入院して活動できなくなってしまうんですよね。そんな状況で、颯真は新に負い目を感じている……と。

獅子志司 はい。ですので『虚ろを扇ぐ』は、新と颯真の関係性も考慮して書きたいなと思ったんです。

――!!! なんと!! そうだったのですか!!

獅子志司 そうなんですよ。颯真は入院していながらも、また新の隣に立ちたいと思っているわけじゃないですか。その様子を冬弥が見て刺激を受ける……という展開がかなり僕に刺さったので、新と颯真の関係性も“相棒”という枠組みの中で、キチンと見てあげたいと思いました。

――それを聞くと、『虚ろを扇ぐ』の歌詞がますます意味を持ってくる気がします!

獅子志司 あ、本当ですか? よかった(笑)。

▲イベント『Walk on and on』の書き下ろし楽曲としてリリースされた。

――『虚ろを扇ぐ』は歌詞が非常に高く評価されている楽曲ですけど、作られた獅子志司さんがとくに気に入っている箇所を教えていただきたいのですが。

獅子志司 2ヵ所あるんですけど、ラップの「ビビらず Fight」と「日々 Path find」のところ。これ、「ビビバス」に聞こえてくれたらいいなと思って仕込んだワードなんですが、これがお気に入りですね。

――もう……まんまと「ビビバスファイト!!」に聞こえました!

獅子志司 あはは。よかったです(笑)。

――いまの箇所に象徴されるんですけど、『虚ろを扇ぐ』は韻を踏んでいる歌詞が非常に特徴的ですね。

獅子志司 そうですね。僕の代表曲も韻を踏んでいる歌詞が多いんですが、その受け入れられかたを見て、「あ、俺、韻を踏めばいいんだな」って思ったんです。そこから、“獅子志司は韻を踏むヤツだ”というイメージを作れたらいいなと思って活動してきたので、せっかく『プロセカ』に書き下ろし楽曲を提供できるんですから、自分の色をしっかりと出そうと思いました。

――それが、韻を踏む歌詞と。

獅子志司 はい。せっかく依頼していただいたので、“獅子志司らしさ”を活かそうと思ったわけですね。

――その、韻を踏む歌詞の極めつけが、2分17秒のところから始まる“メンバーの名前を潜ませた歌詞”だと思うんです。

獅子志司 はい、そうですね!

――「預かる背中のその羽」は小豆沢こはねを、「凌いだ夜が きっと僕ら」は東雲彰人を表現するなど、メンバー4人の名前が潜んでいるんですよね! これはスゴいなと思いました。

獅子志司 これは『虚ろを扇ぐ』の聴きどころでもあるんですけど、当初は“The 青柳冬弥な曲”にしようと思って資料やストーリーを読んでいったんですが、その過程で、「ビビバスって、めっちゃ仲がいいな。とくに相方同士の信頼関係が凄くて尊い」と感じました。そこから、いまおっしゃっていただいたラップの部分もそうなんですけど、可能な限りビビバスっぽい要素を入れたいなと思ったときに、“お互いの名前を呼び合う箇所”を作ろうと決めたんです。

 

――こういった言葉遊びというか、工夫された歌詞って、もともと得意だったのですか?

獅子志司 そうですね。言葉遊びや韻踏みは、もっとも得意なジャンルだと思います。ここまでやって大丈夫かな……と思いながら作ったりしているんですけど、いままで何事もなくやってこれて、『虚ろを扇ぐ』でもすごくいい反応をいただけたので、とてもうれしく思っています。

――こういった歌詞を作るコツって、何かあるんですかね?

獅子志司 そうですね……。僕、マンガで育った人間なんですけど、少年マンガってとくに、言葉遊びのセリフが多かったりするじゃないですか。ですので、子どものころから見ていたマンガやアニメの影響が大きいかもしれないです。

――あーーー! マンガやアニメで使われた印象的な言葉などが、獅子志司さんの中にストックされていると?

獅子志司 ストックしてます!!

――ボカロPになりたいと思っている子どもたちに、すごくいいヒントになると思います。とくに最近のマンガって、昔以上に言葉の使い方とかが工夫されたりしていますし。

獅子志司 まさに! おっしゃる通りで、すごく参考になります。

――獅子志司さんは子どものころからマンガを読んで、「このセリフ、いいなあ」とか思っていたタイプなんですね。

獅子志司 そうですね。マンガに英才教育をされていたと言っても過言じゃないと思います。遺伝子レベルで染み込んでいますもん。

――そう考えると、『虚ろを扇ぐ』という曲名からして少年マンガの雰囲気を感じるなぁ。

獅子志司 あ、確かに(笑)。言われてみると、その通りですね。

――この流れで、『虚ろを扇ぐ』という曲名に込めた想いをお聞かせください。

獅子志司 これはですね……。歌詞の最後が「僕らは 空を仰ぐ」なんですけど、“空”を辞書で調べたら“空ろ(うつろ)”とも読めると知ったんです。で、先ほど言ったように鳥をメインにして、空を仰ぎ見ながら「また飛びたい」という意志をみなぎらせる……という意味を込めたかったので、『空ろを仰ぐ』がいいかな、と。

――へーーー!!

獅子志司 でも、これだとストレートすぎると思ったんです。そこで、“うつろ”は“虚”を使って憂鬱な感じを出しつつ、それを吹き飛ばすイメージで“扇ぐ”に。楽曲の最初のほうでその雰囲気を強めに出して、最後の「空を仰ぐ」で締めている感じです。要するに、曲名とシメの歌詞でダブルミーニングを意識していたわけですね。

――めちゃくちゃおもしろいですね……!! 単純に“空”という単語を使うのではなく、ほかにもっとかっこいい言い回しや響きがあるのでは……ということを意識して調べるわけですね。

獅子志司 はい。徹底して調べます!

――僕も文章を書いて仕事をしているので類語辞典は良き相棒なんですが、それに近しいものを感じます。

獅子志司 まったく同じだと思います。言葉を探すことは重要ですからね。

※MV画面はバーチャル・シンガーver.のものです。

――ありがとうございます! では曲の部分でお聞きしますが、『虚ろを扇ぐ』は男女混成ユニットならではのハモリの美しさなどが絶賛されていますよね。そのへんも、意識されて作られたのですか?

獅子志司 じつは、そこがいちばん難しかったんです……! これまで女性のキーの曲を作ったことがなかったので、「男女混成って……どうすればいいんだ!?」ってところから始まりました(苦笑)。けっきょく最後まで難しいままで、正直いまでもうまくいったのかどうか、自分ではよくわからないという……。

――いえいえ!! リスナーたちから絶賛されていますよ!

獅子志司 あ、本当ですか……!? だったら……よかったです!

――いやでも、この特徴的な歌詞をどうやって美しいメロディーにハメていくのか……ってことが気になるんですけど、獅子志司さんはどのように楽曲制作を?

獅子志司 僕はですね……じつは歌詞と曲を同時に作っているんです。

――同時!?

獅子志司 そうなんです。歌いながら、弾きながら、思いついた歌詞を入れていく……という感じです。で、行き詰ったらメロディを作るという……要するに、3つ同時に進めるというやり方で、いつも曲を作っています。

――……これまで50人以上のボカロPの方にインタビューをしてきましたけど、同時に作っているという回答は初めてだと思います!

獅子志司 そうなんですか?(笑) 僕はすぐに行き詰まるタイプなので、そうやって同時に作る流れに落ち着きました。

――獅子志司さんは、シンガーソングライターだからこそ、そういう手法になったんですかね?

獅子志司 あ、確かに! それはあると思います!

 

――そうやって作られた『虚ろを扇ぐ』ですが、制作日数はどれくらいに? ギミックの多い曲なので、相当な時間がかかったのではと想像するのですが。

獅子志司 1、2ヵ月かかった……と記憶しています。僕、曲作りがめっちゃ遅いほうなんですけど、それを考えると『虚ろを扇ぐ』は、かなり早くできたほうだと思いますね。

――ほーーー!!

獅子志司 じつはこの曲って、僕にとっては初めての楽曲提供だったんです。ですので、(時間かかるだろうなぁ……)と内心びくびくしていたんですが、冬弥のストーリーが印象的で心に刺さったこともあり、歌詞はすごくスラスラと書けたように思います。「もりもりにいろいろな要素を盛り込もう!」と思えるくらいに。

――はい。

獅子志司 ただビビバスって、ストリートミュージックがコンセプトのユニットなので、ラップを盛り込む必要があると思ったんですね。でも、韻を踏んだ歌詞は好きなんですけどゴリゴリのラップは挑戦してこなかったので、それに関してはけっこう苦労したかなと思います。

――そういう部分はありつつも、これまでに制作してきた楽曲と比べると……。

獅子志司 もう、ぜんぜんスラスラできました。

――では、そんな『虚ろを扇ぐ』がゲームに実装されたのを見て、いかがでしたか?

獅子志司 とても感動しました。だって、天下の『プロセカ』で自分の曲が遊べるなんて、本当にスゴいことですから。

――ボカロPによっては、『プロセカ』に実装されたのを見て初めて「ボカロPとして認められた!」と思う人も多い印象です。

獅子志司 やっぱりそうですよね! 僕もまったく同じことを思いました。と言うのも、当時の僕は伸び悩んでいて、かなり自信を失っていたんです。そんなときに『プロセカ』さんにお声掛けいただいて、『虚ろを扇ぐ』を出してたくさんの人に聴いてもらえて……。そのときに、「あ、俺、ボカロPなんだ……!」って、自信が湧いてきたんですよね。

――実際、非常に多くの方が『虚ろを扇ぐ』を聴いているわけですけど、何か印象に残っている反応は?

獅子志司 すごくよく覚えているのが、小学生か中学生だと思うんですけど、「お昼の校内放送で『虚ろを扇ぐ』が流れた!」というSNSの書き込みを見て、「えええ! ホントに!?」と驚きつつ、めっちゃ感激したことが忘れられません(笑)。

――それはうれしいですねーーー!

獅子志司 本当に、心の底からうれしかったなぁ。

――では、そんな『虚ろを扇ぐ』が大好きなファンに向けて、ぜひひと言お願いいたします。

獅子志司 そうですね……。僕もビビバス及び青柳冬弥君のファンになって、大切に大切にこの曲を書いたので、その想いが皆さんに伝わっていればいいなと思います。これからも『虚ろを扇ぐ』をたくさん聴いていただければうれしいです!

▲“コネクトライブ Leo/need × Vivid BAD SQUAD RESONANCE BEATS!!”では羽が舞う演出の中、クールなパフォーマンスで観客を魅了した。

――ありがとうございます! ではここから、将来の夢として「ボカロPになりたい!」と思っている人たちのために用意した質問にお答え願えればなと……! まずは……獅子志司さんが、ボカロPになられたきっかけを教えてください!

獅子志司 もともとシンガーソングライターを目指していたんですけど、一度挫折したんです。で、音楽の学校に通っていたころにDTM(Desk Top Musicの略。パソコンで音楽を作ること)が好きだったことを思い出して、「作曲家になろう」と決めました。それからいろいろな音楽事務所にDTMで作った曲を、“作曲家志望”ということで送ったんです。

――ごくり。

獅子志司 しかし、返事はひとつも返って来ず……。

――そ、それは辛い……。

獅子志司 はい……。挫折した上にそんなことになって、「うあぁぁ……」と思っていたときにボカロに出会い、挑戦してみたのがきっかけですね。

――獅子志司さんはいつくらいから、将来は音楽で……と思っていたのですか?

獅子志司 高校生のときには、「音楽で生きていきたい」って思っていました。挫折したときも心が折れきってしまうことはなくて、「それでも音楽に携わっていきたい」という気持ちは消えなかったです。

――気持ちが強かったんですね……!

獅子志司 それでも、ボカロに出会ったときは、本気で光が射しこんだと思いましたけどね(笑)。

――音楽は子どものころからやられていたんですか? 楽器とか。

獅子志司 いや、やってなかったです! 高校生になってからギターの弾き語りみたいなことを始めました。

――そこでぜひお聞きしたいのが、ボカロPになるために必要なスキルです。具体的に、「これをやっておいたほうがいいよ!」とオススメできるものはございますか……?

獅子志司 これはもう、DTMですね! 絶対に勉強したほうがいいです。ギターやピアノが弾けなくても、ドラムが叩けなくても、PC、キーボード、マウスがあれば楽曲が作れてしまうのがDTMなので。これに触れるのが早ければ早いほど、神曲に近づけると思いますよ!

――じつに具体的でありがたいです!

獅子志司 音楽学校に通っていたときに、歌がうまく、ギターも弾けて作曲もできるけどDTMはほとんどやらない……という人がまわりに何人もいたんですが、その人たちは皆、音楽をやめてしまいました。

――なんと……。厳しい世界なのは間違いないですもんね。

獅子志司 本当に、その通りなんです。でもDTMって、ひとりで完結できるじゃないですか。“ボカロP=DTM”と断言していいくらい、必要不可欠なツールだと感じます。音楽理論なんてわからなくても、DTMの使い方さえ理解できればどうにかなる……と、僕は信じているんです。とくに、家に籠ってひとりでチクチクと作業することが好きな人は、めちゃくちゃ向いていると思います。僕はそれがすごく楽しかったので、合っていたんでしょうね。……いやでも、ボカロPはみんな、孤独に作業するのが好きだと思うんですけど、どうなんでしょう?(笑)

――好きな方が多いと思います!先日インタビューさせてもらったボカロPも、「ボカロPは、最悪仲間がいなくても曲を作れるのがいい」っておっしゃっていました。 

獅子志司 そうですよね!! いやあ、シンパシーを感じるなあ(笑)。

――とはいえ楽器も、できることなら触れておいたほうがいい?

獅子志司 もちろん、何かしら弾けるに越したことはないです。というのも、DTMでの曲作りに慣れてきたつぎの段階で必ず、新しい欲が出てきますから。それは、「これ……自分で楽器が弾けたほうが早いかも?」という気持ちです。「マウスとキーボードでポチポチやるより、鍵盤で叩いたほうが早いじゃん!」とかね(笑)。そうなってから、楽器とか楽譜の勉強を考えても、決して遅くないと思います。

――自分の作りたい曲に合わせて、段階的にスキルを身に着けていけばいい、と。

獅子志司 その通りです! あと、いまはボカロPが音源をいっぱい公開しているので、それをDAW(Digital Audio Workstationの略。デジタルで音声の録音、編集、ミキシングなどを行える一体型のシステムのこと)で切り貼りしたりして勉強するといいと思います。

――そういう意味でも、パソコンとは友だちになっておいたほうがいいわけですね。

獅子志司 はい。それがいちばん良いと思います!

――ありがとうございます! では……ボカロPになってよかったなと思うことがありましたら、ぜひ教えてください。

獅子志司 インターネットって、いい曲を作れば絶対に評価してもらえる場所だと思っているんです。それが巡り巡って『プロセカ』さんとか、有名な歌い手さんから作曲の依頼が来たりもしますし。ボカロに出会って、僕の音楽人生は180度変わったと思います。本当に、あのとき挑戦してみてよかったな、って。

――獅子志司さんは、たくさんの挫折を経験しながらも、それを乗り越えていまのポジションにいるわけですよね。

獅子志司 はい、そうですね。

――挫折を乗り越えられたのは、やはり音楽が好きだから?

獅子志司 そうですね。挫折すればもちろん落ち込むんですけど、しばらく時間が経つとまた、「やっぱり曲を作りたいな」って思うんです。そのくり返しでした。

――それはもう、好きだからこそですねぇ……!

獅子志司 はい。きっと、そうなんだと思います。

――でも、そうやって作れた曲を世間に発表する段階で、「恥ずかしい!」と思ってしまう子も少なからずいると思うんです。これを払拭するには、どうすればいいんでしょうか……?

獅子志司 僕、じつは“獅子志司”の名義になる前に、違う名前でボカロPとして活動をしていたんです。そのときに作った曲はもう……マジで恥ずかしいです!!

一同 (爆笑)

獅子志司 可愛いアイドルチックな曲を作ったりとか、いろいろと挑戦しながら投稿していたんですけど、いまとなってはもう……! 恥ずかしくて世に出せないです(苦笑)。

――へーーー!!

獅子志司 でも、この“恥ずかしい”という気持ちも、すごく大事なことなんじゃないかと思うんです。恥ずかしさを振り切って投稿すれば、必ず何かしらコメントをもらえます。それを見ることで、何がウケて、どこが恥ずかしいのかということがわかってくるようになりますから。ですので曲ができたら、まずは投稿してみましょう。恥ずかしくても、きっとその後の活動の糧になりますから。

――そして一人前になり、いい曲が作れるようになったときに、昔の恥ずかしい曲は封印してしまえばいいと(笑)。

獅子志司 そうですそうです。封印しちゃえばいいんです!(笑)

――わかりました! では、将来ボカロPになりたいと思っている少年少女に、先達としてエールをお願いしたいのですが。

獅子志司 いまの小中高校生たちは、この時代の“強いボカロ曲”を聴いて育っているわけです。それは英才教育を受けているのと同義だと思うので、そういう下地があったうえでボカロPになれたら……絶対に神曲を作れるようになると思います。ですので本当に、がんばってほしいなと!

――そういった子たちが、いつか獅子志司さんの前に現れるかもしれませんね。

獅子志司 すでに、現れまくっていますよ! スゴい子がたくさん出てきています。

――ありがとうございます! では最後に、『プロセカ』にもひと言お願いできますでしょうか。

獅子志司 いまの音ゲーの先頭を走っているのは間違いなく『プロセカ』さんですので、このまま勢いを落とすことなく突っ走ってほしいです。がんばってください!

――個人的には、獅子志司さんのつぎの書き下ろし楽曲を期待したいです。

獅子志司 ありがとうございます! 僕も、お呼びが掛かったらうれしいです(笑)。よろしくお願いいたします!

――本日は楽しいお話、本当にありがとうございました!

獅子志司

 

2018年から、” 獅子志司” 名義でニコニコ動画を中心にボカロPとして活動を開始。

 

歌詞の押韻を交えた巧みな言葉遊びと耳残りの良いメロディで楽曲を表現している。

楽曲は作詞、作曲、編曲全てを獅子志司が手掛けており、中毒性のある歌詞、メロディーが多くの若者の支持を集めている。

 

2018年6月28日に公開した「絶え間なく藍色」でニコニコ動画 殿堂入りを果たし、 YouTubeでは、再生回数 500 万回を超えている。

2020年8月2日に公開した「永遠甚だしい」はフルアニメーションを使用した Music Video が、 海外のネットユーザーの目に止まり、再生回数 1,100 万回を突破。

 

1,000席規模の単独公演の成功から、他アーティストへの楽曲提供など、シンガーソングライターとして幅広く活動している。

 

【SNS】

YouTube:https://www.youtube.com/@Shishishishi_C4

X(獅子志司):https://twitter.com/shishi_shishi_4

X(オフィシャル):https://twitter.com/c4__staff 

TikTok:https://www.tiktok.com/@.shishishishi_official 

 

 

 

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タイトル概要

プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク

■対応OS:iOS/Android

■App Store URL:https://itunes.apple.com/app/id1489932710

■Google Play URL:https://play.google.com/store/apps/details?id=com.sega.pjsekai

■配信開始日:配信中(2020年9月30日(水)配信)

■価格:基本無料(アイテム課金あり)

■ジャンル:リズム&アドベンチャー

■メーカー:セガ/ Colorful Palette

■公式Twitter:https://twitter.com/pj_sekai