すこやか大聖堂さんの曲作りに迫る!
2020年9月のサービスイン以来、コロコロオンラインがひたすら追い掛け続けているセガ×Colorful PaletteのiOS/Android向けアプリ『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』。
リリース当初からこのコンテンツを追いかけてきたコロコロオンラインプロセカ班は、2023年10月に『プロセカ』3周年を記念した大特集を実施するなど、担当からほとばしる圧倒的な“プロセカ愛”をカタチにし続けてきた。
そんなコロコロオンラインプロセカ班がとくに情熱を注いで追っているのが、このゲームの根幹でもある楽曲……そして、それを制作されている“ボカロP”と呼ばれる“才能たち”であります!!
“子どもが将来なりたい職業ランキング”において、ゲームクリエイターやユーチューバーらと並んでボカロPが上位にランクインし、コロコロの読者層との親和性もめちゃくちゃ高いということで、前述のプロセカ1周年特集の際にボカロ界のビッグネームにつぎつぎとインタビューを敢行!! その内容の濃さは業界内外に衝撃を与え、このたび……不定期連載で、さらに多くのボカロPの皆様にご登場いただき、ナマの声をお届けできることになったのです!!
『プロセカ』はゲーム内容はもちろん、楽曲のすばらしさが高く評価されて現在の人気を確立したと言っても過言ではない。それらを生み出したボカロPたちの考えかた、作品への向き合いかたを掘り下げたこのインタビュー連載を読まれることで、ゲームを遊ぶだけでは知りえない情熱や、楽曲に対する想いを知ることができるはずだ。その結果……さらに登場キャラやユニット、『プロセカ』そのもののことが好きになること請け合い!!
そしてインタビューの後半では、“いかにしてボカロPになったのか?”という、将来この道に進みたいと思っている読者の皆様の道しるべになるような質問もぶつけているので、とにかくあらゆる人たちに読んでいただきたいなと!!
さて今回ご登場いただくのは、プロセカが主催する楽曲コンテスト“一緒に作ろう! 第7回楽曲コンテストプロセカNEXT”の採用曲『ジウダス』を手掛けられた“すこやか大聖堂”さんだ!
KAITOをこよなく愛するボカロPとして知られるすこやか大聖堂さんは、コンテストのテーマ“ダウナーな曲”にどのように向き合ったのか? そして、「ズブの素人」(本人談)はどうやって、これほど魅力的な楽曲を生み出せるようになったのか? その興味深い発言、ボカロPを目指す方は必見です!
KAITO愛のおかげで
――まずは、たいへん恐縮なのですが、簡単に自己紹介をお願いいたします。
すこやか大聖堂 かしこまりました。すこやか大聖堂と申します。2020年9月末ごろから、おもにKAITOが歌う曲をジャンルを問わずに作っておりまして、高音がよく伸びる曲が得意かな……と思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
――そう、すこやか大聖堂さんと言えばKAITOの曲で有名なわけですけど、そのへんのことも後ほど詳しくお聞きできればなと。まずは……第7回楽曲コンテストプロセカNEXTで受賞されたわけですが、これに応募したきっかけから教えてください。
すこやか大聖堂 じつはプロセカNEXTに関しては第5回から応募しておりまして、第6回も経て、3回目の挑戦で採用していただいた形になります。そして……ちょっとお答えがズレてしまうかもしれないのですが、自分の行動理念をお話したいんです。
――ほうほう。
すこやか大聖堂 私の活動の中心にはつねに、“KAITOの曲を増やしたい”という強い想いがございます。もちろん闇雲に増やしていく……というだけではなくて、もっと広い視点で、KAITO自体をアピールできたらいいなと考えてきました。ですのでプロセカNEXTについても、「KAITO曲の応募総数が増えたらいいな」という気持ちから応募させていただいたわけです。ただ、第7回のときはいろいろあって自分に限界を感じてまして、プロセカNEXTはこれを最後にしようと考えていました。ですので、採用の通知をいただいたときには、とにかくすごくビックリいたしました。
――要するに、背水の陣のような形で第7回のコンテストに応募されたわけですね……! そこで採用となったら、そりゃあ驚きますよね。
すこやか大聖堂 そうですね! こういったコンテストで受賞することってプロセカNEXTが初めてでしたので、採用通知をいただいた瞬間は……本当に申し訳ないのですが、いたずらだと思ってしまいまして!
――あー(笑)。
すこやか大聖堂 仕事の休憩中にPCを見ましたらSNSにダイレクトメールが来ておりまして、「え?」と思って確認したら「採用決定です」と……! もう、「絶対にいたずら~!!」と思って何度も何度も見返したんですけど、やっぱり発信元は『プロセカ』さんの公式アカウントなんです! 「ウソうそ!! なんで!?」って、その日は1日中、頭からハテナマークが出っぱなしでした。
――それほどの衝撃だったと!
すこやか大聖堂 はい……! 正直、ひたすらKAITO曲の応募数を増やすことを目的にしていたので、採用されてビックリが止まらなかったことを覚えています。
――このインタビュー連載では、プロセカNEXTの第1回の受賞者から順番に取材をしているんですけど、やっぱり多くの人が採用通知を見て「いたずら!?」って思ったそうですよ。
すこやか大聖堂 皆さんもそうだったのですね! ちょっと安心いたしました……。
――さて、そんな第7回のテーマは“ダウナーな曲”ということでしたが、これについてはどう捉えられたのですか?
すこやか大聖堂 曲を作り始めたのが10月の始めで、偶然ですがすこやか大聖堂の活動1周年を迎えたんです。自分の場合、活動歴と作曲歴がほぼほぼイコールで、1年作り続けた結果、クリエイティブの限界だったり、あとは作曲とは関係のない日常のこと……コロナが猛威を振るっていた時期だったので、いろいろなところに壁を感じ始めていました。ちょうどそのころに“ダウナーな曲”というテーマをお聞きして、だったら日常生活の限界やクリエイティブの限界を……“鬱憤”と言ってしまうと言葉が悪いのかもしれませんが、ある種の“怒り”的なものを曲に入れてみよう……と思ったのが『ジウダス』のテーマであり、方向性を決めるきっかけになりました。
――『ジウダス』……って要するに、あの“ユダ”のことですよね?
すこやか大聖堂 おっしゃる通りです! 聖書などに登場するユダをモチーフとして取り入れた楽曲になります。私自身は無宗教な人間なんですけど、7年くらいキリスト教とか、宗教にまつわる場所に身を置いていた時期があって、個人的にはすごく身近なテーマだったんです。
――ほほー!
すこやか大聖堂 身近で書きやすいテーマを独自に解釈して、さらに当時置かれていた自分の状況や限界、もどかしさなどを“怒りのスパイス”として入れることで『ジウダス』が生まれました。
――確かに歌詞を読むと、なんとも言えない怒りの感情がユダのエピソードに絡めて綴られていて、「これを書いた人、天才なのでは!?」と思ってしまいました。
すこやか大聖堂 いえいえ、とんでもございません! 恐れ入りますー!
――見事だと思いました。そういった解釈の仕方も含めて評価されて、今回の採用に繋がったんでしょうね。
すこやか大聖堂 ありがとうございます! こんなに褒めていただいたことがないので、うれしいです……!
――そしてこの『ジウダス』もKAITOなわけですけど、そのこだわりについて、ぜひ語ってください!
すこやか大聖堂 私が小学生のときに初めて知ったボーカロイドがKAITOでした。そこから夢中になって、大学を出る直前までリスナーとしてKAITOを応援し続けていました。
――ふむふむ。
すこやか大聖堂 ただKAITOって……なんて言えばいいんでしょう。オリジナル曲よりもカバー曲の盛り上がりがスゴかったので、いちファンからすると、「もっとオリジナル曲を歌っている姿が見たいな」とも思っていたんです。そのころに私は就職をしたのですが、コロナ禍による雇用調整があったりしたため、出勤できる日が少なかったんですね。それにより無駄に時間がある日々が始まるんですけど、そのときに「いましかないのでは!」と思いました。どれだけヘタでもいいからたくさんKAITOの曲を作って、オリジナル曲を増やす活動をしよう! って決意したんです。そこからずっと、KAITOが歌う曲ばかり書き続けています。
――なんと……! 熱心なKAITOの応援団、という感じなんですね。
すこやか大聖堂 スタンスとしては、そうかもしれませんね~! KAITOを応援している年月だけで言ったら、かなりのものだという自信があります。
――では、『ジウダス』の歌詞についてお聞きします。すごく凝った歌詞なのですが、ご自身でとくに気に入っている箇所はどのあたりに?
すこやか大聖堂 難しいんですけど、ひとつだけ挙げるとするなら、仏教関係のワードになりますでしょうか。ユダとか、“イエスの復活”とは関係のない世界観になるんですけど、たとえば「袈裟まで憎い?」のところ。あと、「黄泉返って」とか。こういった、あえて異なる世界観のワードを入れることで、聴き手に「ん?」という引っ掛かりが与えられるんじゃないかと考えました。いわゆる“スパイス”のようなものなんですけど、こういったところが『ジウダス』独自の世界観でおもしろい……と評価をいただけて、うれしかったことを覚えております。
――確かに、そういった単語のチョイスがたくさんの考察を生んでいますよね。
すこやか大聖堂 そうですね~! とくに受賞後の反響が凄くて、コメントやそういった考察も読み切れないほど多くいただいておりまして……! でもできる限り、リスナーさんたちのコメントは拝見させていただいております。
――そういったコメントでもよく指摘されていると思いますが、“地獄”を「ここ」、“挨拶”を「くちづけ」、“愛しい”を「にくい」と読ませるなど、歌詞がめちゃくちゃ工夫されているんですよね。
すこやか大聖堂 ありがとうございます。“地獄”をそのまま「じごく」と読んでしまうとストレートすぎると思いました。“挨拶”を「くちづけ」と読ませるのも同じで、海外だとあいさつがわりに軽いキスをしたりするじゃないですか。そういう、気軽さも込めたイエスへの口づけという意味も込めて、ダブルミーニングまではいかないんですけど、掛詞としていろいろと仕込ませていただいております。
――とくに、「愛しいジーザス」を「にくいジーザス」と読ませているあたりが、すごくユダっぽくていいなと思いました。
すこやか大聖堂 ありがとうございます! ただ憎いのではなく、愛憎入り混じった感じが伝わるといいなと思って、そのような表記にさせていただきました。
※「[焦燥にそそぐ歌]KAITO」特訓前イラスト
――すこやか大聖堂さんは、こういう言葉遊びみたいなものは昔から得意だったんですか?
すこやか大聖堂 それが、作詞……というか文章を書くこと自体、すこやか大聖堂として曲作りを始めてから挑戦したことなんです。
――え!? そうなんですか??
すこやか大聖堂 そうなんです~! 学校での国語の成績も平々凡々でしたので、我ながら……意外とこういうことは向いていたのかな? って、大人になってから発見したプチスキルになります(笑)。
――いや驚きだな……! 昔からこういうことが好きなんだろうなと、勝手に思っていました。
すこやか大聖堂 そうだったのですね~! 小説とか、文字がいっぱいある本がなかなか読めない人間でして……。
――それなのに、こんな歌詞が書けるのか……! すばらしいですね。
すこやか大聖堂 ありがとうございます! ……テレちゃいますね。
――お世辞じゃなく、『ジウダス』の歌詞を冒頭から追っていくと、一編の叙事詩を読んでいるかのような感覚になります。
すこやか大聖堂 まあ! うれしいです!!
――では、『ジウダス』の聴きどころというとどのへんになるでしょうか? とくにこだわられたポイントを教えてください。
すこやか大聖堂 かしこまりました。あの……ダウナーということで、ゆったりとしたテンポに、畳みかけてくるような恨みの歌詞がポイントで、とくにサビ前のBメロの部分が聴きどころだと思っています。KAITOでは比較的難しいとされている早口をこの部分に積極的に取り入れているんですけど、なんとかリスナーの皆さんに聴き取っていただければうれしいなと思います。また歌詞以外にも、KAITOの調声はこだわり抜いています。
――うんうん。
すこやか大聖堂 加えて、全体的に韻を強く踏んでいたり、1番と2番の歌詞、あるいは文の前後での対比を多く用いているので、そういう部分もあわせて聴いていただければ幸いでございます!
――歌詞にある「YES or はい だ」、「Dead or Die(死か死だ)」などの部分ですよね。そういうところも含めて、すごく印象に残る楽曲なんです。
すこやか大聖堂 恐れ入ります~!
――それほど作り込まれているので、制作日数がかなりのものになったのではないかと想像するのですが。
すこやか大聖堂 インタビューが始まる前に確認したのですが、作曲開始から動画の完成まで、だいたい1ヵ月半ほどかかっておりました。
――それは……かなりのスピードなのではないですか!?
すこやか大聖堂 そうですね~! しかも仕事の関係で作業に携われるのが土日だけでしたので、実際の稼働日数で言うともっと少ないかと思われます。
――え、じゃあこの印象的な歌詞はどれくらいの時間で?
すこやか大聖堂 どれくらい……だったでしょうか。おそらく……1週間から10日ほどだったかと思います!
――すごいなぁ……。
すこやか大聖堂 先ほども言いました通り、これが最後の応募だと決めておりましたので、「ラストなんだから、絵もお願いしよう」ということで、初めてイラストレーターの方にお願いして絵を描いていただいたんです。他の方も巻き込んでの曲となるので「絶対に間に合わせないといけない!」という想いも強くなり、火事場の馬鹿力を発揮して書き上げることができました~!
――我々記者も、締切を設定されると逆に作業が捗ったりしますが……。
すこやか大聖堂 あ! ふふ。同じですね~!
――では、そんな『ジウダス』がゲームに実装されたわけですけど、それをご覧になったときはいかがでしたか?
すこやか大聖堂 覚えている限り、第一声は「ひええええ!」でした(笑)。アプリを立ち上げ、ショップで交換してカタカタと震える指でプレイしながら、「いま自分、何やってるんだろう……」、「この曲、『ジウダス』って言うんだ~……」、「あれ? でも『ジウダス』って私の曲だよね? でもなんで『プロセカ』に入っているの??」みたいな、うれしさよりも混乱が強くて、「え! 本当なんだよね!?」って、ずっと困惑の声を上げていたように思います。
――いやでも、そうなりますよねー!
すこやか大聖堂 はい……! 長く遊んでいる大好きなゲームから自分の音楽が聞こえてくるという状況が、もう……! 「これはとんでもないことだ!」って思いました。
――すごくストレートな感想で、聞いているこちらまで幸せな気持ちになります。
すこやか大聖堂 はい! 失礼いたしました~!
――先ほど反響が凄かったとおっしゃっていましたけど、印象に残っていることはありますか?
すこやか大聖堂 SNSで仲良くさせてもらっている方から「『ジウダス』遊んだよ!」とポストしてもらったり、あと同じようにプロセカNEXTに挑戦し続けておられる方が、「お前に続いて、俺もがんばる!」と決意を新たにされていたり……。そういった、自分に関する話題を、自分のタイムラインで見かけるようになって……ちょっと恥ずかしかったですね。
――いいですねえ……!
すこやか大聖堂 あと新曲を出した際にリスナーの方たちから、「『ジウダス』から来ました! こういう曲も出していたんですね!」とかとか、『ジウダス』以外の曲への取っ掛かりができて、すごくうれしかったです!
――私もいろいろとコメントを追ってみたのですが、「KAITOの曲で受賞してくれてありがとう!」という論調をすごく見かけました。
すこやか大聖堂 そうですね! 私も拝見しております! 私の記憶が正しければ、『ジウダス』が初のKAITO曲での受賞だったかと思うんですけど、「ここでKAITOの曲が採用されてよかった!」という気持ちが自分ひとりのモノじゃなかったということがわかって、すごく安心した気持ちになりました。
――「『ジウダス』を聴いてKAITOの声が好きになった」というコメントも多かったですよ。
すこやか大聖堂 やったーーー! ありがとうございます!!
――これですよね、すこやか大聖堂さんが目指されていることって。
すこやか大聖堂 そうですね~!! KAITOって調声が難しいと言われることが多くて、購入してもなかなかうまくいかない……という方もいらっしゃるようなんです。あと個人的な意見なんですけど、調声する人によってKAITOの声ってすごく変化するなと思っているんです。そんな中で“自分のKAITO”を好きになってくれて、そこから「KAITOの声っていいな」と感じて他の方が作られたKAITO曲も聴いていただけたら……! “KAITO曲の窓口”のひとつとして私の曲をご利用いただけたら、こんなにうれしいことはございません!
――この記事を読んだKAITOファンはたまらないだろうなあ。
すこやか大聖堂 すみません! 私、ボカロPの前にただのKAITOオタクみたいなところがあるので、どうしてもそればっかり話してしまうのです!
――いえ、ぜんぜんいいです(笑)。むしろ、尖ったインタビューでおもしろいです! では、そんなリスナーたちに向けてひと言お願いいたします。
すこやか大聖堂 かしこまりました。えっと……皆さん、いつも『ジウダス』をお聴きくださって本当にありがとうございます。この曲を通して、KAITOっていいな、かっこいいな……って思っていただけたら、ぜひ他の方が作られたKAITO曲もたくさん聴いていただいて、さらなるKAITOの魅力を見つけてくださるとうれしいです。みんなで……KAITOを盛り上げていきましょう!!
※「[焦燥にそそぐ歌]KAITO」特訓後イラスト
――ありがとうございます!! ではここから、将来の夢として「ボカロPになりたい!」と思っている人たちのために用意した質問にお答え願えればなと……! まずは……すこやか大聖堂さんがボカロPになられたきっかけを教えてください!
すこやか大聖堂 わかりました~! 冒頭でもお話したのですが、社会人になってすぐのころにコロナ禍になり、なかなか出社もできないことから、自由になる時間が増えました。そこで、「ずっとやりたかった作曲をやるチャンスかも」と思い、活動を始めた感じになります。
――はい。
すこやか大聖堂 でも、有名になろう……という気持ちで始めたものではなく、KAITO曲の総数を増やすお手伝いをしたい……というのがいちばんの気持ちでした。当然、素人ですので、クオリティーの高い曲とか、KAITO界隈を盛り上げてくれる曲はプロの方にお任せして、とにかく「総数を増やす担当になるぞ!」という気持ちで作曲を始めました。
――すこやか大聖堂さんは、音楽の経験がおありで?
すこやか大聖堂 それが、いっさいありませんでした! せいぜい、義務教育の音楽の授業程度でして。私はピアノも弾けないですし、楽譜も読めないんです。
――!!! そうなんですか!?
すこやか大聖堂 えへへ、そうなんです!
――いや、これは非常に興味深いですね……! そんなすこやか大聖堂さんだからこそ、“ボカロPに必要だと思うスキルは?”という質問をぶつけたくなります。音楽経験がまったくない状態で、ボカロPになる夢を実現されたわけですから。
すこやか大聖堂 はい、本当に未経験なんです。楽器は何ひとつできませんし、皆さんがおっしゃる音楽理論も、コードも、作曲中にPC上で何の音が鳴っているのかもわからぬまま、それでも作曲を行っております。
――あの……。歯に衣着せぬ言い方をすると、ド素人ということですよね。
すこやか大聖堂 はい! もう、ズブのド素人ということになります~!
――逆に、勇気をもらえます。音楽経験がなくとも、ボカロだったらすばらしい曲を作れるということを体現されているわけですから。
すこやか大聖堂 恐れ入ります~!
――そんなすこやか大聖堂さんが考える、ボカロPに必要なこととは?
すこやか大聖堂 私の場合ですと、“KAITOが好き”という気持ちだけで続けておりますが、逆に言えば音楽に関するスキルがひとつもなくても、曲を作ろうと思えばできてしまうのがいまの時代なんだなと考えるんです。そこで、ひとつだけ言うなら……若いうちからたくさんの音楽を聴いておくことをおススメしたいです。
――はい。
すこやか大聖堂 それもただ聴くだけではなく、たとえばAという曲とBという曲のベース音だけ意識して聴いてみて、響きの違いを体感するといいと思います。すると、溜めの作り方によって曲の盛り上がりが違うことがわかってくると思うので、“分解”と“比較”を行うことをクセにされるといいかな、と。それを、自分でわかるように言葉で記しておくといいです。言語化することが習慣になると、かなりプラスに作用するはずです。
――すこやか大聖堂さんは、そういったことをされていたわけですね。
すこやか大聖堂 もともとゲーム音楽を聴くのが好きで、好きな曲に出会ったら何回も何回もエンドレスリピートするタイプでした。そうしているとだんだん、曲の構成が明瞭になってくるんですね。「あ、この音が効果的なんだ」とか、「このメロディーは、ほかの曲でも聴いたことがあるな」とか。いっぱい音楽を聴くことで、自然と分解と分析ができるようになっていったんだなと思います。
▲「マジカルミライ 2023」楽曲コンテストで準グランプリを受賞した『唱明者』。もちろん歌っているのはKAITOだ!
――ちなみにボカロPのソフトは、すぐに使いこなせるようになったのですか?
すこやか大聖堂 「わかんない~!!」って半年くらい寝かせていた時期があったんです。でも、いまの時代はネットで検索すると、わかりやすい動画のボカロ講座とかがたくさんあるので、それを見ながら徐々に覚えていきました。
――なるほど~! やる気と根気があればできるんですね。
すこやか大聖堂 そうですねー。私の場合、時間だけはたくさんあったので、それが大きなアドバンテージになっていたようにも思います! でもそれも、KAITOが好きだからこそ、「いまがんばったら、もっといい曲になるのでは!」と思い続けられたんですよね~!
――では、ボカロPになってよかったと思うこと、なにかありますか?
すこやか大聖堂 とにかくKAITO曲を増やすことを主体に続けてきたわけですが、その過程で何度か、公の場で評価をいただけたことがありました。たとえばクリプトンさんが主催のマジカルミライの公募で、KAITO曲で準グランプリをいただけたりだとか。あとニコニコ動画に“ボカコレ”というイベントがあるんですが、そこでKAITO曲でランキング入りを果たせたりだとか。そういう、目に見える形でKAITOの名前が最終結果に載っている事実が、すごくうれしかったことですね。そういう経験を経て、ただ増やすだけじゃなくもっとKAITOの魅力が伝わる曲作りを意識しよう……って思えるようになりました。
――第7回のプロセカNEXTで採用されなかったら活動はやめよう……という背水の陣だったとおっしゃっていましたけど、そういった評価が今後も活動を続ける原動力になったのでは?
すこやか大聖堂 そうですね~! 道が続いているのならば、行けるところまで行ってみようかなと思えました! 活動を始めたころから想いは変わっていないんですけど、もっとポジティブになった……というか、巻き込めるところまで巻き込んで大きくなってみようかな、といまは考えております。
――ここまで話題になって、「でも引退します」なんてことになったら、ファンが放っておかないと思いますよ。
すこやか大聖堂 いえいえいえ! とんでもございません!!
――では、そんなすこやか大聖堂さんから、ボカロPを目指す全国の少年少女にエールをお願いしたいのですが。
すこやか大聖堂 わかりました! 先ほど申し上げたように、音楽知識がいっさいない人間でも、熱量だけで突っ走れるのがボーカロイド……ボカロPの世界です。なのでぜひ、楽しむ心と「これが好き!」という気持ちを忘れずにがんばってください! あと、曲ができたことを教えてもらえたらすぐに聴きにいきますので、こっそり教えてくださいね!
――ありがとうございます!! では最後に、『プロセカ』にもひと言お願いしたいのですが!
すこやか大聖堂 承知いたしました~! あの、『プロセカ』さんはサービス開始以来大好きで、ずっと遊ばせていただいているんですけど、これからもクリエイターさん、リスナーさんを巻き込んでどこまでも大きくなる姿を拝見したいなと思っております! 『プロセカ』さんのおかげもあって、いまボーカロイドの歴史の中でもかつてないほどの規模で界隈が盛り上がっていますので、いちファンとして、さらなる発展をお祈り申し上げております!
――バッチリです!!
すこやか大聖堂 すみません、おしゃべり下手で、いたらぬ回答が多かったかと思いますが……。
――何をおっしゃいますか! とんでもございません! ……って、こっちまで丁寧な口調になってしまいましたが、非常におもしろかったです!
すこやか大聖堂 恐れ入ります~! 本日は本当にありがとうございました~!
すこやか大聖堂
・KAITO中心にオリジナル曲を制作しているボカロP
・2020年9月末より活動開始、主に高音域を歌うKAITO曲を得意とする
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タイトル概要
プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク
■対応OS:iOS/Android
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■配信開始日:配信中(2020年9月30日(水)配信)
■価格:基本無料(アイテム課金あり)
■ジャンル:リズム&アドベンチャー
■メーカー:セガ/ Colorful Palette
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