【プロセカ】ボカロPに直撃! “有機酸”さんが語る“Vivid BAD SQUAD(ビビバス)”と、オリジナル楽曲『ミライ』について!【ボカロPインタビュー企画 #30】

有機酸さんの曲作りに迫る!

 2020年9月のサービスイン以来、コロコロオンラインがひたすら追い掛け続けているセガ×Colorful PaletteのiOS/Android向けアプリ『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』。

 2021年10月には1周年を祝した特集を展開し、

『プロセカ』1周年記念特集は下記の画像をクリック!!
 

 さらに2022年10月には『プロセカ』2周年を記念した大特集を実施するなど、担当からほとばしる圧倒的な“プロセカ愛”をカタチにし続けている。

『プロセカ』2周年記念特集は下記の画像をクリック!!
 

 そんなコロコロオンラインプロセカ班がとくに情熱を注いで追っているのが、このゲームの根幹でもある楽曲……そして、それを制作されている“ボカロP”と呼ばれる“才能たち”であります!!

 “子どもが将来なりたい職業ランキング”において、ゲームクリエイターやユーチューバーらと並んでボカロPが上位にランクインし、コロコロの読者層との親和性もめちゃくちゃ高いということで、前述のプロセカ1周年特集の際にボカロ界のビッグネームにつぎつぎとインタビューを敢行!! その内容の濃さは業界内外に衝撃を与え、このたび……不定期連で、さらに多くのボカロPの皆様にご登場いただき、ナマの声をお届けできることになったのです!!

 『プロセカ』はゲーム内容はもちろん、楽曲のすばらしさが高く評価されて現在の人気を確立したと言っても過言ではない。それらを生み出したボカロPたちの考えかた、作品への向き合いかたを掘り下げたこのインタビュー連載を読まれることで、ゲームを遊ぶだけでは知りえない情熱や、楽曲に対する想いを知ることができるはずだ。その結果……さらに登場キャラやユニット、『プロセカ』そのもののことが好きになること請け合い!!

 そしてインタビューの後半では、“いかにしてボカロPになったのか?”という、将来この道に進みたいと思っている読者の皆様の道しるべになるような質問もぶつけているので、とにかくあらゆる人たちに読んでいただきたいなと!!

 さて今回ご登場いただくのは、“Vivid BAD SQUAD”(ビビバス)にオリジナル楽曲『ミライ』を提供された“有機酸”さんだ。

 シンガーソングライター“神山羊(かみやまよう)”としても活躍する有機酸さんが楽曲提供したのは、ビビバスのイベントストーリー『Same Dreams, Same Colors』。ストリート系のクールなイメージが強いビビバスでありながら、なんとこのストーリーではキーキャラクターの青柳冬弥を中心に、メンバー4人でキャンプに出掛けるという……! ビビバスの中では群を抜いた“ほっこり系”のストーリーとも言われ、ファンも多いお話だが、そんないい意味でギャップを感じる物語に書き下ろされた『ミライ』には、どんな想いが込められているのだろうか? たっぷりと伺ったぞ!

※インタビューはオンラインで実施したものです。

“前向きな気持ち”を表現してあげたくて

--まずはたいへん恐縮なのですが、簡単に自己紹介をお願いいたします。

有機酸 わかりました。有機酸という名前で、ボーカロイド楽曲を作っています。ボカロ自体は2014年11月ごろに投稿を始めて、以来4年間、ボーカロイドを主軸に置いて楽曲の投稿をしていました。そして2018年からは、シンガーソングライターの“神山羊(かみやまよう)”としても活動をしています。

--ボカロの楽曲を発表されたのって、かなりひさしぶりになるんですね。

有機酸 そうですね。『ミライ』を書かせていただいたのは2021年なんですけど、2018年以来なので……3年間くらい空いてますね。

▲2017年に投稿された有機酸さんの代表曲『カトラリー』。“プロジェクトセカイ COLORFUL LIVE 1st – Link -”では奏、まふゆ、ミクが歌い上げ、会場を魅了した。

--約3年ぶりにボカロを触ってみて、いかがでしたか?

有機酸 ソフトが変わるわけではないので、使用感はいっしょでした。でも、『プロセカ』のおかげで本当にひさしぶりにボカロに触れることができて、純粋に楽しかったです。

--その『プロセカ』からの依頼ですけど、連絡が来たときにはどのように思われたのですか?

有機酸 いま言った、「ひさしぶりにボカロで曲を作れる!」という素直な喜びと、『プロセカ』そのものがボカロファンを中心に非常に大きなムーブメントになっていることを知っていたので、お話をいただけたことはたいへん光栄でした。

--有機酸さんは、『プロセカ』をプレイされていたんですか?

有機酸 はい。お話をいただく前から遊んでいました。音ゲー自体が好きなので、やっぱりおもしろいですね。

--さて、書き下ろし楽曲の『ミライ』を提供したのはビビバスですけれども、彼らを初めて見たときは率直にどう思われましたか?

有機酸 ビビバスは男女混合のユニットで、それぞれの声がおもしろいな……と前々から感じていたんです。ですので、まずはこの特徴を活かしきれるような楽曲を作りたいなと思いました。

--『ミライ』が書き下ろされたイベントストーリー、『Same Dreams,Same Colors』のキーキャラクターは青柳冬弥くんですけど、彼についてはどう思いましたか?

有機酸 この依頼を受けてからになるんですけど、彼のキャラクター性とか声質を僕なりにしっかりとリサーチして、“青柳冬弥”という存在がもっとも素敵になるであろう歌詞とか、楽曲のキーとか、世界観を考えて作り込んでいきました。その結果、手前味噌ですけど青柳君のキャラにピッタリな曲になったんじゃないかと思います。

--この『Same Dreams, Same Colors』っていうイベントストーリー、他の『プロセカ』のストーリーと比べると異なる感じがするじゃないですか。

有機酸 ああ、そうですね。

--読んでみて、どう感じられましたか?

有機酸 おっしゃる通り、悩みとか葛藤が前面に押し出されることが多い他のストーリーとは毛色が違って、ちょっとほっこりとする、温かみのあるストーリーなんですよね。ですのでこれに合わせる楽曲も、ストーリーが纏う独特な雰囲気を大事にして作りたいと思いました。

--なるほどなるほど。イベントストーリーを活かして、『ミライ』を構築していったと。

有機酸 そうですね。ただ……。

--ただ?

有機酸 僕、ボカロで作品を作っていた時代はとくにそうだったんですけど、人間の暗い部分とか、後悔とか、あきらめといった、どこかネガティブな感情に訴えかける作品作りを心掛けていたんです。でも『ミライ』に関しては、このストーリーが主張している“前に進むこと”とか“前向きな気持ち”をしっかりとテーマにしようと考えて、ちょっと意図的にネガティブな要素は排除して作っていったんです。

--あー……! そういうことだったんですね! ビビバスってどうしても、ストリート系のクールなイメージが先に立ちますけど、『ミライ』に関してはいい意味で意外性を感じましたし、そのギャップに打ちのめされたんです。

有機酸 ああ、そう言ってもらえてよかった。うれしいです。本当に、その通りの狙いだったので(笑)。

--僕だけではなく、リスナーもそういう反応が大勢を占めています。「クールなだけじゃないビビバスを見ることができた!」と。

有機酸 ありがとうございます。実際、ビビバスの書き下ろし楽曲はクール系が多いので、その中にある『ミライ』はかなり異質かもしれませんね。正直……“目立ちたい”と思っていたので、よかったです(笑)。

--これは我々取材班も思ったことなんですけど、「リアルに存在するアイドルに歌ってほしい曲」という声がすごく多いですよね。

有機酸 あ!! そうですそうです! まさに、実在するアイドルグループを始め、ボーイズグループ、ガールズグループなどが歌っても違和感がない世界観で……と思いながら作りました。うわあ、しっかり伝わっていてうれしいですねえ……!

▲イベント『Same Dreams, Same Colors』の書き下ろし楽曲としてリリースされた。

--そんな『ミライ』について踏み込んでいきたいんですけど……! まずは『ミライ』という曲名に込めた意味をぜひ聞かせてほしいのですが!

有機酸 青柳くんのストーリーを読んでいちばんに感じたのは、「前を向いて進んでいこう」という強い気持ちでした。まずはそこにフィーチャーして楽曲を制作したいな……と思ったんですけど、その中でもとくに、現在でも過去でもなく“未来”にスポットを当ててあげたいと感じたんです。そこで、この想いがもっともストレートに伝わる言葉として『ミライ』を選択しました。

--なるほど、そういうことだったのか……! そんな『ミライ』には印象的なフレーズがたくさん出てきますけど、ご自身でお気に入りの歌詞があればぜひ教えていただきたいのですが!

有機酸 いろいろあるんですけど……! ……もしかしたら、「そこかよ!」って思われるかもしれないんですが、2番のAメロに「もっとわがまま言っていいから全て無くさないように」というフレーズがあります。じつはこの部分、『ミライ』を作っていたときの自分の心境とリンクしているんです。自分を強く持つためには、たまにはわがままを言うことも必要だな……と思っていて、それをストレートに歌詞に入れ込みました。ですので、すごく気に入っています。

--ストーリーだけではなく、ご自身の心情を反映させることって、けっこう多いのですか?

有機酸 昔は、まったくそういうことはしなかったんですけどね。でも、現在の活動の中心であるシンガーソングライターを経て、“自分が曲を書く意味”というものをすごく考えるようになりました。それ以来、心に思っていることを投射するような歌詞が増えたような気がします。

 

--ちなみに、個人的には「見つけたんだよ僕らが笑える場所」ってところが、すごく印象に残っています。

有機酸 ありがとうございます。うれしいです。

--ここ、曲の冒頭では「探していたんだよ」になっているのが、最後に「見つけたんだよ」になるんですよね。めっちゃ深いなーーーと。

有機酸 ストーリー性のある歌詞を盛り込むのって、ある意味、ボカロ楽曲の醍醐味だと思っているんです。ですので、リスナーさんにそう聴いてもらえているのなら、作った甲斐がありました。

--そう、まさにストーリー性の強い曲なんですよね、『ミライ』って。加えて、「茜の中で色付く」とか「白い悪魔が光の中へ手招く」とかとか、文学的な表現も盛り込まれていて。

有機酸 (テレ臭そうに)……あの、歌詞のことを言われると、ちょっと恥ずかしくなりますね……!!(苦笑)

--あ、スミマセン……。気になる箇所がたくさんあるもので……^^;

有機酸 いえいえ、聴き込んでくれていてうれしいです(笑)。僕、歌詞を作るときに、頭の中で映像を作るんですよ。そこに浮かんだ絵に対して、合う言葉を当てはめて歌詞にしていく……という手法を採ることが多いんです。

--へーーー!! そんなアプローチをされているんですね……! ボカロPによって作り方がまったく違うので、非常に参考になります。Ayaseさんは「頭の中で紙芝居を作る」っておっしゃっていましたけど、それに近いものを感じます。

有機酸 あー、そうなんですね! 僕はもともと写真家になりたくて、ずっと写真をやっていたんです。ですので“描写を切り取る”という作業は、頭の中でも視覚的になっているのかもしれませんね。

--ご自身の歩みが、ここに来て生きている感じがしますね。

有機酸 独学でやっていたので、いいのか悪いのかわかりませんけど(笑)。

--もうひとつ! ぜひお聞きしたかったのが、『ミライ』のセカイver.とバーチャル・シンガーver.についてです。このふたつ、同じ曲のはずなのにあまりにも雰囲気が違って聞こえて衝撃を受けたんですよ……! このインタビューを読んでいる方も、ぜひ両方のバージョンを聴いてほしいんですが……!

有機酸 ありがとうございます。

--セカイver.は、ビビバスの子たちが元気に歌ってる感じ。一方のバーチャル・シンガーver.は、もの悲しさすら感じる透明感に満ちています。この耳触りの違いは、あえて意識して作られたんですか?

有機酸 バーチャル・シンガーver.で意識したのは、3年ぶりのボカロ曲だったので、それまで自分が作ってきた作品とかけ離れすぎないように……というところでした。ソフトは『初音ミク』を使ったんですけどかなり慎重に調声をして、透明感が出るようにしたと思います。先ほども言いましたけど、歌詞の内容は昔作っていた曲と違って、未来に向かう前向きさに溢れています。でも、初音ミクというボーカリストは同じですし、「有機酸が作っている曲だよ」とわかるように作っていった……と思います。それが結果として、セカイver.とバーチャル・シンガーver.のギャップにつながったんでしょうね。

※MV画面はバーチャル・シンガーver.のものです。

--なるほど! ありがとうございます! そんな『ミライ』なんですが、制作にはどれくらいの時間を掛けられたのですか?

有機酸 確か……1週間くらいは掛かったんじゃないかと思います。

--え。……1週間!? めっちゃ速くないですか!?

有機酸 あ、そうですかね? でもどの曲も、だいたい1週間くらいで作りますけど。

--ええええ! 速いなあ!!

有機酸 ほかの人と比べたことがないんですが、速いんですね(笑)。

--これまでたくさんのボカロPにインタビューをしてきましたけど、平均してだいたい、1曲を完成させるのに1ヵ月くらい掛かっている印象でした。

有機酸 でもボカロ曲だけを作ってたときは、確かに1曲に1ヵ月~3ヵ月くらいは掛けていたかもしれません。でも、2018年からの活動では本当に短いスパンで多くの曲を作る必要があったので、自然と制作スピードが上がっていったんだと思います。『ミライ』を作ったときはそのサイクルに入っていたし、テクニック的な成長もしていたと思うので、それくらいの時間で作れたんでしょうね。

--では、難度的にはいかがでしたか?

有機酸 んー……。途中で詰まったりとかは……なかったと思います。

--なんと……!

有機酸 「ちゃんと届くかな……?」と思って悩んだりはしましたけど、作業的に壁に当たった……という覚えはないですね。

--わかりました! では、ゲームに実装されたのを見てどう思われましたか?

有機酸 実装まえに3Dモーションの映像を先に見せてもらったんですけど、もうそのときからすごくうれしくて。3DMVの映像って、スゴいじゃないですか。キャラたちが、本当に躍動しながら歌って、踊っていますし。それを見たとき、「ああ……。本当にビビバスに、楽曲提供できたんだな」と実感し、心から感激したことを覚えています。

--実際にプレイもされたんですか?

有機酸 しましたしました。

--その結果は……?

有機酸 いやあ、『プロセカ』は難しいですよね! MASTERでフルコンなんて、絶対に無理ですもん。

--レベル28なので手ごたえある難易度になってますよね(笑)。ではゲーム実装後、いろいろな反響があったと思いますけど、とくに印象に残っていることはありますか?

有機酸 やっぱり、「ひさしぶりに有機酸がボカロ曲を作ってくれた!」という声がすごく多かったことが印象に残っています。じつは僕も、自分の作品をボカロで出す機会をうかがっていたので、『プロセカ』にはこれ以上ないタイミングでチャンスをいただけたと思っていたんです。そこにリスナーさんも反応してくれたことが、とてもうれしかったですね。

--「ビビバスでいちばん好きな神曲になった」とか、「聴いていて涙が止まらない」とかとか、感動の声が非常に多い印象です。

有機酸 そんなふうに言っていただけているんですか!?

--めちゃくちゃ言われてますよ!!

有機酸 いやあ、それは本当にうれしいですね……。ありがとうございます!

--そういった熱心なファンは、多分曲を分析していろいろな考察をしていたりもします。そういった、リスナー独特な解釈についてはどう思われます?

有機酸 僕は、ぜんぜん気にならない方だと思います。もう、自由に解釈してもらっていいかと。というのも、そうやって自分なりに考察したり、分析したりするのって、音楽のひとつの楽しみかたになってきているなー……と思っていて。とくに最近は、映像やゲームなど、いろいろなコンテンツと組み合わさって音楽が届いているじゃないですか。すると、音と言葉だけよりも想像力を掻き立てられると思うので、どうか思う存分、想像の翼を広げていただけたらと思います。

ーーでは、『ミライ』が大好きなファンの皆さんに向けてひと言お願いできますでしょうか?

有機酸 はい。もう、言いたいことはシンプルなんです。いつも『ミライ』を聴いてくれてありがとうございます。これからの有機酸の活動を、いろいろとよろしくお願いいたします!

--ありがとうございます! ではここから、将来の夢として「ボカロPになりたい!」と思っている人たちのために用意した質問にお答え願えればなと……! まずは……有機酸さんが、ボカロPになられたきっかけを教えてください!

有機酸 これは……どう答えたらいいかなぁ。……じつは僕自身、明確に「ボカロPになるぞ!」と思って活動していた人間ではないんです。もともとバンドをやっていたんですけど解散になり、「これから新しい音楽を、どうやって作っていこうかな」と考え始めたときに、たまたまボカロの『初音ミク』に出会いました。そういう意味では、「ボカロPでがんばっていくぞ!」とピンポイントで思っていたわけではないので、ちょっと異質かなと思います。もちろん、ボカロに出会ったおかげで多くの人に伝わる楽曲を作ることができたし、おもしろいこともたくさん経験できたので感謝はしているんですけどね。僕にとってのボカロは、“新しい表現を探していた際のきっかけのひとつ”でしょうか。

--新しいことをするためのツールのひとつ……というイメージですかね。

有機酸 ああ、そうですね。最初は完全に、あくまでもツールのひとつだと思っていました。

--そもそも、有機酸さんが音楽を始めたきっかけは……?

有機酸 中学生のときに、教室で友だちとギターとベースの真似事をする……というところからスタートしたと思います。僕が学生のころはボカロも流行っていなかったので、“音楽をやる=バンドを作る”という風潮だったんですよね。そして高校に入ってバンドを作り、この世界にのめり込んでいきました。

--作詞や作曲を始めたのは、バンドを作ってから?

有機酸 2014年11月に最初の楽曲を投稿しているんですけど、それまではまったく作詞作曲の経験はありませんでした。そもそもその曲も、投稿する前の週に大急ぎでスタバで作ったものですからね(笑)。曲はもちろん、映像も含めて。それくらい慌てていたので、「これでボカロPデビューだぜ!」なんて思う余裕もなく、バッと作って、「さあどうしよう!?」という感じでした(苦笑)。

--ボカロPによって、歩みがぜんぜん違うということがよくわかります(笑)。逆に、方法はひとつじゃない……ということを子どもたちに伝えられるので、非常にありがたいですけど。

有機酸 ためになりますかね……? だいぶ心配ですけど……。

--もうひとつ、ボカロPになるために必要なスキルをお聞きしたいんですけど!

有機酸 ……ここまで言っておいて何か語るのは違う気もするんですが(笑)。でも、いま思えば僕、そもそもまったく楽譜が読めなかったんです。

--あ、そうなんですね!

有機酸 はい。楽器は多少できたんですけど、楽譜はぜんぜん……。それを振り返って思うのですが、楽器や楽譜を習うよりも、まずはいいPCを買うのがいいんじゃないかと思います!

--あーーー! ボカロはPCでやりますもんね。

有機酸 最近はタブレットで曲を作っている人もいるので、一概には言えないと思いますけど、まずは納得できるパソコンを選ぶことから始めるといいかもしれません。

--いまの子どもたちは、それこそ小学生のうちからPCに触れますもんね。そういう意味では、ハードルも低いだろうなあ。

有機酸 おっしゃる通りで、ひと昔前と比べても、各段に環境が整っていますよね。

--わかりました!! では……あまりボカロPってことを意識されていない有機酸さんにお聞きするのもアレですけど、「ボカロPになってよかった!」と思うことがありましたら、ぜひ教えてください。

有機酸 活動を始めた当初は本当に自分のことをボカロPだなんて思っていなくて、2018年からはシンガーソングライターがメインのフィールドになってしまったんですけど……。かと言って、ボカロPを辞めたつもりもまったくないんです。いろいろな仕事をするようになって、逆に、「ボカロだから届く場所がある」、「ボカロでなきゃ表現できないことが絶対にある」という事実に気づかされました。そういうことを知れたいまになって「ボカロPになってよかった!」と思ったし、現在も音楽活動が続けられている土台のひとつになってくれているな……と感じています。

--もうひとつ、「自分で作ったものを人に聴かせるのが恥ずかしい」と尻込みする子が多くいると思うんですけど、この恥ずかしさを払拭する方法って、何かあったりしますかね……?

有機酸 作品を完成させたらきっと、恥ずかしさよりも先に芽生える感情があると思います。それは、人に聴いてもらうことで生まれる“喜び”です。1歩踏み出せば、すぐにでも作品を世の中に発信できるのがボカロの良さ。誰にも遠慮する必要はないので、おもしろいものが作れたと思ったらぜひ、がんがん発表してください。

--確かに、世に発信するための、最短の手段のひとつですもんね。

有機酸 そうなんです。僕も、それをすごく感じていて。2014年に初めて投稿する際、真っ先に沸き起こった感情は、「これ、投稿した瞬間に誰かに届くかもしれないんだよな……!」という感動だったんです。こういった驚きとか感動を経験していくうちに、恥ずかしさはなくなってしまうと思いますよ。

--ありがとうございます! では、ボカロPを目指す全国の少年少女に向けて、先達としてエールをお願いいたします。

有機酸 なんでしょうね……。……おもしろいものを作りましょう! 僕もそうします! ってところでしょうか。

--そう遠くない未来、このインタビューを読んだ子たちが同業のボカロPとして有機酸さんの前に現れるかもしれません。

有機酸 そうですよねー。だって、コロコロコミックですもんね。僕もめちゃくちゃ読んでましたよ。子どものころ。ベイブレードとか、ミニ四駆だとか。

--そんなコロコロコミックで、いまは『プロセカ』とかボカロPも記事になっているんです。

有機酸 そうなんだ……! いやビックリですね。でも、子どもたちの夢が叶うといいですね。応援しています!

--ありがとうございます! では最後に、『プロセカ』にもひと言お願いできますでしょうか!

有機酸 知らない間にとんでもないビッグコンテンツに成長していて、驚かされます。でも、『プロセカ』をきっかけにボカロとかボカロPにスポットが当たるし、楽曲が世に出ていくきっかけにもなってくれているので、本当に素敵な取り組みだと思っています。これからも、ぜひがんばってください!

--わかりました! 本日はお忙しい中、楽しいお話をありがとうございましたー!

有機酸

2014年11月にVOCALOID楽曲を投稿開始。
ボカロ作品は有機酸として、シンガーソングライターとしては神山羊として活動している。 

 

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ボカロPインタビュー連載

 

1周年ボカロPインタビュー

 

 

タイトル概要

プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク

■対応OS:iOS/Android

■App Store URL:https://itunes.apple.com/app/id1489932710

■Google Play URL:https://play.google.com/store/apps/details?id=com.sega.pjsekai

■配信開始日:配信中(2020年9月30日(水)配信)

■価格:基本無料(アイテム課金あり)

■ジャンル:リズム&アドベンチャー

■メーカー:セガ/ Colorful Palette

■公式Twitter:https://twitter.com/pj_sekai