ササノマリイさんの曲作りに迫る!
2020年9月のサービスイン以来、コロコロオンラインがひたすら追い掛け続けているセガ×Colorful PaletteのiOS/Android向けアプリ『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』。
2021年10月には1周年を祝した特集を展開し、
さらに2022年10月には『プロセカ』2周年を記念した大特集を実施するなど、担当からほとばしる圧倒的な“プロセカ愛”をカタチにし続けている。
そんなコロコロオンラインプロセカ班がとくに情熱を注いで追っているのが、このゲームの根幹でもある楽曲……そして、それを制作されている“ボカロP”と呼ばれる“才能たち”であります!!
“子どもが将来なりたい職業ランキング”において、ゲームクリエイターやユーチューバーらと並んでボカロPが上位にランクインし、コロコロの読者層との親和性もめちゃくちゃ高いということで、前述のプロセカ1周年特集の際にボカロ界のビッグネームにつぎつぎとインタビューを敢行!! その内容の濃さは業界内外に衝撃を与え、このたび……不定期連載で、さらに多くのボカロPの皆様にご登場いただき、ナマの声をお届けできることになったのです!!
『プロセカ』はゲーム内容はもちろん、楽曲のすばらしさが高く評価されて現在の人気を確立したと言っても過言ではない。それらを生み出したボカロPたちの考えかた、作品への向き合いかたを掘り下げたこのインタビュー連載を読まれることで、ゲームを遊ぶだけでは知りえない情熱や、楽曲に対する想いを知ることができるはずだ。その結果……さらに登場キャラやユニット、『プロセカ』そのもののことが好きになること請け合い!!
そしてインタビューの後半では、“いかにしてボカロPになったのか?”という、将来この道に進みたいと思っている読者の皆様の道しるべになるような質問もぶつけているので、とにかくあらゆる人たちに読んでいただきたいなと!!
さて今回ご登場いただくのは、25時、ナイトコードで。(ニーゴ)にオリジナル楽曲『カナデトモスソラ』を提供された“ササノマリイ”さんだ。
『カナデトモスソラ』が書き下ろされたニーゴのイベントストーリー『カーネーション・リコレクション』は、まふゆの心を動かす曲を作りたい……と奮闘する奏の姿にフィーチャーしたものだ。曲作りはうまくいかずに行き詰ってしまうが、瑞希から「思い出のカーネーション畑を探そう」と提案されたことで物語は動き始める。封印していた幼いころの楽しかった記憶が呼び起こされる奏。それを元に作られた楽曲は、モノクロだったまふゆの心にほんの少しだけ色を差し込む--。
ニーゴらしい、胸が締め付けられるようなストーリーに提供された『カナデトモスソラ』は、どのように生まれたのだろうか?
※インタビューは感染対策を徹底して行っております。
命を救ってくれたプロセカ
--ササノマリイさんはコロコロ初登場! ということで、まずは恐縮なのですが自己紹介をお願いしたいのですが……!
ササノマリイ わかりました。現在は“ササノマリイ”としての活動がメインですが、ボカロ曲を投稿し始めたころは“ねこぼーろ”という名前でやっていました。いまもその名前は残っているんですけどねこぼーろ名義での投稿はしていないので、プロセカにおいてはササノマリイの名前で統一しています。
--最初にボカロPとして投稿されたのは……。
ササノマリイ 2007年ですかね。まったく違う名前で、試しに作ってみた曲を投稿しただけですが。ねこぼーろ名義ですと2009年が最初になると思います。
--2007年は、ボカロの黎明期になりますね!
ササノマリイ はい。ボカロというものが発売された直後に知って、すぐに使ってみた形になりますね。
--そんなササノマリイさんはプロセカにオリジナル楽曲『カナデトモスソラ』を提供されています。この依頼を受けたとき、率直にどう思われましたか?
ササノマリイ いやもう、うれしいなんてもんじゃないですよね。だって僕が活動を始めた時代って、波のあるボカロブームの初っ端ですよ。要するに、現在の盛り上がりから見て一巡前の人間で、自他ともに認める中堅選手です。プロセカに楽曲提供をしている方々って名だたる実力者ばかりなので、「本当に僕でいいんですか!?」と思いました。でも一方で、プロセカって知る人ぞ知るボカロPもしっかりと取り上げて参画してもらっているじゃないですか。ですので僕も、そういった枠で声を掛けていただいたのであれば、その意気に誠心誠意応えたいと思って参加させていただくことにしたんです。
--その“ボカロブームの波”ということに関しては、他のボカロPの方も言及されていました。「おとなしくなっていたボカロ文化をプロセカが底上げしてくれた」と。
ササノマリイ まさに、その通りだと思います。ボカロが産声を上げてから、すでに3回くらい波が来ていますからね。
--黎明期を知る者として、いまのボカロ市場をどうご覧になっていますか?
ササノマリイ 昔は事あるごとに「なんだ、ボカロP上がりかよ」みたいな言われかたをされることが多かったんです。業界として下に見られていた……というか、色眼鏡を掛けて見られていたことは間違いないと思います。それが、幾度かのブームを経たことによりガラリと立場が変わっていくんです。後で詳しく話しますけど、僕なんてプロセカに音楽活動を……いや人生そのものを救われた人間なので、「プロセカ、ありがとう!!」と何度でも言いたくなります。
--これは後半のお話が楽しみですが……まずはニーゴに提供された『カナデトモスソラ』について掘り下げさせてください。ニーゴの面々を初めて見たときはどんな印象を持たれましたか?
ササノマリイ そもそものプロセカとの関わりって、僕の楽曲『自傷無色』をニーゴの子たちでカバーしたい……というお声掛けをいただいたことです。それはアプリがリリースされる前のことで、それほど詳しい情報があったわけではないんですけど、彼女たちのビジュアルや大まかな設定を見せていただいてすぐさま、(おや……? 何かいろいろと抱えてそうな子たちだぞ)という予感を覚えました。と同時に、僕はこれまで明るくない曲をけっこう作ってきたので、「なるほど、それで僕に話がきたのか」とも思いましたけど(笑)。
--あー……。
ササノマリイ そんなニーゴに対する第一印象は、“ものすごく生きていくことに壁を感じている子たちだな”というものです。
--とても腑に落ちるというか、そもそも『自傷無色』もニーゴ用に書き下ろされた曲なんじゃ……って思うくらい彼女たちにハマっていると思います。
ササノマリイ 『自傷無色』を作っている最中は、本当にウキウキだったんですよね。でも曲が完成し、歌詞をバーっと書いて当て嵌めて自分で聴き返したとき、「これ……大丈夫かな!?」と思ったんです。こんなに暗くて重い感じじゃ教育上よろしくないのでは!? と自分で思いました。でも、『自傷無色』はたくさんの人に聴いてもらうことができましたし、それをきっちりと歌える彼女たちはいろいろと抱えているものがあるんだろうなと感じたんです。『自傷無色』なんて、ふつうはゲームに入れられるような曲じゃないよな、って思いますし。
▲ササノマリイさんの人気楽曲『自傷無色』(作詞・作曲:ササノマリイ)。プロセカでは2DMV、3DMV付きで遊べるぞ!
--『カナデトモスソラ』はイベントストーリー『カーネーション・リコレクション』用に書き下ろされたわけですけど、これは宵崎奏ちゃんがキーキャラクターとなっています。彼女に対しては、どのような印象を持たれましたか?
ササノマリイ 彼女は……いろいろなところで自分の境遇とカブるものを持っているんです。そもそも、誕生日も1日違いですしね(笑)。
--あ、そうなんですか!
ササノマリイ 改めてプロセカのストーリーって、すごくリアルに感じます。曲にしても物語にしても、作り手はふつう、どこかを誇張して表現したくなるものなんです。でもプロセカは大袈裟な描写を用いることなく、それでいて感情移入せざるを得ない胸が痛くなるようなストーリーを展開させています。そんなものを前にしたら……こっちもがんばるしかなくなるじゃないですか。
--とくにニーゴの場合は、他のユニットとも明らかに毛色が違いますしね。
ササノマリイ そうなんです! かけ離れていますよね。解決が解決にならない状況と言うか、本質的な改善が難しいストーリー。正直、彼女たちがどうなっていくのか、気になって仕方がないですし。
--そんなニーゴに曲を書き下ろすことについては? プレッシャーを感じたりはされましたか?
ササノマリイ 先ほど言ったようにうれしさが先に立っていて、「やらせていただけるなら、喜んで!」という気持ちだったんですけど、プレッシャーは……徐々に押し寄せてきました。
▲イベント『カーネーション・リコレクション』の書き下ろし楽曲としてリリースされた。
--そのような状況の中、曲のテーマはどのように決めていったのですか?
ササノマリイ まず大前提として制作サイドから、「ストーリーに沿った曲をお願いします」というオーダーがありました。そこでいただいた設定や資料を読み込んで曲を考え始めるわけです。
--はい。
ササノマリイ でも、これまでニーゴに書き下ろされてきた楽曲って、“まふまふ”さんの『悔やむと書いてミライ』など、“内省的な爆発”を表現したものが多かったと思うんです。心の内を爆発させたような曲……ですね。でも『カーネーション・リコレクション』というイベントストーリーは、そこから奏が1歩踏み出すきっかけを見つける……というお話だったので、これを取っ掛かりにしようと考えました。とはいえ明るすぎてもいけないし、僕は明るい言葉を紡いで曲を作るタイプでもない。あくまでも“きっかけ”の物語であって“解決”であってはならないので、そのバランスをどう取っていくのかで思い悩みました。加えて音ゲーの楽曲ですから、叩いていて楽しいものにする必要もあります。となれば……ミドルテンポ。これらを勘案して、かなり試行錯誤しました。
--そうか。ただ曲を作るだけじゃなく、そういうところまで思いを馳せなければいけないんですね。
ササノマリイ そうなんです。僕もヘタクソではありますけど音ゲーが大好きだったので、「譜面がおもしろくなければダメだろ!」と常々思っていました。
--なるほど……! そういう意味では、ふつうの曲よりも付加的な要素がかなりあるんだな……!
ササノマリイ 言ってしまえば“縛り”みたいなものですよね。でも、返って気合が入ったかもしれません。
--ほうほう!
ササノマリイ いま活躍している多くのボカロPは、僕の後にデビューした人たちです。彼らと比べると僕は完全に古い人間ですけど、なんと言うか……負けてられないなという気持ちを掻き立てられるんです。ですので今回、プロセカの書き下ろし楽曲でいいモノを作って、若い世代のボカロPたちを驚かせたいと思いました。
--そして実際、『カナデトモスソラ』は大絶賛されています。
ササノマリイ 本当にありがたいですよねぇ……! 僕の想像をはるかに上回るポジティブな反応をたくさんいただくことができて、非常にうれしく思っています。正直、自分の力不足で表現しきれない部分もあったんですけど、イラストを描いてくれたRellaさんやニーゴの子たちの歌唱などなど、さまざま援軍が足りない部分を補ってくれました。まわりの支えによって曲が完成していくという経験は、長く音楽活動をしていますけど『カナデトモスソラ』が初めてだと思います。
--では、さらに曲に踏み込んでいきたいのですが……! まず最初にどうしてもお聞きしたいのが『カナデトモスソラ』という曲名の意味です! ファンの間でさまざまな考察がなされているポイントのひとつですけど、答え……もしくは何らかのヒントをぜひ!
ササノマリイ なるほど、わかりました(笑)。いろいろな意味を含ませた曲名なんですけど、ひとつは単純に「キャラクターの名前を入れたい」という想いを具現化させました。“カナデ”ですね。これを起点に意味が通じるタイトルを考えていき、曲の雰囲気を合わせて最終的に“カナデトモスソラ”としました。
-- 「奏“が”灯す空」なのか「奏“と”灯す空」なのか、それとも別の意味なのか……と、ファンの間で議論を生んでいるじゃないですか。
ササノマリイ じつはどういう意味にでも取ってもらえるように、あえて片仮名表記にしました。漢字を入れてしまうとその瞬間に、捉えかたが画一的になってしまいますから。音楽を聴いたときの感じかたとか物事の見かたって人それぞれですし、プロセカにおいてもニーゴの子たちの心情の受け取りかたってユーザーによってまったく違うと思うんです。そこで、奏の曲ではありますけど、リスナーなりのスタンスで聴いてほしくて『カナデトモスソラ』としました。
--なるほど……! 聴いた人の感じかたで、「奏を灯す空」でもいいし、「奏が灯している空」でもいいと……! ちなみにニーゴのメンバーは全員“空”にまつわる名前ですけど、それも曲名を決めるときに影響したんですか?
ササノマリイ じつはそこまで意識していなくて、曲名を決めたあとに「そういえば、みんな空にちなんだ名前だったなー」と気づいたくらいです。逆に、「せっかく奏がメインのストーリーなのに、こんなにいろいろな要素を想起させてしまう曲名だと申し訳ないかな……」と思ったりもしましたね。
※MV画面はバーチャル・シンガーver.のものです。
--そんな『カナデトモスソラ』の中で、とくにお気に入りの歌詞を教えていただきたいのですが!
ササノマリイ まず、曲の最後。「なにもないのに なにかもとめて」と言葉が続くところは、ニーゴのみんなをまとめる……わけじゃないですけど、仲間のことを想いながら曲を作っている奏っぽさが現れていて「いいな」と思います。それともうひとつ、間奏に入る直前の「ただ声が聞きたい」の箇所。ここはもう、大好きですね。宵崎奏役の楠木ともりさんの収録に同席させていただいたんですけど、レコーディング立ち合いで泣いてしまったのは初めてでした。
--おお……! 実際、感情を絞り出すようなこの曲の歌唱は、いつ聴いても胸が締め付けられます。
ササノマリイ そうなんですよねー……! キャストの皆さんの表現力が凄まじくて、改めて“声優”という職業の真髄を見た気がします。まさしく“声”の“俳優”だなと……!
--すごくわかります……!
ササノマリイ というか、すべてこだわって紡いだので、捨て歌詞はいっさいないです。
--では、いまの質問と似通ってしまうんですけど、この曲の聴きどころを教えてください。
ササノマリイ 全部が聴きどころではあるんですけど、あえてピックアップすると……。やっぱり、「ただ声が聞きたい」と「伝えたいよ きっといつか」の箇所は奏の心が出てくるポイントでもあるので、ぜひじっくりと聴いてもらいたいですね。とはいえ全体的に、自分の中のいろいろなモノ……どうにもできないことや心の内のグチャっとした部分は表現できたと思います。
--心の内のグチャっとした部分……か。すごくニーゴっぽくて刺さります。
ササノマリイ やっぱり奏という単体ではどうにもならないので、彼女たちにはニーゴという形が必要なんだと思うんです。葛藤もニーゴの面々にとっては必要な要素で、それがあるからこそ4人は出会うことができました。いまの状況が悲惨だったり、悲痛だったり、耐え難いものだったとしても、歩いて来たからこそ出会えた仲間もいる。“出会えなかった世界”は考えられないかもしれませんけど、どこかがちょっと噛み合わなかっただけでも違う状況になっていたわけじゃないですか。そういった部分を、『カナデトモスソラ』の最後のほうで表現できたかなと思っています。
--ワンダショの子たちも、「みんなを笑顔にしたい!」という目標を持っているじゃないですか。そういう意味では、「まふゆを笑顔にしたい!」と思って活動している奏と目指すところは同じなわけです。でも、アプローチの仕方がまったく違うってことを、『カナデトモスソラ』は確実に表現してくれているんだなと感じます。
ササノマリイ ありがとうございます! ワンダショの子たちと違うのは、ニーゴの場合はまふゆが笑顔になってくれたとしても問題の根本が解決したわけではない……というところにあると思うんです。でも、それも人生ですよね。すべての迷いや悩みが解決されるわけがないんですから。こういう、微妙な塩梅を求める物語が僕は大好きなので、ニーゴらしさが伝わったならこんなにうれしいことはありません。とはいえ、多感な時期にこのイベントストーリーを読んだら……ちょっと辛かったかもしれませんけど(笑)。
--ものすごくニーゴらしい曲になっていると思います。
ササノマリイ 「絶対に僕がいちばんニーゴのことをわかってやれるんだ!」という気持ちで作っていましたから(笑)。彼女たちって、すべてをあきらめてしまった子たちじゃないですよね。どうやってもあきらめられない何かがあるからこそ、自分の首を絞めてでも必死になって動いている。これって、すごくリアルです。
--それほどこだわって作った楽曲となると、制作日数もかなりのものになったのではないですか?
ササノマリイ まずワンコーラス部分を仕上げて提出したのは、かなり早……いや、ぜんぜん早くなかったですね!! いま改めて思い出すと、メロディーと歌詞にとくに時間がかかって、提出期限をちょっと待ってもらった記憶が……(苦笑)。音ゲーで譜面を追い掛けているときですら泣ける曲にしたい……と思って作り込んでいくうちに時間が過ぎ去っていって、最後は「家じゃ無理だ!」と外に出て、24時間営業のファストフード店に駆け込んで、「バッテリーが切れるまでになんとかする!!」と誓って最後の仕上げをしていたんです。そこから、最終的なオッケーが出るまでさらに時間を要するんですけど(笑)。
--これまでに作られた楽曲と比べても、やはり難産だったのですか?
ササノマリイ はい、ここでぜひ聞いていただきたいのが、「プロセカに命を救われました」という話なんです。
--なんと……! これはじつに興味深いですね。
ササノマリイ 当時、曲作りに完全に行き詰っていて、「好きなモノを好きに作っていいよ」と言われてもホンッッットに何も出てこない時期だったんです。シンガーソングライターとして活動させていただくうえで「ひとりでも多くの人に曲を届けなければ意味がない」と考えていて、さらに自分の偏見や凝り固まった変な考えがずっと揺蕩っていたため、「こうしたらどう?」という好意的な助言でさえも「僕を否定するのか!」と取ってしまっていました。そのせいでさらにモノが作れなくなるという、完全な袋小路に迷い込んでいたんです。
--は、はい……。
ササノマリイ そんなときに依頼をしてくれたのがプロセカでした。自分の原点でもあるボカロを使って、ひさしぶりに曲が作れる。それも、あんなにすばらしいストーリーとすばらしい楽曲で彩られた世界に、ササノマリイとして参画することができる……! その瞬間、本当に素直に、「自分が追い求めてきた、いちばんいい音で曲を作ろう」と思いました。凝り固まってしまっていた変な考えがキレイになくなって、ずっと待ってくれていた自分のチームの面々と腹を割って話すことができるようになったんです。
--なんと……!
ササノマリイ これからは、自分の曲を「いい!」って言ってくれた人たちへの恩返しの意味も込めて作品を作っていこう。もう一度、イチからがんばってみよう--! プロセカに関わらせていただいてから、自分のチームの人たちとようやく笑顔で話せるようになったんです。ですので、今回のお仕事には感謝しかありません。
--完全に、ニーゴのストーリーじゃないですか……!!
ササノマリイ 本当にそうですよね……! よって『カナデトモスソラ』は、僕の愛の結晶なんです。僕の曲を好きだと思ってくれた人たち、プロセカが好きな人たち、そしてニーゴを推している人たちに、全力で愛が伝わることがしたいと思って作った楽曲になります。
--実際にササノマリイさんて、Twitterを拝見すると、足繁くプロセカのイベントにも参加されていますもんね。
ササノマリイ そうなんです。全部自力でチケットを当てて参加しています(笑)。
--では、『カナデトモスソラ』のファンに向けて、ひと言お願いできますでしょうか。
ササノマリイ この曲に限った話ではなく、プロセカに影響を受けまくってほしいなと思うんです。今後の人生を生きていく上での取っ掛かりが、ニーゴはもちろんですけど、レオニにも、モモジャンにも、ビビバスにも、ワンダショにもある。どこかに必ず自分の人生に活かせるヒントがあるはずなので、ぜひ楽しんでください。音ゲーが苦手でも、曲を聴くだけ、ストーリーを読むだけでも、得られる何かがあると思います!
--ありがとうございます! ではここから、将来の夢として「ボカロPになりたい!」と思っている人たちのために用意した質問にお答え願えればなと……! まずは……ササノマリイさんが、ボカロPになられたきっかけを教えてください!
ササノマリイ その昔、プロではない一般の人がフラッシュムービーで面白ネタを投稿するサイトがあったんです。そこにナゼか“ボーカロイド”という枠があって、曲がいくつも載っていました。で、「これはなんだろう?」という好奇心から再生してみたところ……パソコンが歌い始めたわけです。そのとき、僕はすでにインストゥルメンタル(※歌詞のない曲のこと)で作曲遊びはしていたんですが、「歌モノなんてとんでもない!」という感じでした。でも、初めてボカロの声に触れた瞬間、「これなら自分でも歌モノを作れるかも……!」という予感を覚えるんです。それが高校1、2年の出来事で、投稿を始めたのは高校3年生のときになります。
--それ以前に、音楽活動はされていたんですか? たとえば、バンドをやっていたとか。
ササノマリイ 友だちがまったくいなかったので、いっさいやっていません(笑)。ただ、小さいころから“音遊び”がすごく好きで、音を使ったオモチャをいつまでもいじっていたことを覚えているんです。楽器とテープレコーダーが合体したようなオモチャだったんですけどスピードコントロールが付いていて、録音した声や音を早回ししたり、ゆっくりと再生できたりしました。これが、音に興味を持ったきっかけだと思います。
--うーん、じつに音楽家っぽい少年時代……!
ササノマリイ もうひとつ、めちゃくちゃ影響を受けたのはゲームボーイの周辺機器として発売された“ポケットカメラ”です。
--うわ、懐かしい!!
ササノマリイ あれに曲を作れるDJモードが付いていて、あまりにも楽しくてひたすら遊んでいたんです。間違いなく、コレが最初に触れた“打ち込み音楽”でしたね(笑)。
--そんなササノさんにぜひお聞きしたいのが、ボカロPになるために必要なスキルです。何かありますか?
ササノマリイ ボーカロイドを使って曲を作る人はすべて“ボカロP”なわけです。そういう意味では、ボカロを買った瞬間に「僕、ボカロP」と名乗ってもいいんでしょうね。でも僕はまったく逆で、頑なに「自分はボカロPだ」とは言わなかったんです。あくまでも、表現するための手段のひとつがボカロであって、それ専門の人間ではないな……と思っていたので。何が言いたいのかというと、大事なのは“何を表現したいか”という想いであって、手段やスキルではないんじゃないか……ということです。
--はい。
ササノマリイ いまは、僕が活動を始めたころとはぜんぜん違って、何をするにも入り口がたくさんあります。ボカロを始めるにしても、障壁は何もないと言っていい。なので……やってしまえばいいんです。最初から納得のいく作品は作れないでしょうし、苦しいこともあると思いますけど、そういった駆けあがっていく過程が絶対にいちばん楽しいですから。音楽理論もいらないし、楽器も弾けなくていいです。いくらでも曲を作るための素材がありますから。
--これは勇気をもらえる言葉だなぁ……!
ササノマリイ とはいえ、音楽理論や楽器についての知識があると、曲作りは断然楽になると思います(笑)。言うなれば、より楽に自分がやりたいことを達成するためのツールが、楽器や理論なんです。でも、何度も言いますけど、作りたいモノとか表現したいモノがあるなら、四の五の言うまえにトライしてみればいいと思います。誰かの見よう見真似でもいいので踏み出すことで、見える世界が絶対にありますから。純粋に、「いいな」と思ったことは楽しまなきゃ損ですよ!
--やれない理由を探すんじゃなく、まずは最初の1歩を踏んでみよう、と。
ササノマリイ おっしゃる通りです。……というか、プロセカに出会う前の、3年前の自分に言ってやりたいですよ!!(笑)
一同 (爆笑)
ササノマリイ 「ボカロ高いし」、「お小遣いないし」、「作った曲をバカにされたらイヤだし」とかとか、引き返す理由を探しちゃダメなんですよね。でも、「大丈夫だよ」と言いたい。本当にダメだったら誰も反応してくれないんだから、バカにされるほうがマシなんだよ、って。文句を言う人は、何かが刺さっちゃったから反応するんです。逆にその反応をヒントにして、「じゃあ、こう変えてみたらどうだろう」とつぎのクリエイティブに活かせばいい。少なくとも、僕はそうやって道を歩んできましたから。
--確かに、本当に興味がなかったら無視しますもんね。
ササノマリイ そうなんですよ。……今日僕、めっちゃしゃべってますね……(笑)。以前だったら、インタビューでこんなにベラベラとしゃべることはせず、用意しておいた答えを間違えずに言うことに特化していたんですけど(苦笑)。これも、プロセカに関わってから変わったことなんですよね! 『カナデトモスソラ』を作ったことで、まとわりついていたネガティブな要素をすべて取っ払えたんだよなー!
--このタイミングでお会いできてよかった(笑)。
ササノマリイ いや本当に(笑)。今日はありがとうございます!
--では最後に、ササノさんを救ってくれたプロセカに対してひと言お願いいたします!
ササノマリイ いやあ、たいへんおこがましいんですけど……。こういう人気コンテンツの運営って、本当にたいへんだと思うんです。ですので、プロセカに言葉を送るとしたら……信じたこと、正しいと思ったことを突き詰めて、このまま突っ走ってほしい! ですかね。僕もいちファンとしてずっと追い掛けていきますので、ブレずに走り続けてください!
--本日はお忙しい中、本当にありがとうございました!!
ササノマリイ
耳に残るメロディラインと融合された深度のあるサウンドデザインが特徴的なサウンドプロデューサー、シンガー。人気ゲーム「プロジェクトセカイ」への楽曲提供から様々なアーティストへの楽曲提供、 サウンドプロデュースをおこなう他、3 人組の音楽ユニット Dios としても活動し話題を集める。
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ボカロPインタビュー連載 |
1周年ボカロPインタビュー |
タイトル概要
プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク
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■メーカー:セガ/ Colorful Palette
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