加賀(ネギシャワーP) さんの曲作りに迫る!
2020年9月のサービスイン以来、コロコロオンラインがひたすら追い掛け続けているセガ×Colorful PaletteのiOS/Android向けアプリ『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』。
2021年10月には1周年を祝した特集を展開し、
さらに2022年10月には『プロセカ』2周年を記念した大特集を実施するなど、担当からほとばしる圧倒的な“プロセカ愛”をカタチにし続けている。
そんなコロコロオンラインプロセカ班がとくに情熱を注いで追っているのが、このゲームの根幹でもある楽曲……そして、それを制作されている“ボカロP”と呼ばれる“才能たち”であります!!
“子どもが将来なりたい職業ランキング”において、ゲームクリエイターやユーチューバーらと並んでボカロPが上位にランクインし、コロコロの読者層との親和性もめちゃくちゃ高いということで、前述のプロセカ1周年特集の際にボカロ界のビッグネームにつぎつぎとインタビューを敢行!! その内容の濃さは業界内外に衝撃を与え、このたび……不定期連載で、さらに多くのボカロPの皆様にご登場いただき、ナマの声をお届けできることになったのです!!
『プロセカ』はゲーム内容はもちろん、楽曲のすばらしさが高く評価されて現在の人気を確立したと言っても過言ではない。それらを生み出したボカロPたちの考えかた、作品への向き合いかたを掘り下げたこのインタビュー連載を読まれることで、ゲームを遊ぶだけでは知りえない情熱や、楽曲に対する想いを知ることができるはずだ。その結果……さらに登場キャラやユニット、『プロセカ』そのもののことが好きになること請け合い!!
そしてインタビューの後半では、“いかにしてボカロPになったのか?”という、将来この道に進みたいと思っている読者の皆様の道しるべになるような質問もぶつけているので、とにかくあらゆる人たちに読んでいただきたいなと!!
さて今回ご登場いただくのは、セガ/Colorful Paletteが主催する楽曲コンテスト“一緒に作ろう! 第3回楽曲コンテストプロセカNEXT”の採用曲『泡沫未来』を手掛けられた“加賀(ネギシャワーP) ”さんだ!
コンテストのテーマは“フリー”という、自由であるがゆえに難題だったわけだけど、それを制したのが加賀(ネギシャワーP) さんの『泡沫未来』だった。リスナーに大絶賛されるメロディーと美しい歌詞は、どのように作られたのか? 大いに語ってもらったぞ!
※インタビューは、感染対策を徹底した上で行っています。
わずか半日で作られた名曲の秘密
--加賀(ネギシャワーP)さんは、コロコロ初登場! そこで恐縮なのですが、簡単に自己紹介をお願いできますでしょうか?
加賀(ネギシャワーP) わかりました! おもにポジティブなピアノPOPボカロ曲を作っております、ネギシャワーPと申します。ボカロPの活動は2016年から始めました。
--2016年というと、ボカロの歴史の中ではけっこう最近のイメージですね。
加賀(ネギシャワーP) はい、そうですね。当時はまだ学生だったので、自分としてはかなり長くやっているなぁ……と思っていたんですけど、よくよく考えると自分のまわりにも10年選手のボカロPがたくさんいるので、まだまだヒヨッコだな……と感じます。
--そんなネギシャワーPさんは、“一緒に作ろう!第3回楽曲コンテストプロセカNEXT”で受賞されたわけですけど、このコンテストに応募したきっかけを教えてください。
加賀(ネギシャワーP) ……じつは2020年の春ごろから、1週間に1曲のペースでボカロ曲を作って公開していたんです。
--え。……1週間に1曲!?
加賀(ネギシャワーP) そうなんです。そのさなかに楽曲コンテストが開催されるという告知を見て、「これに参加することを目標にしたら制作にメリハリが生まれるし、作業自体も楽しくなりそうだな」と感じて、応募することを決意しました。そして第1回、第2回のコンテストに参加し、その流れで第3回にも応募した感じです。
--なるほど! ご自身の作曲活動のモチベーションにしようとしたんですね。
加賀(ネギシャワーP) はい。1週間に1曲というハイペースだったため、どうしても同じような曲調になってしまったり、ダラダラと惰性で続けてしまう感じを覚え始めていました。そこで、「目標があったほうが成長できるかも」と思い、応募を始めたんです。
--それにしても、1週間に1曲って信じられないペースですね……! まるで修行僧のような……。
加賀(ネギシャワーP) 友だちにも同じことを言われました(笑)。「修行僧かよ!!」って。
--苦痛ではなかったんですか?
加賀(ネギシャワーP) それはなかったです。というのも、2020年って新型コロナが流行り始めたタイミングで、バイトのシフトにも入れないし、友だちと集まる機会もどんどん減っていってしまったんですね。ぶっちゃけヒマで、部屋に引きこもっていました。それでも、何かしら活動をしないと……と思ってハイペースで曲作りを始めたんですけど、このサイクルが見事に自分にハマり、習慣化してしまって、1週間に1曲というペースが生まれました。
--ネギシャワーPさんにとっては、新型コロナの流行があったからこそ、作曲家人生の第1歩を踏み出せた感じなんですね。
加賀(ネギシャワーP) はい、それは間違いないと思います。当時はすごく退屈で、世界がモノクロになってしまったように感じていたんですけど、「やっぱり、色を足したいな」と思って、ボカロPとしてがんばることを決意したんです。
--自分のような社会人でも鬱屈とした気分になっていたので、これが前途ある学生だったら……と考えるといたたまれない気持ちになりましたもん。
加賀(ネギシャワーP) 仕方のないことではあるので、逆に「何か意味があるのでは?」と考えるようにしていましたね。
--でもそれまでの曲作りは、どちらかというと趣味の範疇だったんですね。
加賀(ネギシャワーP) そうですね。時間があるときにちょこちょこと打ち込んで、気付いたら曲になっている……という程度のものでした。
--そして、『プロセカ』の楽曲コンテストには1回目、2回目ともに参加されていると。
加賀(ネギシャワーP) しました! 第1回目の受賞者がいるかアイスさんで、2回目の受賞者がシノさん。僕が応募した曲は採用されませんでした。それがもう……当時はものすごいショックで。
--あー……。でも、そりゃあガックリと来ますよね……。
加賀(ネギシャワーP) こういったコンテストに参加するのが初めてだったんですけど、曲を完成させたら公開してリスナーに聴いてもらう……というオペレーションとまったく違うじゃないですか。評価をされて、白黒つけられるという流れが……。言ってみれば“採用されるかされないか”の二択で、それがちょっと怖かったんですけど、「応募することで得られるものがあるはず」と心を奮い立たせて参加したわけです。「参加することに意義がある」と。
--はい、わかります。
加賀(ネギシャワーP) でも、実際に連続で落ちたことがとてつもないショックで、のたうち回っていました(苦笑)。
--「参加できればいい!」と思っていたのに(笑)。
加賀(ネギシャワーP) しかし、いるかアイスさんとシノさんが作られた楽曲を聴いてみると……これがもうリズムゲームの曲としてすごく完成されていて、心から納得できたんです。そこから、いるかアイスさんの『Brand New Day』、シノさんの『花を唄う』、そして市瀬るぽさんの受賞曲『alive』をめちゃくちゃ聴き込んだんです。
--うわー! そのお三方、全員このインタビュー特集に登場してもらっていますけど、このコメント見たら喜ぶぞー(笑)。
加賀(ネギシャワーP) あ、こういったこと、確かに直接言ったことはないかもしれないですね。
--お? お知り合いなんですか?
加賀(ネギシャワーP) いるかアイスさんと市瀬るぽさんは、即売会とかで何度かお会いしています。そこで話もするんですけど、面と向かってホメるのは恥ずかしいですね(笑)。
--……ちなみに、シノさんは?
加賀(ネギシャワーP) 直接お会いしたことはないですねー! シノさんて、すごくミステリアスなイメージがありますし。
--いや、シノさんと話した感じ、ミステリアスさは意識していないかと(笑)。きっと、皆さんにお会いできることを願っていると思います!
加賀(ネギシャワーP) あ! シノさんのインタビュー記事、読みました!(笑) 会えるものなら、僕もお会いしたいですよ!
--しかし改めて、このインタビュー特集はスゴいな……! 有名ボカロPはもちろんですけど、こうやってこれから羽ばたいていくコンテスト受賞者にも続々と出てもらっていて。
加賀(ネギシャワーP) ぶっちゃけ、第1回のいるかアイスさん、第2回のシノさんが出ていたので、「つぎは自分に来るかも……!」とドキドキしていました(笑)。
--まんまとお声掛けさせてもらいました(笑)。では話を戻しまして、受賞の一報を聞いたときはどう思われましたか?
加賀(ネギシャワーP) 通知が来たとき、めちゃくちゃ回転しながら「わあああああああッ!!!」って雄叫びを上げたのを覚えています(苦笑)。もう、それくらいうれしかったです。
--そりゃあうれしいよなぁ……!
加賀(ネギシャワーP) 物心つく前から音ゲーで遊んできたので、「自分の楽曲でリズムゲームができるのか……!!」と思うと、もう感激が止まらないというか……(笑)。
--そんな第3回の楽曲コンテストのテーマは“フリー”でした。これは自由に作れる半面、方向性を決めるのがたいへんなんじゃないかと思うのですが、いかがでしたか?
加賀(ネギシャワーP) 僕的には、敷居はかなり低く感じたんです。ですので、募集期間中に完成した曲は、すべて応募しました。
--さすが、多作家……! そんな中、受賞曲の『泡沫未来』の方向性はどのように?
加賀(ネギシャワーP) 『泡沫未来』は、とにかく肩の力を抜いて楽しく制作していこう……というポジティブな気持ちを入り口に作り始めたものです。その当時、僕が感じていた“ボカロ曲っぽさ”って、ジャズ風のピアノサウンドとか、リズミカルなドラムとか、ゲーム音楽っぽいピコピコ音とか、そのへんだったんですね。『泡沫未来』もそんな要素を盛り込みながら組み立てていきました。
--確かに『泡沫未来』って、8ビット感を感じますもんね。
加賀(ネギシャワーP) あ、まさに!! とくにBメロなんて、本当に8ビットな仕上がりですよね! いやあ、キチンと伝わっていて安心しました(笑)。
--その点も含めて、『泡沫未来』って最近の曲でありながら、「10年くらい前に聴いたような……」という不思議な感慨を覚えるんです。
加賀(ネギシャワーP) そう言われること、すごく多いです! 作った本人としては「そうかなぁ??」なんて思ったりもしたんですけど、“ボカロ曲っぽさ”を表現できている証拠でもあるので、いまはすごくうれしいです。
--……と言いつつ、じつは事前にネギシャワーPさんの歩みを調べていたんですけど、焼き肉のタン塩がすごく好きとか……!
加賀(ネギシャワーP) え! ご存知だったんですか!?
--はい。ネギシャワーPさんが書かれているブログを覗かせてもらったら、溢れんばかりの牛タン愛が……! なので『泡沫未来』もどこかを縦読みしたら、「ぎゅうたんすき」とか書いてあるのかなと……(笑)。
加賀(ネギシャワーP) うわーーー!!(笑) いや、そうなんです。牛タンが本当に大好きなんですけど、受賞後にハマっていったので縦読みはないです(笑)。
--その歌詞なんですけど、『泡沫未来』はすごく評価が高いですね。ご自身で、とくにお気に入りの箇所とかありますか?
加賀(ネギシャワーP) サビに「抱きしめてmidnight」という箇所があるんですけど、あれは日本語の「〇〇してみない?」と英単語の「Midnight」を掛けた言葉遊びなんです。昔から簡単な英単語を歌詞に含める言葉遊びはやっていたんですけど、市瀬るぽさんやいるかアイスさんの受賞曲を聴いてから、もっと語感を意識するような単語選びをしていこうと意識するようになりましたね。
--その箇所、確かにすごく気になったんです。ほかにも「螺旋jam」とか「廻れspeedy cat」とかとか、日本語と英単語の組み合わせを多用されていて、この言葉選びは何を元にやっているんだろう……と思いました。
加賀(ネギシャワーP) 昔から英語教室に通っていた影響か、自分にとって英単語ってすごく身近なものなんです。語感もいいし、独特なリズムになりやすいので、日本語以上にノリを作りやすい気がします。でも、すべてを英語にしちゃうと日本人リスナーに意図が伝わりにくくなってしまうので、どうしても日本語+英語と組み合わせて使うことが多くなるんです。
--なるほどなるほど。
加賀(ネギシャワーP) もうひとつ、こだわりとしては、サビで韻を踏んでいること。これは明らかに、シノさんの『花を唄う』を聴いた影響です(笑)。「自分もこういうことをやりたいなぁ……!」と思い、『泡沫未来』ではかなり意識して韻を踏んでみました。
--確かにシノさんの『花を唄う』は言葉選びがすごく美しくて印象的だったので、インタビューをした際に「昔から国語が得意だったんですか?」と質問したら、「まったくそんなことなかったです」と。その点、ネギシャワーPさんはいかがですか?
加賀(ネギシャワーP) 国語の点数はよかったような気がしますけど、作文はめちゃくちゃ苦手で……。なのでこのコンテストに応募するちょっと前から、ブログで文章を書くことと読書を始めて、活字に触れることを習慣化させていこうとしていました。
--キチンとステップを踏もうとしているのが、エライなぁ!
加賀(ネギシャワーP) 曲を作ること自体は、自分でも「得意だな」と思っていたんです。でも歌詞に関しては毎回毎回躓いていて……。ぶっちゃけ、あんま伝えたいこともないな、って……(苦笑)。
--身も蓋もない(笑)。
加賀(ネギシャワーP) そこで友だちに相談したところ、「まずは読書をしたほうがいい」とアドバイスをもらって。だったら、ただ読むだけじゃなく、それを元に文章としてアウトプットをしていく習慣を付ければ、自然と語彙力も上がっていくんじゃないかと思いました。実際にそのオペレーションは習慣化されて、いまでも続けています。
--すばらしいアドバイスをもらいましたねえ。自分も文章を書く人間ですけど、いまの土台になっているのって間違いなく、若いころにむさぼるように続けていた読書ですもん。
加賀(ネギシャワーP) !!! やっぱりそうなんですね!! これからも読書と書くことは積み上げていきたいと思います!
--とはいえ、“フリー”というお題の中で、曲の世界観をどう煮詰めていったのか、すごく気になります。
加賀(ネギシャワーP) サウンドを作っていくうちに、自然とお祭りっぽいというか、賑やかな感じの音になっていったんです。そこから“カジノ”が思い浮かんで、世界観を構築していきました。カジノってキラキラしているし、その反面として儚さもあると思ったので、それらを意識してメロディーの調整をしていきました。
--うんうん。すごくわかります。
加賀(ネギシャワーP) カジノと言いつつ、三味線の音なんかも入っているんですけどね(笑)。やっぱり、お祭りっぽい曲だなぁと自分でも思います。
--そんな『泡沫未来』の中で個人的に印象に残っているのが、「「ねえ、君は一体どこまで行くんだい?」笑い飛ばして 駆け抜けてく未来」という箇所。聴いていて、小説を読んだあとのような読後感を味わいました。
加賀(ネギシャワーP) ありがとうございます! 実際、物語調の歌詞に寄せていこう……と思って書いていたので、うれしいです。設定はカジノなので、主人公はギャンブラー。僕の想像だとギャンブラーってすごく楽観主義者で明るいイメージがあるので、歌詞にもその設定がにじみ出るといいなと思っていました。とはいえ、ギャンブルは勝つこともあれば大負けすることもあるので、儚さも内包させたかったんです。
--なるほど……! それで“泡沫”か……!
加賀(ネギシャワーP) そうですそうです!
--では聴きどころというと、やっぱりカジノっぽいところに?
加賀(ネギシャワーP) それと加えて、ミクさんの歌いかたにも注目してもらえるとうれしいです。
--あ! これ、ぜひお聞きしたかったんですけど、『泡沫未来』で歌っている初音ミク、どこか機械っぽさがありますよね。これは、あえてそういう調声をされているんですか?
加賀(ネギシャワーP) じつは初音ミクの声を初めて聴いたとき、“不思議な明るさがある”と思ったんです。この“不思議な感じ”はなんだろうなぁ……と考えていたんですけど、それこそが“ボカロっぽさ”なんだと結論付けました。ですので『泡沫未来』でもボカロっぽさはそのままに、ロングトーンのときなどはゆったりと歌うような感じで調声していきました。
--ネギシャワーPさん、調声には定評がありますよね。リスナーからも絶賛されていますし。
加賀(ネギシャワーP) コンテストで受賞する前から褒めてもらうことが多かったんですけど、だからこそもっと磨こうと思って勉強しています。『泡沫未来』は、その結果のひとつですね。
--1週間に1曲という、数をこなしてきた成果とも言えるんじゃないですか? その蓄積は、絶対にネギシャワーPさんの武器になると思いますもん。
加賀(ネギシャワーP) あ! それは間違いないですね! いまになって、「あの修業期間は無駄じゃなかった!」って、めちゃくちゃ感じています。
--『泡沫未来』は全体的に、音が弾けて消えていくような音色がすごく心地いいです。いかにも泡沫って感じがして。
加賀(ネギシャワーP) ポンポンしたリズムをシンセサイザーで作れたときに、僕も「泡っぽいな」って思いました。そこからカジノを連想して組み立てていったので、そう感じてもらえたならうれしいですねー!
--ちなみに、『泡沫未来』の制作期間ってどれくらいなんでしょう? スピード感のある人だということはよくわかりましたが(笑)。
加賀(ネギシャワーP) めちゃくちゃ短かったと思います。たぶん……半日くらいでほとんどできたんじゃないかなと。
記者・編集・セガ広報 えええええ!!? は、半日ぃぃいいい!!?
加賀(ネギシャワーP) は、はい……(笑)。1週間に1曲作っていたころは、だいたい20時間の作業で完成させていたので……。
--いやはや、凄まじい人がいたもんだ……。
加賀(ネギシャワーP) 自分の中でキチンと納期を決めて、そこに向かって作業をするので、すごく集中できるんだと思います。加えて、『泡沫未来』のときは「楽しく作ろう!」と決めていたので、最初から最後まで駆け抜けるように作業ができて、気付いたら完成していました。
--うーん。それにしたって、スゴいな……。
加賀(ネギシャワーP) いまはたくさん曲を作らなきゃいけない時期だよなと、自分で思っているんです。1曲完成させるごとに新しい知識とかノウハウを得られているので、数をこなすことは重要なんだと思いました。
--では、『泡沫未来』がゲームに実装されたのを見たときの感想を、改めて教えてください。
加賀(ネギシャワーP) 採用通知をもらったときから夢見心地で、それこそ泡沫のように消えてしまうんじゃないか……と怯えていたんですけど、『プロセカ』に実装されたのを見て初めて安心しました(笑)。
--自分の曲をゲームでプレイするのって、どんな感覚なんですか?
加賀(ネギシャワーP) それが、意外と他人事のような感覚で、他の曲と同じように遊べています。すでに、自分の手から離れていった感じと言いますか……。……と言いつつ、まだEXPERTまでしかフルコンが取れていないので、作曲者の責任としてMASTERまでがんばりたいです(笑)。
--ゲームに実装されたあとに、たくさんの反響があったんじゃないですか?
加賀(ネギシャワーP) はい! リスナーからたくさんのコメントをもらえたことに加えて、『泡沫未来』をきっかけに他のボカロPの方と知り合えたのがすごくうれしくて。
--これから活動を続けていけば、そういう機会はさらに増えるでしょうね。
加賀(ネギシャワーP) いまでも、自分の世界がグングンと広がっているのを感じます。“プロセカNEXT”に採用された人って、即売会とかに積極的に参加されているのをSNSで見て知っていたので、自分もぜひ加わりたいと思って、先日参加させてもらいました。
--青春だなぁ……。では、『泡沫未来』が大好きなファンに向けて、ひと言お願いできますでしょうか。
加賀(ネギシャワーP) これからもたくさん聴いてもらい、さらに『プロセカ』でも楽しんでもらえたらうれしいです!
--ではここから、ボカロPに興味津々なコロコロ読者が聞きたいことを質問させていただきます! まず……ネギシャワーPさんがボカロPになられたきっかけを教えてください!
加賀(ネギシャワーP) 小学生のころ、給食の時間にボカロ曲が流れることが多かったんです。
--給食の時間にボカロ曲!!? じ、時代だなぁ……。おじさんのときは、昭和歌謡だったのに……(シミジミ)。
加賀(ネギシャワーP) あはは。そこで初めてボカロの声を聴いたんです。初音ミクさんだったんですけど、さっき言ったように「すごく不思議で、明るい声だなぁ……」と衝撃を受けました。すると、当時のクラスメイトにボカロに詳しい子がいて、いろいろと教えてもらったんです。ボーカロイドの存在もそうですし、それに命を吹き込むボカロPのことも。その瞬間、「いつか作曲ができるようになったら、ボカロPになってボカロ曲を作ろう!」と決めました。そして、バイトができる年齢になってからお金を貯めて機材を揃えて、本当に自然な流れで初音ミクさんをお迎えしていまに至ります。
--小学生時代に抱いた想いを、ナチュラルに実現されたんですね。
加賀(ネギシャワーP) はい。もう、“作曲=ボカロ”という感じでしたし。
--……でもネギシャワーPさん、ブログのプロフィールに“村一番のピアニスト”って書いてあったから、元から音楽には造詣深いんですよね?
加賀(ネギシャワーP) そこもチェックされているんですか!!? いやもう、めっちゃ恥ずかしいんですけど!(笑)
--ふふふ。入れられる情報は、事前にすべて調べますから。……で、これはいったい?(笑)
加賀(ネギシャワーP) あの、その地域に住んでいた子の中で、自分がいちばんピアノが上手だったんです。
--ほうほう!
加賀(ネギシャワーP) 親がピアノをやっていた影響で音楽教室に通うようになって、そこの先生に「この子は他の子よりも指がよく動く!」とホメられたんです。そこからがんばって続けていくうちに自信もついて、「これだけピアノが弾けるんだから、作曲もできるはずだ!」と思い込んで、作曲を始めました(笑)。
--でも、それだけピアノが弾けるのなら、ピアニストを目指すという道もあったのでは?
加賀(ネギシャワーP) そうですね。でも、ピアノではクラシックを弾いていて、もちろんそれも好きなんですけど、聴くのはいつもポピュラー音楽でした。なので、こっちの道に。
--クラシックからポピュラーにって……冬弥みたいですね。
加賀(ネギシャワーP) あ、確かに!! 『プロセカ』でも、冬弥君の気持ち、めちゃくちゃ共感してますもん! ……キャラは僕とぜんぜん違いますが(笑)。
--では、ボカロPになるために必要なスキルがあれば、ぜひ教えてください!
加賀(ネギシャワーP) 知りたい情報をキチンと調べて、それを実行にまでつなげられる行動力が必要だと感じます。ボカロPは簡単に言うと、自分で作曲をしてボカロに歌ってもらう……という作業をくり返しているわけですけど、そもそも“どうやって作曲するのか?”、“どうやって歌わせるのか?”ってことから調べないと何もできないと思うんです。ここが、最大の難関なので。
--うんうん。
加賀(ネギシャワーP) 僕、1週間に1曲のペースで曲を作っていた……と言いましたけど、ボカロを手に入れて最初の曲を発表するまで、じつは3ヵ月掛っています。作曲ソフトも、ボカロエディターの使いかたもまったく知らなかったので、基本操作を調べるだけでめちゃくちゃ時間が掛かりました。
--まったく新しい世界に踏み出すわけですもんね。
加賀(ネギシャワーP) そうなんです。だからこそ、“調べる力”はすごく大事だなと思います。いまだとスマホがあればなんにでもアクセスできるので、“調べ癖”をつけるといいんじゃないかなと。
--ではもう少し踏み込んで、楽器を習う必要ってあると思いますか?
加賀(ネギシャワーP) 僕は幼いころからピアノをやっていたのでとくにそう思うのかもしれませんけど、やっぱり表現の幅を広げるなら何かしらの楽器には触れておいたほうがいいかな……と思います。ピアノの場合、ある程度弾けるようになれば五線譜とか鍵盤も読めるようになるので、その後の音楽理論などの学習効率がめちゃくちゃ上がるはずです。とはいえ、“ボカロPに楽器は必要か?”と問われれば、「それほど重要じゃない」と答えます。作曲ソフトが進化しているので、楽器なんて弾けなくても簡単に曲を作ることはできますから。ですので、まずはボカロに触ってみて、その後に音楽理論とか座学の知識が必要だと思ったときに、楽器も始めてみたらいいんじゃないかなと。
--必ずしも必要じゃないけど、触っても損じゃないよ、と。
加賀(ネギシャワーP) そうですね! 間違いなく、違う景色は見えると思います。選択肢が広がりますから。
--ちなみに、オススメの楽器はピアノになります?
加賀(ネギシャワーP) 僕はずっとピアノをやっていて、それがアドバンテージになっていると思いますけど、最近になってエレキギターを始めたんです。ギターはピアノと比べたら、敷居は低いと感じます。弦の押さえかたも直感的なので、わりと適当に弾いてもキレイな音が出ますから。ですので、ギターから入るのもいいんじゃないかと感じます。
--……僕、オカリナを吹くのが趣味なんですけど、ダメですかねえ……?
加賀(ネギシャワーP) !? オカリナでも、ぜんぜんいいと思いますよ!!(笑) な、なんか、めっちゃ個性的なサウンドになる気がしますし!!
--ありがとうございます。無理にフォローしてもらって(笑)。では、ボカロPになってよかったことがあれば、ぜひ教えてください!
加賀(ネギシャワーP) 『泡沫未来』が『プロセカ』に採用されたこと、ボカロPの輪が広がったこと、即売会とかのイベントに出られるようになったこと、そして今回のようなインタビューをしてもらえること……! ふつうに生活していただけでは絶対にできなかった経験をさせてもらっているので、それらすべてが宝物です!
--ありがとうございます……! では、将来ボカロPになりたいと思っている少年少女たちに、先達としてひと言お願いできますでしょうか。
加賀(ネギシャワーP) とにかく、楽しむことを忘れないでほしいです。「楽しもう!」という気持ちさえあれば、それまで怯んでしまっていたことにも積極的に挑戦できるようになれると思うんです。その挑戦を積み重ねた先に大きな目標とか夢を掲げることができたら、ボカロP活動ももっともっと加速しておもしろくなっていくと思います。がんばってください!!
--では最後に、『プロセカ』にもひと言を!
加賀(ネギシャワーP) 『プロセカ』、大好きです! 登場人物はみな向上心が高くて研鑽しあっているので、それを見るたびに勇気がもらえるんです。あと、『プロセカ』はグッズもかわいくて集めているので、そのラインナップの充実にも期待しております(笑)。
--本日は楽しいお話、本当にありがとうございました!
加賀(ネギシャワーP)
2016年10月からボカロPとしての活動を開始。
2021年4月に第3回プロセカNEXT楽曲コンテストにて『
泡沫未来』が採用され、「プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク」ゲーム内に実装される。
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ボカロPインタビュー連載 |
1周年ボカロPインタビュー |
タイトル概要
プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク
■対応OS:iOS/Android
■App Store URL:https://itunes.apple.com/app/id1489932710
■Google Play URL:https://play.google.com/store/apps/details?id=com.sega.pjsekai
■配信開始日:配信中(2020年9月30日(水)配信)
■価格:基本無料(アイテム課金あり)
■ジャンル:リズム&アドベンチャー
■メーカー:セガ/ Colorful Palette
■公式Twitter:https://twitter.com/pj_sekai