By ドブフクロウ
みなさんこんにちは。MtGライターのドブフクロウです。
先週末はアメリカ・バージニア州リッチモンドにて、ミシックチャンピオンシップⅥが開催されました。
かねてよりフード系デッキがメタゲーム上位を寡占状態だったことは知られていましたが、今回のミシックチャンピオンシップでは「参加者の63.1%が《王冠泥棒、オーコ》を用いたフード系デッキを使用している」という、驚異的な結果に終わりました。この支配率の高さは未来永劫語り継がれていくことになるでしょう。
ちなみに、メタゲーム支配率のなんとなくの目安として以下に表を用意してみました。「63.1%が具体的にどのくらいヤバいのか」がピンと来ない方向けの参考用にご覧ください。ただし、トーナメントの性質やフォーマット、環境などなど前提となる条件が異なれば受ける印象も変わってくるので、あくまでも参考までに(※リンク先は全て外部サイト)。
メタゲーム支配率 | 環境のイメージ | 具体例 |
---|---|---|
15~20% | 環境のトップメタと呼ばれるデッキで、トーナメントでも非常によく見かける。ただし有力な対抗馬が2~3デッキほどあることも多く、一強環境と呼ばれることはあまりない。 | プロツアー『カラデシュ』におけるティムール霊気池(17.6%) |
20~25% | 紛うことなきトップメタであり、はっきりと「環境の仮想敵」として扱われるようになる。対策・攻略しがいがあるため、プロプレイヤーの中にはこうしたデッキが存在する環境を好むプレイヤーも多い。 | プロツアー『霊気紛争』(スタンダード)におけるマルドゥ機体(22.4%) |
25~30% | トップメタデッキが頭一つ抜けており、環境に強い偏りが見られる状態。ほとんどのプレイヤーが「このデッキは何かがおかしいのでは……?」と気づきはじめる。 | プロツアー『ドミナリア』(スタンダード)における赤黒アグロ(26.5%) |
30%~35% | 対抗馬がほぼ機能していない、いわゆる一強状態。残りの7割の中にもこのデッキの派生型のようなリストが散見されるようになる。このデッキに使われているカードの中から禁止カードが出たとしても疑問を感じる人は少ない。 | グランプリ・リミニ20162日目におけるバント・カンパニー(31.8%/※1) |
35%~ | すでに何らかの異常事態が起きてしまった後であり、ここまで極端な状況に陥ったという事例自体が非常に少ない。「トップメタ」「それ以外」という環境なので、メタゲームという言葉があまり意味をなさない。 | 2011年5月13日時点のMagic Online(スタンダード)におけるCaw-Blade(約37%/※2) |
※1……《反射魔道士》禁止前
※2……《石鍛冶の神秘家》《精神を刻む者、ジェイス》禁止前
だいたいこのような感覚でしょうか。まぁ、環境支配率だけでデッキの強さを語ることはできないのですが……(使ってる人は少ないけどそのほとんどが上位入賞している、いわゆる「勝ち組デッキ」みたいなものもある)。
このシミックフードというデッキがいかに規格外の存在なのかお分かりいただいたところで、今回はミシックチャンピオンシップⅥでもシミックフードへの対抗馬として耳目を引いていたデッキ、スゥルタイ・サクリファイスを見ていきましょう!
ミシックチャンピオンシップⅥ
さて、今回のミシックチャンピオンシップはフード系デッキが過半数を占めた脅威の大会となりました。先週もお伝えした通り、このデッキには大きな弱点もなく、現在のスタンダード環境で最強のデッキであることは疑う余地はありません。
しかし、公式記事(※リンク先は外部サイト)によると、勝率ベースでこの大会を紐解いていったとき、「対フードデッキへの勝率6割弱」「それ以外のデッキへの勝率8割強」という圧倒的なパフォーマンスを発揮していたデッキがあったというのです。
そのデッキがスゥルタイ・サクリファイスです。今回はこのデッキリストを見ていきましょう!
スゥルタイ・サクリファイス(使用者:アシュトン・トーマス選手) | |
---|---|
枚数 | カード名(メインボード) |
4 | 《繁殖池》 |
2 | 《ロークスワイン城》 |
6 | 《森》 |
4 | 《草むした墓》 |
4 | 《沼》 |
4 | 《湿った墓》 |
4 | 《王冠泥棒、オーコ》 |
2 | 《ゴルガリの女王、ヴラスカ》 |
4 | 《大釜の使い魔》 |
3 | 《虐殺少女》 |
3 | 《残忍な騎士》 |
4 | 《金のガチョウ》 |
2 | 《意地悪な狼》 |
2 | 《害悪な掌握》 |
4 | 《むかしむかし》 |
4 | 《魔女のかまど》 |
4 | 《パンくずの道標》 |
枚数 | カード名(サイドボード) |
1 | 《ゴルガリの女王、ヴラスカ》 |
2 | 《霊気の疾風》 |
2 | 《強迫》 |
2 | 《恋煩いの野獣》 |
1 | 《否認》 |
4 | 《朽ちゆくレギサウルス》 |
1 | 《打ち壊すブロントドン》 |
2 | 《夏の帳》 |
このスゥルタイ・サクリファイスも《王冠泥棒、オーコ》と食物トークンメカニズムを利用するデッキであることには違いありませんが、強力カードを寄せ集めたグッドスタッフ的なデッキであるフード系デッキと一線を画する点として、より食物トークンメカニズムによるシナジーに寄せたデッキであるということが挙げられます。
鍵を握るのはこの《魔女のかまど》と《大釜の使い魔》です。この2枚が揃うと、毎ターンぐるぐると《大釜の使い魔》を墓地と戦場の間で行ったり来たり回転させることができるようになり、その過程で対戦相手のライフを少しずつ、しかし確実に減らしていくことができるようになります。
さらに、このエンジンに《パンくずの道標》が加わるとカードアドバンテージも稼げるようになります。
《パンくずの道標》は《オーコ》によって大鹿にされることもなく、《害悪な掌握》なども効かないため、フードデッキにはほぼ触られることのないアドバンテージ源と言えます。たとえ対戦相手の《オーコ》に自分の《魔女のかまど》が大鹿にされてしまったとしても、すぐに2枚目、3枚目の《魔女のかまど》を探しに行くことができるでしょう。
それ以外にも、押されている状況では《虐殺少女》を、除去が欲しい場面では《残忍な騎士》を探すことができるなど、食物トークンを戦場に出す過程で着実に欲しいカードを手札に加え続けることができるというのも強力です。ブン回りには押し切られてしまうものの、長期戦においては異次元の強さを発揮します。
今回のミシックチャンピオンシップⅥにてこのスゥルタイ・サクリファイスの凄まじい勝率が世界へと明かされたことで、今後はフードデッキへの有力な対抗馬として、一歩環境の研究が進むことになるかもしれません。もちろん、それ以外の何らかの出来事(たとえば禁止改定)によって環境が大きく変化することも考えられますが……取り急ぎ今週はこのスゥルタイ・サクリファイスに注目していきたいところですね。
ライター:ドブフクロウ
青春時代のほぼ全てをテキストサイトやゲーム系サイトを徘徊することに費やしていた根暗ライター。人間としての軽薄さに定評があり、親しい間柄では「空っぽ」というあだ名で呼ばれることもある。
MtGプレイヤーとしての腕前は自他ともに認めるヘッポコだが、青春時代に (いろいろなものを犠牲にして) 培ったMtG知識量は他の追随を許さない。
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