By ドブフクロウ
みなさんこんにちは。MtGライターのドブフクロウです。
先週末にはアメリカ・カリフォルニア州サンディエゴにてSDCCが開催されました。SDCCとはアメリカ最大級の漫画・ゲーム・映画といったポップカルチャーに関する大型コンベンションです。アメコミ好きな方であればご存知かもしれませんね。
このSDCCにはマジックの販売元であるWizards of the Coastも毎年出展しています。しかも、今年は重大発表を引っさげて……。
“Archery” is Throne of Eldraine! Once upon a time…
(The official hashtag is #MTGEldraine, by the way!) pic.twitter.com/u0XcCWkhdj
— Magic: The Gathering (@wizards_magic) 2019年7月21日
そう。Twitterでも話題になっていましたが、今年のSDCCでは『エルドレインの王権』が発表されました! 現時点ではキービジュアルやざっくりとしたセットの説明しか公開されていませんが、近年のマジックでは珍しく(?)王道ファンタジー路線のようですね。
Throne of Eldraine is Magic’s take on “Camelot meets Grimm’s fairy tales.” Knights and courts? Absolutely. Iconic fairy tales? You bet. #MTGEldraine pic.twitter.com/O7cwB6ztuO
— Magic: The Gathering (@wizards_magic) 2019年7月21日
『エルドレインの王権』では、イングランドの有名な物語であるアーサー王伝説にグリム童話のエッセンスが加わっているそうな。塔に住まう長髪の美女といえばグリム童話のラプンツェルですかね? また、円形に並ぶ騎士の姿はアーサー王に仕えた円卓の騎士を彷彿とさせます。これらの有名なモチーフがどのような形でマジックのカードに落とし込まれていくのか楽しみですね。
新セットの情報も気になるところですが、今回はSDCCと同じく先週末に開催されていたマジックフェスト・デンバー2019の結果から、『基本セット2020』が加わったスタンダードの結果を見ていきましょう。
マジックフェスト・デンバー2019
アメリカ・コロラド州デンバーで開催されたマジック・フェスト2019で優勝を収めたのは、世界最強のマジック集団の呼び声高い「Channel Fireball」の”総帥”、ルイス・スコット=ヴァーガス選手でした。
Luis-Scott Vargas has won the #MTGDenver main event with Bant Scapeshift!?defeating Gregg Keithley on Simic Nexus in the finals, 2-0.
The surprise deck of the weekend in the hands of a not-so-surprising ringer. Congratulations @lsv! pic.twitter.com/EVZeGbC3Al
— ChannelFireball (@ChannelFireball) 2019年7月21日
ルイス・スコット・ヴァーガス選手、通称「LSV」(本人の名前の頭文字を取った愛称)はマジックのプロの中でも最強と呼ばれるプレイヤーの1人で、構築・リミテッドのどちらもこなすオールラウンダーです。
そんなLSVが今回使用していたデッキは『基本セット2020』で新たに誕生した完全なる新作デッキ、「バントスケープシフト」でした。さっそくデッキリストを見ていきましょう!
バントスケープシフト(使用者:ルイス・スコット=ヴァーガス選手) | |
---|---|
枚数 | カード名(メインボード) |
1 | 《アゾリウスのギルド門》 |
1 | 《爆発域》 |
1 | 《花咲く砂地》 |
2 | 《繁殖池》 |
1 | 《廃墟の地》 |
4 | 《死者の原野》 |
2 | 《森》 |
2 | 《神聖なる泉》 |
1 | 《内陸の湾港》 |
2 | 《島》 |
1 | 《天才の記念像》 |
1 | 《平地》 |
1 | 《セレズニアのギルド門》 |
1 | 《シミックのギルド門》 |
1 | 《陽花弁の木立ち》 |
2 | 《寺院の庭》 |
2 | 《神秘の神殿》 |
1 | 《茨森の滝》 |
1 | 《平穏な入り江》 |
4 | 《樹上の草食獣》 |
4 | 《エルフの再生者》 |
4 | 《ハイドロイド混成体》 |
4 | 《時を解す者、テフェリー》 |
4 | 《迂回路》 |
2 | 《灰からの成長》 |
4 | 《成長のらせん》 |
2 | 《牢獄領域》 |
4 | 《風景の変容》 |
枚数 | カード名(サイドボード) |
2 | 《アジャニの歓迎》 |
1 | 《世界のるつぼ》 |
2 | 《拘留代理人》 |
3 | 《ドビンの拒否権》 |
2 | 《イクサランの束縛》 |
2 | 《切り裂き顎の猛竜》 |
3 | 《夏の帳》 |
バントスケープシフトは『基本セット2020』の新カード、《死者の原野》をキーカードに据えたコンボデッキです。
テキストが長いので要約すると、「土地(《死者の原野》自体も含む)が出るたびに2/2のゾンビを1体戦場に出す」と書いてあります。ただしその条件として、土地を7種類以上コントロールしてなければならないという条件があります。
この条件がなかなかの曲者で、通常3色のデッキで採用される土地の種類は8〜12種類程度。ドローには偏りも生じるので、普通にゲームを進行している限りはそうそう都合よく7種類以上の土地を並べることはできません。しかし、このデッキではそんな条件を満たすための秘策、デッキ名の由来でもある《風景の変容/Scapeshift》が搭載されています。
《風景の変容》は戦場に出ている任意の枚数の土地を生け贄に捧げ、デッキから同じ枚数の土地を戦場に出すというカードです。これによって《死者の原野》を含む7種類以上の土地を探すことで《死者の原野》の能力の条件を満たすことができます。
また、これによって起こるのはただ単に条件を満たすというだけではありません。ちょっと《風景の変容》絡みのルールがややこしいので結論だけ述べると、「《風景の変容》によって戦場に出た土地の枚数×戦場にある《死者の原野》の枚数」だけゾンビトークンが戦場に出てきます——10体や20体出てくることはザラです。仕組みについて詳しく知りたい方はこちらをどうぞ(※リンク先は外部サイト)。
要するに、このデッキはたった1枚の呪文——《風景の変容》を通すだけでお手軽に(ほぼ)ゲームを決めることができるというわけです。もちろん《風景の変容》を唱えるための下準備として、生け贄に捧げるための土地を並べる必要があるわけですが、そこはマナ加速を得意とする緑のお家芸。デッキには土地を並べるためのカードが大量に採用されています。
たとえば2ターン目に《成長のらせん》、3ターン目に《迂回路》を唱えれば、4ターン目には7枚の土地を並べることができます。この状態で《風景の変容》を唱えれば一挙に7体のゾンビトークンが戦場に出てくるので、簡単にゲームに勝つことができるでしょう。
また、このデッキでは実に20種類近くの土地を採用しているので、普通にゲームをプレイしていても7種類程度の土地は揃えやすいです。《風景の変容》はいわば必殺技ですが、普通にゲームをしていても《死者の原野》の条件を満たしてじわじわとゾンビを増やしながらゲームを優位に進めていくことができます。
コンボデッキでありながら《風景の変容》を引かずとも勝てるというこのデッキは、勝ち筋の強固さから今後も活躍が見込まれます。肝心の《風景の変容》があと数ヶ月でスタンダード落ちしてしまうのは惜しいところですが、逆に言えばあと数カ月間のスタンダード環境は「バントスケープシフト」の天下となるかもしれません。
ライター:ドブフクロウ
青春時代のほぼ全てをテキストサイトやゲーム系サイトを徘徊することに費やしていた根暗ライター。人間としての軽薄さに定評があり、親しい間柄では「空っぽ」というあだ名で呼ばれることもある。
MtGプレイヤーとしての腕前は自他ともに認めるヘッポコだが、青春時代に (いろいろなものを犠牲にして) 培ったMtG知識量は他の追随を許さない。
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※画像はマジック:ザ・ギャザリング 日本公式ウェブサイトより引用しました。引用元URL: