By まつがん
(※この記事は実在の人物・団体とは関係がありません)
ヨシキ「ママー、どうしてボクの《”必駆”蛮触礼亞》と《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》は3ターン目に一緒に手札に揃わないの?」
ママ「それはね、ヨシキが良い子にしていないからよ」
ヨシキ「(そんなの嘘だ……だってママは毎日あんなに楽しそうに3ターン目に《“必駆”蛮触礼亞》《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》してるじゃないか……きっと何か、ボクが知らないカラクリがあるに違いないんだ……)」
ママのその場しのぎの誤魔化しは、余計にヨシキの疑念を膨らませた。そしてヨシキは誓った。必ず、かの邪知暴虐のママを除かなければならぬと決意した。
ヨシキ「ボクは3ターン目に必ず《“必駆”蛮触礼亞》《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》を決められる男になる」
こうして、ヨシキの挑戦が始まった。
ヨシキ「3ターン目に《“必駆”蛮触礼亞》と《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》が手札に来るようにするにはどうすればいいだろう?」
ヨシキは考えた。そして、天才の発想に至ったのである。
ヨシキ「そうだ、S・トリガーで《“必駆”蛮触礼亞》と《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》を確実に手札に加えられるカードをたくさん入れればいいんだ」
ヨシキはデュエル・マスターズの神童であった。ゆえに、アホすぎて誰も思いつかないようなデッキを思いついたのだ。
ヨシキ「相手がシールドを割ってきたら確実に《“必駆”蛮触礼亞》と《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》が手札に入るよう、《クリスタル・メモリー》をデッキに8枚入れればいいんだ。そうしたら、次のターンには《“必駆”蛮触礼亞》+《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》のコンボが決まるぞ」
この発想が、ヨシキをさらなる危険地帯へと追いやることになる。
ヨシキ「ついでに8枚だけじゃちゃんとシールドに埋まるか不安だから、24枚入れよう」
そう、ヨシキはブレーキの壊れた暴走機関車であった。
かくしてヨシキの新デッキ、「絶対覇道宣言」が完成したのである。
『絶対覇道宣言』
《”必駆”蛮触礼亞》 | |
《勝利龍装 クラッシュ”覇道”》 | |
《”轟轟轟”ブランド》 | |
《ゼンメツー・スクラッパー》 | |
《水晶の記録 ゼノシャーク/クリスタル・メモリー》 | |
4 | 《クリスタル・メモリー》 |
4 | 《五郎丸コミュニケーション》 |
4 | 《ディメンジョン・ゲート》 |
4 | 《ヘブンズ・キューブ》 |
4 | 《ロジック・キューブ》 |
Q. 番組の途中ですがこれは何ですか?
A. クソです。
完成したデッキを手に、ヨシキはママへと挑んだ。勝てばスタートデッキ2種を買ってもらえるという約束だった。
だが、ママは青単ムートピアを握っていた。家計を握る主婦が容赦するはずもなかった。ヨシキがS・トリガーを発動する頃には、ヨシキのターンが返ってこないことはもはや確定していた。
手札に集まった大量の《“必駆”蛮触礼亞》と《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》を眺めながら、ヨシキは泣いた。
ママ「デュエマで勝つには、相手の動きに依存しすぎてはダメなのよ」
ママは真理を説いた。しかしヨシキは、こんなはずはないと喚いた。青単ムートピアのような卑怯なデッキを使うママが悪いのだと。
ママ「わかったわ。じゃあ今度は違うデッキで対戦しましょう」
ヨシキは望むところだと意気込んだ。これで今度こそ自分の正しさが証明できると、そう思った。
だが。
ママ「先攻ラプソディヘブフォオーリリア轟轟轟2点」
そして、ヨシキはデュエマをやめた。
だが翌日、ヨシキは再びデュエマのカードを握っていた。
ヨシキ「新しいカードを使えば、ママをぎゃふんと言わせられるはずだ」
ヨシキは学習しない男であった。しかしそれゆえに、無尽蔵にクソデッキを作り続けることができた。
ヨシキ「S・トリガーでコンボパーツを揃えるんじゃダメだ。能動的に揃えにいかなきゃ」
ヨシキの思考は確率を超越していた。若さから来る己の引きの瑞々しさを、どこまでも過信していた。それゆえに、《ア・ストラ・センサー》で《“必駆”蛮触礼亞》を、《ガガガン・ジョーカーズ》で《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》をそれぞれ手札に加えればいいと考えた。
ヨシキ「もっと《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》の意思を感じなきゃダメなんだ。そう、ボクは今日からヨシキ・ザ・ヘッドを名乗ろう。そしてボク自身が《“必駆”蛮触礼亞》で風になればいいんだ」
しかもスピリチュアルに傾倒していた。その日からヨシキはヨシキ・ザ・ヘッドを名乗るようになった。テストで名前を書く欄に書いたら0点になった。
そして、今度こそ新しいデッキが完成した。
『絶対覇道宣言2』
《”必駆”蛮触礼亞》 | |
《勝利龍装 クラッシュ”覇道”》 | |
《”轟轟轟”ブランド》 | |
《龍装車 マグマジゴク/地獄スクラッパー》 | |
《水晶の記録 ゼノシャーク/クリスタル・メモリー》 | |
4 | 《貪欲な若魔導士 ミノミー》 |
4 | 《ア・ストラ・センサー》 |
4 | 《ガガガン・ジョーカーズ》 |
4 | 《未来設計図》 |
4 | 《暴命天 バラギアラ/ガイアの目覚め》 |
Q. また番組の途中ですがこれは何ですか?
A. ゴミです。
ママ「3色のデッキはなかなか回らないわよ」
ママはそう言いながら《ニコル・ボーラス》をタッチしたチェンジザドンジャングルでヨシキをボコボコにした。《ジャミング・チャフ》を毎ターン打ち込まれて、ヨシキの心はついに折れた。
ヨシキ「セリヌンティウス……」
そんな人物はいなかった。度重なる敗北で、ヨシキの精神はもはや崩壊寸前だった。
ヨシキ「ヨシキ・ザ・ヘッドは死んだ」
わずか1週間の命であった。今度は「死んだ覇道」ことヨシキ・ザ・デッドを名乗るようになった。
そしてそれ以来、ヨシキが《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》を握ることはついぞなかったのだった。
……時が経ち、とある男がデュエル・マスターズを開発するウィザーズ社の門を叩いた。
《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》をリスペクトした、赤と黒を基調にした服装。そう、我々はこの男を知っている。
その男の名は、ヨシキ・ザ・デッドマン。
〜にほんデュエマむかしばなし「ヨシキ龍装クラッシュ覇道」・完〜
まつがん「……っていう小説を考えたんだけど、どう?」
???「『どう?』じゃねーよ!ありもしない歴史を捏造するのはやめろ!」
ヨシキ・ザ・デッドマン!!!(なぜTikTokのダンス……?)
デッドマン「ちげーよ!いや違くはないけど!……いい加減もう収拾が付かないから、オレが持ってきたカードでさっさと新しいデッキを作ってきてくれ!!」
はたしてデッドマンが持ってきてくれたカードとは!?
次回に続く!(ヨシキは続かない)
ライター:まつがん
フリーライター。クソデッキビルダー。
論理的な発想でカード同士にシナジーを見出すのだが、途中で飛躍して明後日の方向に行くことを得意とする。
オリジナルデッキでメタゲームに風穴を開けるべく日夜チャレンジを続けている(が、上記のような理由で大体失敗する)。