3. ずっとオレのターン
追加ターンの連鎖は全人類の夢だ。
人は誰しも、終わらない追加ターンの牢獄に対戦相手を閉じ込め、苦しむ様をニヤニヤしながら眺めていたいという欲求を持っている。
だが、パイオニアで追加ターンを得るカードは《水の帳の分離》や《カーンの経時隔離》など、重かったり唱える条件が必要だったりするカードばかり。これでは追加ターンの連鎖など望むべくもない。
しかし、そこで私は気が付いたのである。
追加ターンが得られないなら、対戦相手のターンを強制的に終わらせてしまえばいいという事実に。
そう、《不連続性》である。
といっても、「6マナなのは《水の帳の分離》と変わんねーから相手にターン渡してるだけ弱いじゃねーか!」と思われるかもしれない。
しかし《不連続性》には《水の帳の分離》と異なる、唯一無二の機能が備わっていた。
それは「自分のターンも強制的に終了させることができる」という点だ。
自分のターンを強制的に終了させると何が起こるのか?
決まっている。相手のターンが来るのだ。
そう、すなわち。
《栄光の幕切れ》と合わせて相手のターンを終了させまくったら実質ずっとオレのターンなのでは???🤔🤔🤔
というわけで、できあがったのがこちらの「ずっとオレのターン」だ!
『ずっとオレのターン』
枚数 | カード名(メインボード) |
---|---|
3 | 《平地》 |
4 | 《神聖なる泉》 |
4 | 《蒸気孔》 |
2 | 《聖なる鋳造所》 |
4 | 《ラウグリンのトライオーム》 |
3 | 《氷河の城砦》 |
2 | 《針縁の小道》 |
2 | 《ヴァントレス城》 |
4 | 《検閲》 |
4 | 《栄光の幕切れ》 |
4 | 《栄光の好機》 |
4 | 《一日のやり直し》 |
4 | 《不連続性》 |
4 | 《メレティス誕生》 |
3 | 《クルフィックスの指図》 |
4 | 《試練に臨むギデオン》 |
4 | 《覆いを割く者、ナーセット》 |
1 | 《ドミナリアの英雄、テフェリー》 |
手札補充には《一日のやり直し》を採用している。《覆いを割く者、ナーセット》とのコンボで知られるこのカードだが、6マナ揃えて《栄光の好機》を唱えてから打つことで十全な手札で追加ターンを迎えられるようになる。7枚も引けば《一日のやり直し》《不連続性》《試練に臨むギデオン》のどれかは引けるだろう。
そうなると当然「で、どうやって勝つの???」という疑問が出てくることだろうが、最終的には《ドミナリアの英雄、テフェリー》の奥義で相手のパーマネントを全部吹き飛ばしてから《試練に臨むギデオン》で殴ることになる。
そうなる前にどこかで《覆いを割く者、ナーセット》から《一日のやり直し》を唱えた時点で相手がさっさと投了する気がしないでもないが、対戦相手を時の牢獄に閉じ込めたいという方にはぜひ一度チャレンジしてみてもらいたい(※ただし結果は保証しない)。
4. トリプルアクセル
突然だが、《欠片の双子》コンボのことを知っているだろうか。
登場時にパーマネントをアンタップする能力を持つ《詐欺師の総督》《やっかい児》と、クリーチャーをコピーできる《欠片の双子》《鏡割りのキキジキ》とを組み合わせ、無限体のトークンで対戦相手を圧殺するという理不尽なコンボは、モダン最初期のプロツアーで優勝して以降、《欠片の双子》が禁止されるまでお手軽2枚コンボとして一世を風靡した。
事程左様に、「2枚コンボで即勝利」というのは多くのプレイヤーにとって抗いがたい魅力を持ったコンセプトなのである。
さて時は流れ、時代はパイオニア。どうにかしてこの「2枚コンボで即勝利」を、パイオニアフォーマットで再現できないだろうかと考えたのが事の発端。
しかし《真実を覆すもの》+《タッサの神託者》も《太陽冠のヘリオッド》+《歩行バリスタ》も禁止になるようなフォーマットで、「2枚コンボで即勝利」できるコンボがまさか見つかるはずも……。
あった。
《焦熱の解放》を貼って《切り離す一撃》を撃ったら7×3で21点ぶち込めるのでは???🤔🤔🤔
そう、小学生の計算ドリルである。
マジックの初期ライフは20点。つまり21>20である以上対戦相手は即死である。したがって、これこそ現代に蘇った《欠片の双子》コンボということだ。証明完了Q.E.D.(※ただし6マナと7マナ)
そもそも《苦悩火》なら1マナ重いけどカウンターされないのでは?という冷静なツッコミも想定されるところではあるが、どうせ《焦熱の解放》をカウンターされたら負けなので、ここは欲望に従ってシンプルにデッキを組むことにしたい。
というわけで、できあがったのがこちらの「トリプルアクセル」だ!
『トリプルアクセル』
枚数 | カード名(メインボード) |
---|---|
16 | 《山》 |
4 | 《大瀑布》 |
4 | 《ダークスティールの城塞》 |
4 | 《ずる賢いゴブリン》 |
4 | 《浄化の野火》 |
4 | 《アイレンクラッグの妙技》 |
4 | 《切り離す一撃》 |
4 | 《突沸の器》 |
4 | 《焦熱の解放》 |
4 | 《面晶体の記録庫》 |
4 | 《反逆の先導者、チャンドラ》 |
4 | 《精霊龍、ウギン》 |
6マナと7マナのコンボを実現する以上、ハチャメチャにマナを必要とするデッキなので、赤でマナ加速できる要素は限界まで投入している。実はマジックにおいて緑の次にマナ加速できる色は赤であるということを再認識させてくれるデッキだ。
さて、突然だがこの連載はここで最終回となる。
まずはおよそ一年にわたり、当連載を追っていただいた読者の皆様に、この場を借りて感謝の意を表明したい。
そして最後に、この一年間パイオニアというフォーマットを触り続けてきて改めて感じたことを述べておく。
パイオニアは原則としてアグロが普通に強く、手札破壊やカウンターは主流ではないため、クソデッキが作りやすい環境と言える。
もちろんその分速度も必要になるので、様々な手段で無理矢理加速できるモダンと比べてカードプールの狭さを実感することもあるが、トーナメントで成功するデッキを作ることだけがデッキ作りではないし、デッキを作っていく過程で他の様々な可能性に満ちたカードを発見することもあるかもしれない。そうした新たな出会いこそがデッキ作りの醍醐味であるとするならば、 パイオニアはまさしくそれを体感するのにうってつけのフォーマットなのだ。
この連載でパイオニアに興味を持った方々が、一人でも多くデッキ作りを楽しんでくれることを願ってやまない。
では、またどこかで会おう!
ライター:まつがん
フリーライター。クソデッキビルダー。 論理的な発想でカード同士にシナジーを見出すのだが、途中で飛躍して明後日の方向に行くことを得意とする。 オリジナルデッキでメタゲームに風穴を開けるべく日夜チャレンジを続けている(が、上記のような理由で大体失敗する)。