グレート・バケツマンの正体は”れく太くん”だった!?
『デュエル・マスターズ』作者・松本しげのぶ先生セレクション“切札勝舞編①「決勝T、開始!!」!!
グレート・バケツマンの正体は”れく太くん”だった!? 『デュエル・マスターズ』作者・松本しげのぶ先生セレクション“切札勝舞編①「決勝T、開始!!」!! |
松本:トーナメント表を考えて、一体最後誰が残って、誰が黒幕でとかいろいろ考えながら描いていきました。それまで人気キャラクターを詰め込んで、ほとんど新規枠がなくなっちゃったんですけど(笑)。
本当はこの時、グレート・バケツマンと不亞幽ってのは当時あまり深く考えずに描いていました。
だから、最初グレート・バケツマンって中身レク太くんとして考えてたんですよ!
だからね、れく太の靴履いてるんですよね。
松本:トーナメント表を描いていた時は、(グレート・バケツマンの正体は)れく太がジョージを背負っている姿で、だから、れく太の靴が見ている。そんな感じで描いていました。
予選以降、ジョージがずーと出ていないのも、その一つなんです。途中で話が展開していくうちに「グレード・バケツマンはジョージでもれく太でもない」となりました。
でも読んでもらうとわかるんですけど、れく太が全然出てこない。本当なられく太が色々と解説してるはずなのに出てないんですよ。れく太が出てきたころに、「グレート・バケツマンは独立したキャラクターにしよう」って決まってきたときなんですよ。
——インタビューの時にお伺いした、年間予定でスケジュールを組んでいたらこういうアイデアは出せなかった?
松本:そうそう。
——これは、デュエマファンでも「あれ? れく太が出ていない?」と気づいていない人もいるのでは?
松本:いるかも知れませんね。連載当時も何も言われなかった。
——神殿編ではずっと勝舞くんと一緒で、支えになってきたのに。
松本:出てきたのが、「また会う日まで……!!」ですね。でも、このお話ではジョージ、出てないんですよ。
でも、この時もれく太は出てるけど、そのアイデアは生きてたと思う。出ることは出るけど、この時バケツマンはいない。
——いわゆるミスリードとして、れく太が登場していた?
松本:そうそう、同じ場所には絶対いないはずです。
こうして読み返すまで、僕も忘れてました(笑) ぜひ、チェックしてみてください。
カブト丸は当時流行った“あるゲーム”がモチーフ!?
『デュエル・マスターズ』作者・松本しげのぶ先生セレクション“切札勝舞編②「みんなの想い」!!
カブト丸は当時流行った“あるゲーム”がモチーフ!? 『デュエル・マスターズ』作者・松本しげのぶ先生セレクション“切札勝舞編②「みんなの想い」!! |
松本:この話に登場するカブト丸は、トーナメント参加者で唯一普通の子なんです。”トーナメントに普通の子を入れよう”と当時の編集さんと話になり、最終的に子どもの好きな”昆虫”をモチーフにしたキャラクターになりました。
ちょうどこの時『甲虫王者ムシキング』が流行ってたんですよね。それで、彼が使うデッキは自然文明で、カブトやカマキリなど、子どもたちの身近にある昆虫のクリーチャーを使うことにしたんです。
また、勝舞くんはアリーナ編まで白凰様や黒城などカリスマ的な相手とデュエルしてきたんですけど、カブト丸とは「ほんとに普通の子と戦って友情を育む」というお話をすごいやりたくて、「勝っても負けても友達だよ」というメッセージを込めて、子ども目線で描きたいと思って描きました。
珍しくデュエル少なめ!?
『デュエル・マスターズ』作者・松本しげのぶ先生セレクション“切札勝舞&黒城凶死郎編「また会う日まで…!!」!!
珍しくデュエル少なめ!? 『デュエル・マスターズ』作者・松本しげのぶ先生セレクション“切札勝舞&黒城凶死郎編「また会う日まで…!!」!! |
松本:「また会う日まで……!」は、ページ数はあるけど珍しくほぼデュエルしてないんですよね。デュエルのシーンだけではなく、その間の人間関係などを丁寧に描きたいと思ったんです。
だからネームに時間がかかりました。そんな、キャラクターたちの溢れる想いを描きたかったお話です。
——「このキャラクターはどういう思いで大会に臨んでいるのか」というのをまずきっちり描きたかったってことですね。
松本:そうそう。それじゃないとトーナメント面白くないだろうなと思って。
——漠然と誰が勝っても負けてもそれ以上のドラマはない感じでしょうか?
カブト丸は勝舞くんには負けちゃうけど、「負けたらデュエルやめる思い」で大会にのぞんでたところもあったので、最後に勝舞くんの「今度はもっともっと強くなってお前と決闘するんだ!!」という言葉が、なんかグッときました。カブト丸もやっぱり同い年の友達とデュエルをしたいって思いがずっとあったからその一言がすごく……。
松本:きた?
——きましたね!
松本:僕は、和歌山の出身で田舎者だったので、田舎者のコンプレックスのような思いをカブト丸の気持ちに込めてるんです。そして、やっぱり知らない土地で友達ができる感動を感じて欲しいと思いましたね。
それから、ミミちゃん! 白凰様と勝舞くんから全く相手にされてない。また、真のデュエリストではないから対戦相手の黒城にも相手にされない。
この時のミミちゃんの感覚、感情はどんなものなのか、嫁さんに相談したんですよね。
嫁さんに「この時女の子ってどういう感情なん?」って飯食いながら相談して、「女の子はきっと好きな子とか戦いになったらやっぱ同じ視点で戦いたい」となったんです。
そうすれば、「女性ならではの心理ってのが出るんじゃない」って嫁さんに言われてすごいうれしくって、それかってなりましたね!
なので、ここでは女性のデュエリストとして改めて認識して、強調するエピソードを考えましたね。それで、こういう面白いエピソードになった。その嫁さんからのアドバイスを聞いたときに、勝手にミミちゃんがなんか生き生きし始めたんですよね。
——それまでは勝舞くんや白凰様と一緒に修行してたけど、なんか置いていかれてる感じでしたね。
松本:そうそうそう。それだけは僕の中にもあったんです。
ミミちゃんが大会になって出た時に「どういうポジションなのかな?」って思ったら、やっぱりミミちゃんも結局“普通の子”なんですよね。
のちのエピソードで「普通の子」から「真のデュエリスト」へといわゆる特別な子になるんですけど、それまでは普通の女の子。「普通の子から、一個上に行くっていうのを細かく描ける」とわかったときに、これは黒城とのデュエルで見せれるって思いました。
——コロコロの作品で女の子キャラクターの掘り下げはあまりされませんから。
松本:ただのお色気要因てのはやっぱり嫌だったんで、本当に戦う女の子ってのを頑張って描きましたね。
黒城vsミミちゃん戦は面白くなるか不安だった!?
『デュエル・マスターズ』作者・松本しげのぶ先生セレクション“黒城凶死郎編①「黄昏ミミ、大変身!!」!!
黒城vsミミちゃん戦は面白くなるか不安だった!? 『デュエル・マスターズ』作者・松本しげのぶ先生セレクション“黒城凶死郎編①「黄昏ミミ、大変身!!」!! |
松本:はっきり言って、この話を描くときは黒城とミミちゃんを戦わしても絶対面白くないと思って描いていました。両方とも勝舞くんや白凰様、牛次郎ほどキャラが立っていなかったから。
黒城って、この時はホント変わり者なんですよ。人を恐怖に陥れるようなデュエルしかできない。この時は、担当からも色々と言われていました。
松本:黒城は「自分が死神になりたい」とか、「相手の苦しむ顔を見るのが何より楽しい」というキャラクターなんですけど、なんでそうなったかっていうのは、本当は僕早く描きたかった。
描かないとただの変わった人だから。でも、担当はそれをずーっと描かせてくれなかった。
それはなぜかっていうと「黒城のミステリアスさがなくなる」って言われてて、だから「なんでこんなに怒っているのか?」を描けないから、僕も「なぜか?」というのを考えずに黒城を描いていたんです。考えることが許されなかった。
だけど、それがあったから、僕の中でも「なんでこの子はこんな怒ってんのかな?」ってどんどんと疑問がわいてきて、そういう僕自身もよくわからない子、つまりミステリアスに感じたので、「なんかミステリアスに描ける」感じでした。いろんな不思議な作用で当時は黒城が描けていました。
——このデュエルのとき、ミミちゃんは前向きにデュエルに挑んでいて、対して黒城はどんどん怒っていく。「黒城は強いから、その弱いやつと戦いたくないのかな?」っていうのはありましたね。
松本:そう思いますよね。
でも、それは「何かきっと深い意味があるんだろうな」って思わせながら描いていました。
これは前のインタビューにもあった通り、1ターン1ターンお互いのデュエリストの感情が高ぶっていくってのをほんとに意識して描いて、この時の黒城が怒っていく様子をすごい頑張ってやってましたね。
そして、このデュエルで闇文明でやっと「悪魔神バロム」が登場、闇文明のカリスマ的なクリーチャーが出てくる。そのカードを見た時、僕はすっごいわくわくして、やっぱり「悪魔神バロム」ってカードがさらに黒城のキャラを引き上げていった感じがしましたね。
——黒城の切り札って言ったら真っ先に「悪魔神バロム」が思い浮かぶ感じですね。
松本:やっとこの話で登場するんですよ。それまではマジック:ザ・ギャザリングもありましたけど、ここでキャラクターが確立しましたよね。