ムラ神さま5つの約束「ピンチに強い男になれ!」
——「コロツアー」などのイベントでの、豪華景品が当たるムラ神さまのクイズ大会が印象深い読者もいると思います。クイズ大会の最初にする“ムラ神さまとの5つの約束”がありましたね。
今やろうか。……ひとーつ! 「たくさんご飯を食べること」。お菓子ばっか食べてちゃダメだぞ。ふたーつ! 「たくさん寝ること」。寝る子は育つ。でも、早寝早起きだぞ。みっつ! 「遊ぶ時は徹底的に遊ぶこと」。だらだら遊んじゃダメだ。よっつめ! 「“ちょっとは”勉強すること」。ねぇ、おかあさん!(おかあさんたち、けっこう「ウン、ウン」と、うなずいてくれてうれしかったなぁ)
そして最後、大変だぞ。「ピンチに強い男になること」。キミたちの人生はこれからが長い! すげーピンチがしょっちゅうくるぞ。遊んでいてもいいから、ピンチの時に頼れるようなかっこいい男になってほしい!! それが世の中で一番かっこいい男だ!!
……それで、「なんとなくわかった人!」って言うと、子どもたちがみんな「はいはいはーい!!!!」って手を挙げるから、「じゃあ、クイズ大会やろうか」ってね。コロコロの読者って小学生でしょう。子どもって、基本は「食って、寝て、遊ぶ」でいいと思うんですよ。お母さんたちに怒られちゃうから、「ちょっとは勉強しろよ」とも言うんだけど(笑)。編集長になって、しばらくしてから言うようになったのかな。
——どういった思いでの発言なのでしょう。
実はね、子どもたちに言っているようで、イベント会場にいる玩具メーカーやゲームメーカーの人、関係者、そして編集部員に伝えたかったんだよね。編集長はそんなことを考えているのか、と。
ピンチに強い男って、本当にかっこいいと思う。たとえば、東日本大震災の時、自衛隊の人たちって、すごくかっこよかったじゃない。コロコロ読んでくれた子にはさ、周りが困っている時に「おれがやる」って言える大人になれよっていう。そんな思いから生まれた言葉です。
おれね、イベントって大好きで。よく若い編集部員にも景品を持たせて「この景品がなくなるまでクイズ大会やってこい!」なんて言ってたけど。イベントって、読者としっかり触れ合える唯一と言ってもいい場所なんだよね。ちょっとした会話からでも、今までぼんやりとしか見えていなかった読者の輪郭というものが、はっきりと見えてくる。その上で本をつくらないと、本当によろこばれる本ってできないんじゃないかとも思う。
別にね、イベント会場でどんなゲームをやっているか、どんな玩具で遊んでいるかは見なくていい。むしろ、何味のジュースを飲んでいるんだろうとか、半ズボンの子って少なくなったなとか、フードコートでは意外にうどんが人気だなとか。子どもたちの本当の日常をしっかり見てこい、と部員には言っていた。それが雑誌にいい形で反映されるからね。コロコロコミックは、そうやってつくるものだと思う。
——編集長時代、村上さんにの目にコロコロ読者はどのように映っていましたか?
コロコロの読者は、気持ちのいいバカ(笑)。子ども時代ってさ、大体みんなバカみたいなことで笑ったりするじゃない。今では偉そうにしている一部の大人だって、昔はみんな子どもで、ギャハハって笑っていたはずなんだよね。
……これもお酒を飲んでいた時の話になるんだけど、バーにいる時、近くの3人組の男性たちの話が聞こえてきたんだ。一人は医者、一人は弁護士、どちらもなりたてのようだった。もう一人はどうやら休職中のようで、2人が将来の話を希望いっぱいに語り始めた時にしょげててさ。でも、何かのきっかけで、コロコロコミックの話になったんだよ。ミニ四駆世代のようで、医者が「夏の大会の第1コーナーでコースアウトした」と話したら、休職中らしき彼が「おれはこうして曲がったよ。あそこは何々しないと曲がりきれないんだ」って。
すると、2人が「おまえ、すげーな!!」「マジかよ!!」って言って、また3人で仲良く楽しそうに話し始めてさ。その様子を見て、「これこそがコロコロコミックの読者だよ」と思った。
——コロコロ読者の間に社会的地位は関係ないんですね。色眼鏡を取った状態で、目の前にいる人を見られるというか。コロコロOBならではのリスペクトでしょうね。
かつての読者である彼らの話を聞いていて、自分のなかにポッと夢が生まれたんだ。デカすぎる夢かもしれないけど、将来、コロコロコミックの読者から総理大臣が生まれないかなって。そうしたら、日本ってもっとおもしろくなるんじゃないかな。そんな風に思います。
商品概要
『月刊コロコロコミック12月号』
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