おもちゃにはない“痛み”がホビー
——編集長時代で印象的なホビーやゲームはありますか?
裏話的なことで言うなら、『パズドラZ』。これもおもしろい出会いがあるんだ。おれがある日、銀座で飲んでいると、店員からショットグラスに注がれたウイスキーを「あちらのお客様からです」と渡されたんだよ。おれは酒飲みだから「すみませ〜ん」なんて言ってニコニコ飲んじゃうんだけど(笑)、すると、再びグラスにウイスキーが注がれてる。
これは一度お礼を言わねばと思ってご挨拶させてもらったら、なんとガンホー(=ガンホー・オンライン・エンターテイメント/パズル&ドラゴンズのメーカーだ!)の森下社長だった。初対面で、森下さんもおれがコロコロの編集長とは知らない状態ね。
それで、次の日、会社に行ったら「村上さん、ガンホーさんからパズドラの話が来てるんですけど」って言うんだ。「えー、おれ、昨日社長と名刺交換したよ」って。
——まるで引き寄せ合うかのような出会いですね。
それが3DSのソフト『パズドラZ』の話だったんだ。プレゼンにいらっしゃったのが、パズドラプロデューサーの山本大介さん。そして、同行したクリエイター陣が、なんと『パズドラZ』のプロデューサーを務めた高原さんら元ハドソンの人たちだったんだよね。「えーーー、パズドラってあなたたちがつくってたの!?」って。
ベイブレードの話にもあったように、コロコロはハドソンさんとは長いお付き合いだからさ、彼らがつくってるとわかった時点で、「あ、仲良くやれるな」と思ったの。普通、何年も一緒にやって、気心が知れてくるものなんだけど、いろいろなことを端折れたんだ。スマホゲームの『パズドラ』ではなく、3DSソフトでの話だったのも幸いだった。
——それはどうしてですか?
おれが編集長時代にやらないと決めていたのが、スマホゲームの紹介だったから。スマホって、ゲームに限らず1回持つと手放せなくなるでしょう。だから、子どもに持たせるのはまだ早いんじゃないかと思った。つまり、なるべく遅いほうがいいんじゃないかと。一方で、「これから国際社会で戦う子どもたちにとっては必要なのかもしれない」「もしかしたらおれの考えは遅れているのかな」とも感じていたけど。
——それは、村上さんの「コロコロ観」につながりそうな話ですね。『てれびくん』編集部から異動して来た時、コロコロコミックという雑誌はどのような印象でしたか?
おれがコロコロに来た時って、『爆走兄弟レッツ&ゴー!!』(こしたてつひろ先生)がすごい人気だったのね。それで、担当の佐上さん(=佐上靖之/7代目編集長)の下について、ミニ四駆のイベントを見に行った時、すげーなって思った。ミニ四駆が早すぎて見えないんだよ。吹っ飛んでくしさ。子どもの遊びにとどまるものじゃないなと思った。ホビーと玩具の違いって、こういうことなのかと衝撃的でさえあった。
ベイブレードの話に戻ると、ミニ四駆に通ずるものを感じたんだよね。最後さ、まだ回っているベイを取る時って、手が痛くなるじゃん? 「痛みって、おもちゃにはないよな」「本物感があるものがホビーだよな」って思った。舐めちゃいけない雑誌だなと思ったのを覚えてる。
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