あのホビー誕生のきっかけは“回転”だった
——ものすごいプレッシャーだったでしょうね。だからこそ、次の代のためにいろいろな仕込みをしていたと。次に、村上さんが編集部員時代の印象深いブームについても話を伺えればと思います。
じゃあ、まずはハドソンさん(※ゲームメーカー。現在はコナミに統合)との、あるエピソードを話そう! 98年頃かな。ハドソンの井上さんという開発部長の方と仲が良くて、おれにゲームを見せに来てくれていたんだよ。それで、何度目かのある日「村上さん、スゲーもんができちゃったんですよ……!」って意気揚々と来たのね。
中身を見せてもらうと、主人公がヨーヨーを使って敵を倒していくという、ゲームボーイのアクションRPGゲームだった。ヨーヨーがシュパーン、シュパーンと動くんだ。でも、その当時、ヨーヨーと言えば、バンダイさんの「ハイパーヨーヨー」が大ブレイク中でさ。何か別のテーマにしたほうがいいですよと話したら、ものすごく意気消沈しちゃって(笑)。
「この人を、このまま札幌に返すわけにはいかない」と思って、ヨーヨーの動きを生かせるものがないか、その場で5分くらいで考えたの。それで、ヨーヨーが回転している様がコマのように見えたから「これ、コマにしましょうよ!」って。
——それって……。
でも、そのまま“ベーゴマ“という呼び方だとダサいから、“ベーゴマ”の“ベー”だけいただいて、“ブレード(刃)”をくっつけた。それで「“ベイブレード”がいいんじゃない!?」って。よく見ると、ベイブレードって闘うコマだし、刃っぽいでしょ!
——まさか、ベイブレードの話につながるとは!!!!
その後、タカラ(※現在はタカラトミー)さんとホビーのほうの開発も始まって、漫画も立ち上げることになったんだ。
ゲームのほうはさ、「だいぶ出来上がったので、一度テストプレイをお願いします」と言うので、札幌の開発チームのところへ行って遊んでみると、主人公の名前が“たかお”になってるんだよね。それは、おれの名前が“孝雄(たかお)”だから、ああ、没入感を高めるためにやってくれたんだなと思って。
でもさ、一応、聞いてみたの。「これ、主人公の名前にしたわけじゃないですよね」って。
向こうも「それはそうですよ、村上さんが来たからです! “一応”接待ですよ(笑)」と言うから、ですよねーと思っていたんだけど、半年くらい経って連絡があった時に「すみません……。“たかお”のまま進んじゃいました……」って(笑)。“たかお”っていう名前があらゆるシーンに出てくるから、直すのが大変みたいで。しかもさ、漫画『爆転シュート ベイブレード』の先生の名前も“青木たかお”なんだよ。先輩たちに「どんだけ“たかお”って名前が好きなんだ」ってからかわれたな(笑)。
——そんな裏話があったんですね(笑)。メーカーさんと一丸となってつくっていたからこそ、起きた出来事ですね。
そうそう。やっぱりね、コロコロはただ情報を載せるだけではなくて、メーカーさんと一緒になって、子どもが夢中になれるものをつくっていかないと。そうじゃないと、コロコロじゃないと思う。
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