【プロセカ】ボカロPに直撃! “傘村トータ”さんが語る“Leo/need”(レオニ)と、オリジナル楽曲『オーダーメイド』について!【ボカロPインタビュー企画 #36】

傘村トータさんの曲作りに迫る!

 2020年9月のサービスイン以来、コロコロオンラインがひたすら追い掛け続けているセガ×Colorful PaletteのiOS/Android向けアプリ『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』。

 リリース当初からこのコンテンツを追いかけてきたコロコロオンラインプロセカ班は、2023年10月に『プロセカ』3周年を記念した大特集を実施するなど、担当からほとばしる圧倒的な“プロセカ愛”をカタチにし続けてきた。 

『プロセカ』3周年記念特集は下記の画像をクリック!!
 

 そんなコロコロオンラインプロセカ班がとくに情熱を注いで追っているのが、このゲームの根幹でもある楽曲……そして、それを制作されている“ボカロP”と呼ばれる“才能たち”であります!!

 “子どもが将来なりたい職業ランキング”において、ゲームクリエイターやユーチューバーらと並んでボカロPが上位にランクインし、コロコロの読者層との親和性もめちゃくちゃ高いということで、前述のプロセカ1周年特集の際にボカロ界のビッグネームにつぎつぎとインタビューを敢行!! その内容の濃さは業界内外に衝撃を与え、このたび……不定期連で、さらに多くのボカロPの皆様にご登場いただき、ナマの声をお届けできることになったのです!!

 『プロセカ』はゲーム内容はもちろん、楽曲のすばらしさが高く評価されて現在の人気を確立したと言っても過言ではない。それらを生み出したボカロPたちの考えかた、作品への向き合いかたを掘り下げたこのインタビュー連載を読まれることで、ゲームを遊ぶだけでは知りえない情熱や、楽曲に対する想いを知ることができるはずだ。その結果……さらに登場キャラやユニット、『プロセカ』そのもののことが好きになること請け合い!!

 そしてインタビューの後半では、“いかにしてボカロPになったのか?”という、将来この道に進みたいと思っている読者の皆様の道しるべになるような質問もぶつけているので、とにかくあらゆる人たちに読んでいただきたいなと!!

 さて今回ご登場いただくのは、“Leo/need”(レオニ)にオリジナル楽曲『オーダーメイド』を提供された“傘村トータ”さんだ。

 『オーダーメイド』が書き下ろされたイベントストーリー“Live with memories”は、離れ離れになってしまう兄妹のためにオリジナル楽曲を作る……という、レオニにとっては転機となる大事な物語が展開される。そのイベント用に書き下ろされた『オーダーメイド』は、バンドサウンドがメインのレオニには珍しい、しっとりとしたバラード……! 心を打つ歌詞が絶賛される『オーダーメイド』を、傘村トータさんはどのように作り上げたのか? 存分に語ってもらったぞ。

※インタビューは感染対策を徹底して行っております。

心に響く、歌詞の誕生秘話

――まずはたいへん恐縮なのですが、簡単に自己紹介をお願いいたします!

傘村トータ はい。作詞家、作曲家をしてます、傘村トータです。どうぞよろしくお願いいたします。

※MV画面はバーチャル・シンガーver.のものです。

――そんな傘村さんは『プロセカ』に、オリジナル楽曲の『オーダーメイド』を提供されています。率直に、この依頼が来たときはどのように思われましたか?

傘村トータ まず、とてもビックリしました。巨大なコンテンツだと当時から思っていましたので、まさか自分にお声掛けいただけるとは……! という感じで。僕はもともと『プロセカ』に明るいほうではなかったんですが、SNSで情報を追ったりはしていたんです。「傘村トータの楽曲が実装されないかな」と言ってくれている方がいらっしゃるのを見たことがあったので、「これに応えられる!」と思ったんです。待ってくれていた皆さんに喜んでもらえる楽曲を作る機会をいただけた……ということが、本当にうれしかったです。

――以前からそういう声は多かったですよね。「つぎは傘村さんか!?」みたいな。

傘村トータ ありがたかったですね。

――そんな傘村さんが楽曲を提供されたユニットはレオニなわけですけど、彼女たちを初めて見たときはどのように思われましたか?

傘村トータ レオニの子たちを見て、制作者の皆さんの解像度が高いな……って感じたんです。

――ほほう?

傘村トータ 立ち絵の決めカットでよく、彼女たちってこういうポーズ(下に伸ばした片腕の肘あたりを、もう片方の手で抱きかかえる感じ)を取っているじゃないですか。これって決して“映える”ポーズではないと思うんですけど、けっこう多用されていると思うんです。

――言われてみると確かに! 

傘村トータ とくに、少し暗い表情をしているときに使われることが多いと思うんですけど、じつはあれくらいの年齢の女の子って、リアルでもやっているんですよね。あのポーズを。

――あーーー!

傘村トータ そういう意味ですごくリアルで、解像度高く作られている子たちだな……と思いました。それでいて親しみやすさも溢れているので、実際に現実世界に彼女たちは存在していて、どこかで会える可能性があるのかも……って。

▲傘村さんが注目した、「さりげなくみんなやっているポーズ」がこちら。確かに一歌ちゃん、やっていました!

――そういう見方をしたことがなかったので、目から鱗が落ちた気がします。そんなレオニの子たちの中でも、『オーダーメイド』が書き下ろされたイベントストーリーのキーキャラクターは一歌ちゃんです。彼女については、どんな印象を?

傘村トータ 「主人公だな」って思いました。考えるよりも先に身体が動く感じが、とくに。レオニの子たちって設定もすごくリアルに作られているので、皆どこか現実的で、何かが起こったときにグッと止まってしまう傾向があると思うんです。でも一歌ちゃんが走り出すことによって風穴を開けて、そこに向かってみんなで突き進むことができている……という印象を受けます。ある意味、“僕たちがなりたかったかもしれない姿のひとつ”が一歌ちゃんなのかなって思いました。

――推進力がある子……なんですかね。

傘村トータ そうですね。今回のインタビューのお話を聞いてからストーリーを読み直してみたんですけど、『オーダーメイド』を書き下ろしたイベントストーリー“Live with memories”の中に象徴的なシーンがありますよね。花乃ちゃんが街で絡まれているときに、一歌ちゃんが後先考えずに駆け付けて助けてあげるところ。あれを見て改めて「主人公だな」って思いました。僕がもしもそういう場面に出くわしたら、やっぱり止まっちゃうと思いますし。

――なかなか駆け付けられないですよね。

傘村トータ 落とし物をした人を見て、「どうしようどうしよう」と迷っている間に別の人が拾って声を掛ける……なんてところに直面すると、「届けられてよかった」とホッとする反面、1歩踏み出せなかった自分にがっかりしたりもするんです。なので余計に、行動に移せる一歌ちゃんに憧れるし、彼女みたいになれたらいいな……と感じます。

――そのシーンに象徴されるかもしれませんけど、“Live with memories”って、レオニにとって非常に重要なストーリーですよね。そこに楽曲を書き下ろすプレッシャーはいかがでしたか?

傘村トータ プレッシャーは、もちろんありました。そもそも『プロセカ』に曲を書かせていただく時点でプレッシャーがあって、レオニって……“じん”さんが楽曲提供されていて。

――『ステラ』のじんさんですね!

傘村トータ 僕がずっと憧れていた方たちが参画している印象がすごく強くて、そこに自分の名前が加わって、同じレオニが曲を歌ってくれるというのが……! そこでのプレッシャーは大きかったです。逆に、このイベントストーリーの重要度は、楽曲を書き下ろした段階ではそれほどわかっていなかったんです。ただ、彼女たちが漠然と持っていた想いが徐々に形になって、特定の誰かに向けて歌を届けたい……という方向性が定まる回だとは聞いていたので、気合は入りました。間違いなく、レオニが1歩踏み出すお話でしたし。

▲イベント『Live with memories』の書き下ろし楽曲としてリリースされた。

――さて、そこでいよいよ楽曲についてお聞きしたいのですが、まずは『オーダーメイド』を作られたときのテーマからお聞かせください。

傘村トータ まず、「特定の誰かに向けて歌を届けるというシチュエーションです」というお話を聞いたときに、(誰かに向けて歌を書くって、どういうことなんだろう……?)と自分ですごく考えて、悩みました。そういう意味では、自分の感情を掘り下げて作った感じかもしれません。というのも、誰かに向けて書こうとしても、それって簡単には届かないんです。

――届かない?

傘村トータ はい。誰かのために曲を書こうとか、誰かを救うために書こうとか、そういう想いを背負ってしまうと独りよがりになって、けっきょく届かないこともあるなと思っていて。じつは僕も、失敗した経験があるんです。でも彼女たちは、誰かのために曲を書いて、歌いたいと言います。そのひたむきな強い想いを見ていると、不可能も可能になるのでは……?と思えてくるのと同時に、先ほど言った“独りよがりな曲は届かない”という自分の想いとぶつかるんです。そういう意味では、グルグルと悩みながら作った……という感じでしょうか。

――『オーダーメイド』は、頼まれた側の視点で作られたのかな……って、聴きながら思いました。

傘村トータ (強く頷いて)はい、そうかもしれないです。あの……誰かのために歌を書いていくスタンスは、じつは修羅の道なんだと思うんです。

――はい。

傘村トータ でもレオニの4人は、この修羅の道を歩みながらイベントを成功させて、さらに誰かに何かを届けようと歌を作っていくんだろうな……って考えたんです。その活動の中できっと、一歌ちゃんたちは自分たちの力ではどうにもならないことで苦しんだりすると思うんですけど、どうか傷つき過ぎないでほしいな……って心から願いました。みんなを救うことなんてできないし、その必要もきっとなくて、そう考えてしまうこと自体が驕りだとも思うんです。なので、誰かに手を伸ばすときも、「今日はちょっと調子が悪いからやめておこう」とか、肩の力を抜いて自分で決めていいんだよ……って言いたかったんです。

――わかります。人間、昂ってくると自分の気持ちに興奮して、余計なことをしたりしますから……!

傘村トータ そうなんです。じつは僕、学生のときに精神的にすごく落ちてしまったことがあって。そのとき、いちばん仲の良かった子がなんとか引き戻そうとしてくれたんですけど、けっきょくふたりとも具合が悪くなって、共倒れになっちゃったんです。友だちは、僕のことを本当に助けたくて手を伸ばし続けてくれたんですけど、自分が壊れちゃったら元も子もないですよね……。そのときに、きつかったらいつでも伸ばした手を引いていいし、そうなったとしても決してあなたのせいじゃないよ……って伝えたいと思いました。その気持ちを、曲を通じて少しでも届けられたらいいなって考えたんです。

――とても大事な気持ちが詰められた曲なんですね。

傘村トータ はい、そうですね。

――そんな『オーダーメイド』の中で、とくにお気に入りの歌詞があればぜひ教えていただきたいのですが!

傘村トータ 「僕らは好きに選んでいいんだ」。やっぱり、この部分ですね。

――そこ!! めちゃくちゃいいですよね……! 『オーダーメイド』は、全般的に歌詞が刺さりますけど。

傘村トータ ありがとうございます。

――個人的には冒頭の、「歩き出す瞬間がいつも 一番力がいるんだ」の箇所が大好きです。

傘村トータ うれしいです! ありがとうございます。踏み出す瞬間って勇気もいるし、パワーも必要だし。でもそこを乗り越えないと何も始まらないから、力を出して踏み込まないと、って。

――そうなんですよねー! 沁みるなあ……!

傘村トータ はははは。

――『オーダーメイド』に対するリスナーのコメントも、歌詞に対するものがすごく多い気がします。

傘村トータ うれしいですね……! “言葉を大事に”ってつねに思いながら活動をしているので、それに対して何かを感じてもらえたなら、こんなに幸せなことはありません。

――傘村さんて、どのように歌詞作りをされているんですか? というのも、歌詞ってすごく制限のある文学じゃないですか。しかもメロディーに合わせて言葉選びをしなきゃいけないわけですよね?

傘村トータ 僕、基本的に歌詞から作るんです。

――え!!!? 歌詞から!!?

傘村トータ そうなんです。歌詞はわりと自由に書いて、あとからメロディーを歌詞に合うようにグリグリといじくる……という感じでしょうか。

――そうだったんですか……!

傘村トータ ですので、歌詞の自由度が高くなる作り方をしているんだと思います。

――おもしろいなー! これまでたくさんのボカロPさんにインタビューをしてきましたけど、そのほとんどがまずメロディーを作って、そこに言葉をハメていく……とおっしゃっていたので、驚きました!

傘村トータ そういう作りかたをされている人が多い……というのは、僕もなんとなく肌感で知ってはいました(笑)。自分のほうが少数派だと気づいた……というかなんとなくわかったときに、(みんな……メロディーから作るんだ。スゴいな……!)って思ったことを覚えています。僕は、メロディーに歌詞をハメていくやりかただと、どうしても難しいと思っちゃうんです。

――言葉を大切にしているがゆえに、そういう作りかたになったんですかね?

傘村トータ それもあるんですけど、先ほどお話した友だちが歌詞を書く子で、それに僕がメロディーをつけて楽曲にする……という活動を中学生のころにやっていたんです。

――ほーーー!

傘村トータ なのでもともと、歌詞を作ってメロディーを付ける……というやり方でしか音楽を作ってこなかったんです。いざ自分でも歌詞を……となったときもそのときのクセか、「まずは詞を書いてからメロディーを」という作り方をしていました。いまでもそうです(笑)。

――そこでぜひ、印象に残るフレーズの作り方もお聞きしたいんです。たとえば本をたくさん読むとか、ひたすら言葉をメモるとかとか、方法はいろいろあると思うんですが。

傘村トータ もともと“言葉”そのものが好きだったんです。昔、予備校に通っていたときの課題で、「なぜ大学に行きたいのか?」をテーマに作文を書かされたんですけど、そのときに“言葉の魔法使いになりたいから”って書きました(笑)。言葉って、使い方によっては相手を傷つけちゃうし、逆に薬を塗るように癒すこともできます。それを自由自在に扱える人になりたいって、いま質問してもらえたことで思い出しました。

※MV画面はバーチャル・シンガーver.のものです。

――ありがとうございます! では、いまの質問とちょっと似通ってしまうのですが、『オーダーメイド』の聴きどころを教えてください。

傘村トータ ゲーム用の曲として作っているので、1コーラス目が終わった後の、ゲームで言うところの最後のサビに行く前の「チャラララララン♪」っていう、あの部分。あそこが、リズムゲームとして遊んでいても楽しいところだし、おもしろい部分だと思っているんです。今回、アレンジャーさんに入ってもらってアレンジをしてもらったんですけど、あそこって僕が最初に書いたフルのデモにはなく、その方が、「音ゲーって、こういうのがあったらきっと楽しいですよ!」って加えてくれたものなんです。曲をすごく大事にしてくれて、なおかつ楽しんでプレイしてもらえるようにと、いろいろなアイデアを提供してもらいました。実際、ゲームに実装されたときに、かなりのプレイヤーに驚いてもらえたと思います。いきなり変な階段が出てくるギミックがあって、「初見でこの階段は無理でしょ!」なんてコメントも見かけましたし。こういった仕掛けのある部分がしっかりと機能してくれましたし、楽曲自体の聴きどころにもなったと思います。

――それだけこだわりの曲となると、制作日数がかなりのものになったのではないかと想像するのですが。

傘村トータ どんなもんだったかな……と思って、調べてみたんです。

――ありがとうございます!

傘村トータ じつは『オーダーメイド』って、3曲目の楽曲なんですよ。

――ほう……?

傘村トータ 『オーダーメイド』として完成する前に、「これはどうだろう?」、「こんな感じは?」と練っているうちに、2曲ボツにしていました。

―え!! ということは……幻の曲が2曲もあると!?

傘村トータ ダメダメの曲ですけどね(苦笑)。その、1曲目のボツ曲ができるまでに……1日。もう1曲のボツ曲を作るのに1日。

――はい。

傘村トータ その段階で、「これはちょっとたいへんかも」と悩み始めて……けっきょく1週間くらいかけて『オーダーメイド』の初期デモができた感じです。そこからアレンジャーさんにバトンタッチするので、完成までもう少し時間が掛かるんですけど、最終的にフルコーラスができるまで……10日くらいを要しました。

――……え!? それって、すごく早くないですか!?

傘村トータ あ、そうですか? どうなんですかね?

――これまでたくさんのボカロPにお話を伺ってきましたけど、傘村さんは相当早いと思います! では、難産だった……という感じではなかったのですか?

傘村トータ どうだろう……。1発ではできなかったので、決して楽ではなかったんだと思います。スルッとできた……という感覚ではなかったのを覚えているので。

――わかりました! では、ゲームに実装されたのを初めてご覧になったときの感想は?

傘村トータ 3DMVがとても美しくて、感動したんです。あのイベントの衣装が夜空の雰囲気を表していて、幻想的なんですよね。宮沢賢治の世界観を表現しているみたいで……。

――『銀河鉄道の夜』を彷彿とさせますよね。

傘村トータ そうなんです! あんなにステキなMVを背景にプレイできるとは思ってもいなかったので、うれしかったです。

――この流れでもうひとつ! 『オーダーメイド』ってリアルイベントで実際にキャストの方々が歌唱されることもありましたよね。とくに、昨年のセカイシンフォニーとか。傘村さんも、ご覧になられましたか?

傘村トータ はい、会場で見させていただきました。セカイシンフォニーのときはもう……なんだか感無量で。『オーダーメイド』はレコーディングにも立ち会わせてもらったんですけど、やっぱり楽曲の原盤を作るときと空気感が違うんですよね。キャストの皆さんがステージ上で歌う姿を見ることってほとんどなかったので、特別な瞬間を目の当たりにできた……と感動しました。

▲“セカイシンフォニー2023”でオーダーメイドを歌唱した星乃一歌役の野口瑠璃子さんと天馬咲希役の礒部花凜さん。

――『オーダーメイド』って、レオニの曲では珍しいバラードじゃないですか。この曲の雰囲気とセカシンの世界観が、すごくマッチしていましたよね。

傘村トータ そうなんですよねー……! やっぱりリズムゲームってアップテンポの曲のほうが合致するので、バラードって少ないですよね。そんな中にあって、大事なリアルイベントの楽曲として選んでいただけたこと自体が、とてもうれしかったです。

――そうやってゲームに実装されたり、リアルイベントで使われたりすると、いろいろな反響があると思うんですが。

傘村トータ いちばん印象的だったのは、両親が『プロセカ』でプレイしてくれたことでしょうか(笑)。

――へーーー!!

傘村トータ もうそこそこの年齢で、ふだんはゲームなんて絶対にやらないんですけど、一生懸命ダウンロードして、「どうやって遊べばいいの!?」なんてワチャワチャしながらも、『オーダーメイド』をプレイしてくれています。母は最近コツをつかんできて、スマホの持ちかたとか叩きかたを工夫していて、感心しちゃいました。

――それは、うれしい出来事ですねえ。

傘村トータ そうですね。これは『プロセカ』そのものの効果なんですけど、身近な人たちもボカロにグッと近づいてくれている実感があるんです。それを見ていると、「自分のいる世界って、こんなにステキなんだよ」って紹介できている気がして、幸せな気持ちになります。

――反響ということで言うと、「『オーダーメイド』をきっかけに、レオニにもっとバラードを歌わせてほしい!」なんてリスナーのコメントをよく見かけました。

傘村トータ レオニ、バラード合いますよね! やっぱりバンドが歌うバラードってグッときますし、僕ももっと増えてほしいな……って心から思います。……また呼んでいただけたら、気合を入れて作りますので!(笑)

――ここは太字で書かせていただきます(笑)。さて、そんな『オーダーメイド』を好きなファンに、ひと言贈るとすれば?

傘村トータ そうですね……。いろいろたいへんなことが多い人生ですけど、心を込めて生きていきましょう! ……ということを伝えたいです。

――ありがとうございます!! ……ではここから、将来の夢として「ボカロPになりたい!」と思っている人たちのために用意した質問にお答え願えればなと……! まずは……傘村さんが、ボカロPになられたきっかけを教えてください!

傘村トータ 僕は中学生のときにボカロの存在を知りました。『人柱アリス』(“歪P”による『【オリジナル曲】絵本『人柱アリス』【歪童話】』と、それに関連する作品)から入って、『悪ノシリーズ』(“悪ノP”による物語音楽シリーズ)とか、『鏡音三大悲劇』(鏡音リン・レンに関する三組の曲の総称)とかとか。もともと音楽好きでしたし、パソコンも好きだったので、ズブズブにハマっていきました。でもなかなか曲制作には踏み出さなかったんですけど、あるときボーカロイドの『IA』が発売され、本当に大好きになって、「踏み出すのはいましかない!」と思って楽曲制作も始めました。

――音楽をやられていて、しかもパソコンも好きで……って、なんだか運命的なものを感じますね。

傘村トータ そうですね。やっぱりパソコンが苦手だと、ボカロって取っ付きにくいと思うんです。でも僕は奇跡的にパソコンが好きだったので、最初のハードルはすんなりと越えられた気がします。

――操作にもすぐに慣れて?

傘村トータ 操作自体は問題なかったんですけど、自宅のパソコンがポンコツで、ハモリを入れて再生すると必ずフリーズするんです(苦笑)。

――それは……才能以前の問題ですね!(笑)

傘村トータ ちょっとずつしか再生できないし、ハモるとフリーズするから、完成形を脳内で想像しながら1パートずつ作っていました(笑)。そもそも、ボカロのソフト自体もいまみたいに完成された感じじゃなかったので、多分に手探りなところはあったと思います。

――物理的な障害も乗り越えて。

傘村トータ 物理的な障害が、いちばん大きかったですね(苦笑)。

――そこでぜひお聞きしたいのが、ボカロPになるために必要なスキルです! どんなことを学んでいけばいいですかね……?

傘村トータ ちょっと視点の違う答えなのかもしれませんが、学校での出来事をよく覚えておくといいと思います。

――学校での出来事……ですか。

傘村トータ はい。たとえば、おもしろくない授業のとき、自分は何を考えながら窓の外を眺めていたんだろう……とか。本当に、何気ないことを。いまになって思うんですけど、楽譜とか楽器って、後からでもなんとかなるんです。それに比べて学校生活での出来事って……戻って体験したくても、できないんです。

――確かに……!

傘村トータ なのでその場所にいるときに、できる限りのことを吸収してほしいです。学校生活での些細な記憶が役に立つ瞬間って、こういう仕事をしているとすごくあるので、いまそこにいる皆さんには、本当に大事にしてもらいたいなと思います。

――作詞活動で、きっと活きますよね。

傘村トータ おっしゃる通りで、作詞をしているときにさまざまなことが蘇ってくるんです。

――先日、ワンダフル☆オポチュニティさんにインタビューさせてもらったときに、じーざすさんも同じようなことをおっしゃっていました。「修学旅行とか、学校行事の記憶を大事にしてほしい」と。

傘村トータ わかります! 僕、中学のときの修学旅行が京都だったんですけど、自由行動のときに友だちとはぐれて、ひとりで祇園の坂をポツポツと歩いていたことを強烈に覚えていて。そのときは悲しい気持ちでしたけど、下を向きながら祇園の坂を寂しく下る……なんて思い出、もう作れませんから! いい思い出じゃなくてもいいんです。キラキラの青春じゃなくてもいいから、たくさんのことを覚えておいてもらいたいなと思いますね。

――子どもたちに、「いまの時間は、とても貴重なんだよ!」って言いたくなりますもんね。

傘村トータ そうなんです。でも、当事者はなかなかわからないんですよね。僕も、わからなかったし。

――ちなみに、楽器についてはいかがですか? 傘村さんはピアノをやられていたということですが。

傘村トータ はい、3歳から習っていましたし、ピアノが弾けてよかったな……とも思うんですけど、必須かと言われるとそうでもないかな、って。というのも、楽器なんて触ったことがないというボカロPが、たくさんの名曲を作っていらっしゃいますから。それは、楽譜も同様ですね。

――わかりました! では、ボカロPになってよかったと思うことがありましたら、ぜひ教えてください。

傘村トータ 音楽を仕事にできる道に導いてくれたのは、間違いなくボカロだと思います。この道に入ることができて、いまの事務所に出会えたのも、ボカロPをやっていたからこそです。ボカロというものが、いまの生活に連れてきてくれたなと心から思います。

――そんな傘村さんに、将来ボカロPを目指す少年少女にエールをお願いしたいのですが!

傘村トータ やっぱり、「楽しくやってください!」でしょうか。ボカロの利点のひとつに、自由度の高さがあると思うんです。もしも生歌で、バンドを使ってMVを……ってことになったら、準備はたいへんだし、撮影も工夫しなきゃだし……って難易度がどんどん上がっていっちゃうと思うんですけど、ボカロはそれがありません。なので、まずは楽しく触れてみてください。

――ありがとうございます! では最後に、『プロセカ』にもひと言お願いいたします。

傘村トータ いま、ボカロというものが大きく広まるきっかけになっているのって、間違いなく『プロセカ』だと思っているんです。ゲームだけに留まらず、“ボカロ文化”そのものを下支えしてくれていると思います。なので、「これからも、ボカロをどうぞよろしくお願いいたします!」と伝えたいです。

――わかりました! 本日はお忙しい中、本当にありがとうございました!

 

傘村トータ

 

2017年よりボカロP傘村トータとして音楽活動をスタート。

今までに100作以上のボカロ楽曲を発表し、代表曲「贖罪」「あなたの夜が明けるまで」などは、多数の歌い手にカバーされている。

近年はアーティストとの楽曲制作やスマホゲーム「プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク」の書き下ろし楽曲などを手掛けており、VOCALOID楽曲制作と並行して活動の幅を広げている。

 

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タイトル概要

プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク

■対応OS:iOS/Android

■App Store URL:https://itunes.apple.com/app/id1489932710

■Google Play URL:https://play.google.com/store/apps/details?id=com.sega.pjsekai

■配信開始日:配信中(2020年9月30日(水)配信)

■価格:基本無料(アイテム課金あり)

■ジャンル:リズム&アドベンチャー

■メーカー:セガ/ Colorful Palette

■公式Twitter:https://twitter.com/pj_sekai