【プロセカ】ボカロPに直撃! “Chinozo”さんが語る“Vivid BAD SQUAD(ビビバス)”と、オリジナル楽曲『Flyer!』について!【ボカロPインタビュー企画 #33】

Chinozoさんの曲作りに迫る!

 2020年9月のサービスイン以来、コロコロオンラインがひたすら追い掛け続けているセガ×Colorful PaletteのiOS/Android向けアプリ『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』。

 リリース当初からこのコンテンツを追いかけてきたコロコロオンラインプロセカ班は、2023年10月に『プロセカ』3周年を記念した大特集を実施するなど、担当からほとばしる圧倒的な“プロセカ愛”をカタチにし続けてきた。 

『プロセカ』3周年記念特集は下記の画像をクリック!!
 

 そんなコロコロオンラインプロセカ班がとくに情熱を注いで追っているのが、このゲームの根幹でもある楽曲……そして、それを制作されている“ボカロP”と呼ばれる“才能たち”であります!!

 “子どもが将来なりたい職業ランキング”において、ゲームクリエイターやユーチューバーらと並んでボカロPが上位にランクインし、コロコロの読者層との親和性もめちゃくちゃ高いということで、前述のプロセカ1周年特集の際にボカロ界のビッグネームにつぎつぎとインタビューを敢行!! その内容の濃さは業界内外に衝撃を与え、このたび……不定期連で、さらに多くのボカロPの皆様にご登場いただき、ナマの声をお届けできることになったのです!!

 『プロセカ』はゲーム内容はもちろん、楽曲のすばらしさが高く評価されて現在の人気を確立したと言っても過言ではない。それらを生み出したボカロPたちの考えかた、作品への向き合いかたを掘り下げたこのインタビュー連載を読まれることで、ゲームを遊ぶだけでは知りえない情熱や、楽曲に対する想いを知ることができるはずだ。その結果……さらに登場キャラやユニット、『プロセカ』そのもののことが好きになること請け合い!!

 そしてインタビューの後半では、“いかにしてボカロPになったのか?”という、将来この道に進みたいと思っている読者の皆様の道しるべになるような質問もぶつけているので、とにかくあらゆる人たちに読んでいただきたいなと!!

 さて今回ご登場いただくのは、“Vivid BAD SQUAD”(ビビバス)にオリジナル楽曲『Flyer!』を提供された“Chinozo”さんだ。

 再生回数、じつに1億2000万回以上を誇る超人気楽曲『グッバイ宣言』(『プロセカ』でもワンダーランズ×ショウタイムが歌唱するセカイver.が収録されている)の作曲者として知られるChinozoさんが作られた『Flyer!』は、イベントストーリー『Legend still vivid』用に書き下ろされた名曲。伝説のライブを超えたいと奮闘する仲間を鼓舞し、さらに上へと押し上げる力強さが、爽やかな曲調の中で表現されている。そんな『Flyer!』は、どんな過程を経て作られたのか? じっくりと語ってもらいました!

※インタビューはオンラインで実施したものです。

大事な気持ちがあるからこそみんなで飛び立てる

--まずはたいへん恐縮なのですが、簡単に自己紹介をお願いいたします。

Chinozo わかりました! Chinozo(チノゾー)と申します。ボカロPをしております。本日はよろしくお願いいたします。

--Chinozoさんの略歴を見させていただいたんですけど、ボカロPとして活動を始められたのって、2018年ごろなんですね! すごく意外だったのですが。

Chinozo はい、そうなんです。ですので、まだ5年くらいですかね。

--今回のテーマである『Flyer!』はもちろんなんですけど、代表曲の『グッバイ宣言』があまりにも有名なのでベテランな雰囲気を感じておりました。

▲2020年に投稿されたChinozoさんの代表曲『グッバイ宣言』。プロセカにも収録されており、ワンダーランズ×ショウタイムが歌唱しているぞ!

--さて、そんなChinozoさんは『プロセカ』にオリジナル楽曲の『Flyer!』を提供されたわけですけど、この依頼を受けたときは率直にどのように思われましたか?

Chinozo シンプルに、とてもうれしかったです。というのも、お話をいただく前からボカロを使ったスゴいアプリがあるということは知っていて、そのコンテンツの熱量が凄まじいとも聞いていたので。僕はもともと、ボカロ界隈を盛り上げてくれるものには積極的に参加したいと思っているので、今回のお声掛けは本当にうれしかったんです。

--『プロセカ』の登場によって、ボカロシーンが変わった……とも言われていますもんね。

Chinozo まさにその通りで、心から「ありがたい」と思いました。

--今回、Chinozoさんが『Flyer!』を提供されたのはビビバスですけど、彼らを初めてご覧になったとき率直にどのように思われましたか?

Chinozo 最初は、先入観を持たないようにストーリーなどは知らない状態でビビバスの楽曲を聴いていたんですけど、なんというか……かなりギラついた、アウトローな雰囲気のものが揃っているなという印象を受けました。

ーー実際、ビビバスの曲はストリートのイメージを全面に出した、クールでかっこいい曲調が多いですよね。ラップを使う曲もありましたし。

Chinozo そうですね。でも蓋を開けてみると、こはねちゃんを中心に王道の熱血スポ根路線にも進んでいて、これはそんなに単純な話じゃないぞと。それから、自分でもゲームをプレイし、ストーリーも読み込んでいく中でこはねちゃんに共感する部分が多々出てきて、気が付けば……ビビバス自体が、とても好きになっていました。

--おおお……! その、こはねちゃんとの共通点というのは、具体的にどのあたりで?

Chinozo 僕、学生時代に将来の夢とかがいっさいなかったんです。

--え! そうなんですか??

Chinozo そうなんですよー。まあざっくりと、「スゴい人になりたいな」みたいな想いはあったんですけど、具体的には何も……。こはねちゃんはもともと音楽の素人で、でも才能を買われて杏ちゃんにスカウトされた……という、他のメンバーとは違う道を辿ってきた子です。それゆえに、自分が何者なのかを探すためにもがいたり、悩んだりもするという、ある意味、もっとも現実世界の人たちに近い描かれかたをしていると思ったんですね。僕も、やりたいことはないながらも、“何かを見つけたい”と思っていた人間なので、ついつい彼女に感情移入してしまいました。

--幼いころから音楽に親しんでいて、将来の道も決めて活動をしてきた……というわけではないんですね。

Chinozo いえいえ、違います(笑)。

※MV画面はバーチャル・シンガーver.のものです。

--そのあたりの詳しいこと、ぜひ後半で聞かせてください! 今回、『Flyer!』を作るにあたり、イベントストーリー『Legend still vivid』を読まれて。

Chinozo はい、そうですね。このストーリーをテーマに曲を書かせていただきました。

--『Legend still vivid』って、ビビバスが怒涛の流れに巻き込まれていく端緒となるストーリーですよね。伝説のライブ“RAD WEEKEND”の映像をついに目の当たりにして……。

Chinozo それらも、こはねちゃんの気持ちをきっかけに始まっているんですよね。RAD WEEKENDが行われたライブハウスに行ったり、実際にステージに立ってみたり……。そこで改めてメンバーの気持ちが動いて、いままで以上に「RAD WEEKENDを超えたい!」という想いが強くなる。このように、こはねちゃんの気持ちをメインにしながらもビビバス全員が繋がったストーリーだったので、それに曲を書き下ろすのは、かなりのプレッシャーではありました。

--そこでぜひ切り込みたいのが、『Flyer!』を作られたときのテーマです。曲の方向性をどのように決められたのかを詳しくお聞きしたいのですが、その前に“Flyer”という曲名の意味を知りたいです!

Chinozo これはですね……! 結論から先に言ってしまうと、こはねちゃんを始めビビバスの子たちが共通して胸に抱いているのは「RAD WEEKENDを超えたい」という決意ですよね。それを念頭にストーリーを追っていくと、先ほどの「RAD WEEKENDのステージに立ちたい」とか「映像を見たい」という行動に繋がるきっかけって、こはねちゃんが起点になっているんですよね。彼女の強い気持ちが、メンバーの背中を押しているというか。

--うんうん。わかります。

Chinozo こはねちゃんって本当に純粋で、自分が抱いた気持ちのままに、正直に行動に移せるタイプだと思うんです。だからこそ「RAD WEEKENDが行われたステージに立ってみたい」と言えたし、メンバーもその言葉に惹きつけられていっしょにステージに上るわけです。RAD WEEKENDを実際に見た杏ちゃんや彰人は、ある意味このイベントに対して畏怖すら覚えていましたよね。そんな子たちを“ステージの上に押し上げた”というこはねちゃんの気持ち、言葉はとても強かったんです。

--そこで……!!

Chinozo はい。“Flyer”です。ステージって、高いじゃないですか。物理的にも精神的にも。そんな高い場所に、こはねちゃんの言葉によって“上がる”、“飛び立つ”、“昇り詰める”……。大事な気持ちがあるからこそみんなで飛び立てる……という意味も込めて『Flyer!』と付けました。

--おおおお……!! めちゃくちゃ腑に落ちました……! “Flyer”って“野心家”なんて訳され方もするので、それもある意味ビビバスの雰囲気と合っているから、そういう意味も込められているのかな……と思っていたんですけど、なるほど……!

Chinozo はい。こはねちゃんの気持ちをきっかけにみんなが動いた……というのが、もっとも近い意味になりますね。

▲イベント『Legend still vivid』の書き下ろし楽曲としてリリースされた。

--そんな『Flyer!』は、ストリート系のクールな曲が多いビビバスのオリジナル楽曲の中で、極めて爽やかな雰囲気を纏っていますよね。

Chinozo あ、そうですね!

--ビビバスの固定観念を払拭するかのような楽曲なんですけど、これは意識してそうされたのですか?

Chinozo はい、その通りです。ビビバスって基本的に、アウトローなイメージのかっこいい曲が多いじゃないですか。でもこれは、こはねちゃんが純粋な決意を固めた瞬間の曲でもあるので、彼女の“らしさ”を込めたいなと考えました。そこで、あまりかっこいい感じに振ってしまうと、何と言いますか……取り繕っている感じが出ちゃうなと思ったので、あえてポップな雰囲気にすることでこはねちゃんらしい純粋な気持ちを表現できるかなと思ったんです。

--ビビバスの面々が、これほど笑顔で歌っている曲も珍しいよな……と思いながら毎回ミュージックビデオを見ています。

Chinozo ありがとうございます。でもこれ、こはねちゃんがテーマでなければまったく違う曲調になっていたと思います。彼女だからこそ、『Flyer!』のような曲にしたくなったんですよね。……まあ正直、ちょっと怖くもあったんですが。

--その怖さというのは、これまでのビビバスの曲と違うからですか?

Chinozo そうです。でも、僕もこはねちゃんのように、1歩踏み出そうと思ったんですよね。その結果できたのが、『Flyer!』だったんです。

--そんな『Flyer!』は再生回数も600万回と凄まじいんですが、それに比例するように曲の評価がずば抜けていますよね。とくに歌詞がすばらしいというリスナーのコメントをたくさん見るんですけど、Chinozoさんご自身がお気に入りの歌詞はどのあたりになりますか?

Chinozo ……やっぱり挙げるとすれば、「上昇気流」という言葉になりますかね。

--「上昇気流」……!! 非常に効果的に使われていて、僕も大好きですあの箇所ッ!!(興奮)

Chinozo ありがとうございます(笑)。わかっていただけてうれしいです(笑)。こはねちゃんの“気持ち”がみんなを押し上げた……ということを表現したいと思ったときに、「これは気流だな」と。みんな、もともと翼は持っていたと思うんですけど、より遠くに飛ぶためには空気や風があったほうがいいですよね。そこでいろいろと考えて、「上昇気流がピッタリだな」と合点したんです。いまでも、こはねちゃんらしさを表す言葉としてすごく気に入っています。

--まさに『Flyer!』のキーワードですよね。

Chinozo はい、そうなんです。何回も使っていますしね(笑)。

--これ、言葉の配置もそうなんですけど、歌い方も絶妙ですよね! ちょっとフワリと上に上がるような感じで……!

Chinozo あ、そうなんですよ!! これは、収録の立ち合いに行ったときに、こだわりを伝えさせてもらった部分です。いやあ、そう言っていただけてうれしいです!

--もうひとつ、印象的なフレーズに「飛び立てば正解」がありますよね。

Chinozo あ、そうですね! これもキーワードのひとつで、『プロジェクトセカイ』ってテーマのひとつに“セカイ”があるじゃないですか。そこで“正解”とも“セカイ”とも聞こえるように、言葉を掛けて使いました。

--なるほど~!! 深いなあ!! この流れで個人的に好きな箇所をお伝えしたいんですけど、「憧れだけじゃなくて乗り越えて」ってフレーズが大好きなんです。

Chinozo あー! ありがとうございます! ここがまさに先ほども言った、もともと観客席側にいたビビバスの子たちが、RAD WEEKENDで使われたステージに実際に立ってみた……っていうことを表現した部分です。憧れを乗り越えた先に進むぞ……という決意のようなものを、歌詞に落とし込みました。

--その箇所も含めて、『Flyer!』の歌詞に勇気づけられたというコメントが非常に多いですよね。

Chinozo そうなんです。これってやっぱり、こはねちゃんが等身大の自分をさらけだしている女の子で、それをテーマにした曲だからこそ多くの人に響いているのかな、って思います。

--もうひとつ! “上昇気流”もそうなんですが、「明日は快晴」、「雲を突き抜け」、「追い風の中で」など、天気、気象を想起させるワードが多いですね。

Chinozo はい。これは、ストーリーとはまったく関係ないんですけど曲のテーマに“空”を選んだので、そういった単語のチョイスが多くなりました。

--この、言葉選びの匙加減がすばらしいんだよなぁ……! いったいどんな勉強をされてきたんですか!?

Chinozo いや、勉強とか訓練はとくにしてないですよ(笑)。

--ホントですか!?

Chinozo 本当です本当です(笑)。とにかく、何度も何度も資料やストーリーを読み返して、ひたすら時間を掛けて考えて……そういった地味な作業を積み上げて作っているんです。


--なるほど……! いやでも、最終的な決め手はやっぱりセンスなんだろうなぁ。ちなみに、いまの質問とちょっと似通ってしまうんですが、『Flyer!』の聴きどころというと?

Chinozo ビビバスには「RAD WEEKENDを超えたい」という想いがつねにあるので、ライブで映える感じにしたかったんです。RAD WEEKENDは、演者と観客が想いをひとつにしたイベントだったわけですよね。なので彼らにも、観客といっしょに盛り上がれる曲を渡したいと思って、イントロからコールがしやすい造りにこだわりました。

--「Wow Wow」のところですね!

Chinozo そうですそうです! 加えてわかりやすい歌詞を入れているので、冒頭からみんなで盛り上がってほしいなと。

--「Wow Wow」に合わせて、頭上で手を振るじゃないですか。あれ……抜群ですよね!

Chinozo そう! めっちゃ最高ですよね! あれは僕が考えたわけじゃなく、『プロセカ』の開発サイドがMVを作るときに付けてくださって。この映像が完成して初めて見せてもらったとき、思わず「最高やな……!」って言っちゃいました(笑)。

--『プロセカ』の2周年イベントのときに、ビビバスの声優さんたち4人がステージで『Flyer!』を披露してくれたじゃないですか。会場で見ていたんですけど、冒頭の手を振るところから鳥肌が止まらなかったです。

Chinozo いやあ~……! RAD WEEKENDを超えたかな……いや、まだまだかな(笑)。でも、そう言っていただけてホントにうれしいですね。

▲“プロジェクトセカイ 2nd Anniversary 感謝祭”にて『Flyer!』を生歌唱するビビバスのキャスト陣。頭上で手を振るダンスもばっちり披露された。

--それくらいこだわりを込めた曲となると、制作日数はかなりのものになったんじゃないかと想像するのですが、いかがでしたか?

Chinozo 難産……だったと思います。というのも最初はやっぱり、これまでに作られてきたビビバスの曲のイメージに囚われていたんです。でも、アウトローな雰囲気でコールありの曲って、けっこう難しいなと思って。その段階ではまだこはねちゃんの気持ちよりも、ビビバスのイメージを先行させてしまっていたので、なかなか殻が破れなかったというか……。そこから、改めてストーリーに立ち返ったりしていたので、時間はかかりましたね。けっきょく……3、4ヵ月は使ったかな。ふだんはそんなことはないんですけど、『Flyer!』については相当な時間を費やしたと思います。

--Chinozoさんのほかの楽曲と比べても、難産だったと。

Chinozo はい。既存の枠から抜け出すために考え抜いたので、苦労はしました。

--『Flyer!』という名曲も、完成までにめちゃくちゃ時間も労力も費やされた……ということを、しっかりと書かせて頂きますね(笑)。

Chinozo ありがとうございます。ぜひ、よろしくお願いします!

--そんな『Flyer!』がゲームに実装されたのを初めて見たときは、どんな感じでしたか?

Chinozo 初公開はゲーム内のアフターライブだったんですけど、何と言うか……すごかったです。先ほど言ったように「ライブでやってほしい!」と思いながら作った楽曲なので、その初演出がライブで、しかも振り付けもしっかりあって……というのが相まって、心の底から感動しました。気持ちは完全に観客側で、イントロトークを見た瞬間に「ライブやん!」と驚き、曲が始まったら「うおおおお!!」って(笑)

--曲を作った方が、そんなに感動されるとは(笑)。

Chinozo うれしかった……以外の言葉が見つからないくらいです。また、譜面もめっちゃ凝ってて楽しいじゃないですか。「上昇気流」のところとか、譜面もそれに合わせて作ってくれていますし。そうやって曲を大切にして、丁寧に作り込んでくださっているところが本当にうれしくて、心から「やってよかった!」と思えた仕事でした。

▲↑↑矢印で上昇気流を表現している遊び心満載の譜面。MASTERは楽曲Lv.29というかなり歯ごたえのある難易度になっているぞ。

--ちなみにChinozoさん、リズムゲームのプレイのほうはいかがですか?

Chinozo けっこうがんばって、『Flyer!』はMASTERをフルコンできるくらいにはやり込みました!

--おおお!! すばらしい!

Chinozo でも、じつはリズムゲームってほとんどやったことがなかったので、難しかったです! 『Flyer!』は、自分で作ったからにはフルコンしようと意地になっていましたけど、『グッバイ宣言』はできませんでした(苦笑)

--そしてゲームに実装後、いろいろな反響があったと思うんですけど、リスナーのコメントを見ると前向きなものが非常に多い印象です。とくに目立ったのが、「受験のとき、『Flyer!』を聴いて気持ちを上げました!」という類のコメントです。

Chinozo あ! そうですね! 『Flyer!』が公開されたのが2月の受験シーズンだったということもあると思いますけど、そういった声はたくさんいただきました。何度も言うように、『Flyer!』はこはねちゃんの気持ちに寄り添って作った曲ですけど、それがたくさんの人に元気を与えて、前向きな気持ちになるための一助になってる……って考えると、とても不思議な感慨を覚えます。しみじみと、うれしいことですね。

--そんな、この曲が大好きな人たちにひと言贈るとすれば?

Chinozo 「飛び立てば 正解!」ですかね(笑)。

--その言葉を待っていました(笑)。ありがとうございます! ではここから、将来の夢として「ボカロPになりたい!」と思っている人たちのために用意した質問にお答え願えればなと……! まずは……Chinozoさんが、ボカロPになられたきっかけを教えてください!

Chinozo ずっとギターをやっていたんですけど、そのうち作曲もしたいな……と思い始めたのが最初ですかね。でもそれほど強い気持ちじゃなくて、「できたらいいなぁ~」くらいのユルいものだったんですが(笑)。ただそれと並行して、音楽はジャンルを問わずにいろいろと聴いていて、CDとかもジャケ買いするのが好きだったんです。そうやって漁っている中にたまたまボカロの楽曲がありました。それが、“みきとP”さんと“はるまきごはん”さんの曲だったんです。

--おおお……! 超有名ボカロPさん達ですね! おふたりとも、プロセカにオリジナル楽曲を書き下ろされていますし!

Chinozo ボカロの楽曲って、ニコニコ動画全盛期にけっこう聴いてはいたんですけど、しばらく離れていたんですね。それがたまたま、僕の「作曲してみたい」という欲と重なるタイミングでみきとPさんたちの曲に出会って……。「俺もボカロに歌わせてみたい!」となりました。

--運命的だったんですね。

Chinozo そうなんですよ。それまでは、歌のないギターだけの曲を趣味で作ったりはしていたんですけど、それをボカロで作ってニコニコ動画に投稿する……ということができるようになりました。

--ボカロの操作には、すんなりと入ることができたんですか?

Chinozo いや! やっぱり難しかったです。というのも、僕はDTMの経験がほとんどなかったので、PCを使った曲作りをイチから勉強していく流れでした。いまは、当時と比べてアプリケーションも充実しているので、ずっと入りやすいと思いますけど。

--そんなChinozoさんにぜひお聞きしたいのが、ボカロPになるために必要なスキルです! 何か、ヒントになることを教えていただきたいのですが……!

Chinozo それは、けっこうリアルめなヒントですよね? 気持ちの問題とかは置いておいて。

--どっちもお聞きしたいのですが、まずはリアルめなところからお願いできますと……!

Chinozo わかりました! そうですね……まず、楽器がなにかひとつできると便利かもしれないです。僕の場合はギターですけど、ピアノでもベースでも何でもいいので、なにかしら触っておくといいと思います。それに付随して、コードを理解しておくと何かと役に立つと思います。

--具体的でありがたいです!

Chinozo 曲を作ること自体は、本当に簡単なんです。コードの理解とかがなくても何ら問題はないんですけど、その状態で作っているとおそらく、不協和音になっちゃうと思います。それを避けるために、和音の勉強はしておいたほうがいいかなと。加えて……!

--ごくり。

Chinozo “いっぱい音楽を聴く”ですかね! ボカロだけじゃなく、ジャンルにこだわらずに片っ端から聴いてみてほしい……と言いたいです。

--あー……! そうやって好きな曲とかジャンルを見つけて、まずはマネて作ってみるとか。

Chinozo あ!! それ、めっちゃ大事です! 最初のころはマネをして、理想に近づける過程でたくさんのことが学べますから。そうやってある程度の技術が身についてから、オリジナルの曲に進んでいくのがいいかもしれません。

--ちなみにChinozoさんは、ギターは子どものころからやっていたんですか?

Chinozo そうですね。そこそこの年数になると思います。

--じゃあこれを読んでいる子どもたちも、思い立ったが吉日じゃないですけど、すぐに何かを始めたほうがいいですね。

Chinozo そうですね。とくに、「ボカロPになりたい!」という目標があるんだったら、なおさら早いうちから動いたほうがいいです。僕の場合、おばあちゃんに土下座をして高いギターを買ってもらったことがスタートだったので。参考にならないかもしれませんが(笑)。

--加えて、精神的にも必要なことってありますか?

Chinozo ボカロPにこだわるなら、やっぱりボカロが好きじゃないと無理ですよね。まあでも……これは大前提だと思うので、すでに皆さんクリアーされていると思いますが。

--はい。

Chinozo それより、ちょっと話が逸れるかもしれませんけど、これでお金を稼ぎたいとか、職業にしたいと思うのは、ちょっと違うなと思っていて。そういう生臭さって、不思議と曲から感じたりするんですよ! お金が欲しいとか、有名になりたいということより、純粋な“ボカロが好き”という気持ちを優先してがんばることが何よりも大事だと思います。

--よくわかります。これは、音楽に限った話じゃないかもしれないですね。

Chinozo そうですね! だいたい、続かないと思います。お金目当てになってしまうと。子どもたちの将来なりたい職業ランキングでボカロPが上位に来ている……っていう現状、うれしいのは間違いないんですけど、僕らあんまりボカロPを職業だと思っていないので。成功されているボカロPの皆さんって、「職業にしたい」と思って始められた人、ほとんどいないと思いますよ。皆、初音ミクが好きだったり、音楽が好きで始めた趣味の投稿がきっかけでいまに繋がっていると思うので、これを読まれる子たちも、ぜひそういった気持ちを出発点にしてほしいです。

--そこでお聞きしたいのが、ボカロPになってよかったと思うこと。具体的に、なにかありますか?

Chinozo これは、ちょっと綺麗事に聞こえちゃうかもしれないですけど、自分のやりたいこととか想像していたことを形にできるようになってきたな……と最近思うようになりまして。僕、“アルセチカ”さんというイラストレーターとタッグでコンテンツを作っているんですけど、そこで、「こんなMVを作りたい」、「つぎはこんな風にしてみたい」なんて話し合いながら作っているのが……とにかくめちゃくちゃ楽しいんです。

--いいなあ、そういうの……!

Chinozo 加えて、僕はもともとアニソンが好きだったんですけど、ボカロをやってきたことでアニメの仕事でもお声掛けいただけるようになりました。

--Chinozoさん、冒頭で「夢みたいなものがほとんどなかった」っておっしゃっていましたけど、いままさに、夢の回収をされている感じなんじゃないですか?

Chinozo ああ、そうですね。……ていうか、正直こんなことになるなんてまったく考えていなくて。音楽はただただ聴く側でしたし、アニメも見るだけの人間でしたから。それがたまたまボカロに出会って、曲を作って投稿したら少しずつ聴いてもらえるようになって……。そこで初めて、「じゃあこんなこともできるかな?」、「あれもやってみたいな」と考え始めたときに、「いつかアニソンもやれたらいいな」という夢が芽生えたんです。そういう意味では後出し……後付けなのかもしれないですけど、おっしゃる通りボカロに出会えたことで夢が生まれ始めたんだと思います。

--わかりました! では、そんなChinozoさんに、将来ボカロPになりたいと思っている子たちに向けて、先達としてエールをお願いしたいのですが。

Chinozo 好きなものがあったら、がんばれよ……! ……こんなんでいいんですかね!?

--ぜんぜんいいです!(笑) やりながらやりたいことを見つけてきたChinozoさんの言葉なので、とても響くと思いますよ!

Chinozo あとは……「飛び立てば 正解!」ですかね(笑)。

--ありがとうございます!! では、これが最後の質問なんですが、『プロセカ』についてもひと言お願いいたします。

Chinozo これからも、いろいろなセカイをみんなに見せてください。ずっと応援しています! でしょうか。

--僕らリスナーとしては、Chinozoさんのオリジナル楽曲をさらに聴きたいと思っています。

Chinozo あ! そういういやらしいコメントでもいいんですか!?(笑)

--もちろんです!

Chinozo では改めて、みんなに新しいセカイを届けられるよう、お声掛けいただけるようであれば全力でがんばらせていただきます!!

--楽しみにしております! 本日はお忙しい中、本当にありがとうございました!!

Chinozo

2018年よりボカロPとして活動。

代表曲「グッバイ宣言」をはじめ、キャッチーな楽曲を中心に様々な楽曲を投稿。

電子的な雰囲気とバンドサウンドを調和させた、クロスオーバーな楽曲が特徴。

ポケモンなどのアニメ主題歌を担当したり、アーティストへの楽曲提供なども多数行っている。

 

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ボカロPインタビュー連載

 

 

1周年ボカロPインタビュー

 

 

タイトル概要

プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク

■対応OS:iOS/Android

■App Store URL:https://itunes.apple.com/app/id1489932710

■Google Play URL:https://play.google.com/store/apps/details?id=com.sega.pjsekai

■配信開始日:配信中(2020年9月30日(水)配信)

■価格:基本無料(アイテム課金あり)

■ジャンル:リズム&アドベンチャー

■メーカー:セガ/ Colorful Palette

■公式Twitter:https://twitter.com/pj_sekai