TOKOTOKO(西沢さんP)さんの曲作りに迫る!
2020年9月のサービスイン以来、コロコロオンラインがひたすら追い掛け続けているセガ×Colorful PaletteのiOS/Android向けアプリ『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』。
2021年10月には1周年を祝した特集を展開し、
さらに2022年10月には『プロセカ』2周年を記念した大特集を実施するなど、担当からほとばしる圧倒的な“プロセカ愛”をカタチにし続けている。
そんなコロコロオンラインプロセカ班がとくに情熱を注いで追っているのが、このゲームの根幹でもある楽曲……そして、それを制作されている“ボカロP”と呼ばれる“才能たち”であります!!
“子どもが将来なりたい職業ランキング”において、ゲームクリエイターやユーチューバーらと並んでボカロPが上位にランクインし、コロコロの読者層との親和性もめちゃくちゃ高いということで、前述のプロセカ1周年特集の際にボカロ界のビッグネームにつぎつぎとインタビューを敢行!! その内容の濃さは業界内外に衝撃を与え、このたび……不定期連載で、さらに多くのボカロPの皆様にご登場いただき、ナマの声をお届けできることになったのです!!
『プロセカ』はゲーム内容はもちろん、楽曲のすばらしさが高く評価されて現在の人気を確立したと言っても過言ではない。それらを生み出したボカロPたちの考えかた、作品への向き合いかたを掘り下げたこのインタビュー連載を読まれることで、ゲームを遊ぶだけでは知りえない情熱や、楽曲に対する想いを知ることができるはずだ。その結果……さらに登場キャラやユニット、『プロセカ』そのもののことが好きになること請け合い!!
そしてインタビューの後半では、“いかにしてボカロPになったのか?”という、将来この道に進みたいと思っている読者の皆様の道しるべになるような質問もぶつけているので、とにかくあらゆる人たちに読んでいただきたいなと!!
さて今回ご登場いただくのは、MORE MORE JUMP!(モモジャン)にオリジナル楽曲『ワールドワイドワンダー』を提供された“TOKOTOKO(西沢さんP)”さんだ。
『ワールドワイドワンダー』が書き下ろされた『MOREMOREMakingXmas』は、花里みのりがキーキャラクターのイベントストーリー。リアルイベントを開催することになるも、実施日がクリスマスのためスタッフが集まらない。そこで、ファンからの協力の申し出メールをきっかけに、広くファンに呼びかけて人を集めようとみのりが提案するも、「裏側を見せたくない」と懸念を示す遥と食い違い……!
そんな、モモジャンのひとつの区切りとも言えるストーリーに書き下ろされた『ワールドワイドワンダー』には、どんな想いが託されているのだろうか? じっくりと聞かせてもらったぞ。
※インタビューはオンラインで実施したものです。
モモジャンが、ギリギリ言いそうな歌詞の秘密
--まずはたいへん恐縮なのですが、簡単に自己紹介をお願いいたします。
TOKOTOKO “TOKOTOKO”っていう名前で活動を始めたのですが、途中から“西沢さんP”と呼ばれるようになりまして。これは、なんて言えばいいのか……いわゆるあだ名みたいなものですね。ボカロPの活動は2009年くらいからですので、かれこれ14年になるんですけど、最近は作家活動のほうが増えてきました。ですのでボカロPとしては……隅っこのほうでやらせてもらっている感じです(笑)。
--2009年というと、ボカロの黎明期といってもいいころですね。
TOKOTOKO はい、そうなんです。……長いだけなんですが。
--いやいやいや(笑)。
TOKOTOKO でもいま思うと、初期の初期に始められたことは自分としてはすごくよかったなって。当時は、ボカロPが仕事になるなんて夢にも思っていませんでしたけど、趣味から発展したことが職業になっているんですから、すごくありがたいです。あのころにボカロPを始めた人は、皆同じように感じていると思いますけど。
▲2014年に投稿されたTOKOTOKOさんの代表曲『夜もすがら君想ふ』。プロセカにも収録されており、鏡音リンとLeo/needが歌唱しているぞ!
--さて、TOKOTOKOさんは今回、『プロセカ』にオリジナル楽曲『ワールドワイドワンダー』を提供されたわけですけど、この依頼を受けたときは率直にどう感じられましたか?
TOKOTOKO 正直なところを言うと、“ボカロPとして”お声掛けをもらえたことが単純にうれしかったです。と言うのも、僕がボカロPとしてもっとも精力的に活動していたのは2013~2014年くらいで、業界的な盛り上がりも凄まじいものがありました。そこから少し落ち着いてきて、僕も作家仕事がメインになっていったのですが、そこにきてひさしぶりに「ボカロ曲を書いてください」と依頼されたので、ありがたいと思うとともに、うれしさがこみ上げてきたんです。
--TOKOTOKOさんのおっしゃる通り、『プロセカ』が登場してから明らかに流れが変わったと思います。
TOKOTOKO 世代が入れ替わっているな……ということをすごく感じるんです。小中学生が熱心にボカロ曲を聴いているみたいですし、一度離れてしまった若い子たちも再び入ってきて盛り上がりに加わっていますし。もちろん、ずっと変わらず聴いてくれている方々たちも居てくれるので、すそ野が広がっているんでしょうね。
--20代前半くらいのボカロPに話を聞くと、小学校の給食の時間にボカロ曲が流れていた……と。
TOKOTOKO うーーーん! 時代のギャップ感じますねえ(笑)。
※MV画面はバーチャル・シンガーver.のものです。
--さて、TOKOTOKOさんが楽曲提供されたのはMORE MORE JUMP!ですけど、この子たちを初めて見たときはどのような印象を持たれましたか?
TOKOTOKO ここ数年、アイドルを題材にしたアプリとかゲームってけっこう出ていますけど、傍から、「アイドルって、ここからどう表現していくんだろう」ということに注目していました。単純に、アイドルになるまでのステップを見せる……というのが王道だとは思うんですが、それを踏まえてモモジャンの子たちにはどういう展開が待っているんだろう……と期待しながらストーリーを読ませてもらいました。
--『ワールドワイドワンダー』が書き下ろされたイベントストーリー、『MOREMOREMakingXmas』はいかがでしたか?
TOKOTOKO おもしろかったですよ! モモジャンはアイドル路線ド真ん中を貫きつつも、ちょっと外した部分……活動の裏側とかを見せてくれることが多いですけど、これが僕にはけっこう刺さるんです。先ほど言った、他のアイドルコンテンツとはちょっと違う、カウンター的なおもしろさを感じることができるので。……でも、僕はすごくおもしろいんですけど、いまの若い子たちがちょっとひねったストーリーをどう読んでいるのか、興味がありますね。『プロセカ』における王道担当は、レオニのイメージが強いですし。
--個人的に、そのレオニとモモジャンのストーリーがとくに好きなんですよね~……!
TOKOTOKO どのユニットも、特徴的でいいですよね。ニーゴなんて、思春期にこれを読んだら絶対に同じようなチームを組みたくなったと思いますもん(笑)。
--さて、『MOREMOREMakingXmas』は花里みのりちゃんがキーキャラクターですけど、彼女についてはどんな印象を?
TOKOTOKO じつはすごくメンタルが強くて、行動力がある子。モモジャンの他のメンバーって一度折れてしまった子たちですけど、そんな彼女たちすら引っ張っていける力がすばらしいなと思いました。こういった行動力の重要さって、大人になったいまでもひしひしと感じるんです。『プロセカ』はもちろんフィクションですけど、読むたびに考えさせられるんですよね。
--みのりちゃんって、“信念の子”ですよね。
TOKOTOKO まさに、おっしゃる通りですね。
▲イベント『MOREMOREMakingXmas』の書き下ろし楽曲としてリリースされた。
--そんなみのりちゃんのストーリーに提供された『ワールドワイドワンダー』ですが、そのテーマや方向性について改めてお聞かせください。
TOKOTOKO 依頼時に、「ライブで盛り上がる曲を」というリクエストはもらっていました。そこを取っ掛かりに、イベントストーリーのプロットを読み込んで組み立てていったんです。その際、テーマに掲げたのが“旅行”。全編を通して“明日をがんばる希望”って感じのことを主張しているんですが、これは、「旅行のような楽しい予定があれば、そこまではがんばれるよな!」という想いから生まれたものです。
--うわあ……! すごくわかります!
TOKOTOKO 僕、別のアーティストさんに曲を提供するときもそうなんですけど、自分の想いと、関係者の想いがリンクしているポイントを探したくなるんです。自分が考えていることとは違う歌詞を書いても響かないと思うし、そもそも筆も乗らないので、まずはしっかりとしたすり合わせをしたいと考えるんですね。今回は、先に言った旅行とか、楽しい予定が積み重なっていって大きな希望になってくれるといいな……と考えて、曲を作っていきました。加えて、モモジャンはネット配信を使って存在をアピールしているので、そこから「どこにでも行ける」をキーワードに“ワールドワイド”という言葉を使うことにしました。で、楽曲の1番は宇宙の話、2番は深海の話、3番は未来の話にしよう……と決めて歌詞を書いていったんです。
--リスナーの声を見ていると、「モモジャンのテーマソングみたい!」っていうものが非常に多いですね。
TOKOTOKO ありがとうございます。そうなればいいなとは思っていたので、うれしいですね。ちょうど、このイベントストーリーでひとつの区切りを迎えたようなので、そういうタイミングで使ってもらえたことがよかったんだろうなと思います。
--『ワールドワイドワンダー』は、印象的な歌詞がとても多い楽曲です。加えて、モモジャンの子たちがふだんは使いそうもないギャルっぽい言い回しもあったりして、そのギャップがめちゃくちゃキュートなんですよね……!
TOKOTOKO ああ、そうですね(笑)。2番のサビで「果報が来るまで寝とけばいいってマジ? いやいや、待てるわけなくね」ってあるんですけど、こうやってわざと崩した歌詞にするのが個人的にも好きなんです。あと、話し言葉をそのまま歌詞に転用するのは昔からちょいちょいやっていまして、これだと親近感が湧きますし、歌い手さんが自分の言葉で歌っている感を出せるので、ここでもハマってくれたなと感じます。
--うんうん!
TOKOTOKO これ、いま言われて思ったんですけど、子どものころにテレビから流れていたモーニング娘。の曲とかが、頭に刷り込まれている気がします。ちょうど世代ってこともあるんでしょうけど、当時つんく♂さんが作られていた曲ってそういう歌詞がすごく多くて、知らず知らず影響を受けていたんだろうな……と思いました。
--それを、モモジャンの子たちが歌っているのがとてつもなくかわいいんですよねえ!
TOKOTOKO それでも、1番はあまりふざけないようにと思いながら書いたんですよね。2番からは、かなり自由ですけど(笑)。
--そんな中、とくにTOKOTOKOさんがお気に入りの歌詞は?
TOKOTOKO モモジャンの子たちがギリギリ言うかも……というところを狙って書いた、「果報が来るまで寝とけばいいってマジ? いやいや 待てるわけなくね」は、やっぱり気に入っていますね。
--まさに、愛莉ちゃんなら、楽曲の歌詞の中ではギリギリ言うか? 言わないか? っていうところを突かれている気がします。
TOKOTOKO と言っても彼女たちも学生ですから、きっちりしすぎない時もあると思うんです。ですので、いいバランスで書けたかなと。あと、「ほら踊れる曲は踊っとくのが楽しむコツ」っていう箇所があるんですけど、これに関しては、僕はあまりそう思わないんです。でも不思議なもんで、音楽に乗せるとそんな気がしてきます。さっき言ったことと矛盾して聞こえるかもしれませんが、自分の価値観と違っても歌に乗せて聴くと、「なんか……そんな気がしてきた!」という謎の納得感を得られることって確かにあって。それが音楽のいいところであり、歌詞のおもしろいところだなと思います。
--僕は個人的に、「会いたい時には会いに行くよ」っていう箇所がすごく好きですね。
TOKOTOKO これも、“アイドル像”というものを僕の中で消化したときに出てきたフレーズなんです。昔から、「誰かに推されないとアイドルとは言えないのか?」という疑問を持っていたんですけど、僕的には、推してくれる人がいなくても自分がそう思っていればアイドルなんだ……と解釈したかったんですね。なので、「会いたい時には会いに来てね」とかではなく、「会いたい時には会いに行くよ」と書きました。たとえば、駆け出しのバンドなんてそうじゃないですか。ファンなんていなくてもライブをするし、それこそバンド3組、観客3人なんてこともザラにありますから。アイドルも、それでいいんじゃないかなって。自分の中に信念があるなら、それはもう、立派なアイドルですもん。
--いまおっしゃられた通り、「会いに来て」じゃなく「会いに行くよ」なのがいいんですよねー!
TOKOTOKO そう思ってもらえてよかったです!
--もうひとつ、2DMVは全編を通して、過去のイベントを彷彿とさせる演出が施されていますよね。
TOKOTOKO 『ハッピー・ラブリー・エブリデイ!』とか、その辺を拾えたらといいなと思って作りましたけど、僕が思っていた以上にMVが膨らませてくれて、イベントストーリーを想起させる演出をつけてくれました。結果としてすごくまとまりのある作品になったので、本当によかったなと思います。
--では改めて、『ワールドワイドワンダー』の聴きどころを教えていただきたいのですが!
TOKOTOKO 歌詞は繋がっていないように見えて、じつはトータルで見ると繋がっている……ってところに気づいていただけたらと思います。前後の話は関係ないように見えるけど、よく読むと……っていう感じになっているので、じっくりと聴いてほしいです。それと、依頼された通りライブをイメージして作った曲なので、サビを楽しく聴いてもらえたらうれしいなと。いま、歌詞のことをいろいろと語りましたけど、これは読みたい人だけが読んでくれればいいです(笑)。もっと単純に、この曲を聴いて楽しい気持ちになってくれたらいいなと思います。
--それにしても『ワールドワイドワンダー』って、どこを取っても“ザ・アイドル”っていう雰囲気を感じます。このアイドルらしさって、どうやったら生まれるものなんですかね……?
TOKOTOKO 僕的には、あまりアイドルっぽい曲を作ろうとは思っていないんですよね。『ワールドワイドワンダー』を作ったときは……じつは、ボカロPとしての僕自身のパブリックイメージを強く意識していました。「きっと自分は、こういう曲を作るボカロPだと思われているんだろうな」というイメージを取り込んで形にしたかったんです。
--ほー……!
TOKOTOKO いちばん知られている僕の曲は『夜もすがら君想ふ』だと思うんですけど、そういった楽曲の雰囲気に寄せていったと思います。加えて、「西沢さんPのバンドサウンド、とくにギターが好き」と言ってもらえることが多いので、電子音やシンセサイザーはあまり使わず、ほぼほぼバンドサウンドで仕上げていきました。そういう意味では、僕の新しい名刺になる曲だと思います。『プロセカ』で新しいリスナーがたくさん入ってきていると思うので、「僕はこういう作家です」ということを強く押し出せればいいなと。そういう意味でも、あまりアイドルっぽさは意識していませんでした。
--そんな『ワールドワイドワンダー』ですけど、制作日数はどれくらいに?
TOKOTOKO じつは……お話をもらってから、しばらく手をつけられなかったんです。確か……2、3ヵ月くらい。と言っても、頭の中ではどんな曲にするのかを何となく考えていました。さっきデータを見てみたんですけど、6月半ばから作り始めて、7月末くらいにはフル尺のデモが完成していたので……。実質、2ヵ月弱くらいでしょうか。
--制作難度的にはいかがでしたか?
TOKOTOKO 思い返すと、書き直したりもしているんですよね。
--あ! そうなんですね!
TOKOTOKO はい。モモジャンの過去のイベントストーリーを読み、40mPさんが作られた『Color of Drops』を聴いて、「こういう、ミドルテンポで踊っている感じ、すごくいいな」と感じて、ちょっとテンポ感の遅い曲を書いていたんです。でも、できあがった後に依頼を読み返したら、「ライブで盛り上がれる曲」、「タオルを回せるみたいな曲」って書かれていて(笑)。「あ! これ、違うかも!!」と思って、ちょっと書き直しました(笑)。とはいえ、先に作ったしっとりとした曲も、別のところで使ったのでよかったです。
▲2DMVでは、ファンなら思わずニヤリとするような場面が……!
--『ワールドワイドワンダー』が、ゲームに実装されたのを初めて見たときはどう思われましたか?
TOKOTOKO リズムゲームとしてはどうなんだろう……と、すごく気になっていました。もちろん、作っていたときからそれは意識して、メロディーとは違う動きをする楽器を入れたり、“決め”を作ったりしたんですけど、けっきょく実装されるまで手触りはわからないですよね。ですので不安もありつつ、楽しみにしていました。結果、ユーザーの皆さんに楽しんでもらえる曲になったようなので、作り手としてはホッとしています。
--TOKOTOKOさんご自身はプレイされたのですか?
TOKOTOKO それが僕、めちゃくちゃ音ゲーが下手なのでやっていないんです(苦笑)。
--ああ、そうなんですね!
TOKOTOKO ボカロPにもめっちゃやっている人がいたりぜんぜんやらない人がいたり、それぞれですが、僕は完全に後者です。ストーリーは楽しく読ませてもらっているんですけど、リズムゲームのほうはぜんぜんで……。
--ではゲームに実装後、いろいろな反響があったと思うのですが、印象に残っていることはありますか?
TOKOTOKO この曲が発表されたとき、聴いた瞬間に「西沢さんPだ!」とわかった人がけっこういたみたいなんです。そのとき、昔から僕の曲を聴いてくれていた人に刺さるものができたんだと思えて……うん、うれしかったですね。また、先ほども言いましたけど、ボカロを好きになる入口のような曲になったんじゃないかとも思っているので、「『ワールドワイドワンダー』をきっかけにボカロにハマった!」なんて言われるのも作者冥利に尽きます。
--では、この曲が好きな人に向けてひと言お願いできますでしょうか?
TOKOTOKO 末永く、モモジャンの代表曲のひとつと思って聴いてもらえたら、こんなにうれしいことはないです。いつかリアルなライブで『ワールドワイドワンダー』を楽しんでもらえたらと思います!
--ありがとうございます! ではここから、将来の夢として「ボカロPになりたい!」と思っている人たちのために用意した質問にお答え願えればなと……! まずは……TOKOTOKOさんが、ボカロPになられたきっかけを教えてください!
TOKOTOKO 大学生のとき、アマチュアバンドをやっていたんですがほどなくして解散してしまって、ヒマになったんです。そこで、「何かひとりでやれることはないかな……?」と探し始めたところ、ニコニコ動画が流行り始めたんです。そこで、いわゆるオタク界隈で注目され始めたのがボーカロイドでした。
--その当時のこと、僕もよく覚えてます。
TOKOTOKO それを見て好奇心から「ちょっとやってみようかな」と思い、本当に“なんとなく”なきっかけで始めてみました。当時はインターネットの情報も少なく、機材も初心者セットみたいなものは売っていなかったので、決してハードルは低くなかったんですけどね。ちょっとずつそういうものも集めていって、手探りで曲を作り始めたんです。そんな状態だったので、初期に作った曲は聴けたもんじゃないですけど(苦笑)。
--納得できる曲になってきたのは、いつごろなんですか?
TOKOTOKO 音楽らしき形になってきたのは……たぶん、2013年とか2014年ごろだと思います。それまでは、ドラム、ベース、ギターが入っていればなんとかなるだろ……くらいに思っていて、とにかく音を詰め込んでいたんです。でも、2013年ごろから「これじゃダメだな……!」と考え始めるようになって、徐々に形になっていったように記憶しています。……まあいまでも、「これでいいのかな……?」と思うことはめちゃくちゃ多いんですけど(笑)。
--そんなTOKOTOKOさんにぜひお聞きしたいのが、ボカロPになるために必要なスキルです。何か思いつくものがありましたら、ヒントとして教えてください!
TOKOTOKO 楽器は何かしらできたほうがいいと思いますし、楽譜も読めるに越したことはないです。とくに楽器は、ピアノかギターができれば、曲作りにかなり活かせると思います。何と言うか……その楽器と歌さえあれば弾き語りができるようなものを身に付けるといいんじゃないかな、と。僕はギターですけど、これのおかげでポップスに関してはけっこう作りやすくなっていると思います。
--なるほどなるほど。
TOKOTOKO とはいえ、意を決して始めたとしても、最初はうまくいかないことが当たり前だと思います。それでも失敗を恐れず、できた作品はしっかりと発表していったほうがいいです。いまは、最初から完璧なものを作って当然で、再生数が伸びないと失敗だ……なんていう風潮がありますけど、そんなことは気にする必要ないです。失敗して反省する……という経験を重ねていくことこそ、この世界では重要なんじゃないかと思います。
--それは、ボカロPを目指す少年少女にとって、すごく力強いメッセージだと思います。ありがとうございます!
TOKOTOKO ……でも、「いま若者に戻ってボカロPとしてデビューしろ」と言われたら、すごくイヤです(苦笑)。あらゆることのハードルが高すぎるので。僕がボカロを始めた黎明期って、上手じゃなくても聴いてもらえるっていう風土が確実にあったので、なんとかやってこれた気がします。
--ちなみに、TOKOTOKOさんがギターを始めたのはいつごろなんですか?
TOKOTOKO 中学生のころですかね。父親がギターを持っていて、ゆずとかスピッツがすごく好きで弾いていたんです。それをマネして、弾き語りの練習から入りました。でも、ギターやピアノにこだわらず、「曲ってこういうふうにできているんだ」と実感できる楽器だったらなんでもいいと思いますよ。慣れてきたら、既存の曲をマネたり、分解したりして、少しずつ勉強していくと近道かもしれません。僕も、友だちとバンドを組んでやっていましたけど、そのころにいろいろな楽曲をコピーしたことがいまに繋がっていますもん。そうやって数を重ねることで、曲の設計図が頭の中に浮かんでくるようになると思いますよ。
--とても具体的で、ありがたいですねえ……!
TOKOTOKO そして、気づくと思います。自分がいちばん何をしたいのか、ってことに。曲を作りたくなる人、演奏がもっとも楽しいと思う人、作詞をしたくなる人--。もしかしたら、プロデュースする側に回りたくなったり、歌い手になりたくなるかもしれません。音楽と言ってもいろいろな分野があるので、型にハマらず、いろいろなことに興味を持ってもらいたいですね。
--最初からターゲットを絞りきらなくていい、と。
TOKOTOKO おっしゃる通りで、可能性を狭める必要はないですよね。作曲だけがすべてじゃないですから。
--好きという気持ちがあれば、続けられますもんね。
TOKOTOKO そう思います! こういう世界って、すごく高いハードルがあると思い込んで、尻込みして始めぬまま終わってしまう人もいるんです。まずは遊び感覚くらいで飛び込んでみるのがいいと思います!
--わかりました! ちなみに、ボカロPになって良かったと思うこと、何かありますか?
TOKOTOKO いま楽しく生活できていることが、いちばんよかったことですかね。さっきも言った通り、ボカロを始めた当時って、お金になるなんて考えてもいませんでした。
--はい。
TOKOTOKO あくまでも、ヒマな大学生の趣味の延長……って感じだったんですけど、就職活動をきっかけに”自分の好きな分野でチャレンジしてみよう”と決め、音楽の道に進むことにしたんですよね。そこから少しずつ仕事をもらえるようになって、いまに至ります。いま思えば、引き返せないところまで入ってきちゃったので続けられたのかなとも感じるんですけど、いまでも音楽を楽しめていることは間違いないので、「ボカロPになってよかった!」とはっきり言えますね。
--そんなTOKOTOKOさんから、将来ボカロPになりたいと思っている全国の少年少女に向けてエールをお願いしたいのですが!
TOKOTOKO まず、始めましょう! 行動しないことには、何も変わらないので。やってみた結果がどうなるのかはわかりませんけど、絶対にやること自体に価値があるので。
--モモジャンのみのりちゃんも、そうですもんね。
TOKOTOKO そうですね! 本格的にやろうと思ったらパソコンは必要だし、ソフトもそろえなきゃですけど、いまはスマホやタブレットがあれば作曲ができる時代ですからね。いま流行っている曲を聴いている少年少女が、将来どんな楽曲を作るのか……? 僕も楽しみにしています。このインタビューを読んだ子どもたちがボカロPになって、すごい曲を発表したりしたら、めちゃくちゃおもしろくないですか?
--実際、そういう可能性もありますからね! ありがとうございます! では最後に、『プロセカ』についてもひと言お願いいたします。
TOKOTOKO 登場人物がついに進級するというので、すごく楽しみなんです。こういったコンテンツで進級なんて聞いたことがないので、一大イベントになりますよね。そこからさらに妄想を膨らませていくと……いつか彼らは卒業するの? どうなっちゃうの?? と、不安とワクワクが止まらなくなるんです。そういったところで、ユーザーといっしょに楽しめたらなと思います。
--わかりました! 本日はお忙しい中、本当にありがとうございました!
TOKOTOKO(西沢さんP)
2009年夏よりVOCALOIDを用いた楽曲制作を開始する。
主にギターを用いたバンドサウンドで、ポップでキャッチーな楽曲を手掛ける。
様々なアーティストに楽曲提供を行う他、自らボーカリストをプロデュースした作品も発表している。
プロセカ収録楽曲: 「ワールドワイドワンダー」「夜もすがら君想ふ」「Booo!」
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ボカロPインタビュー連載 |
1周年ボカロPインタビュー |
タイトル概要
プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク
■対応OS:iOS/Android
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■Google Play URL:https://play.google.com/store/apps/details?id=com.sega.pjsekai
■配信開始日:配信中(2020年9月30日(水)配信)
■価格:基本無料(アイテム課金あり)
■ジャンル:リズム&アドベンチャー
■メーカー:セガ/ Colorful Palette
■公式Twitter:https://twitter.com/pj_sekai