By 神結
クリーチャーが具現化される世界で、体験型イベント『ミステリーデュエマツアー』へ招待されたイオナ。
高森財閥が持つ洋館へと案内されたが、主催である高森麗子自身の到着が遅れることになってしまった。
他の参加者たちとデュエマをして待つことになったが、何やら参加者同士はそれなりに因縁があるらしく、不穏な空気になってしまう。
そして翌日朝、参加者の一人であった出羽リンリが《卍 デ・スザーク 卍》のカードとともに、胸にナイフを突き立てられて死亡していた。周りには魔導具を模した道具が散らばっており、「無月の門」によるデ・スザーク降臨の儀式が行われていたようにも見えたが――
・登場人物紹介
鏡(かがみ)ミライ : デュエマをメインとした動画投稿者・配信者
出羽(でわ)リンリ : デュエマの大会主催者で、鏡の友人。死亡。
薬子(くすこ)イズミ : 鏡ミライのマネージャー、及び鏡の動画の編集担当
甲斐(かい)カイガ : デュエマのイラストをメインに活動するイラストレーター
新宮(にいみや)シンク : 我我我轟轟轟(がががごごご)新聞の記者で、デュエマ担当
†
この洋館はスマホの類いの電波が届かなかった。唯一、管理室にある連絡用機器で、高森麗子とのみ連絡を取ることが可能だった。そういうわけで、森燃イオナは管理室にいた。洋館の管理人から「お嬢様がイオナ様とお話がしたいとのことです」と言われたためだ。
「……なるほど、そうですか」
事の一部始終を話すと、麗子は流石に落ち込んだ様子だった。
「一応念のため聞くけど、これが『ミステリーデュエマツアー』の演出の一環であるということは――」
「ないですよ、もちろん。演出でもドッキリでもないです」
どうやら、正真正銘の殺人事件のようだった。
「それで、事件の様子についてもう少し詳しく教えてもらってもいいですか?」
「うん」
イオナは順番に説明をしていった。昨夜の不穏な雰囲気のこと、そして翌朝の言動。
出羽リンリの死の状況、周囲に置かれていた”魔導具”。部屋には内側から鍵がかかっていたこと、そして朱雀マオの名前。
「事件があったのは昨夜、ということでしょうか」
「おそらくは。朝ではないと思う」
参加者たちに話を聞くと、昨晩食堂から出て行ったあとに出羽の姿を見た者はいなかった。おそらく夜の間の何処かの時間で、出羽は殺害されたのだろう。
「そして、内側から鍵ですか。要するに密室で起こったわけですね」
「一応マスターキーを使えば……」
「そうですね。ですが、マスターキーは管理室で保管されています。そして管理室の入退場は記録されていますし、その記録は私の方で閲覧できます。昨夜の状況について確認しましたが、管理人さんは一晩中管理室にいました。そして鍵もそこで保管されています。その状況でマスターキーを持ち出すのは無理ですし、管理人さん自身の部屋にいた記録があるので、犯行は無理ですね」
「となると……」
「ええ、参加者の誰かが、ということになるでしょうね」
「やっぱりそうなるのか……」
もとより、外部からの犯行はほぼ不可能だ。昨晩この洋館に泊まった誰かによる犯行、そう判断していいだろう。
管理人さんと被害者の出羽自身を除いて、洋館にいるのは残り6人。そのうちの誰かが……。
「ところで、これは私しか知らない重要な話なんですが」
「何です?」
「実はこのイベントに招待したのって、イオナさんとマナさんを含めて6人だけなんですよ」
「え?」
それだと一人、合わないことになる。
「私は6人と指示……正確には貴方たち二人は確定として、残り4人と指示をしていたんですよ。それが7人になっていて、なんかのミスかと思ってスルーしていましたが、こういうことがあると流石に怪しいですね」
「……となると、何かしらの手段を使って紛れこんだ7人目が出羽を?」
「確定ではありませんが、その可能性はかなりあると思います。それについてはこちらで調べてもらっています。何かわかったらお知らせします」
麗子は、少し憤ったように言う。
「私もすぐ現地に向かいたいのですが、こちらも都合が悪いことに今日いっぱいは動けそうにありません。警察もこの豪雨の中でヘリは飛ばせないでしょう」
「つまり、僕たちはもうしばらくここで時を過ごすことになる、と」
「そういうことです」
申し訳ないですけど、と彼女は付け加えた。
「それでイオナさん。貴方にしか頼めないことがあるんですけど、いいですか?」
「頼めないこと?」
「そんなの無理だよ、と仰るかもしれませんが……」
彼女はハッキリと言った。
「この事件、イオナさんの手で解決してくれませんか?」
「え?」
「いま洋館にいる人たちの中で、頼れるのは貴方しかいないんですよ」
「いやいやいや」
随分と乱暴な話だ。
「だいたい僕だって容疑者の一人なんですよ?」
「どうせイオナさん、昨晩はほぼマナさんとデュエマでもして遊んでたんでしょ? 貴方のアリバイは彼女が、彼女のアリバイは貴方が証明してくれるんじゃないんですか?」
「……まぁ」
そう言われるとそうだが。
「それに私だって目が節穴ではないので、貴方がそんなことをしない人であることくらいはわかっているつもりです。そしてこの中で、事件を解決してくれるかもしれない人だ、ということも」
「買いかぶり過ぎでは?」
「そうでしょうか? それにいまは乗り気ではないかもしれませんが、現状をマナさんは不安に思っているはずです。彼女の不安を解消するために謎を解く、そうであればいかがでしょうか?」
「…………」
そして彼女は、こう付け足した。
「私だって、祖父との思い出ある別荘を殺人事件の現場にされて不愉快極まりないんです。ですが、いまの私に何かすることはできない。イオナさん、どうにかよろしくお願いします」
結局、僕の方が折れた。
「……わかった。じゃあその代わり、一つ調べておいて欲しいことがあるんだ」
「いまの私にできることなら、なんなりと」
†
麗子と話をした後、僕は応接室に戻った。応接室には5人全員揃っていた。
「イオナさん、麗子さんは……?」
「道路の復旧が難しそうなのと、この豪雨で動けないって。同じ理由で警察も無理でしょう、とのことだった」
「じゃあつまり……」
「少なくとも、この館でもう一晩は過ごす、ってことになる」
「そうですか……」
マナは流石に不安そうであった。それも無理はない。
だとしたら、早く謎を解かねばならない。
イオナは顔を上げる。応接室にいた全員を見渡せる状況だ。
「お願いがあります。僕はこの事件の解決を先ほど、高森より依頼されました。皆さん、どうか協力してくれませんか?」
「ほーん、面白いですね」
最初に口を開いたのは、新宮シンクだった。彼女は確か、新聞記者だったはずだ。
「天才プレイヤーの名探偵デビューというわけですか。私はもちろん、協力するのはやぶさかではありませんよ。ただ一応、出羽リンリが自ら《卍 デ・スザーク 卍》を降臨――つまりは具現化させようとして失敗した、あるいは背景ストーリーよろしく降臨直後に自分が殺された、そういうストーリーも組めちゃうわけです」
まぁ一応、そういう可能性もある。
「……実際」
彼女は話を続けた。
「出羽リンリという男の最期は、そういうみっともないものだった……そういう方がみんな幸せになれたりするんじゃないですか? ねぇ、鏡さん?」
「………」
話を向けられた鏡は、黙っていた。
「新宮さん、それはどういうことですか?」
イオナの問いに、新宮は不敵に笑ってみせた。
「簡単な話ですよ。ここにいる皆さん――イオナさんとマナさんは別かもしれませんが、皆さん何かしら出羽リンリについて思うところが、なんなら死んでくれて本当は嬉しいと思っているんじゃないですか?」
「おい!」
鏡が怒りに震えたように、立ち上がった。新宮を強く睨んでいるか、当の新宮はどこ吹く風といった表情をしている。
「そうですよねぇ、鏡さん。特に貴方は出羽さんとは付き合いも長かった。それなりに一緒に、秘密とかも共有されていたんじゃないですか?」
「どういうことですか、鏡さん?」
イオナは鏡の方を見る。鏡は怒っているのか、顔が上気しているように見えた。
「まずその新聞記者をこの部屋から追い出せ。話はそれからだ」
「まぁ、私がこの部屋から出て行くのは構いませんが」
「じゃあ、こうしましょう」
おそらくいま、自分は相当苦い顔をしているはずだった。
「一旦、一人ずつお話をしてもらえませんか? 順番に」
一同は顔を見合わせた。結局、イオナの提案を全員が受け入れることとなった。
†
全員との話が終わったあと、応接室は一旦解散となりそれぞれの部屋へと戻った。
イオナはベッドの上に転がりながら、聞き取った話を反芻していた。
「それで、イオナさん的にはどうなんですか?」
「……わからん。誰もが出羽を殺せてしまうし、その理由もありそうに見える」
まず鏡ミライ。彼は「オレは絶対に殺してないからな」と強く言った上で、次のように話をしていた。
いわく、確かにアイツとの付き合いは長く互いに隠し事もある、と。ただ何より、自分と付き合っている薬子イズミをアイツが口説こうとしているのが一番気に入らなかった、でもだからといって殺しはしない、と。
「あー、あの二人は付き合ってたんですね」
「まぁ、その点については甲斐さんも言ってたからな」
もうひとつ、気になることがあった。それは甲斐が言っていた「朱雀マオ」という人物だ。
鏡が言うには、マオはデ・スザークを使うのが上手く、またデッキを作るのも上手いプレイヤーだったという。知り合いではあったが別にそこまで仲が良かったわけではなかった、CS会場で会ったら普通に話すくらいだった、とのことである。
もちろん、彼の死は残念に思っている、と。
「で、薬子さんか」
薬子イズミが鏡の恋人というのは事実のようだった。その上で彼女は出羽とも二股をしている、と甲斐は昨日言っていた。本人いわく、友人としての交流はあったものの、別に最初からその気はなかった、言い寄られていて困ってもいた、とのことだったが。
「迷惑してる、って感じではなかったですけどね」
「それは僕も思ったよ」
「それに自分の彼女が取られそうになったら、鏡さんからもう少しなんか言ってもいいんじゃないですか?」
「だよねえ……」
見た限り、薬子と出羽は普通に接しているように見えた。そして鏡から出羽に直接咎めていたわけでもなかった。
その上で、鏡と出羽の折り合いは悪そうだった。
「……やっぱり、何か隠してるよな」
新宮の言っていた“秘密の共有”はありえそうな話だ。仮に出羽が鏡の弱みを握っていたのだとしたら、鏡が出羽に強く出られないことには説明がつく。
「で、次は甲斐カイガさんね」
いわく、鏡にはお世話になってるらしいが出羽は嫌いだった、とハッキリ教えてくれた。
以前、出羽の主催する大会に甲斐は参加したらしいが、その際に甲斐はどうも不正行為をしたらしかった。出羽はその件でずっと甲斐を揺すっていたらしく、大会のイラストなども無償で描かされていたらしい。自業自得ではあるが、嫌う理由としては違和感はなかった。
そして鏡と付き合っているのに出羽とも関係を持っている薬子についても、嫌いだと言うのだ。
本来このイベントにも来たくはなかったが、鏡から誘われたので参加したとのことだった。
「確か『朱雀マオの呪いだ!』と言ってたのもこの人ですよね?」
「うん」
朱雀マオと甲斐は比較的仲が良かったらしく、彼から話を聞くことはできた。鏡の言うように彼と言えばまずデ・スザークで、その上で優秀なデッキビルダーでもあったという。色々なデッキを作っていたものの、しかしある日を境にばったりとデッキ制作をやめてしまったらしい。そしてその後、不意に事故死をしてしまった、という。
その詳細について聞いてみたが、そこは口をつぐんでしまった。
「でもおかしくないですか? 仮に事故死だったとして、あの事件を見て『朱雀マオの呪いだ!』とはならなくないですか?」
「そう、そうなんだよ。でもそれについて聞いてみたけど、納得できる話はなかった」
「この人も結局、何かを隠してるってことですか?」
「デッキを作ることをやめたのと、かなり関係がありそうな気がするけどね。まだわからない」
そして最後に新宮シンク。
「……この人については、謎が多い」
「え、そうなんですか?」
「高森麗子が言ってたけど、ミステリーデュエマツアーの参加者として募集したのは僕らを含めて6名だったらしいんだ。ところが、実際は7名いた。他のメンバー同士の繋がりを考えると、明らかにこの人だけ浮いている」
実際、他のメンバーの話によると彼女のことを知っている人はいなかった。
「じゃあ、新宮さんが犯人で……」
「可能性はある。でもまだわからない」
出羽と他のメンバーとの因縁を指摘したのは彼女だった。だがその詳細を聞いても、「別にそう思っただけですよぉ」で済まされてしまった。明らかに、この人は何かを知っているし、その上で何かを隠している。
それにわざわざ、鏡を標的にした理由はなんなのだろうか。もし、そこに何かしらの意図があるとしたら……。
「そしてもう一つ大事な話だが、昨日の夜にアリバイが明確なのは僕とマナだけだ」
「誰でも出羽さんを殺害できる、ということですか」
「そうなる」
だが事件は密室で起こっている。
犯人が「無月の門」の儀式を行い、具現化した《卍 デ・スザーク 卍》によって出羽を殺害した――と考えるのがいまのところ他のメンバーたちの考えていることである。
けれどもその説は、いまいちしっくりこなかった。
「とりあえず、もう一回犯行現場の確認をしてみよう。何かわかるかもしれない」
「そうですね……」
出羽の部屋は、事件を発見したときのままにしてもらっている。現場に戻ると言うことは、再び死体と対面することになる。
「マナは無理しなくていい、部屋にいてくれて構わないよ」
「いえ、大丈夫です。私もイオナさんのお役に立ちたいですから」
†
二人は、出羽の部屋を訪れた。
《卍 デ・スザーク 卍》のカードごと突き刺されたナイフ、そして鋏や燭台、鏡面台といった魔導具を模した道具たちがその周囲に散らばっていた。
「ねぇマナ、一つ質問なんだけど」
「なんでしょうか?」
「《卍 デ・スザーク 卍》って部屋の鍵閉めると思う?」
「無理じゃないですか? そもそも具現化されたクリーチャーたちでも、デュエマのテキストに関わること以外はできないですよ」
となると、殺害、という行為が自体が実行可能なのかも怪しい。プレイヤーにダイレクト攻撃することは可能としても、それが死を伴ったら洒落にならない。だとしたら――
「これは見立て殺人ということか」
「見立て殺人?」
「文字通り、何かに見立てて殺害することだよ。今回の場合、《卍 デ・スザーク 卍》の召喚に見立てていて……」
だが見立て殺人は、裏に何か別の意図がある場合が多い。となると、やはり朱雀マオの呪いなのだろうか? そもそも何故、朱雀マオは人を呪うのか。
そしてやっぱり、密室の謎も残る。
改めて、魔導具たちを見る。すると、不思議な点がいくつかあった。
「この鏡面台、脚に何か紐のようなもので引っ張られた痕が……」
「ほんとだ。床もなんかこの辺が脚で引っ掻いた感じになってますね」
もしそうならば……。
イオナは燭台の付近をじっくり観察する。蝋は溶けて固まっていることから、火が付いていたようだった。
よく見ると、小さなものだったが焦げた黒い燃えカスのようなものが床に複数落ちていた。
もし、何かを意図的に燃やしたのだとしたら……。
「もしかして……」
イオナは出羽の死体を確認する。
「やっぱりそうだ、首に何かが締まったような痕がある。紐かロープか、何かだろう。出羽はきっと、首を絞められて殺されている」
「え? ナイフを突き立てられて死んだんじゃないんですか?」
「それは演出だろうね。ただ抵抗した痕はなさそうだから、どっちにしろ夕飯に何かは……」
「イオナさん、何かわかったんですか?」
「うん、密室の謎は解けたかもしれない」
「え、それなら犯人も……」
「いや、それはまた別かな」
一つ、厄介なことがあった。
「このトリック自体が、誰にでも実行可能なトリックなんだ。そして、昨夜は全員にアリバイがない」
それはつまり、犯人捜しが暗礁に乗り上げたことも意味していた。別な視点から、考えなければいけない。
しかしちょうどそのタイミングで、助け船もやってきた。管理人さんが小走りに、部屋の前へとやってきたのだ。
「ここにいましたか、イオナ様。お嬢様から至急でと、連絡がありました」
†
イオナが麗子に依頼していたのは、朱雀マオに関する調査だった。
「この人、2ヶ月前に事故死しているんですよ」
「うん、それは聞いた」
「ですが少し、興味深い情報がありまして。彼は確か、デ・スザーク使いでありながらデッキビルダーとしても著名だったんですよね?」
「どうも、そうらしいね」
「いま管理室のモニターに画像を2枚送るんで、ちょっと見て貰ってもいいですか?」
直後、モニターに画像が2枚表示された。どちらもデッキリストだった。それも、ほとんど構築は一緒だ。
だた1枚は動画のスクリーンショットのようで、もう1枚はデッキ作成アプリか何かで作ったような画像だった。
「これは一体?」
「これ、右のデッキアプリの方が生前のとあるCSで朱雀マオが使ったリストです。で、左の方がその2日後に鏡の動画チャンネルで上がったデッキです」
「朱雀のデッキを、鏡が紹介したということ?」
「私もそう思ったんですが、普通デッキ紹介動画って制作者とか表示するじゃないですか。ですがこのデッキ、鏡は自分で作ったと言ってるんですよ。ビルダーのイオナさんに聞きたいんですけど、デッキ構築がここまで被ることってあります?」
「デッキ構築自体が被るのは別に珍しくないけど……」
だがイオナが改めて構築を見ると、『たまたま被った』と言うには難しいものがあった。というのも、朱雀の作るデッキが、ちょっと常人の発想とは違うのだ。
現代の一般的なプレイヤーは比較的4×10みたいなデッキリストを好むが、朱雀のそれは一見用途の不明なカードが複数種、1枚ずつ入っている。
「朱雀マオの作ったデッキはかなり個性的に見えるし、常人がそうそう思いつくものでもないよ。鏡が朱雀と全く同じ発想でデッキを作ったとも思えない。CSで実際に見た、ということだろうか」
「ちなみに、朱雀の参加したCSにこの日鏡は参加していないこともわかっています」
「だとしたら本人から聞くしか……」
たが、ふと気付いた。
いや、そもそも鏡は朱雀マオとは「そこまで関わりがなかった」って言っていた。妙な話である。
「……ちなみに、朱雀の事故死以降で鏡の動画に変わったことってあった?」
「いえ、特には。強いて言えば、その後だんだん編集にこだわるようになったかな、くらいしか」
「あー、その辺りで薬子さんが入ったのか」
「そうみたいですね」
「なるほど、有益な情報ありがとう。また何かわかったら伝えてくれ」
イオナは部屋に戻った。そこにはマナが待っていた。
どうやらマナは、カードを弄っているらしかった。
イオナは再び、ベッドの上に寝転がる。
「イオナさん、何かわかりましたか?」
「いや、あと少しな気がするんだけどなぁ。パズルのピースが、1個どっかにいっちゃった感じ」
「あー、デッキのパーツのあと1枠が決まらない感じの?」
「うーん、それはちょっと違う気がする。どちらかというと、決まらないというよりかは見つからない感じかなぁ」
「うーん、難しいですね」
マナは何やらデッキを組み替えているようだった。
「私もいまデッキの改造をしているんですけど、何のパーツをどこのデッキに使っているか覚えてなくて……」
「まぁ、よくあるよくある。《生命と大地と轟破の決断》とか《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》とか、いまどのデッキで使っているのか把握してないね」
そこまで言って、ふと気が付いた。
いや、待てよ。どこのデッキに何を使っているのか、把握している……?
本当に、誰でも可能なトリックだった……?
「……そうか、そういうことだったのか」
「え、どうしたんですか、イオナさん」
「わかった、わかったよ全てが」
「えええ、そうなんですか?」
「マナ、至急皆を応接室に集めてくれ」
「っていうことはつまり……」
「ああ、辿り着いた」
一つ、息を吐いた。
「謎が全て、解けた」
(デュエマ殺人事件 FILE.3 へ続く)
神結(かみゆい)
Twitter:@kamiyuilemonフリーライター。デュエル・マスターズのカバレージや環境分析記事、ネタ記事など幅広いジャンルで活躍するオールラウンダー。ちなみに異世界転生の経験はない。
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