【プロセカ】ボカロPに直撃! “オゾン”さんが語る『プロセカ』と、プロセカNEXT”採用楽曲『しっくおぶはうす!』について!【ボカロPインタビュー企画 #28】

オゾンさんの曲作りに迫る!

 2020年9月のサービスイン以来、コロコロオンラインがひたすら追い掛け続けているセガ×Colorful PaletteのiOS/Android向けアプリ『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』。

 2021年10月には1周年を祝した特集を展開し、

『プロセカ』1周年記念特集は下記の画像をクリック!!
 

 さらに2022年10月には『プロセカ』2周年を記念した大特集を実施するなど、担当からほとばしる圧倒的な“プロセカ愛”をカタチにし続けている。

『プロセカ』2周年記念特集は下記の画像をクリック!!
 

 そんなコロコロオンラインプロセカ班がとくに情熱を注いで追っているのが、このゲームの根幹でもある楽曲……そして、それを制作されている“ボカロP”と呼ばれる“才能たち”であります!!

 “子どもが将来なりたい職業ランキング”において、ゲームクリエイターやユーチューバーらと並んでボカロPが上位にランクインし、コロコロの読者層との親和性もめちゃくちゃ高いということで、前述のプロセカ1周年特集の際にボカロ界のビッグネームにつぎつぎとインタビューを敢行!! その内容の濃さは業界内外に衝撃を与え、このたび……不定期連で、さらに多くのボカロPの皆様にご登場いただき、ナマの声をお届けできることになったのです!!

 『プロセカ』はゲーム内容はもちろん、楽曲のすばらしさが高く評価されて現在の人気を確立したと言っても過言ではない。それらを生み出したボカロPたちの考えかた、作品への向き合いかたを掘り下げたこのインタビュー連載を読まれることで、ゲームを遊ぶだけでは知りえない情熱や、楽曲に対する想いを知ることができるはずだ。その結果……さらに登場キャラやユニット、『プロセカ』そのもののことが好きになること請け合い!!

 そしてインタビューの後半では、“いかにしてボカロPになったのか?”という、将来この道に進みたいと思っている読者の皆様の道しるべになるような質問もぶつけているので、とにかくあらゆる人たちに読んでいただきたいなと!!

 さて今回ご登場いただくのは、楽曲コンテスト“一緒に作ろう! 第5回楽曲コンテストプロセカNEXT”の採用曲『しっくおぶはうす!』を手掛けられた“オゾン”さんだ!

 コンテストのテーマ“スピード感のある曲”にがっちりとハマる楽曲だが、その歌詞を見ると、まるで現代社会に向けた問題提起をするかのような、若者の怒り、叫び、悲しみといった感情があふれていて……!

 「コロナ禍世代の若者の気持ちを代弁している」とまで言われる『しっくおぶはうす!』は、いかにして誕生したのか??

※インタビューは感染対策を徹底して行っております。

書き殴った歌詞の衝撃

--オゾンさんはコロコロ初登場! ということで、たいへん恐縮なのですが簡単に自己紹介をお願いします!

オゾン ボカロPをやっているオゾンです。ロックからバラード、EDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)まで、表現したいものに合わせて曲調を変えて、自分らしさを発揮しています。どうぞよろしくお願いいたします!

--ボカロPになられたのは、いつくらいで?

オゾン 2017年が初投稿だったと思うので、そこがスタートになりますね。

--6年前か……。となると、かなりのキャリアを積まれてきましたね。

オゾン そうなりますねー。自分的にははまだまだ新人だと思っているんですけど、実際にいろいろな人に、「キャリア長いですね!」と言われる年代になりました。

--そんなオゾンさんのことをインタビューに合わせてリサーチさせてもらったんですけど、なんでも……プロテインとウォーキングにハマっておられるとか。

オゾン はい、そうなんです(笑)。プロテインは、あらゆることから人々を救ってくれると思っています!

--自分もプロテインとウォーキングで、ここ半年くらいで10キロ以上痩せたので、親近感が湧きます。

オゾン 僕は、ウォーキングを1ヵ月くらい前から始めて、最近はジョギングやジムでの筋トレも併用しているんです。今日の段階で、9キロ減くらいになったかなぁ……。結果が出ているので気持ちをポジティブにしてくれて、創作もめちゃくちゃ進むようになったので、いまジョギングとプロテインが僕のトレンドなんです。

--おおお! キチンと活動につながっているんですね!

オゾン でも、じつは今年の冬に救急車で運ばれるようなケガをしてしまい、いただいていた仕事も全部ストップしてしまったことがあるんです。退院してから大慌てで追い込みに入ったんですけど、ちょっとやりすぎて寝ようと思っても寝られない状態になってしまい……。でもそのときは、「寝られないなら仕事をしていればいいや」とほぼ寝ずに創作に充てていたんですけど、今度は頭が真っ白になって何も浮かばなくなってしまったという……。

--むむむ……。

オゾン 僕、ふだんは夜勤の仕事をしながらボカロPをやっているので、とにかく“日光を浴びる”ということをしていませんでした。さすがにマズいと思って病院に行ったらお医者さんに、「日光を浴びて、ちょっとでもいいから運動をしましょう」と言われました。

--言ってみれば当たり前のことですけど、クリエイティブな仕事をしていると陥りがちなんですよね……! 自分もふだんは家に籠って、カビみたいな生活してますもん……。

オゾン 絵にかいたような不健康生活ですよね。そこで職場に相談して夜勤を減らしてもらい、日中はがんばってウォーキングを始めたら……これが効果てきめんで!! それまで、グダグダしていた時間を運動に充てて、終わったら創作活動に入る……といういいサイクルができたおかげで、痩せるし、楽曲作りも進むしでいいことづくめになりました!

--こう言ってしまってはナンですが、いい意味で影響を受けやすい性格をされている感じですね。

オゾン まさに。めちゃくちゃまわりの影響を受けやすいと思います(笑)。

--とてもポジティブで、いいと思います!

オゾン 今回の受賞曲が典型的なんですが、ふだん日光を浴びれなかったり、あとコロナ禍で外に出られないという状況が続いていたときって、作る曲も夜っぽい……というか、気分が落ち込むような作品を作りがちだったんですね。でも、いまは楽しいし、夏ってこともあってか明るい気分になっているので、前向きな曲を作りたくなっているんですよねー。

--とてもいいタイミングでインタビューができてよかったです(笑)。

オゾン はい! 僕もメンタルを作ってきました!

--さて今回のインタビューのテーマは、“一緒に作ろう!第5回楽曲コンテストプロセカNEXT”で受賞された楽曲『しっくおぶはうす!』ですけど、まずこのコンテストに応募したきっかけを教えてください。

オゾン じつは応募する直前までプロセカNEXTの存在を知らなくて、第5回が開催されている時点で『しっくおぶはうす!』は完成していてYoutubeに投稿もしてあったんです。でも、その段階ではボーカルを『v flower』(2014年にガイノイドから発売された、「ロック」に特化したキレのあるパワフルな女性歌声ライブラリ)で作ってあったので、初音ミクたちで制作していることが参加条件のコンテストからは外れていたんです。

--ほほう……!

オゾン でも、言ってみれば条件はそれだけで、応募のハードルが非常に低かったので、「じゃあやってみるか!」と。

--第5回のコンテストのテーマは“スピード感のある曲”でしたけど、これもよかったんじゃないですか?

オゾン そうなんです! 運命的に……っていうくらい『しっくおぶはうす!』はこのテーマに合致していたので、「これはチャレンジするしかないな!」と思えました。

--さてその『しっくおぶはうす!』なんですけど、これはそんなに生易しい曲ではないですね。社会風刺が効いているというか……! そもそも“コロナ禍”が裏テーマなのですか?

オゾン おっしゃる通りコロナ禍がメインのテーマではあるんですけど、その前から積もり積もっていた自分の負の感情が爆発して一気に書き殴った曲……というのが、『しっくおぶはうす!』の正体です。

--あーーー……! 確かにこの曲の歌詞からは、抑えきれない怒りの感情が見てとれます。

オゾン はい、その通りです。僕は“マジカルミライ 2020 楽曲コンテスト”で準グランプリをいただいたんですけど、それがコロナ禍が爆発する直前だったんですね。ちょうどこのころ、いろんなイベントからDJのオファーがあったり、別のプロジェクトに参加したり、そこで作ったCDの記念イベントの話が持ち上がったりなど、その後のスケジュールがパンパンになるくらい活動が順調に進んでいました。で、バイトにも手が回らなくなるほど音楽活動が忙しくなってしまったので、職場の方に相談したんです。するとその方に、「音楽やるために東京に出てきたんだから、ここのことは気にせず、全力でがんばりな」と送り出してもらえて……。そこで音楽1本でやっていこうと決意してバイトを辞めて、「さあ、今年は忙しくなるぞー!」と気合を入れたとたん……緊急事態宣言です。

--ああ……。

オゾン 半年以上先まで決まっていたスケジュールが、全部消えました。

--順調だったのに……!

オゾン いきなり何もかもがなくなってしまったんですけど、余計に「作らないと!」と焦ってしまって。でも、精神的なショックが大きかったのと、準グランプリをもらっている手前下手なモノは作れないというプレッシャーもかかって、なんッッッ……にも作れなくなってしまいました。それでも、イベントのいくつかは数ヵ月後に開催されることになって、どうにか気合を入れてCDを作って即売会に持って行ったんですけど、半分以上が売れ残り……。在庫を抱えて帰ってきたときの自分があまりにも惨めで、「いままで何のためにがんばってきたんだろう」と絶望して、ここで精神的な症状が悪化しました。

--それだけ立て続けにいろいろなことが起こると、平静ではいられないですよね……。

オゾン そして2022年になったんですけど、これが僕の音楽活動5年目の年だったんです。じつは、「5年やって芽が出なかったら辞めるしかない」と決めていた区切りの年でして。一応、前の年にコンテストで準グランプリはもらいましたけど、そこからの日々が散々なまま5年目になっちゃったので、本当にどうしていいかわからなくなりました。

--難しい判断を迫られますね……!

オゾン なんで俺、こんなに追い詰められてんだろう……と考えれば考えるほど怒りが湧いてきて、結果、「よし! 最後に自分のいちばん好きなジャンルで曲を作ろう!」と決めて、それまで作ったことのないような、ロックな曲調の作品を作りました。

--え……! そ、その曲こそが……!

オゾン はい。『しっくおぶはうす!』です。もう怒りをぶつけるように、書き殴って、書き殴って……! 当時、ボカロとか音楽界隈の情報は見るのもイヤだったのでプロセカNEXTのことも知らず、だからロックな曲をもっとも作りやすい『v flower』で原案を作っていたんですよね。

--そういうことだったのかーーー!! いやあ、波乱万丈だな!

オゾン イラストもできあがって、さあ投稿しようか……と思ってひさびさにボカロのトレンドを調べたところ、目に入ったのがプロセカNEXTでした。そのときのテーマが“スピード感のある曲”で、できたばかりの『しっくおぶはうす!』と完全に合致している。その時点で、「これ……もしかしたら運命かも」と思ってさらに調べたところ、対象がクリプトン・フューチャー・メディアさんのバーチャル・シンガーだったので、『v flower』で作って投稿した原案とは別に、プロセカNEXT用に作り直そうと思いました。

--その作業は、簡単にできたんですか?

オゾン それが、最初は初音ミクに歌わせようと思ったんですけど、これが……信じられないくらい合わなくて(苦笑)。そこで思い出したのが、先のコンテストで準グランプリを獲ったときの副賞の商品券で買った『VOCALOID』の『鏡音リン・レン』でした。じつはまったく使っていなくて、このとき初めて試したんですけど、最初に歌わせたリンがめちゃくちゃハマってくれました。驚いて、「じゃあ、レンは!?」と試すと、こちらもすばらしい。けっきょく、「ふたり用に作り直そう!」と思って作業に入り、イラストもリンレンバージョンに描き直しをお願いしたところ、イラストレーターさんも気合を入れて「やるしかないな!」と言ってくれました。そうやって完成したのが、プロセカNEXTに応募した『しっくおぶはうす!』なんです。

--なんだか、いろいろなところで運命を感じるエピソードですね。

オゾン そうなんです。これがコンテストで受賞できなければ音楽の世界から抜けようと思っていたんですけど、奇跡的にすべてが繋がって、いまこうしていられます。初音ミクが曲に合わなかったのも、リンレンを思い出させるトリガーにするために何らかの意志が働いたのかなぁ……と。ミクちゃんは先輩として、「ここはリンレンの出番ね!」ってことで譲ってくれたのかなぁ……とか(笑)。

▲Self Remixも公開されており、原曲とはまた違った魅力が炸裂してるぞ!

--信じられないほどの苦労をされたうえで受賞をされたわけですけど、一報を受けたときはどんな気分でしたか?

オゾン あの……! とどめていた感情が一気に噴き出しちゃって、「え! え!? どうしたらいいんだろう……!」と感情の収拾がつかなくなりました……。理解が追いついていないのに涙が止まらないし、気が付けば椅子に体育座りをして膝を抱えて泣いていたという……。みんな、明るい曲をたくさん作って応募していただろうに、あんな泥臭くて怒りに溢れている曲で大丈夫だったのかな……と思ったりしていました。……ていうか、こんな生々しい話をしていいんですかね?? それが心配になってきました(苦笑)。

--ぜんぜんいいです! むしろ、華やかに見えるボカロPたちも、じつはさまざまな紆余曲折を経ていまのポジションにいるんだよ……ということを赤裸々にお見せできるのでありがたいです。

オゾン そう言っていただけてよかった……。たいへんでしたけど、いまはプロテインで幸せになっていますしね!!

--歌詞に関しては怒りの発露というか、すごくストレートで胸に響くものになっていますよね。いまのお話を聞いて合点しましたけど、『しっくおぶはうす!』は“心の叫び”だったんですね。

オゾン はい、おっしゃる通りです。僕もそれまでは、いろいろなところで拾ってきたキレイな言葉とか、耳障りのいいフレーズを使って曲を書くようにしていたんですけど、『しっくおぶはうす!』用に書き溜めたメモは、罵詈雑言の嵐です(笑)。まさに、怒りの集合体だと思います。

--その中でもとくにお気に入りのフレーズをお聞きしたいんですけど、個人的には「異常事態 それ自体 慣れっこ 非常事態 こんな時代 クソ喰らえ」といったところが、やっぱり響くんですよねえ!

オゾン 「何回目の非常事態宣言? もういいよ!」と捨て鉢に思って書いたし、「クソ喰らえ!」も本当に、いろんなことに対して「クソ喰らえ!」と思ったので書きました。すべて、そのときの自分がリアルに思っていたことを連ねていったので、「お気に入りの歌詞は?」と聞かれたら、「全部です」と答えるしかないかもしれませんね。それでもひとつピックアップするとしたら、サビにある「馬鹿になろうぜ」でしょうか。僕も、自分を追い込んで追い込んで……最後には自滅しちゃうなんていう性格をしているので、そういったこともすべて忘れて、「一度、バカになっちゃおう!」と思ったときに出てきた歌詞なので、印象に残っています。

--『しっくおぶはうす!』を聴いて、通しで歌詞を読んだときに、コロナ直撃世代の若者たちがいかにたいへんだったか……ってことに思いが至ったんです。この曲はきっと、そんな若者たちの想いを代弁しているんじゃないかな、と。

オゾン 先日のクリエイターズフェスタのときに僕のブースに来てくれたリスナーさんからも、同じようなことを言ってもらえました。「めちゃくちゃなことを言われて辛かったときに、この曲を聴いてがんばりました!」とか、「コロナ禍のころを思い出しながら、カラオケで『しっくおぶはうす!』を歌っています」とか……。それを聞いて、「当時の気持ちを包み隠さず表現して、本当によかった!」と思ったんです。『しっくおぶはうす!』が誰かの心の救いになっているんだったら、僕は本望ですね。


--では、『しっくおぶはうす!』の聴きどころを教えてください。

オゾン ギターとベースを“ヤヅキ”さんという、ピノキオピーさんの有名曲にも参画されている方に弾いてもらっています。もともと、一方的に僕がファンだったギタリストなんですけど、ヤヅキさんの演奏が『しっくおぶはうす!』にドンピシャにハマっているので、ぜひ意識して聴いてもらいたいですね。

--確かに……! この曲、ギターも最高にかっこいいんですよね! では、改めて『しっくおぶはうす!』の制作期間を教えてください。

オゾン 制作日数は……曲が作れなかった時期も含めると半年以上になってしまうんですが、着手し始めてからはおそらく、1ヵ月も掛かっていないと思います。曲の下書き……オケ(曲だけのバージョン)の部分は2週間くらいでできて、そこから、僕は歌詞とメロディーをいっしょに作っていくんですけど、先ほど言ったように内なる思いをガーっと書き殴って、メロディーに合わせて出てきたフレーズをさらに組み合わせていって……。そこから、ヤヅキさんに演奏をお願いして、動画制作も外部の人に依頼して……という作業をしていたので最終的には2、3ヵ月は掛かっちゃいましたが、自分の作業は1ヵ月以内に終わっていたと思いますね。

--他の曲も、それくらいの時間をかけて作るんですか?

オゾン もともと、すごくスローペースだったんです。でも、最近はプロテインと運動のおかげで気分も体調もいいので、20日間で3、4曲は作っていると思います。

--また極端だな!!(笑)

オゾン 本当に(笑)。いいサイクルにハマったときって、作れた曲なり歌詞なりを見て自分のモチベーションが上がり、「さあもっと作ろう!」となって雪だるま式に作品が膨れていくんですよね。逆にこのゾーンに入らないと、また3ヵ月に1曲のペースに落ちちゃうと思います(苦笑)。

--それにしても、『しっくおぶはうす!』はクオリティーの高さに驚かされるんです。あとはリスナーのコメントで「昔のボカロ曲みたい!」っていうものをよく見かけますね。

オゾン ありがとうございます。たぶんそこが、先ほど言った“自分の作りたいものをそのまま反映させた結果”だと思います。僕も多くの方と同様、ボカロがもっとも熱かったと言われる時代に夢中で聴いていた世代です。当時聴いた数々のボカロ曲の断片とか、“意志”みたいなものが『しっくおぶはうす!』に反映されているんじゃないか……と自己分析しているんです。

--では、『しっくおぶはうす!』がゲームに実装されたのを初めて見たときは、どのように思いましたか?

オゾン 受賞の一報を聞いたときに感情が出尽くしちゃったのか、実装されたころには「知らない子になっちゃった……」と感じました(苦笑)。

--知らない子!?(笑)

オゾン 自分で作った曲なのでリズムはわかるはずなのに、音ゲーをまったくやってこなかったからかNORMALの難度でもクリアーできず……。なので余計に(笑)。“SOS”って譜面に出るらしいんですけど、自分ではそこまでたどり着けないのでまだ見ていないんです!!

--では、この曲が好きな人に向けてひと言お願いできますでしょうか?

オゾン お話した通り、『しっくおぶはうす!』はコロナ禍を受けて作った曲です。でもコロナだけじゃなく、何かに追い詰められたり、苦しかったりすることって生きている限りたくさんあると思います。そんなときは歌詞にあるように、一度バカになって、何も考えずにそこから離れるのも手なんじゃないかと感じるんです。それでも苦しくて、どうしようもなくなったら、ぜひもう1回、『しっくおぶはうす!』を聴いてほしいなと思います。

▲遊び心が多いプロセカの譜面だが、歌詞のSOSも見事に表現されている。

--ありがとうございます! ではここから、将来の夢として「ボカロPになりたい!」と思っている人たちのために用意した質問にお答え願えればなと……! まずは……オゾンさんが、ボカロPになられたきっかけを教えてください!

オゾン あの……! けっこう暗い話になっちゃうかもしれないんですが、いいですかね?

--はい。お話できる範囲で、お聞かせ願えればなと。

オゾン わかりました。僕は小さいころから、将来は音楽を始めクリエイティブなことができたらいいなぁ……と思いながら過ごしてきました。でも、ウチはけっこうお堅い家で、「そんな道はありえない!」と頭から否定されていたんです。それでも、“作り手”になりたいという想いは消えないまま中学を卒業し、そこそこの進学校に進んだんですけど、まわりは、「将来は裁判官に」、「弁護士になりたい」、「教授を目指す」なんて、非常に堅い道を目指す人であふれていました。なんとかついていこうとがんばったんですけど途中で何かが切れてしまって、高校1年の冬休みに中退することになります。

--はい。

オゾン 何も考えられなくなっていたんですけど、唯一、音楽をやりたいなと思って。でも楽器が弾けなかったのでどうしようかと悩んだところ、当時よく聴いていた歌い手さんが自分の歌った曲をミックス(録音された複数の音を調整し、キレイに混ぜ合わせる作業のこと)して投稿されていたんです。俄然興味が沸いて自分でやってみたところ……ものの見事にハマりまして。「こういうのを仕事にできたらいいな」と思っていろいろと調べて、ミキシングを学べる専門学校に通うことに決めました。でも、そこに入るには高校の卒業証明が必要だったので夜間学校に行き、昼間はバイトをしてお金を貯めて、レコーディングに必要な機材をコツコツと集めていくんです。で、実際に専門学校に入ると、そこには楽曲を楽器ごとに分解したデータが山のようにあって、目から鱗が落ちました。どうやって楽曲が作られているのかが目に見えてわかるようになり、それらの音を使って作曲の真似事をするようになります。あるとき、何となくできた曲を仲のよかった友だちに聴かせたところ、ある日それがアレンジされて戻ってきました。そこでまた、目から鱗です。アレンジとかミックスの楽しさに取り憑かれて、買ったきり使っていなかった『v flower』を引っ張り出してきて使うようになります。

--ここでも、波乱万丈だなー!

オゾン 曲作りも好きなんですけど、それ以上にミックスという作業が合っているんですよねー! いまでは、“ミックスをするために曲を作っている”という本末転倒な状態になっていますけど(笑)。

--でも、こう言ってしまってはナンですけど、楽器や歌の経験もほとんどない、ズブの素人から始められたんですね。

オゾン はい、そうなんです。このインタビュー連載をすべて読ませてもらいましたけど、他のボカロPの方々とは、真裏な道を歩んできたんだなと思いました。でも、何も持っていない状態だったからこそミックスの魅力に取り憑かれたし、がむしゃらに学ぶことができたので、自分としては決して遠回りじゃなかったなと思います。ミックスをしていると“耳が育つ”ので、他の方が作られた曲を聴いて、分解して、技術を盗むという術(すべ)を身に付けられたのは間違いないです。これが、いま僕が持っている唯一の武器ですね。

--そんなアプローチの仕方があるんだなぁ……!

オゾン ホントに、音楽経験ゼロですからね。楽器はできないし、音楽系の家系でもないし。なんなら、音ゲーもできないくらいリズム感もないので、何も持っていないです。

--いわゆる“持たざる者”じゃないですか。

オゾン はい(笑)。努力することしかできません。考え方が脳筋なので、売れっ子のアーティストが「1日6時間は楽曲制作をしています」と言ったとしたら、「じゃあ俺は、その倍の12時間がんばろう」と思ってやってきました。

▲『しっくおぶはうす!』のグッズは、ゆる~い感じのリンちゃんとレン君が目印!

--そんなオゾンさんだからこそ、あえて聞きたい! ボカロPになるために、何か必要なスキルはあると思いますか?

オゾン ないです……って言ってしまうのが簡単なんですけど、それでは何の参考にもならないなと思って、考えてきました。自戒を込めて言うんですけど、なんらかの楽器ができたほうが絶対に有利ですし、一度は挑戦されたほうがいいかなと思います。でも……やっぱりいちばん重要なのって、“ボカロが好き”という気持ちですよね。きっとその想いが、辛いときに自分を救ってくれると思うので。それと、自分の経験から話すと、さっき言ったミックス……曲を分解してみようという好奇心を持ってもらいたいなと。研究癖、分解癖をつけて曲を聴くと、「楽曲って、教科書なんだ!」と気づく瞬間があるはずです。そうなってからのほうが知識の吸収が俄然早くなるので、まずは曲を分解する楽しさに気づいてもらいたいと思います。すると、“音楽”だけじゃなく、“音そのもの”に興味が出てきますから!

--では、 ボカロPになってよかったと思うこと、具体的に何かありますか?

オゾン これは……「生きてる」って実感できたことですね。

--うーん! ここまでの話を聞いた中で言われると、じつに深いな!

オゾン 高校を辞めた時点で何もかもなくなってしまったんですけど、唯一手にした音楽のおかげで『しっくおぶはうす!』が作れたし、「この曲に救われました!」って言ってもらえたし、いまこうして生きていられるので……。これ以上の成果はないです。

--ありがとうございます……! では最後の質問になりますが、『プロセカ』にもひと言お願いできますでしょうか!

オゾン これからもさまざまなボカロPを巻き込んで、最強のコンテンツになってほしいと思います! いまや、『プロセカ』の発展=ボカロの発展ってくらい影響力が大きくなっているので、ますますいい循環を生んでほしいと切に願っております!

--わかりました!! 本日は貴重なお話、本当にありがとうございました!

オゾン

2017年より楽曲を制作し始め、伝えたい感情や言葉によって様々なジャンルを使い分ける。
マジミラ準グランプリやプロセカNEXTでの採用以外に、アイドルへの楽曲提供などボカロシーン内外問わず幅広く活動する。

 

代表曲:「My Story」「しっくおぶはうす!」

 

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ボカロPインタビュー連載

 

1周年ボカロPインタビュー

 

 

タイトル概要

プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク

■対応OS:iOS/Android

■App Store URL:https://itunes.apple.com/app/id1489932710

■Google Play URL:https://play.google.com/store/apps/details?id=com.sega.pjsekai

■配信開始日:配信中(2020年9月30日(水)配信)

■価格:基本無料(アイテム課金あり)

■ジャンル:リズム&アドベンチャー

■メーカー:セガ/ Colorful Palette

■公式Twitter:https://twitter.com/pj_sekai