この“死にゲー”感がたまらない
俺は生来のマゾヒストなので、遊ぶゲームも比較的“高難度”のものを選ぶことが多い。
……いや、だからと言ってゲームがうまいわけでも動体視力が優れているわけでもない。
むしろ、寄る年波には抗えず、日ごとに反射神経の衰えや老眼、四十肩の影響を受けて、とくにアクションゲームの類は苦手になりつつあると思う。
それでも……!
三つ子の魂百までとはよくいったもので、若いときに心の琴線に触れられ、
「こういうジャンル、最高!!! 失敗するとすべてを失ってイチから、なんて……その情け容赦のない仕様に惹かれまくる!!!」
なんて思ってしまった“死にゲー”、もしくは“ローグライク”に分類されるゲームに関しては、いくら歳を取ってコントローラーを持つのが難儀になったとしても遊び続けるんだろうなと確信している。つまりそれくらい、問答無用なゲームが好きなのだ。
そこで、今回のテーマである。
4月30日にソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)から発売されたプレイステーション5専用ソフト『Returnal(リターナル)』は、俺のキーワードである“ローグライク”、“死にゲー”をしっかりと体現しつつ、加えて、
“サードパーソンシューティング”
“弾幕系”
なんて要素まで入った満漢全席みたいなタイトルだってんだからタマラナイではないですか!!
プレイステーション5の圧倒的な性能を駆使した、美しくて深く、そして怖くて物悲しくもある超良質ローグライクアクションシューティング。
そんな『Returnal(リターナル)』の所感をお届けしよう。
超良質TPS!
『リターナル』は、自動生成されるナゾの惑星で怪物と戦いながら“死”と“復活”をくり返す……という、若干絶望的なストーリーで展開する。
画面構成は、前述の通り三人称視点。
FPS(一人称視点シューティングゲーム)を遊ぶと、開始30秒でトイレに駆け込みたくなるくらい3D酔いする俺からすると、三人称視点ってだけで評価が爆上がりだ。
しかも、さすがはプレイステーション5ということか……!
うおおおおお……!!!
主人公の造形もまわりの風景も、そしてあらゆるエフェクトも超美麗で、これを見るだけでも遊ぶ価値があるって感じ……!!
ゲームの楽しさの本質はあくまでもシステムで、グラフィックはそれに付随する二次的な要素だ……と前々から思っているけど、この『リターナル』に代表されるプレイステーション5専用ソフトの映像を見てしまうと、
「やっぱり……映像美は正義だな!!!www」
と、簡単に映像至上主義になりそうになる(苦笑)。とにかく、ひたすら美しい。
そんな世界でモンスター相手に、弾幕上等のシューティングを行うわけだけどね。
これまた、操作がオーソドックスかつ簡単で、このようなシューティング系のゲームに慣れていない人でもスッと腑に落ちるボタン配置になっている。
やれることがたくさんあるゲームって慣れれば確かに楽しいんだけど、そこに至るまでのハードルがやたらと高くて、入り口で挫折してしまうことも少なからずあると思うのよ(少なくとも、俺はわりとよくある)。
でも、『リターナル』はその点を十分考慮しており、必要最低限の操作でジャンプも、攻撃も、ダッシュも、視点変更もでき、加えて弾薬は無制限でリロードも勝手に実行。照準の操作も一瞬でできるので狙いを付けるのが超ラクチン……などなど、このジャンルを遊ぶ上での障害になりそうなものは片っ端からシンプルにしてしまっているのがスゴい。シューティングマニアはともすると、
「もっとアナログで複雑な操作にしてくれよ!!」
と思うのかもしれないが、多くのプレイヤーは一瞬でゲーム世界に馴染める『リターナル』のデフォルト操作に好感を覚えると思う。本当に遊びやすいと思うわ。
そしてゲーム自体の目的は、くり返しになるが、主人公が降り立った不思議な惑星“アトロポス”を、死と復活をくり返しながら探索することにある。
前半で“弾幕系”と書いたけど、敵の攻撃は苛烈。ゲームの冒頭で、“意図的に難度を上げています”という注意が出てくるんだけど、実際に敵の数も吐き出される弾の数も尋常じゃないと思う。
おかげで、主人公のセレーネはしょっちゅう死ぬ。
でも、彼女に死の平穏は訪れることなく、死んだらほとんどの装備とアイテムを失い、またスタート地点から探索を始めなければならない。先ほどとは、まったく違うマップを舞台に……(((( ;゚Д゚)))
くり返される、“ふりだしに戻る”。
しかし、死はすべてを無駄にするわけではなく、徐々にだがそのナゾに迫っているのは間違いない。
そんな、マゾなシステムにピンと来た人は、ぜひとも一度『リターナル』に触れてみてほしい。きっと、
「うおおおお!! 死んだ!!! もう1回ッ!!!><」
ってことになると思うからw
大塚 角満
1971年9月17日生まれ。元週刊ファミ通副編集長、ファミ通コンテンツ企画編集部編集長。在職中からゲームエッセイを精力的に執筆する“サラリーマン作家”として活動し、2017年に独立。現在、ファミ通Appにて“大塚角満の熱血パズドラ部!”、ゲームエッセイブログ“角満GAMES”など複数の連載をこなしつつ、ゲームのシナリオや世界観設定も担当している。著書に『逆鱗日和』シリーズ、『熱血パズドラ部』シリーズ、『折れてたまるか!』シリーズなど多数。株式会社アクアミュール代表。