ドブフクロウのMtGブレイキングアカデミー vol.77 ~令和のスタンダードはカードパワーの暴力~

By ドブフクロウ
みなさんこんにちは。MtGライターのドブフクロウです。
 
いよいよ『ゼンディカーの夜明け』の情報も出始めました! 9月25日(金)に発売される最新セットで、『ゼンディカーの夜明け』リリースとともにスタンダードはローテーションし、新環境を迎えることになります。

新セットの顔であるプレインズウォーカーの情報もすでに出始めており、ゼンディカー次元出身のプレインズウォーカーであるニッサナヒリの姿も見られます。他、「キッカー」「上陸」などの再録メカニズムや新メカニズムの「パーティー」、さらには『Zendikar Expedition』の復刻などなど、おもしろそうな情報が続々と……! そのすべてをここでお伝えするのは難しいほどです。最新の情報については、マジック:ザ・ギャザリング日本公式Twitterアカウント(@mtgjp)もチェックしてみてくださいね。
 
さて、上述したとおり今はスタンダードのローテーションの直前。新セットとの出会いがあるということは、すなわちこれまで慣れ親しんできた『ラヴニカのギルド』、『ラヴニカの献身』、『灯争大戦』、『基本セット2020』までのカードもスタンダードでは見られなくなるということです(詳細はこちら/リンク先はマジック:ザ・ギャザリング日本公式ウェブサイト)。
 
そこで、今回は現在のスタンダード環境のトップデッキをご紹介していきます。2019~2020年スタンダードの総決算、最強デッキは果たして……!?
 

Red Bull Untapped Online予選

現行のスタンダード環境で最強のカードはいくつかありますが、そのほとんどを網羅するのが「スゥルタイ・ランプ」というデッキです。
 
先週末開催されていたRed Bull Untapped Online予選でも堂々の使用率1位のデッキで、トップ8には「スゥルタイ・ランプ」を使用していたプレイヤーが5名も入賞しているなど、まさに現行スタンダードを代表するデッキの一つと言えます。
 
すなわち「スゥルタイ・ランプ」は、環境の総決算となっているスタンダードのデッキをご紹介していく上でまず最初にご覧いただくべきデッキなのです。さて、そのリストを見ていきましょう。
 

スゥルタイ・ランプ(使用者:アレクサンダー・ゴードン=ブラウン選手)
枚数 カード名(メインボード)
5 《島》
4 《ゼイゴスのトライオーム》
4 《草むした墓》
4 《繁殖池》
4 《寓話の小道》
2 《森》
2 《沼》
2 《湿った墓》
4 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
4 《ハイドロイド混成体》
3 《厚かましい借り手》
4 《世界を揺るがす者、ニッサ》
3 《サメ台風》
4 《思考消去》
4 《霊気の疾風》
2 《否認》
2 《神秘の論争》
2 《食らいつくし》
1 《軽蔑的な一撃》
枚数 カード名(サイドボード)
4 《取り除き》
4 《無情な行動》
4 《絶滅の契機》
3 《ゴルガリの女王、ヴラスカ》

 
たとえば《大釜の使い魔》というカードは単体では決して強力なカードとは言い難いですが、《大釜の使い魔》と《魔女のかまど》を組み合わせたサクリファイス系デッキが活躍を続けていたことで、《大釜の使い魔》自体も禁止カードに指定されました。トレーディングカードゲームの世界では、単体では弱いカード同士でも、組み合わせれば最強無比の強力なシナジーを生み出すことも少なくありません。

▲《大釜の使い魔》
▲《魔女のかまど》

つまり「強いカードだけ使っていれば最強デッキができる」というものでもありません。が、しかし。今回ご紹介するこの「スゥルタイ・ランプ」というデッキは、そんな強いカードだけを使って作られた最強のデッキと言えるデッキです。

▲《世界を揺るがす者、ニッサ》
▲《ハイドロイド混成体》
▲《自然の怒りのタイタン、ウーロ》

この1年ほどの間に、この連載の中で何度となくご紹介してきたシミックカラーのこれらのカード。スタンダードのみならず、パイオニアでも見かけることの多い《世界を揺るがす者、ニッサ》や《自然の怒りのタイタン、ウーロ》は、スタンダードのカードプールの中では間違いなく頭一つ抜けて強いパワーカードです。現在は禁止カードに指定されていますが、本来であればこのデッキに《夏の帳》や《王冠泥棒、オーコ》、《むかしむかし》といったカードも使われていたかもしれないと考えると背筋が寒くなりますね……。度重なる禁止カードを排出してきた緑青系のデッキですが、その最終終着点がこの「スゥルタイ・ランプ」です。主要なカードが抜けた現在でもなお最強デッキの座に君臨していることからも、現環境の緑系カードの底なしの強さが伺えます。
 
特に《世界を揺るがす者、ニッサ》と《ハイドロイド混成体》の2枚は、長らくこのデッキを支えてきた屋台骨です。単純に使えるマナの数が倍増する《ニッサ》が強いことは言うに及ばず、《ハイドロイド混成体》はそんな《ニッサ》との相性も良好で、単体でもドローと回復とフィニッシャーの三役を兼ねられる非常に強力なカードです。
 
さらに、《思考消去》や《食らいつくし》といった黒の手札破壊や除去が《ニッサ》や《ハイドロイド混成体》の強さを後押しします。自身がスタンダード最強の動きをしながら、対戦相手の挙動はしっかりと妨害する。《食らいつくし》は《ウーロ》のような墓地から蘇ってくるクリーチャーにも有効で、ミラーマッチでも活躍してくれる1枚です。

▲《思考消去》
▲《食らいつくし》

シミック系デッキは、近年のスタンダードを代表するパワーデッキでした。ローテーション後にはさすがにこのカラーリングを見かけることは減ることになりそうですが、《ウーロ》はなお健在なため、まだまだどうなるかはわかりません。『ゼンディカーの夜明け』以降の環境がどうなっていくのか、カードプレビューを楽しみに見ていきましょう。
 

 

ライター:ドブフクロウ       
 
青春時代のほぼ全てをテキストサイトやゲーム系サイトを徘徊することに費やしていた根暗ライター。人間としての軽薄さに定評があり、親しい間柄では「空っぽ」というあだ名で呼ばれることもある。 MtGプレイヤーとしての腕前は自他ともに認めるヘッポコだが、青春時代に (いろいろなものを犠牲にして) 培ったMtG知識量は他の追随を許さない。

 

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