『ミニ四駆超速グランプリ』1周年特別企画!
ミニ四駆SP座談会!!
今回『超速GP』の1周年を記念して、こしたてつひろ先生と当時の担当だった“サガミネーター”こと佐上靖之役員、そして『爆走兄弟レッツ&ゴー!!』の大ファンでもある吉田智哉プロデューサーの座談会が実現!!
【座談会メンバー】
●こしたてつひろ先生●“サガミネーター”こと佐上靖之役員
●吉田智哉プロデューサー
『レッツ&ゴー』の制作秘話や、登場する魅力的なマシンたちのデザインに関する裏話などを、バンダイナムコエンターテインメントの吉田智哉プロデューサーがたくさん聞き出してくれたぞ!! ここでしか聞けない情報が盛りだくさんなのでお見逃しなく!!
なお、座談会に際して、コロナ感染症対策を入念に行ったうえでの実施となる(2020年12月ごろの撮影)。
『爆走兄弟レッツ&ゴー!!』制作秘話
吉田智哉P(以下、吉田):本日はお忙しい中、お集まりいただきありがとうございます!
私、バンダイナムコから来ました吉田と申します。弊社では『ミニ四駆超速グランプリ』を昨年1月にサービス開始しまして、大きな反響をいただいております。今年1月には大きな節目を迎えるということで、今回の座談会をご提案させていただきました。
『超速GP』のお客様層は『ダッシュ!四駆郎』と『レッツ&ゴー』の2世代にすえて考えていまして、特に『レッツ&ゴー』の世代、今でいう20代後半から30代前半の方々に非常に多く楽しんで頂いている状況です。ぜひその世代のみなさまに、おふたりのお話をお届けできればと思います。
こしたてつひろ先生は言わずと知れた『レッツ&ゴー』の作者でいらっしゃいますね。
こしたてつひろ先生(以下、こした):はい。
そして、佐上さんは最初から最後まで担当されていた第二次ミニ四駆ブームの仕掛け人の一人であるということで、ぜひ漫画制作時のお話や、フルカウルミニ四駆の誕生秘話などのお話を聞かせていただければと思っております。私、『レッツ&ゴー』の大ファンでして、今日は非常に緊張しております。昨日もぜんぜん眠れませんでした……!
佐上靖之役員(以下、佐上):はい、よろしくお願いします。
吉田:では早速、一つ目のテーマに入ります。徐々に当時のことを思い出していただければと思います。『レッツ&ゴー』といえば第二次ミニ四駆ブームの火付け役ですよね。改めて、『レッツ&ゴー』が始まった経緯を教えていただきたいです。
佐上:覚えてる?
こした:始まったきっかけですか?
佐上:あれだよね、『レッツ&ゴー』の前に『燃えろ!アバンテ兄弟』があったよね。『アバンテ兄弟』ってどれぐらい描きました?
こした:2巻かな。
佐上:その時って短編やりながらだっけ?
こした:1時期ちょっと重なってた気が。
吉田:別コロと被ってますよね、1巻ぐらい。
佐上:俺より詳しいじゃん!
まあ要するに、『四駆郎』は終わったけど、引き続き子供達はミニ四駆で遊んでいた。そこで新しいミニ四駆漫画が必要だと思っていて、誰にお願いしようか考えたときに、ちょうど『炎の闘球児 ドッジ弾平』が終わるタイミングで、『アバンテ兄弟』も描いていたこしたさんがいいんじゃないかと思い声をかけましたね。
吉田:僕らのお兄ちゃん世代が『弾平』世代で、お兄ちゃんがいる友達の家なんかに行くと絶対に弾平のドッジボールがあったので、なんとなく存在は知っていました。『弾平』でブームを起こしたこした先生にお声がけたのは、もう1回ミニ四駆で大きなブームを仕掛けようと意識されていたんですか。
佐上:それはありますね。その時々で好まれる絵柄やタッチの漫画家さんって当然いらっしゃるんで、どなたにミニ四駆の漫画を任せようかとなった時に、「こしたさん以外にいないんじゃないか」と俺は思いました。
吉田:熱い展開の漫画ってあの頃のコロコロにはそんなになくて、ギャグ系の漫画がほとんどでしたよね。それはすごく記憶に残っています。 泣けるような話ってあまりなくて、ギャグ漫画のイメージが強かったので、異色の作品でもあったのかなと。
佐上:確かに、熱血系って他にもあったかな? 言われてみればそうかもしれないですね。
一緒にやるにあたって、僕とこした先生は同い年で、子供の時からアニメとか漫画とか大体同じものを見てきていたおかげで、「あの時の何か」っていう感覚がすぐに伝わるから、僕は凄くやりやすかったですね。
吉田:文法が通じるパートナーほどありがたいものはないですよね。私も作品に携わる上で感じることが多々あります。『ミニ四駆超速GP』のスタッフ陣では、『レッツ&ゴー』が共通言語になっていますよ。イベント等で出すマシンも、原作好きが集まっているので「次あれ出せませんか!」と意思疎通が取りやすいです。
佐上:好きな人に作ってもらった方がいいよね。
こした:いろいろ資料を送って貰いましたけど、これは“好き者”だなって。
吉田:ちなみに、サガミさんとこしたさんの付き合いは『レッツ&ゴー』以前からなんですか? もしよろしければそのときの第1印象なども教えていただきたいです。
こした:夜にいつもいた人(笑)。僕がいつもコロコロ編集部に来たときはいつもいた。声がでかいからすぐわかる。
一同:(笑)。
こした:もう2時でも3時でも、いつでもいたような気が。
佐上:いたね、いたいた。
吉田:最初は直接の出会いというよりは、耳から入ってきたってことですか?
こした:「あっ声のでかい人がいる」っていう感じです。
佐上:俺は『レッツ&ゴー』が始まるまでこしたさんを担当したことはなかったので、ちゃんと仕事を一緒にしたのは『レッツ&ゴー』から。
こした:初めて一緒に仕事したときにはビビりましたね。「わっ、この人だ!」って思いました。
吉田:そんな感じだったのですね、ありがとうございます。こした先生は、佐上さんに「ミニ四駆で漫画を描かないか」って言われた時のことを覚えていますか?
こした:そうですね……ミニ四駆や車のことは全然わからなかったんですけど、バイクは好きなので、バイクのニュアンスでなんとかできるのかな、できないのかなと悩みました。ミニ四駆漫画って実際のレースとはかなり違いますよね。
佐上:間違いなく「ミニ四駆」って商品を題材にした漫画なんだけど、当然実際の商品で出来ることと劇中で行われることって全然違っていて、そこをできるだけ違和感ないように、どうやってきれいに嘘をつくか。「行け! マグナム」って言ったらどうにかなるみたいなさ。
吉田:スポコン的な勢いで、読んでた当時の自分たちは熱狂してました。「頑張ればマグナムトルネードできるんじゃないか?」と思いましたからね。
なにか大きいことが起こるときには必ず修行するターンが入ってきて、ちゃんと修業して頑張ったから、すごい技ができるみたいな説得力がある。しっかり一回挫折を味わってから強くなるところが挟まれているのが、納得感のある理由なのかなと思っています。
佐上:月刊誌の連載って1年間やっても12話しか作れないから、黙々と修行している回が増えても爽快感がない。でも、そういう回を挟んで話を進めないと「なんでそれ出来るようになっちゃったの?」ってなっちゃうじゃないですか。それだと話に深みが出てこないので、挟まないといけない。
こした:つじつまが合わなくても、説得力が大事ですね。勢いで、細かいことは言わせない感じで。
吉田:細かいことを言わせない説得力が画にあるのがすごいです。
基本的にこの子たちはレースが終わった後、ボロボロの汗だくになっていますよね。そのあたりの激闘感は意識されていたんですか?
佐上:現実だと、スイッチ押してレーンにおいたら選手の役目はもう終了じゃないですか。汗なんてかかないんだけど、それだけだと漫画としてはダメじゃないですか。どうしても一緒に走って転んだりとかが演出としてね。
吉田:キャラクター自身もトラブルを一緒に経験していくと。
佐上:「ミニ四駆でこんなに危険な目に遭うんだ!」ってなるけどね(笑)。
吉田:ホビー漫画では、おもちゃで世界征服企むやつとかいますからね(笑)。
タイトル決定までの裏話!
吉田:そもそも、『爆走兄弟レッツ&ゴー!!』っていうタイトルはどうやって決められたんですか?
佐上:時系列順に説明していくと、『四駆郎』が終わってからミニ四駆漫画を新しく作るときに、まだ人気が出るかわからないので、最初は前後編の読切で掲載して、アンケートの結果がよかったら連載にしようと編集部の中で決めていたんですよ。人気が出なければ前後編で終わる可能性があったんです。だけど、この前後編の中に、『四駆郎』の時代のミニ四駆じゃないミニ四駆が登場しないと、新しいミニ四駆漫画としての魅力が高まらない。
『四駆郎』は四駆郎と仲間たちって構成だったのを、今度は兄弟が切磋琢磨してやってく話っていうのは元々構想にあって、2台のマシンを考えていたんだけど、タミヤさんと新しい漫画と並行して作るマシンの打ち合わせをしているときに「1台新しいミニ四駆を作ることはできるけど、2台はちょっと厳しい」っていう話が上がって。そこで「ウイングとか一部パーツを変えて、本体の金型はほぼ同じっていうのだったら1.2台分のカロリーでいけませんか?」と提案して生まれたのが兄弟のマグナムとソニックというマシンだった。それから兄弟の名前をどうしようか、と。
こした:タイトルは佐上さんと一緒に「朝までに決めよう!」っていう突貫作業でしたね。マシンもだいたいそうなんですけどね。
佐上:そうそう。それから当時、コロコロのマンガって主人公の名前がタイトルに収まっているパターンが王道で、主人公の名前がタイトルに入ってない漫画ってどうなの? ってくらいだったから、タイトルにおさまりがよくて、兄弟の名前として成立してっていうのを、すごく探していて。「レッツゴーって言葉はもう死語だよね、もう誰もレッツゴーって言わないよね」って話したときにふと、「烈」と「豪」って名前に分けられるんじゃないのってなったんじゃなかったかな。
こした:『バツ&テリー』的な。
佐上:そう『バツ&テリー』! そうそうそう。みんな知ってる?(笑)
「レッツゴー」ってタイトルだと、ちょっとアレだから、『バツ&テリー』みたいに『レッツ&ゴー』でいいじゃんって感じで。
吉田:これは制作秘話だ……! ありがとうございます。
それから、『レッツ&ゴー』のヒット前夜について伺いたいんですけど、この作品はヒットすると確信した瞬間があればぜひ教えていただきたいなと思います。
こした:確信した瞬間……
吉田:「行けるな」と思った瞬間ってありませんでしたか。
こした:最初の頃は家に籠っていましたからヒットの感覚はなかったです。イベントに行って初めて、とんでもないことが起きているんだと実感しました。
佐上:そういえば、毎月のアンケートで何位だったってことは伝えてましたっけ?
こした:いや、そういうのは怖くて聞かなかった。
佐上:だよね。そういうやり取りの記憶がないもん。聞かれないからあんまり伝えてないけど、記憶では、連載2話目から1位になって、そのあと2年以上ずっとトップだった。印象に残っているのは、最初の「マグナムセイバー」「ソニックセイバー」が火山に落ちてなくなっちゃって、新しいミニ四駆に代わるときに、「新しいミニ四駆はコレ」となっても、主人公たちがその気になれないっていう回。自分の相棒だって言っていたのが溶けてなくなっちゃったのに、新しいマシンを貰ってすぐ「ヒャッホー」ってなっちゃだめだよねと。そういう渋い回を1個挟んだんですけど、その回もちゃんと反応が良かった。すごく地味なんだけど、こういうのもOKなんだって分かったというか。
吉田:ホビー漫画って、代替わりしていくのは命題としてあるので、壊れるのはよくあることだと思うんですけど、あそこまで完膚なきまで無にするっていうのは中々ないですよね。だからこそ、みんなの印象にものすごく残るエピソードなのかなと思っています。あのお話は、アプリでも追体験エピソードとして再現させていただいています。
佐上:へえ!
吉田:去年までは、新しく登場したボディに合わせたタイミングでイベントをランダムに開催していたんですが、1月からは第1話の『レッツゴー星馬兄弟!』を皮切りに仕切り直して、毎月楽しんでもらえる定期的なイベントとしてお届けしていきたいと思っています!
当時のミニ四駆ブーム
佐上:当時子どもだった吉田Pから見て、『レッツ&ゴー』の存在はどう映っていました?
吉田:幼児向け雑誌を買ってもらえる家ではなかったので本当に小さな頃はキャラクターものにあまり触れてこなかったんですけど、小学生になった僕が初めて意識したのは、この『レッツ&ゴー』でした。展開力が飛びぬけてすごかったので、ものすごく印象に残っていますね。
それから、初めて買ってもらったのがビクトリーマグナムだったのをいまだに覚えていますね。プラモデルみたいなものを作るのは初めてだったので思い出深いです。その後初めてサーキットに走らせたときのことも覚えていますし、どのマシンをどんなときに買ったかもだいたい覚えています。
あとはミニ四駆の公式大会を初めて見に行ったときのことも印象的です。ネオトライダガーZMCが先行販売されるってコロコロで読んで、「これは買いに行かなきゃ!」と思って連れて行ってもらったんですけど、レースで走らせている選手たちが、普段友達と走らせているときとはレベルの違う速さで、「すげー!」って思ったのを覚えてますね。熱気がすごくて、ホントにいい体験をしたなと思っています。
夏に開催されていた「ミニ四駆ジャパンカップ」って当時、倍率がすさまじくて中々参加できるものではなかったですよね。
佐上:うん。
吉田:ジャパンカップにはそういった“プレミアム感”があったので、漫画の中ではもっとすごいこと(G・J・C)が行われているっていうのも、すごく納得感がありました。
こした:ありがとうございます。
第2次ブームの当時
吉田:そんな感じで、漫画、商品、アニメ、そして大規模なイベントが複合的に当時のミニ四駆ブームを取り巻いていたと思います。先ほど少しお聞きしましたが、こした先生はイベントに結構行かれていたんですか。
こした:行きはしたけど、あまりレースの様子は見えなかったですね(笑)。人が多すぎて!
吉田:VIP席とかはなかったんですか?(笑)
こした:ないですよ! ずっとウロウロしてました(笑)。
吉田:当時で言うと、アニメに漫画に、ミニ四駆のマシーンにイベントとてんこ盛りだったと思うんですけれども、当時担当だった佐上さんが一身に引き受けて、ハンドリングされていた感じなんですかね?
佐上:こしたさんはイベントでは表彰式で子どもたちに何かあげたり、サイン会だったりをしていたけど、でもやっぱり中心はタミヤさんだよね。現場はタミヤさんとショップの方々がやっていたので。どちらかというと、作品の展開や新しいミニ四駆の存在が、新しいジャパンカップのコースを攻略するためには有効なのではないかとか、今年のコースの売り目は何なのか、とかをタミヤさんとすごく打ち合わせをしてましたね。
吉田:サイクロンタイフーンドームとかありましたね。上や下から風が吹いてくるという。
佐上・こした:そうそう(笑)。
吉田:趣向の凝らしたコースが多くて、今見返すとすごいなって思いますね。やはりその辺りのアイディアはコロコロの編集部さんが出されていたからこそ、子どもがワクワクできるような物になっていたんじゃないかなと思います。
佐上:普通に手練れの人が改造したら、コースアウトしない速いマシンっていうのは作れちゃうから、そういうマシンがうまく機能しなくなるようなセクションとかをわざと用意します。言い方は悪いけど、「改造がへたっぴな子」でも場合によっては完走できて、完走したらすごい改造の手練れに勝っちゃったみたいなことがあって欲しいと思っていたので。
吉田:それはとてもいい話ですね。不確定要素を足されたということですよね。
佐上:うん。
吉田:結構ミニ四駆って不思議ですよね。速さを競う側面も大きいんですけれども、しっかり完走しなきゃいくら速くても勝てないというところがすごくラリー的というか。そこが面白いところのひとつだと思います。勝ち負けが単純なようで単純じゃない。不確定要素が強く出るっていうのがリアルホビーの中でも特色があり、多くの人に刺さった要因の一つなのかなと。
これはゲームでいうと人気の根強い格闘ゲームの魅力にも似ていますね。
小学生の憧れ・豪
佐上:そういえば、マグナムが吹っ飛んでライバルを追い抜いて勝つみたいなことってあったじゃない?
こした:ありましたね。
佐上:後々考えたんだけど、ミニ四駆の本当の大会やレースを見ると、コースアウトする子どもがすごく多い。だからきっと子どもの願望の中に、「もしコースアウトしたとしても、然るべきレーンに戻れたらセーフじゃん?」みたいなものがあるんじゃないかと。実際そんなことはそうそう起きないけど、漫画では起こるっていうのが良かったんじゃないかなと思う。大概の子どもたちは「ミニ四駆を速くするぞ!」って頑張って色々改造していって、いざレースが始まるとぶっ飛んで終わっちゃうんだけど、漫画ではぶっ飛んでも終わらないのが夢のある話で素晴らしい。
吉田:もはや飛び芸ですもんね(笑)。
佐上:豪くんってさ、お馬鹿じゃない? コロコロ読者の中には賢い子ももちろんいると思うけど、多くの愛すべき馬鹿な小学生たちを代表する選手が豪なので、コースアウトしても頑張ってくれるっていう(笑)。
吉田:逆に賢い子たちの代弁者が烈くん。だからすごくバランスがいいし、ちゃんとボケとツッコミの役割を果たしていてギャグマンガとしても楽しめるし、熱い展開ではより大多数の子供たちが豪くんに感情移入できて、物語と一緒に心を動かしていけるんですよね。
こした:男の子には豪が人気でしたね。
佐上:そうだよね。
こした:女の子は烈でしたね。
佐上:そう、そうなのよね。
こした:だから烈のイメージを壊さないように気を遣って……
一同:(笑)。
こした:豪はそのまま描けるんですけどね。烈は自分とは違う人なので「こんな感じかな?」って想像しながら描いていきました。
ミニ四駆デザインの裏話!
吉田:『レッツ&ゴー』には魅力的なマシンが多いですが、こしたさんにとって特に思い入れの深いマシンはありますか。
こした:トライダガーXですかね! デザインするときにすごく苦労したんで。あれ以降、「いろいろやっちゃっていいんだ」ってことに気が付いた(笑)。
吉田:苦労されたんですね。
佐上:タミヤさんと一緒に作っていたので。
こした:そうそう。
吉田:確かに、車らしからぬフォルムですもんね。
佐上:あの頃ミニ四駆のデザイン決定までの流れは、まずこしたさんのスケッチを基に、タミヤの設計チームが目の前で粘土を削って、出来あがたったモックアップをこしたさんに見せるんです。すると「ここがちょっと違うんですよね」と言いながら現場で絵を描くのでまた修正して、っていうのをずっと繰り返すんですよ。そして最終的にこしたさんが「これで決まったんじゃないですかね」って言ったら終わりなんだけど、いつご本人がOKと思うかどうかっていうのはわからない。毎回、必ず静岡からタミヤのチームがやってきて昼からスタートするけど、必ず翌朝になってた。ビジネスホテルも取ってあるんだけど、ほぼ泊まらずに帰ることになるという。
吉田:ひたすらすり合わせ作業をしていたんですね。
こした:やはり2次元と3次元の差っていうのがありますよね。自分のイメージしたものと出来上がったものを見て、「こっちの方がいいな」とイメージがどんどん膨らんでいったり、こっちを直すとあっちが気になったり……というのがずるずる朝まで(笑)。
佐上:必ず朝なんですよね……。
吉田:その中でもトライダガーXが一番最初のヤマだったと。
こした:そうですね。マッチョなのにシャープに、という。
佐上:マグナム・ソニックの次がトライダガーだったっけ。
吉田:ブラックセイバーが間に入りますね。
佐上:ああそうだ。ブラックセイバーは金型が流用できるやつだから、トライダガーが実質2台目だね。
吉田:つまり、作っていくうえでの打ち合わせの形式が出来上がったのはトライダガーXのときだったんですね。
佐上:そうですね。
革新的なデザインが生まれるまで
こした:マシンの虫のようなフォルムには、クワガタとかもヒントになってますね。
吉田:そうなんですね! マシンのデザインをおこされるときに、モチーフみたいなものは常にあるんですか?
こした:全然! アイデアが降りてくるのを待つだけなので、行き当たりばったりですね。「金曜の朝までだなあ……」とか言いながら(笑)。
吉田:セイバーの時はどうだったんでしょうか。まだこちらは車らしいフォルムですよね。
こした:セイバーは実際に走っているレースカーとあまり変わりませんね。トヨタとホンダみたいな感じです。
吉田:なるほど、ラリーカーってやつですよね!
以前、コロコロ歴代編集長のインタビュー記事でおふたりが「NIKEのスニーカーのデザインかっこいいよね」みたいな話をされていたことを知りまして、それを踏まえて考えると、マグナムとかソニックはスニーカーっぽいというか、あの頃流行ったエアマックス系統のデザインに近いなと思いました。
こした:そんな無茶な! と思いましたけどね(笑)。
一同:(笑)。
佐上:そういう意味では、何か決まったモチーフがいつもあるわけじゃなくて、ネタを各自持ち寄って決めていたかな。俺はストリート系の雑誌とかをパラパラ見ながら、「このNIKEの新しいスニーカーかっこいいですよね」とか言いながら打ち合わせをして、それにこしたさんのアイデアが何か加わったらこうなる、みたいな感じでやっていたと思う。
吉田:車だけではなく、当時の流行りものも取り入れつつ打ち合わせて行ったと。それが夜な夜な行われていたんですね。
こした:そうですね。泣きそうになりながら……。
吉田:連載と並行しながらやられていたのが本当にすごいですよね。商品数もかなりありますし。あれって描き溜めてやられていたのかなって思っていたんですけれども、そういうわけじゃないんですね?
佐上:完全に自転車操業だよね。
こした:そう。さながらジャズセッションのような。
吉田:誌面に載るどれくらい前から、やられていたのでしょう。
佐上:半年前から。
吉田:なるほど。それでも、1個作るのに半年はかなりギリギリですよね。おもちゃの新商品を作るのはだいたい10か月から1年弱くらいが普通の早さで、半年でギリギリになる、という話はバンダイに所属していた時期に聞いたことがあります。
佐上:あとは、WGP編のアニメのときが大変だった。世界各国から参加選手が大勢いるし、国ごとにマシンを作らなきゃいけないんだけど、漫画的にはまだどの国がどうなるかとか全然設定が決まっていない状況。でもアニメの2年目は、50話完結のWGP編をするっていうから、もう全部作らなきゃいけなかったんですよ。あの時が一番ヤバかったかな。どんな選手だとか、どんなミニ四駆だとか、本当は1個ずつ時間をかけて作っていきたいところで、漫画だけならそれでも進行可能なんだけど、アニメが絡むとそうも言ってられない。漫画で出てくるまで待ってなんて言うと全然進まないし。
吉田:世界大会ってなると開会式の時点で出てこなきゃいけないですしね。
佐上:そうそう。キャラ設定含めてもうここで全部作ろう、みたいな。
こした:なんかだんだん記憶が蘇ってきた……封印していた悪夢の記憶が……。
一同:(笑)。
佐上:思い出したくない記憶だから(笑)。
こした:今日座談会が始まったころは全然思い出せなかったんだけど、通りで思い出せなかったわけだ。
佐上:もうあの頃は、ずっと外国語辞典を持って、サッカー選手とか、ミュージシャンとか、ドイツ語やイタリア語っぽい名前とか言葉とか、ひたすら探しまわってた。だけど、漫画でいつ登場して、いったい何をするのか全然決まっていないっていうね。
吉田:各キャラの名前と設定だけ先に決まった状態だったんですね。
サガミネーター、思い出のマシン
吉田:佐上さんは、一番思い入れのあるマシンをひとつあげるとしたらどれになりますか?
佐上:何台かあって、まず思いつくのはリアルミニ四駆シリーズ※のバイスイントルーダーかな。
※走行用のミニ四駆ではなく、飾って楽しむタイプのディスプレイ用モデルのシリーズ。
吉田:『爆走兄弟レッツ&ゴー!! MAX』に登場するやつですね!
佐上:そうそう!
こした:あれもとんでもない無茶を言われたなあ。
佐上:「ぜひ、4輪が変形して2輪っぽくなるっていうのをやろう!」って言ってたんだけど、タミヤさんがすごく嫌がってた。「そんなのできるわけないだろ!」って(笑)。
吉田:リアルミニ四駆シリーズって、シャーシ※だけは流用していましたからね。
※ミニ四駆の土台とも言えるパーツのこと
佐上:でも、形になったときは「すげー!」って思いましたね。あと俺はごつい系のマシンが好きだから、ブロッケンギガントかな。
吉田:ブロッケンは『レッツ&ゴー』で初めてフレームが出てましたもんね。当時も人気でしたよね。わかりやすく「殴って壊す」みたいな感じが。黒沢くんの頃はのこぎりローラーをくっつけてくるだけだったんで、ああいうマッシブなイメージのマシンって実はまだあんまりなかったんですよね。走りの力強さで言うとトライダガーXも外せないですけど、ブロッケンギガントみたいな全身を使ってパワフルに殴ってくるようなヤツって、すごく子どもが好きなイメージです。
佐上:逆に、吉田プロデューサーの好きなマシンは何です?
吉田:僕は、初めて手に入れたのはビクトリーマグナムだったんですけど、次に手に入れたビークスパイダーも大好きです。デザインが独特すぎるというか、曲線的なのに直線的でもあり。形容しがたい感じで、ウィングの形状とかも、車としては考えられないですよね。
こした:これは、エイがモチーフだったんですよ。それが蜘蛛に。
吉田:あぁ~そっかエイなのか! なるほど!! 最初はエイをモチーフにしていて、途中で蜘蛛になったということですか?
こした:カラーデザインまでずっとエイがモチーフだったんです。けど、エイ要素が隠れてますね。
佐上:うん、蜘蛛だね!
こした:蜘蛛に覆われています(笑)。
吉田:初めて知った……! 何か本当にもう、ステッカーを貼っても貼らなくても、デザインが好きすぎてうっとり眺めていました。あとそれをさらに補強するのが、このマシンは初めて超自然現象的な攻撃方法をしてきたんですよね。空気の刃をまとって攻撃してくるっていうのがそれまでの直接的な攻撃とは違い、イマジネーションの幅が広いというのが!
「どのくらいスピードを出したら、空気の刃が出てくるんだろう!」っていうのをめちゃくちゃ考えて、挙句の果てには、アルミホイルの刃を取って貼り付けてみたり……。
こした:おお、危ない危ない(笑)。
吉田:ですよね(笑)。それくらい、ビークスパイダーが好きでしたね。
こした先生と担当編集・サガミネーター
吉田:次に、こした先生と佐上さんのおふたりに、作家と編集という関係性についてお話を伺いたいです。
こした:そうですね……いや、“逆らえない”ですよね……。
一同:(笑)。
佐上:そんなことないでしょうが~!!
こした: 4輪が2輪になるとかね。無茶ぶりを形にするっていう感じ。断れませんよ。トライダガーXも、ブロッケンGも、「ごついけど速そうに」とか言われるし(笑)。
吉田:矛盾したオーダーをいっぱい投げてくるんですね(笑)。でも、実際にそれはこした先生にできることだから振られているわけですよね?
こした:いや~わかりませんよ。「やれよオラァ!」みたいな(笑)。
佐上:そういう風に言ってないと思うのよ!!(笑) でも確かに、後半は思いつきでも言ってみたら何とかなりそうだな、とは思っていたかも。こしたさんに「これはどう?」って聞くと、すぐにタミヤさんに持って行って、スタッフが「こんな感じですかね」って感じで進むので、なんか「言ってみるもんだな」って(笑)。
こした:(笑)。
吉田:マシンとキャラクターを作る順番は、先にマシンからなんでしょうか?
こした:それはマシンから、かな?
佐上:いや、同時にやってた気もするな……。
こした:マシンに合ったキャラ、キャラに合ったマシンって感じで作っていくので、どっちがどっちっていうのはあんまり定かではないですね。
佐上:なんか、カイ・ゲン・レイの話なんだけど、
こした:ああ言われた(笑)。戒厳令でカイ・ゲン・レイ。
佐上:新しいライバルを3人出そうって話になって、3人のキャラクターに合わせて被らないようにミニ四駆を作るっていうのをセットでやっていた気がする。
吉田:そうですね。特に挙げられた3台って特徴がバラバラですもんね。
佐上:烈と豪君の主人公マシンとも当然被らない方がいいし、ミニ四駆の単体で考えたときにも、売り場に並んだ時にかっこよくて、子どもたちが欲しくなるっていうのも大事ですから。「敵役のミニ四駆だからいらない」って子どもたちに言われちゃうとタミヤさんにとって厳しいからね。難しい話ですよね。
吉田:敵役のものって確かに普通はあまり人気でないですよね。
佐上:そうそう。当時は、ミニ四駆の最新情報をコロコロが伝えるときには、漫画の流れとは完全には切り離せないものだけど、敵役の新しいミニ四駆の「商品としての新しさは何か」っていうのを別途で伝えていたので、匙加減がすごく難しかった。でもそれはかなり上手くいって、商品自体の価値を伝えられたと思う。
吉田:狙われた通り、「ビークスパイダー」「ブロッケンG」「レイスティンガー」の3台はフルカウルミニ四駆の中でも人気の高いマシンになっていますので、ものすごい事をされたなと思います。
こした先生のライバル
吉田:当時のコロコロで、ライバルだと思っていた作品はありましたか?
こした:やっぱり、徳田さんを目指してやっていましたね。徳田さんはすごくアメリカンな方です。
※こした先生の前にミニ四駆漫画『ダッシュ!四駆郎』を連載していた徳田ザウルス先生のこと
吉田:連載するにあたって、お話されることもあったのでしょうか。
こした:そうですね。ペーペーの僕に対してもすごくやさしくしてくれる、アニキのような方でしたね。アメリカのハーレー乗りのようなイメージです。
吉田:バイクに乗られていたんですね。
佐上:バイクで打ち合わせに来てたからね。革ジャンを着てね。
こした:あの時期は限定解除が厳しい時代で、徳田さんが「ハーレーに乗りたくて乗りたくてしょうがない」って言ってましたね。で、ホンダのスティードにめちゃくちゃ金をつぎ込んでて、ハーレーよりすごいことになってましたよ。
吉田:徳田さんを含めて、皆さんバイク世代なんですね。
こした:そうですね、若いころにブームがありました。そのおかげで、ミニ四駆の知識がない状態でも、なんとなくイメージできるようになりましたね。
佐上:バイク関連で、これはどこでも話したことないんだけど、ハリケーンソニックとサイクロンマグナムの名前は、「バイクに乗るあの特撮ヒーロー」からなんです。
吉田:へ!?
佐上:その特撮に出てくる、サイクロンとハリケーンがモデルになっているんですよ。こしたさんと相談しながら、色々な名前を考えていったんだけど、冒頭でも話した通り、同じような物を見て育ってきていたので、そういう方向に。それこそ、ブロッケンGって、「とある巨大ロボット作品」のキャラクターの名前からなんです。
吉田:そうだったんですね!
佐上:子どもの頃に好きだったものから、こしたさんと「これをくっつけたらかっこいいんじゃない?」みたいな話はしてました。
吉田:貴重なお話をありがとうございます! ライバルのお話から、意外なエピソードまで聞けてしまいました。
こした:徳田さんはライダー仲間であり、ライバルでもあり、師匠でもあります。
『レッツ&ゴー』のストーリー展開
吉田:マシンについてはいろいろお聞きしてきましたが、『レッツ&ゴー』のお話づくりに関しても伺いたいです! ストーリー展開はどのように考えられていたのでしょうか。
こした:なにぶん時間が全然なかったもので、追い詰められながら考えていましたね……。
吉田:先生は筆が速い方ですよね。
佐上:速いね。
こした:昔はね。昔の話です(笑)。
吉田:プロットの上がる速さがすごい、という話を伺ったことがありまして。だからこそあのぺース、あの展開ができたのかなと。
佐上:人気が出ると、編集部はもっとページを増やしてガッツリやろうと考えがちじゃないですか。漫画家さんによっては、そういう提案をすると「そんなに描けない」と言われることがあるんだけど、こした先生は全然断らない。
吉田:それは、断らないのか断れないのか……(笑)。
佐上:「無理です」って言われたことがないんだよね。「あっ、じゃあいけるんだ」と思って(笑)。
こした:そ、そうだったんですか?
吉田:連載以外にも読切含めてかなりたくさんやられていましたよね。冊子もそうだし、新しいマシンが出たときのムックも出されていたじゃないですか。
こした:やってましたね~。
佐上:若かったからね。
こした:そうなんですよ。佐上さん痛風大丈夫ですか?
佐上:大丈夫(笑)。
吉田:20歳くらいでデビューされて、『レッツ&ゴー』が連載開始されたときは30代ですよね。
佐上:95年開始だから、30は超えてるね。まあまだ若かったね。
シャイニングスコーピオンの記憶
吉田:僕ら世代には思い出に残っているSFCのソフト『ミニ四駆シャイニングスコーピオン レッツ&ゴー!!』についてもお伺いしたいです。マシンでもゲームでも、シャイニングスコーピオンにまつわるエピソードをお聞かせください。
こした:また思い出したくない記憶が……。
佐上:語って語って。
こした:これは佐上さんがまた無茶ぶりを……(笑)。
佐上:俺じゃないって!! 皆さん信じないでください!(笑)
一同:(笑)。
こした:これも突貫作業ですよ。なんかイベントがあるとかなんとかで、「今晩中に出さないといけない」と。
佐上:えっ、そうだっけ?
こした:タミヤさんもその場にいて、デザインする余裕も全然なくて。
吉田:これは……(笑)。
佐上:そ、そうだっけ……。俺、都合の悪いことは忘れちゃうのかも。
こした:このマシンのデザインは、竹がモチーフですね。節々とか、うねった感じでインパクトを出そうとしました。
吉田:へえ~!
こした:とにかく一晩でなんとかしました。僕、なんにも聞かされずにあの場に行ったんですよ。
佐上:大変申し訳ないです。本当に。その節は……。
一同:(笑)。
吉田:連載真っ只中に出たゲームだったので、ハードなスケジュールだろうとは思っていましたが(笑)。
こした:「うぉぉ……」って感じでやりました。
吉田:思い返すと、アニメやゲームで『レッツ&ゴー』というIP全体がとても未来的にカッコよく描かれていましたよね。マシンがCGのワイヤーフレームで描かれていたりして、先進的っぽいというか。ゲームと一緒に登場したこのマシンもカッコよくてワクワクしましたね! 発売当時、その年のクリスマスに買ってもらいました。
佐上:それにしても、よく一晩で描けたよね。「今日中に描いてね」って俺が言った。なんでこんなスケジュールになっちゃったんだろう本当に。
こした:「とにかくモノを朝までに!!」って感じでしたよ(笑)。
吉田:忙しさもピークのときでしょうからね。それにしても、曲線と直線がきれいに融合したデザインでカッコいいですよね。
こした:やりすぎ感はあるけどね(笑)。人間、追いつめられるとなんでもできちゃうもんですね。
吉田:一番人気のサイクロンマグナムの次くらいに人気ですからね。『ミニ四駆超速グランプリ』にも登場しています。
吉田Pの熱いミニ四駆愛
吉田:一番盛り上がっていたタイミングで出た独特なキットのスピンコブラも、アンケートで調査すると根強い人気がありましたね。走らないタイプのリアルミニ四駆で、出回った数が少ないからか、当時買えなかった人もかなりいたそうです。
佐上:なんでスピンコブラはこういう仕様なんだっけ。
こした:これはたしか、「走らなくてもいいからカッコいいやつを作って」と言われた気がします(笑)。
吉田:そういう理由だったんですね。子どもの頃は全然塗装とかできなかったんですが、今では細かくできるようになって「大人になったなあ」と感じています。
佐上:これ全部ご自分でやられたんですね。すごい!
こした:色合いを見て「おっ」と思いましたよ。
佐上:懐かしいなあ。25年も前のことをこうして熱く語っていただけるのはうれしいですね。
こした:ですね。ありがとうございます!
愛で運営する『ミニ四駆超速グランプリ』
吉田:そんな私が携わっている『ミニ四駆超速グランプリ』について、少しお見せしたいと思います。
吉田:ゲーム的には、最初に「アバンテJr.」「マグナムセイバー」「ダッシュ1号 皇帝」の3台から選んで始めるのですが、7割近いお客様がマグナムを選ばれていますね。
佐上:ほほ~!
吉田:このアプリは、あの頃ミニ四駆に熱中していた人たちの気持ちを大事にして開発・運営しようという想いでやっております。「ミニ四駆の何にワクワクして遊んでいたか」を意識していまして、例えば「レース開始時は必ずマシンのスイッチを入れるところから始める」といった部分からこだわっています。
基本的に新しいマシンやコースを出すときは、まず過去に自分が遊んでいたときのことを思い出して、パーツの組み換えはどうしたらワクワクするのかを考えています。
佐上:実装するパーツは実際にあったものなんですか?
吉田:そうです。
佐上:ゲームオリジナルじゃないんだ?
吉田:そうですね、今のところ実装しておりません。あの頃遊んでいた人たちに向けて作っているので、当時のセッティングの知識で走れるように設計しています。経験してきた人なら、パッと見でどんな効果があるかがなんとなくわかるように意識していますね。
佐上:ほうほう。推定ユーザーはどれくらいですか?
吉田:DL数でいえば、おかげさまで300万を先日超えましたね。
佐上:こしたさんは最近ゲームやってます?
こした:あ、スマホ持ってないんです。
佐上:マジ?
こした:目がショボショボしちゃって、ちょっとでも見るとダメなんですよね。だから……どうしましょう(笑)。
一同:(笑)。
佐上:でもね、俺も老眼が結構厳しいね。
こした:じゃあ、いいサプリがあればお願いしますね(笑)。
『超速GP』に期待すること
こした:さっき紹介された中で、「コースが作れる」ってところに「おお!」と思いましたね。
吉田:当時、一番難しかったのはコースの確保だったかなと思うので、『超速GP』で気軽にできるようになったのは大きいかもしれません。コースを作って一緒に遊ぶこともできるので、会社の同僚や世代を超えて上司部下でプレイされている方も結構多いです。
こした:あれは、実際のタミヤさんのコースを自分で組み合わせられる?
吉田:そうですね。セクションをどんどん集めていって、自分の好きなように組み合わせられます。
こした:それはリアルですね。
吉田:パーツに関しても、とりあえず良いものを付ければいいというわけではなくて、どこかで必ずバランスを取らないといけないようになっています。
こした:それが何度もシミュレートできると。
吉田:ミニ四駆が持つセッティングの面白さをしっかり大事にしております。
佐上:老婆心ながら、このパーツを付けたらこの部分が良くなって~、というのは当然あると思うんだけど、それだけが正解にならないといいなと思ってます。必勝の方程式ができるだけバレないようにしてほしい。
吉田:おっしゃる通りだと思います。
佐上:ミニ四駆に限らず、ホビーって突き詰めていったら、最適解に近しいものにぶち当たってしまうと思うんだけど、できるだけ回り道しながら、大多数の人がたどり着かないくらいの方が長く愛してもらえるんじゃないかなと。ミニ四駆にはそういうところがあると思うんですよ。昔、フルカウルミニ四駆で「こうすると空力抵抗が違う」とか「肉抜きで何g軽くすれば速くなる」みたいなことがコロコロに載っていたけど、どれくらい本当なのか?って話です。でもあの年代の子どもたちは、速くなると信じてやってくれるわけじゃないですか。「肉抜きしようとしたらボディが割れて泣いた」みたいな事故も起きつつ。
吉田:絶対みんな一度は改造中に壊しちゃいますよね(笑)。
佐上:そういう感じの雰囲気がこのアプリにもあるといいのかなって。
吉田:“肉抜き”とかのファンタジーは、多少割り切ってトレースしているところはありますね。
佐上:メッシュ貼って。
吉田:そうです(笑)。長期的な展望としては、なにがしかのゲームとしてのファンタジー的な面白さはちょっとずつ足していかないとマンネリ化してしまうので、何年間も遊んでもらうための運営は考えていかないといけないなと思っております。ワクワク感のエッセンスはどんどん勉強させていただいて、皆さんと一緒に『超速GP』を成長させていきたいなと思います。
佐上:「闇のパーツショップで違法モーターが買える」とかどう?
一同:(笑)。
佐上:レースの前で車検やって、引っかかったらしばらくゲームに参加できないみたいな(笑)。昔よくレース前の車検で、「これダメだよ?」ってよく言ったもん。
ミニ四駆新時代に向けて
吉田:ミニ四駆が第1次ブーム、第2次ブームと来て、また2011年以降「ミニ四駆新時代」とも言えるような動きに入っています。おふたりに、今後のミニ四駆全体に関して期待したいことをお聞きしてもよろしいでしょうか。
こした:いろいろな物が溢れているからか、今の子どもたちは実物を触る機会がなかなかないので、先ほどの『超速GP』は、バーチャルで気軽にできるというのが取っ掛かりとしてすごくいいのかなと思います。ミニ四駆は歴史あるものなので食わず嫌いというか、入っていきにくいものになってしまっているので、ゲームだと始めやすいのが素晴らしいですね。このゲームをきっかけに実物に入ってもいいし、ゲームだけで完結してもいいくらい、リアルにできているので良いと思います。
佐上:ミニ四駆って、そもそもはラジコンに憧れている小学生が、高価だったり、走らせるのに技術が必要だったりで手が出せない状況だった中で、もう少し手軽に遊べるように、という経緯で始まったものだったと思うんです。だけど、ミニ四駆もこれだけ長く続くと先鋭化してしまって、今どきの小学生が入っていけなくなってしまっている。こしたさんの話ともつながっていると思うけど、小学生たちが「自分のこと」として楽しめるような何かが、ミニ四駆の中で起きていってくれたらいいなと思います。
吉田:非常におっしゃる通りだと思います。『超速GP』でこの一年、当時遊んでいた大人たちが昔の環境で遊べるようになりました。そして今後、今の子どもたちに向けてどのようなスタートラインを作ってあげられるかは、私たち大人になったミニ四駆世代も一翼を担っていけたらと思っております。
本日はありがとうございました!
こした・佐上:ありがとうございました!
『ミニ四駆超速グランプリ』1周年おめでとう!