3. ライブラリーアウト
簡単にデッキを作るための方法の一つとして、「他のフォーマットで活躍するデッキの再現」というものがある。
先ほどレガシーの赤単ストームから「Red Storm」の着想を得たように、既に他の環境で活躍しているコンセプトならば、戦略の有効性は証明済みと言えるからだ。
もちろん戦略の核となるカードがその環境には存在しない、なんてことも起こりうるので、常に使えるやり方ではない。
だが大抵この方法を考えるのは「戦略の核となるカードが環境に存在していること」を前提としている場合が多い (《最後の審判》がないのにモダンで《最後の審判》を作ろう!などと普通は考えない) ので、あまり気にする必要はない。
さて、パイオニアでクソデッキを作るにあたり、私は今度は「モダンにあるデッキを再現できないだろうか?」と考えた。
モダン環境にあってパイオニア環境にないデッキとは何か。
私が考えたのは、ライブラリーアウトだった。
無論パイオニアには《書庫の罠》も《不可思の一瞥》も存在しない。
ライブラリーを削る呪文としては、《強行+突入》や《精神刻み》などをメインに使っていくことになるだろう。
私としても、これらだけで相手のライブラリーを削りきれるとは思っていない。
そう、強力な呪文が使えないというのなら。
《正気減らし》で削る量を倍にすればいい。
あるいは《水没した秘密》で呪文を唱えるたびに追加で2枚を削ることもできる。
というわけで脳内でできあがったのがこちらのデッキだ!
『ライブラリーアウト』
枚数 | カード名(メインボード) |
---|---|
6 | 《島》 |
4 | 《沼》 |
4 | 《湿った墓》 |
4 | 《水没した地下墓地》 |
4 | 《イプヌの細流》 |
4 | 《査問長官》 |
4 | 《マーフォークの秘守り》 |
4 | 《選択》 |
4 | 《秘本掃き》 |
4 | 《精神刻み》 |
4 | 《墓所への乱入》 |
2 | 《驚恐の目覚め》 |
4 | 《強行+突入》 |
4 | 《水没した秘密》 |
4 | 《正気減らし》 |
実のところライブラリーアウトが成立すると考えたのは《墓所への乱入》があるからで、これがなければほぼただのバーンの下位互換ではあるのだが、それはそれとして《墓所への乱入》があったとしてもライブラリーを削る呪文に力不足が否めないのは事実なので、将来のアップデートに期待したい。
ちなみに《時を越えた探索》が入ったデッキに当たると落とした墓地を「探査」に使われて憤死するのだが、どうしようもないので諦めるかもしくはサイドに《正気減らし》との相性が絶望的に悪い《虚空の力線》を積んでおこう。
4. クロクサコントロール
モダンには「マルドゥパイロマンサー」というデッキがある。
アドバンテージが取りやすいので除去と相性が良い青というカラーリングをあえて使わず、白もほぼタッチのみで実質赤と黒だけで手札破壊・除去・リソース獲得・フィニッシュのすべてをこなすコンセプトは、合理的かつ極めてソリッドな戦略だった。
この「マルドゥパイロマンサー」をどうにかしてパイオニアで再現できないだろうか?
そのように考えたのには理由がある。
《死の飢えのタイタン、クロクサ》。『テーロス還魂記』でのこのカードの登場は、パイオニアにおける赤黒というカラーリングに革命をもたらした。
赤黒でコストが軽く最序盤のリソース交換カードが継続的なリソース交換も可能なフィニッシャーにもなりうるというのは、これまでに類を見ないものだったからだ。
だが、《死の飢えのタイタン、クロクサ》だけでデッキにするのは難しい。
《自然の怒りのタイタン、ウーロ》に対する《サテュロスの道探し》のように、《死の飢えのタイタン、クロクサ》と相性が良い相棒が必要なのだ。
では、《死の飢えのタイタン、クロクサ》の相棒とは何だろうか?
私が考えた相棒は、《立身+出世》だ。
このカードは《立身》の側がコスト2以下のクリーチャーしか釣り上げることができない代わりに1マナという破格の軽さを持っている。
もちろんこれを使ったからといって「脱出」はしていないので《死の飢えのタイタン、クロクサ》が盤面に残るというわけではない。
だが、《死の飢えのタイタン、クロクサ》の能力は重ね掛けした方が強いし、相手の手札がなくなった後でも3点火力として運用することができる。
加えて《戦慄衆の秘儀術師》と《コラガンの命令》でアドバンテージを取りまくれば、ドローに乏しい赤黒というカラーリングでもきっちりコントロールしきることが可能になるはずだ。
というわけで脳内でできあがったのがこちらのデッキだ!
『クロクサコントロール』
枚数 | カード名(メインボード) |
---|---|
6 | 《沼》 |
4 | 《山》 |
4 | 《血の墓所》 |
3 | 《寓話の小道》 |
4 | 《竜髑髏の山頂》 |
2 | 《ロークスワイン城》 |
4 | 《戦慄衆の秘儀術師》 |
4 | 《死の飢えのタイタン、クロクサ》 |
1 | 《残忍な騎士》 |
4 | 《乱撃斬》 |
4 | 《致命的な一押し》 |
4 | 《思考囲い》 |
2 | 《戦慄掘り》 |
1 | 《軍団の最期》 |
1 | 《リリアナの勝利》 |
3 | 《立身+出世》 |
3 | 《コラガンの命令》 |
1 | 《魔性》 |
2 | 《魂標ランタン》 |
2 | 《最後の望み、リリアナ》 |
1 | 《炎の侍祭、チャンドラ》 |
このデッキのさりげないコンセプトの一つとして、《最後の望み、リリアナ》と《炎の侍祭、チャンドラ》で墓地のクリーチャーと呪文の両方を再利用するというギミックがある。パイオニアはかなり早い環境ではあるが、3マナのプレインズウォーカーをアドバンテージ源に据えるのなら間に合うだろうし、使用率の高いサイドボードである《神秘の論争》に引っかからない色なのも魅力的だ。
5. 不屈の独創力
「他のフォーマットのデッキを再現する」のがデッキを作るコツだと書いたが、さらにこのテクニックにはレベルが一つ上の禁じ手がある。
それは、「他のフォーマットのクソデッキを再現する」ことだ。
《不屈の独創力》は最近ようやくモダンで少し活躍を見せたものの、それ以外は基本的にデカブツをどうにかして早出ししたいというロマンプレイヤー向けのファンデッキ御用達カードである。
具体的には、デッキの中にクリーチャーは踏み倒し先のデカブツしか入れず、代わりにトークンを出せる非クリーチャーのインスタントやソーサリーを活用することで、「《不屈の独創力》さえ唱えればバケモノが死ぬほど降臨して大体勝ち」という構造が成立する。
では、このコンセプトをパイオニアで再現するとどうなるか?
ワームを相手のゴールにシュゥゥゥーッ!!
というわけで脳内でできあがったのがこちらのデッキだ!
『不屈の独創力』
枚数 | カード名(メインボード) |
---|---|
2 | 《山》 |
4 | 《蒸気孔》 |
4 | 《マナの合流点》 |
4 | 《尖塔断の運河》 |
4 | 《シヴの浅瀬》 |
4 | 《天啓の神殿》 |
2 | 《ザルファーの虚空》 |
2 | 《歓楽の神、ゼナゴス》 |
1 | 《龍王コラガン》 |
1 | 《虚空の選別者》 |
4 | 《世界棘のワーム》 |
4 | 《選択》 |
4 | 《可能性の揺らぎ》 |
4 | 《ドラゴンの餌》 |
4 | 《軍族童の突発》 |
4 | 《不屈の独創力》 |
4 | 《アイレンクラッグの妙技》 |
4 | 《突沸の器》 |
他のフォーマットのクソデッキを再現したらクソデッキになるのは当たり前だろ!
一応、パイオニアでは数少ない瞬間的なマナ加速である《突沸の器》と《アイレンクラッグの妙技》に使い道が与えられただけでも存在価値があると言えなくもない……かもしれない。
「他のフォーマットのデッキを再現」というやり方は、精度はともかくデッキ自体を作るのは比較的簡単なので、「あのデッキいけるかも?」と思った方はぜひとも試してみて欲しい。
来たる4月24日には新セット『イコリア:巨獣の棲処』が発売し、4月24-26日にはアメリカ・ヒューストンでプレイヤーズツアーファイナルが、スタンダード&パイオニアで開催される。
それまで私も、再び妄想でクソデッキを考えながら過ごすとしよう。
ではまた次回!
ライター:まつがん
フリーライター。クソデッキビルダー。
論理的な発想でカード同士にシナジーを見出すのだが、途中で飛躍して明後日の方向に行くことを得意とする。
オリジナルデッキでメタゲームに風穴を開けるべく日夜チャレンジを続けている(が、上記のような理由で大体失敗する)。
パイオニア新妄想紀行 バックナンバー | |
パイオニア新妄想紀行 vol.1 ~パイオニアとは?~ | |
パイオニア新妄想紀行 vol.2 ~環境の「ゼロ」を求めて~ | |
【MtG】パイオニア新妄想紀行 vol.3 ~『テーロス還魂記』で遊ぼう~ |