2. クソデッキ案その1:《嵐の伝令》
『テーロス還魂記』のカードリストを眺めていて、私が最も「楽しそうだな」と感じたのは《嵐の伝令》だった。
だが、モダン以下であれば《エルドラージの徴兵》を付けて3ターン目に滅殺!とかが狙えたものの、パイオニアには1枚で付いて勝てるようなオーラはなさそうなのがネックであった。
それでもどうにか「《嵐の伝令》を出すだけで勝てるようなデッキ」が組めないか……と考えていたところ、《光波の護法印》というカードにたどり着いたのである。
《光波の護法印》はプロテクション(すべての色)を持たせつつもこの効果によってオーラは取り除かれないので、このカードと合わせてパワー20超えの《嵐の伝令》を作れれば殴って勝てることになる。
けれどもこのプランには一つ問題があった。《変わり谷》や《石とぐろの海蛇》などの無色クリーチャーや《世界を壊すもの》などの「欠色」持ちクリーチャーがいた場合、チャンプブロックされて終わってしまうのだ。
また、攻撃を必要とする時点で《残骸の漂着》でも対処できてしまう。すなわち、パイオニアのデッキたちは《光波の護法印》が付いても意外と何とかなるデッキが多かったのである。
となると、殴らなくても勝てるプランが必要なのだ。
だが、《嵐の伝令》にオーラを付けまくることしかできないデッキが殴らずしてどう勝とうというのだろう?
かくして《嵐の伝令》を使ったデッキアイデアは暗礁に乗り上げてしまった……かのように思われた。
しかしここまで考えたところで、私はさらなる可能性に思い至ったのである。
そもそもパワー20超えの《嵐の伝令》に《燃え盛る怒り》を付けたら勝てるのでは?
『嵐の伝令スペシャル』
枚数 | カード名 |
---|---|
4 | 《血の墓所》 |
4 | 《踏み鳴らされる地》 |
4 | 《マナの合流点》 |
4 | 《花盛りの湿地》 |
4 | 《ラノワールの荒原》 |
4 | 《サテュロスの道探し》 |
4 | 《嵐の伝令》 |
4 | 《憑依された死体》 |
4 | 《神々との融和》 |
4 | 《群れの結集》 |
4 | 《忌まわしい回収》 |
4 | 《天上の鎧》 |
4 | 《賢人の夢想》 |
4 | 《燃え盛る怒り》 |
4 | 《驚異的成長》 |
このデッキの回し方は簡単である。土地2枚と4種類の墓地肥やしのうち2枚以上がある手札をキープし、《嵐の伝令》を探しながら墓地を肥やしていく。
そして十分な量のオーラが墓地に溜まったところで《嵐の伝令》を出せば、あとはものすごいサイズになった《嵐の伝令》が《燃え盛る怒り》でボールを相手のゴールにシュゥゥゥーッ!!してくれる超!エキサイティン!!なデッキである。
とはいえ、そもそも除去を1枚構えられただけで《嵐の伝令》が出たときの能力にスタックして除去られて全てを失って無になるのでガチ要素は一切ないのだが、本体30点!とか言えるのはなかなか楽しいので、クソデッキらしいクソデッキに仕上がったと言えるだろう。
3. クソデッキ案その2:ヘリオッドコンボ
『テーロス還魂記』のカードを使用した最も実戦的なコンボといえば、やはり《太陽冠のヘリオッド》+《歩行バリスタ》だろう。
2枚コンボで即勝利というのは、パイオニアで《守護フェリダー》が禁止となる原因となった《サヒーリ・ライ》+《守護フェリダー》のコンボと同等の要件である。
だが、コンボにかかる最低マナが《サヒーリ・ライ》+《守護フェリダー》より2マナも重く、かつ《太陽冠のヘリオッド》が単体ではほぼ完全なる置き物である点がデッキ構築を難しくしている。
これがもし《吹き荒れる潜在能力》と出来事カードとのコンボのように、コンボパーツそれぞれが有用だったとしたならタフなミッドレンジ・コンボが組めそうなところなのだが……。
ん……待てよ?
I have a ヘリオッドコンボ……I have a 《吹き荒れる潜在能力》……
ン゛ー!ヘリオッド潜在能力!!
『ヘリオッド潜在能力』
枚数 | カード名 |
---|---|
2 | 《森》 |
2 | 《山》 |
1 | 《平地》 |
4 | 《聖なる鋳造所》 |
4 | 《踏み鳴らされる地》 |
4 | 《寺院の庭》 |
1 | 《マナの合流点》 |
2 | 《根縛りの岩山》 |
2 | 《陽花弁の木立ち》 |
4 | 《歩行バリスタ》 |
4 | 《エルフの神秘家》 |
4 | 《ラノワールのエルフ》 |
4 | 《発生器の召使い》 |
4 | 《恋煩いの野獣》 |
4 | 《薔薇棘の見習い》 |
4 | 《太陽冠のヘリオッド》 |
4 | 《豆の木の巨人》 |
1 | 《怒れる腹音鳴らし》 |
1 | 《無限への突入》 |
4 | 《吹き荒れる潜在能力》 |
《吹き荒れる潜在能力》コンボの弱点は、デッキにソーサリーが積めないためにサーチ手段が搭載できない部分にあった。そこでクリーチャーだけで成立するヘリオッドコンボと混ぜ込むことで、《吹き荒れる潜在能力》を引けないときにもコンボで勝てるようにしようという目論見である。
《吹き荒れる潜在能力》もヘリオッドコンボもマナがかかるという点では共通している。そこで《薔薇棘の見習い》や《豆の木の巨人》といったマナ加速にもなるソーサリー出来事を用い、手札に来た方でコンボを決めればいい。
コンボとコンボとを混ぜると大抵ろくなことにはならないというのが世の常なのだが、これなら2つのコンボが互いを阻害せず、新たなソリューションとなりうる……かもしれない。
4. クソデッキ案その3:《イリーシア木立のドライアド》
『テーロス還魂記』のカードの中で、既にモダンでも八面六臂の大活躍を見せているカードがある。
《イリーシア木立のドライアド》は《踏査》と《虹色の前兆》を合わせたようなカードで、もちろんそれだけでも意味不明なスペックなのだが、特にモダンにおいてはそれが緑のクリーチャーでもあるという部分に大きな価値がある。《召喚士の契約》でサーチできるからだ。
だが他方で、パイオニアでの活躍はというとなかなか難しそうに思われる。肝心の《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》はカードプールにないし、追加セットを生かそうにも《死者の原野》は禁止カードになってしまった。
だが、本当に不可能なのだろうか?
もしパイオニアに《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》が存在したなら、《イリーシア木立のドライアド》は環境を変えるバグカードとなりうる。
何か、何かないのか。基本地形タイプを参照し、大量に誘発することでゲームに勝てるカードは。そう思いながら私は、パイオニアのカードプールを「平地」「島」「沼」「山」「森」でそれぞれ検索した。
そして。
そのカードと出会ったのである。
《イリーシア木立のドライアド》があれば《戦慄の存在》が《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》に早変わりするのでは???
『自分をヴァラクートだと思い込んでいる一般人』
枚数 | カード名 |
---|---|
2 | 《森》 |
2 | 《島》 |
1 | 《沼》 |
4 | 《繁殖池》 |
4 | 《草むした墓》 |
2 | 《湿った墓》 |
1 | 《血の墓所》 |
1 | 《神無き祭殿》 |
1 | 《まばらな木立ち》 |
1 | 《隠れた茂み》 |
3 | 《寓話の小道》 |
4 | 《神秘の神殿》 |
1 | 《凱旋の神殿》 |
1 | 《神秘の聖域》 |
1 | 《光輝の泉》 |
1 | 《陽焼けした砂漠》 |
2 | 《ハイドロイド混成体》 |
4 | 《樹上の草食獣》 |
4 | 《イリーシア木立のドライアド》 |
4 | 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》 |
4 | 《戦慄の存在》 |
4 | 《不屈の巡礼者、ゴロス》 |
4 | 《成長のらせん》 |
4 | 《風景の変容》 |
何かをキメながら作ったとしか思えないデッキに仕上がってしまった。このためだけに《イリーシア木立のドライアド》と《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を4枚ずつ揃えたくはないので、この先は君自身の目で確かめろ!(丸投げ)
おまけ:呪禁オーラのその後
前回《圧倒的洞察》の可能性に触れた呪禁オーラだが、実際試してみるとやはりかなりの強化を得たと言えそうだった。
Pioneer Preliminary Bogles
R1 UR Ensoul LWW
R2 Mono Black Aggro WW
R3 Lotus Combo WW
R4 Niv-Mizzet Reborn LL
R5 Selesnya Tokens WLW《圧倒的洞察》というカード、さすがに圧倒的。グリフ4枚は多いかもだから2枚くらい《送還》か《非実体化》にしてもいいかも。 pic.twitter.com/msihDJfLm8
— Atsushi Ito (@matsugan) January 16, 2020
この後、《ニヴ=ミゼット再誕》がトップメタになったことを踏まえ、調整したリストが以下だ。
『呪禁オーラ』
枚数 | カード名(メインボード) |
---|---|
4 | 《繁殖池》 |
4 | 《寺院の庭》 |
4 | 《マナの合流点》 |
4 | 《植物の聖域》 |
4 | 《要塞化した村》 |
4 | 《林間隠れの斥候》 |
4 | 《バサーラ塔の弓兵》 |
4 | 《非実体化》 |
4 | 《天上の鎧》 |
4 | 《執着的探訪》 |
4 | 《液態化》 |
3 | 《グリフの加護》 |
3 | 《抑圧的な光線》 |
4 | 《圧倒的洞察》 |
4 | 《きらきらするすべて》 |
2 | 《ひるまぬ勇気》 |
枚数 | カード名(サイドボード) |
4 | 《厳格な放逐》 |
4 | 《防護の光》 |
3 | 《濃霧》 |
3 | 《神聖の力線》 |
1 | 《頑固な否認》 |
1 | 《探索する獣》 |
1 | 《ヴィズコーパの血男爵》 |
1 | 《漂流自我》 |
1 | 《至高の評決》 |
1 | 《思考のひずみ》 |
1 | 《オルゾフの簒奪者、ケイヤ》 |
主な変更点は《非実体化》をフル投入したこと。アーキタイプの種類が多いパイオニアでは「アグロ・ミッドレンジ・コントロールのすべてに対して有効なカードを採用すること」が必須命題となっており、《非実体化》はその要件を満たす1枚である。《執着的探訪》と《圧倒的洞察》があるおかげで手札消費も気にならない。
また、サイドボードの《厳格な放逐》はもともと自分のクリーチャーに対して打つことがなかったのでほぼほぼ《送還》の上位互換。いないだろうがワンチャン同型に当たったり、《ジェスカイの隆盛》コンボに当たったりすると追加でサイドインできる可能性があるのが利点だ。
いよいよ2週間後にはパイオニアで初の国内競技イベント、グランプリ・名古屋2020とプレイヤーズツアー・名古屋2020が開催される。
そこではどんなデッキが登場し、どのような戦略で勝ち上がっていくのだろうか?プレイヤーたちの選択に注目だ。
ライター:まつがん
フリーライター。クソデッキビルダー。
論理的な発想でカード同士にシナジーを見出すのだが、途中で飛躍して明後日の方向に行くことを得意とする。
オリジナルデッキでメタゲームに風穴を開けるべく日夜チャレンジを続けている(が、上記のような理由で大体失敗する)。
パイオニア新妄想紀行 バックナンバー | |
パイオニア新妄想紀行 vol.1 ~パイオニアとは?~ | |
パイオニア新妄想紀行 vol.2 ~環境の「ゼロ」を求めて~ |