By ドブフクロウ
あけましておめでとうございます。MtGライターのドブフクロウです。みなさん、年末年始はいかがお過ごしでしたでしょうか?
まだまだ今年も幕を開けたばかりですが、すでに1月24日(金)にリリースされる『テーロス還魂記』の新カードの情報が続々と公開されています。先日はこちらでも新カード《イリーシア木立のドライアド》を公開させていただきました。
スタンダードでも強そうではありますが、土地絡みの能力はなんといっても下の環境で猛威を振るう可能性を秘めています。特にモダンのヴァラクート系デッキは非常に相性がいいですしね。
さらにこの《ドライアド》は、地味に《血染めの月》なんかも(マナ能力以外の能力を失ってしまうことを除けば)無力化できたり。《アーカムの天測儀》といい《創案の火》といい《ドライアド》といい、最近は色マナの概念を壊す……というと語弊がありますが、新たな着地点を探っているような、実験的なデザインのカードが増えている印象です。
もちろん《ドライアド》以外にも様々なカードが公開されています。公式のカードリスト(※リンク先は外部サイト)には毎日カードが追加されているので、まだ新カードをあまりチェックできていないという方は、この機会にぜひ一度カードリストを見てみましょう!
さて、そんなこんなで新セットのリリースを目前に控え、『エルドレインの王権』環境のスタンダードも残すところあと2週間ほどです。そこで、今回は普段とは趣向を変えて、スタンダード環境を振り返ってみましょう!
『エルドレインの王権』環境初期 ~《ゴロス》系のランプデッキの隆盛~
『エルドレインの王権』がリリースされたことで、『イクサラン』ブロックと『ドミナリア』、そして『基本セット2019』がスタンダード環境から退場。カードプールはほぼ半分となりました。
ごくごく自然な思考として「使用できるカードプールが大幅に変更される=環境が激変する」というイメージがありますが、実のところ存外必ずしもそうとは言えません。もちろん白青コントロールのフィニッシャーとして活躍した《ドミナリアの英雄、テフェリー》や、ティムール《荒野の再生》で多くのプレイヤーをげんなりさせてきた《運命のきずな》が姿を消したことで、弱体化や消滅を余儀なくされたアーキタイプも存在しますが、前環境で強かったデッキが依然として強いということも多々あります。
『エルドレインの王権』環境初期にトップメタとして活躍していたのは、まさにそんな前環境でも強かったアーキタイプである《不屈の巡礼者、ゴロス》を用いたランプデッキでした。この連載のvol.31では、そんな環境最初期の《ゴロス》デッキを紹介しています。
ただ、このデッキは通称として《ゴロス》ランプと呼ばれてはいましたが、実際のところデッキの中核を担っていたのは《死者の原野》でした。《ゴロス》はこの《死者の原野》をサーチできるという点が強かったわけですね。
みなさんもご存知の通り、この《死者の原野》というカードは後にスタンダードで禁止カードに指定されます。この連載でいうとvol.34くらいの時期です。ミシックチャンピオンシップⅤの終了とともに、《ゴロス》ランプもとい《死者の原野》デッキは敢えなく禁止カードが出たことで環境から一人去ることになります。
『エルドレインの王権』環境中期 ~すべてがElkになる~
鹿ししかし、このとき禁止すべきカードは《死者の原野》だけではなかったのかもしれません。
環境から《ゴロス》ランプが消えたことにより、今度は2019年MTG親の顔より見たカードランキング1位(ドブフクロウ調べ/n=1)である、アイツが――
《王冠泥棒、オーコ》を使ったシミックフードというデッキが我が世の春を謳歌することとなります。
元々《ゴロス》ランプが活躍していたときも、シミックフードは環境のトップメタの一角と呼べるポジションについていました。このシミックフードというデッキはとにかく地力が高く、攻めも守りも器用にこなすオールラウンダーといえる存在。すなわち、正攻法で勝つのは困難を極めるのです。
しかしながらそんなシミックフードにも、あくまで正攻法ではないデッキには有利がつきにくいという隙がありました。ゆえに《死者の原野》を使い、コンボチックな挙動をする《ゴロス》ランプがシミックフードを抑えており、そんな《ゴロス》ランプをグルールアグロ(ミシックチャンピオンシップⅤで優勝)が、グルールアグロをシミックフードが抑えるという、環境は三つ巴の様相を呈していました。
健全とは言えないまでも、「均衡らしきもの」は存在していた環境。そこから《死者の原野》というピースを取り除くと何が起こるか……いや、何が起こったかは記憶に新しいですよね。その後、国内で開催されたマジックフェスト・名古屋2019や、ミシックチャンピオンシップⅥ(リッチモンド)は、「最強のシミックフード使い決定戦」と揶揄されるほどの壮絶なメタゲームを形成していました。それがどのようなヤバさだったかはこの連載のvol.37でもまとめています。
また、手前味噌ではありますが、このあたりの詳細な流れについては、わたくしドブフクロウがプロプレイヤーの井川選手にインタビューをしています。井川選手のお話がとても分かりやすいので、もっと掘り下げて知りたい!という方はこちらのインタビュー記事(※リンク先は外部サイト)をご覧いただくとよいでしょう。
そして、そんなシミックフードの強さを支えていたのが《夏の帳》と《むかしむかし》。これらの存在により「そもそもデッキ自体が強い+安定感も抜群+対策も困難」というぼくのかんがえたさいきょうのデッキが生まれたわけですね。《オーコ》とこの2枚はまとめて禁止されました。お疲れさまでした。
『エルドレインの王権』環境末期 ~スタンダード、爛漫の野となる~
そんなこんなで波乱に満ちた『エルドレインの王権』環境でしたが、《死者の原野》《夏の帳》《むかしむかし》《王冠泥棒、オーコ》の4種のカードが禁止されてからは比較的平和な時代が訪れます。
かねてよりTier1.5ラインにいたゴルガリ出来事やvol.41でもご紹介したシミックフラッシュ、あるいは《創案の火》を使ったミッドレンジや、《魔女のかまど》と《大釜の使い魔》を用いた黒緑系のサクリファイスデッキなどがしのぎを削ったミシックチャンピオンシップⅦを経て、現在ではこれらのデッキに加えてラクドス騎士、シミックランプ、ティムール出来事etc…と様々なデッキが活躍しています。
環境末期になって花開く多種多様なデッキたち。この群雄割拠のメタゲームは、きっと『テーロス還魂記』後の環境に引き継がれていくのでしょう。
戦いは次の舞台へ
かなり駆け足になってしまいましたが、『エルドレインの王権』環境はとにかくこう……いろいろありましたね。まぁそれだけ強いカードが多かったということで、非常に刺激的なセットでした。個人的にはシミックフードのミラーマッチは見ていて楽しかったのでわりと好きでしたよ。ミラーマッチのカバレージもたくさん取りましたしね。
そんなこんなで、1月24日(金)にはいよいよ『テーロス還魂記』がリリースされますし、ある意味『エルドレインの王権』環境でさえまだ始まったばかりと言えます。今年もマジックを楽しんでいきましょう!
ライター:ドブフクロウ
青春時代のほぼ全てをテキストサイトやゲーム系サイトを徘徊することに費やしていた根暗ライター。人間としての軽薄さに定評があり、親しい間柄では「空っぽ」というあだ名で呼ばれることもある。
MtGプレイヤーとしての腕前は自他ともに認めるヘッポコだが、青春時代に (いろいろなものを犠牲にして) 培ったMtG知識量は他の追随を許さない。
ドブフクロウのMtGブレイキングアカデミー バックナンバー
|
|