By まつがん
1. 新たなる禁止改定と現在の環境デッキ
前回vol.1の記事をあげた後、パイオニア環境には新たにいくつかの禁止改定がもたらされた。
その結果、12月22日時点での禁止リストは以下の通りである。
フェッチランド5種
《守護フェリダー》
《運命のきずな》
《夏の帳》
《むかしむかし》
《ニッサの誓い》
《豊穣の力線》
《王冠泥棒、オーコ》
《密輸人の回転翼機》
《死者の原野》
これらの禁止改定によっても、パイオニア環境の基本的な性質はそこまで変わってはいない……だが、「どのような妨害にあおうとも自分の戦略を完遂できる」というほど絶対的に強いコンセプトはさすがに存在しなくなってきたように思う。
したがって断言はできないが、少なくとも2月のプレイヤーツアーまではこれ以上禁止カードは出ないだろうというのが私の意見だ。
さて、それを踏まえて現在のパイオニア環境は、「アグロ←ミッドレンジ←コントロール←ランプ←アグロ……」といったメタゲームの回転に時折コンボがランダムに顔を出すという、4+1でおおよそ5つのポジションのデッキが存在する環境となっている。
そこで本題に入る前に、「アグロ-ミッドレンジ-コントロール-ランプ-コンボ」という環境における5つのポジションがどのようなデッキで占められているかについて、一応それぞれ紹介しておこう。
『サンプルデッキ (アグロ):黒単アグロ (RemiFortier プレリミナリー4-1)』
枚数 | カード名(メインボード) |
---|---|
16 | 《沼》 |
4 | 《ロークスワイン城》 |
4 | 《変わり谷》 |
4 | 《血に染まりし勇者》 |
4 | 《どぶ骨》 |
4 | 《漆黒軍の騎士》 |
4 | 《屑鉄場のたかり屋》 |
4 | 《残忍な騎士》 |
4 | 《悪ふざけの名人、ランクル》 |
4 | 《思考囲い》 |
4 | 《致命的な一押し》 |
4 | 《闇の掌握》 |
枚数 | カード名(サイドボード) |
4 | 《強迫》 |
4 | 《害悪な掌握》 |
3 | 《ゲトの裏切り者、カリタス》 |
2 | 《帆凧の掠め盗り》 |
2 | 《霊気圏の収集艇》 |
《密輸人の回転翼機》の禁止によって大幅な弱体化を余儀なくされたものの、それでも環境最優秀ハンデスの《思考囲い》と最優秀除去の《致命的な一押し》が使えるだけあって、今でも環境で通用するアグロデッキとなっている。
速度・角度・妨害をバランス良く揃えている上に事故も少ないデッキなので、生半可なコンセプトだと容易く打ち崩されてしまう。その意味で、ひとまずこのデッキにある程度勝てるかというのがパイオニアで通用するかどうかの一つの試金石となるだろう。
『サンプルデッキ (ミッドレンジ):イゼットフェニックス (Cherryxman プレリミナリー5-0)』
枚数 | カード名(メインボード) |
---|---|
3 | 《島》 |
3 | 《山》 |
4 | 《蒸気孔》 |
4 | 《尖塔断の運河》 |
3 | 《硫黄孔》 |
3 | 《シヴの浅瀬》 |
4 | 《若き紅蓮術士》 |
3 | 《厚かましい借り手》 |
4 | 《弧光のフェニックス》 |
1 | 《弾けるドレイク》 |
4 | 《選択》 |
4 | 《乱撃斬》 |
4 | 《稲妻の斧》 |
1 | 《急かし》 |
4 | 《イゼットの魔除け》 |
4 | 《航路の作成》 |
4 | 《巧みな軍略》 |
4 | 《宝船の巡航》 |
枚数 | カード名(サイドボード) |
3 | 《丸焼き》 |
3 | 《否認》 |
2 | 《マグマのしぶき》 |
2 | 《ミジウムの迫撃砲》 |
2 | 《崇高な工匠、サヒーリ》 |
1 | 《神秘の論争》 |
1 | 《時を越えた探索》 |
1 | 《覆いを割く者、ナーセット》 |
環境初期からフィールドに存在しつつも、一切の禁止を受けずにここまで生き残っているデッキ。パイオニアは大抵の場合、マナと手札を盤面の最大値を構築するのに使用したい環境である関係上、墓地はかなり触りづらい領域となっているのが追い風。
また《弧光のフェニックス》の復活条件は「インスタント・ソーサリーを3回唱える」という究極的には相手からは妨害できないもののため、豊富なドロースペルで状況を再現しやすいこととあいまって、ゲームプランを比較的自由に選択できるのが強みである。
『サンプルデッキ (コントロール):青白コントロール (yxcvbnm プレリミナリー4-1)』
枚数 | カード名(メインボード) |
---|---|
7 | 《島》 |
4 | 《平地》 |
4 | 《神聖なる泉》 |
1 | 《灌漑農地》 |
4 | 《氷河の城砦》 |
2 | 《アーデンベイル城》 |
1 | 《ヴァントレス城》 |
1 | 《廃墟の地》 |
1 | 《ガイアー岬の療養所》 |
4 | 《選択》 |
4 | 《アゾリウスの魔除け》 |
3 | 《検閲》 |
2 | 《ドビンの拒否権》 |
4 | 《吸収》 |
4 | 《至高の評決》 |
2 | 《排斥》 |
3 | 《時を越えた探索》 |
3 | 《時を解す者、テフェリー》 |
2 | 《覆いを割く者、ナーセット》 |
3 | 《ドミナリアの英雄、テフェリー》 |
1 | 《太陽の勇者、エルズペス》 |
枚数 | カード名(サイドボード) |
3 | 《霊気の疾風》 |
2 | 《僧院の導師》 |
2 | 《黎明をもたらす者ライラ》 |
2 | 《ドビンの拒否権》 |
2 | 《神秘の論争》 |
2 | 《即時却下》 |
2 | 《安らかなる眠り》 |
《密輸人の回転翼機》《夏の帳》《死者の原野》《王冠泥棒、オーコ》という数多くの天敵たちが軒並み禁止になったことで、ようやくコントロールが息を吹き返してきた。
もともと全体除去とフィニッシャーに関してはモダンと同水準のものが使える上に、ドローについては《時を越えた探索》というモダン以上のカードが使えるため、禁止の果てに環境には交換しやすいリソースしか残っていない現状、古典的なカウンター戦略は意外と強力である。
『サンプルデッキ (ランプ):緑単ランプ (Gobern プレリミナリー4-1)』
枚数 | カード名(メインボード) |
---|---|
11 | 《森》 |
4 | 《ギャレンブリグ城》 |
4 | 《見捨てられた神々の神殿》 |
4 | 《光輝の泉》 |
4 | 《ウギンの聖域》 |
1 | 《歩行バリスタ》 |
4 | 《ラノワールのエルフ》 |
4 | 《エルフの神秘家》 |
4 | 《エルフの再生者》 |
4 | 《茨の騎兵》 |
4 | 《ウルヴェンワルドのハイドラ》 |
4 | 《世界を壊すもの》 |
2 | 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》 |
4 | 《ニッサの巡礼》 |
2 | 《精霊龍、ウギン》 |
枚数 | カード名(サイドボード) |
4 | 《難題の予見者》 |
3 | 《恋煩いの野獣》 |
3 | 《減衰球》 |
2 | 《不屈の追跡者》 |
2 | 《危険な櫃》 |
1 | 《精霊龍、ウギン》 |
そうしたミッドレンジやコントロールをまとめて薙ぎ払うポジションにいるのが緑単ランプ。マナブーストの鍵となっているのが《ギャレンブリグ城》と《見捨てられた神々の神殿》のため妨害が難しく、ひとたび《茨の騎兵》につながってしまえばあとはカウンターされても能力が発動する《世界を壊すもの》や《絶え間ない飢餓、ウラモグ》で相手の盤面を一気に壊滅に追い込むことが可能だ。
『サンプルデッキ (コンボ):《睡蓮の原野》コンボ (TombSimon プレリミナリー4-1)』
枚数 | カード名(メインボード) |
---|---|
3 | 《森》 |
1 | 《島》 |
4 | 《植物の聖域》 |
4 | 《ヤヴィマヤの沿岸》 |
4 | 《神秘の神殿》 |
4 | 《睡蓮の原野》 |
4 | 《演劇の舞台》 |
1 | 《爆発域》 |
4 | 《樹上の草食獣》 |
2 | 《砂時計の侍臣》 |
4 | 《森の占術》 |
4 | 《成長のらせん》 |
4 | 《見えざる糸》 |
4 | 《二倍詠唱》 |
2 | 《巧みな軍略》 |
4 | 《熟読》 |
4 | 《時を越えた探索》 |
2 | 《発展+発破》 |
1 | 《嵐の伝導者、ラル》 |
枚数 | カード名(サイドボード) |
3 | 《自然のままに》 |
3 | 《威圧の誇示》 |
2 | 《終止符のスフィンクス》 |
2 | 《前知の場》 |
2 | 《覆いを割く者、ナーセット》 |
2 | 《精霊龍、ウギン》 |
1 | 《神秘の論争》 |
《運命のきずな》が禁止となったため、環境では《ジェスカイの隆盛》と並んで数少ない純正コンボデッキ。《演劇の舞台》を駆使して盤面に2枚の《睡蓮の原野》を用意できたら準備完了。《見えざる糸》で《睡蓮の原野》を起こしてマナを増やし、この形には入っていないが《願いのフェイ》でサイドボードから《全知》を持ってきて無双するなど、お好みの勝利手段でフィニッシュだ。
2. 環境の「ゼロ」を求めて
さて、ここからはこれを踏まえて私が作ったクソデッキたちの話である。
こうした環境にあってイノベーションを起こすにはどうすればいいだろうかと私は考えた。
そしてその結果、やはり「ゼロ」に思い至ったのである。
パイオニアは1つ1つのマナの価値が非常に高い環境である。それはモダンにおける《魔力変》や《死の影》のようにコストに対するスケールが容易にバグるようなカードが基本的には存在せず、アクションのスケールがマナの軛から逃れられないからだ。
だが、その例外が「ゼロ」というわけだ。
しかし「パイオニアは『ゼロ』が少ない環境」と言ったのは私自身である。実際《むかしむかし》が禁止となったことで、実用的な「ゼロ」となると《モックス・アンバー》《羽ばたき飛行機械》のほかはせいぜい《炎樹族の使者》がいいところとなってしまう。
ならばどうするか?
「ゼロ」を作り出せばいい。
《鼓舞する彫像》はアーティファクトでない呪文に「即席」を持たせることで、どんなゴミアーティファクトでもマナ加速として使用できるようになるというもの。すなわちこれ自身が最低でも3マナ1ブーストの置き物でもある。
そしてこのカードと最も噛み合うのが、パイオニア環境に無駄に多く種類が存在する0マナ装備品たちだ。
パイオニアのカードプールには《調和者隊の盾》《聖戦士の盾》《骨の鋸》《蜘蛛糸の網》と、なぜか実に4種類もの0マナ装備品が存在する。「同一の役割を果たすカードが8枚積めるならコンセプトになる」というのが私の持論だが、16枚も積めるというならなおさらそれを積んだコンセプトを考えたくもなるというもの。
さらにお誂え向きに《上級建設官、スラム》も使えるのである。これを生かさない手はない。
というわけで、できあがったのがこちらの「白単ウギン」だ。
『白単ウギン』
枚数 | カード名(メインボード) |
---|---|
6 | 《平地》 |
4 | 《シェフェトの砂丘》 |
3 | 《コイロスの洞窟》 |
3 | 《戦場の鍛冶場》 |
4 | 《ザルファーの虚空》 |
4 | 《上級建設官、スラム》 |
4 | 《難題の予見者》 |
3 | 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》 |
4 | 《ウェザーライトへの乗艦》 |
4 | 《骨の鋸》 |
4 | 《調和者隊の盾》 |
4 | 《聖戦士の盾》 |
4 | 《蜘蛛糸の網》 |
4 | 《鼓舞する彫像》 |
1 | 《人知を超えるもの、ウギン》 |
4 | 《精霊龍、ウギン》 |
枚数 | カード名(サイドボード) |
4 | 《歪める嘆き》 |
4 | 《次元の歪曲》 |
3 | 《膨らんだ意識曲げ》 |
1 | 《破滅の伝導者》 |
1 | 《虚空の選別者》 |
1 | 《大いなる歪み、コジレック》 |
1 | 《約束された終末、エムラクール》 |
エルドラージや《精霊龍、ウギン》のような無色のカードが《鼓舞する彫像》で「即席」を持つと、土地からのマナを必要とせずにプレイが可能となる。これを利用し、《上級建設官、スラム》でドローに置換した0マナ装備品をマナ源として重いカードを叩きつけようというのがこのデッキの趣旨である。
最低でも4ターン目までは無抵抗な上に、そもそも《精霊龍、ウギン》にすべてを頼りきっているため「《精霊龍、ウギン》着地=勝ち」くらいの環境じゃないと戦えないという致命的な弱点はあったが、《ウェザーライトへの乗艦》が《上級建設官、スラム》・《鼓舞する彫像》・《精霊龍、ウギン》とコンボパーツのすべてをサーチできるのは構造的に美しいものと言えた。
とはいえ、やはり課題も明らかになった。具体的には、《上級建設官、スラム》が8枚積めるならともかく4枚しかないのに16枚もゴミ装備品を積むのはやりすぎであること。
それに、いくら最終的に《精霊龍、ウギン》で流せるとはいえ盤面が疎かになりすぎる点も気になった。
だが、0マナの装備品だけで盤面を作ることはさすがに不可能に思える。
本当にそうだろうか?
ここで私は、《密輸人の回転翼機》がまだ使えた頃に回していたデッキのことを思い出していた。
『パラドックスストーム』
枚数 | カード名(メインボード) |
---|---|
4 | 《島》 |
4 | 《ザルファーの虚空》 |
4 | 《光輝の泉》 |
4 | 《ネファリアのアカデミー》 |
1 | 《発明博覧会》 |
3 | 《羽ばたき飛行機械》 |
4 | 《練達飛行機械職人、サイ》 |
4 | 《逆説的な結果》 |
3 | 《暗記+記憶》 |
2 | 《モックス・アンバー》 |
1 | 《バネ葉の太鼓》 |
4 | 《改革派の地図》 |
4 | 《航海士のコンパス》 |
4 | 《真髄の針》 |
4 | 《魔法の井戸》 |
3 | 《錬金術師の薬瓶》 |
4 | 《鼓舞する彫像》 |
1 | 《霊気貯蔵器》 |
2 | 《精霊龍、ウギン》 |
枚数 | カード名(サイドボード) |
4 | 《シヴの火》 |
4 | 《炎の一掃》 |
3 | 《金属の叱責》 |
2 | 《溶岩コイル》 |
1 | 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》 |
1 | 《山》 |
《密輸人の回転翼機》が使えた頃のデッキのため全力で《真髄の針》を入れたデッキとなっているが、注目すべき点はそこではない。
そう、《練達飛行機械職人、サイ》を使えば0マナアーティファクトは1/1の飛行機械・トークンを生成できる……つまり盤面を作ることができるようになるのだ。
また《逆説的な結果》は実質的に《上級建設官、スラム》の5~8枚目として機能する。
ここから導き出した結論がこれだ。
『スラムダンク』
枚数 | カード名(メインボード) |
---|---|
4 | 《島》 |
1 | 《平地》 |
4 | 《神聖なる泉》 |
4 | 《ザルファーの虚空》 |
4 | 《光輝の泉》 |
4 | 《上級建設官、スラム》 |
4 | 《練達飛行機械職人、サイ》 |
4 | 《逆説的な結果》 |
1 | 《暗記+記憶》 |
3 | 《バラルの巧技》 |
1 | 《解析調査》 |
3 | 《モックス・アンバー》 |
4 | 《聖戦士の盾》 |
4 | 《蜘蛛糸の網》 |
4 | 《改革派の地図》 |
4 | 《魔法の井戸》 |
4 | 《鼓舞する彫像》 |
3 | 《霊気貯蔵器》 |
枚数 | カード名(サイドボード) |
4 | 《金属の叱責》 |
4 | 《ガラスの棺》 |
4 | 《時を解す者、テフェリー》 |
3 | 《至高の評決》 |
《霊気貯蔵器》を多めに積んで《バラルの巧技》からのパターンを作ることでアグロ耐性を付けている。
《王冠泥棒、オーコ》の禁止は追い風なものの、アグロが《思考囲い》で、コントロールが《時を解す者、テフェリー》で、ランプが《世界を壊すもの》でそれぞれ簡単に《鼓舞する彫像》を触れてしまうので、トップメタに通用するかと言われると微妙なところだが、赤系のミッドレンジが増えたタイミングなどは狙い目かもしれない。
ただし《暴れ回るフェロキドン》は即死なので注意が必要だ。