── そろそろインタビューのお時間がなくなってきたのですが、最後に今だから話せる、ボツになったゾイド案とかはありますか?
徳山 用意してますよ……これなんですけど、『ゾイドワイルド』でボツった……
── 『ゾイドワイルド』だと、今後出てくる可能性があるのでやめましょう(笑)。昔の、昔の『ゾイド』で!
徳山 たしかに出すかもしれない(と言って資料を引っ込める)。うーん……昔のやつでねえ。僕の時代は、そんなになかったと思います。というのも、ネタが豊富にあって、よいものから商品化していたので。あとはフラッグシップ(※3)的な存在の商品をどこに置くかという選択でしたから。むしろ、アニメをやりはじめた第2期『ゾイド』の頃に、ネタが不足し始めた記憶があります。
── だんだんニッチでマニアックな恐竜に向かっていくんですね。
徳山 そういった面では、第1期の頃って、ネタに困ったり、ボツにするっていうのはほとんどなかったですね。ボツというよりは、同じような系統の恐竜で何を削ぎ落とすかという問題はありました。ティラノサウルスにしても、近い存在に、ケラトサウルス(※4)があったり、タルボサウルス(※5)があったりする。そのように題材を絞るときに何を落とすか、と考えることはたくさんあったと思います。トリケラトプスなんて、フリルの数だけで多くの分類があるわけじゃないですか。同じようなアクションが想定されるもののなかで、優劣をつけて不採用、っていう意味での取捨選択は、けっこうあったと思います。
あと、エンジニアの二階堂は、「架空の生物はいやだ」っていうことをよく言っていました。彼のアイデアでボツった話でいちばんわかりやすい例を挙げると、彼、なぜか「6本足のマンモス」を作っちゃったんですよ(笑)。
── どうしてそんなことに(笑)。
徳山 重量バランスとか、いろんな関係でそうなったみたいなんです。もしかしたら僕らも、先輩たちを早く超えたい、みたいな焦りもあったのかもしれない。それで6本足のマンモスを当時の社長に見せたら、その瞬間、「バカやろう、お前ら動物園に行ってこい!」「動物園に6本足の象がいるか!」って、すげえ怒られましたね(笑)。
だから『ゾイド』の場合、現実にまったく存在しない動物は、たぶんありえないんですよね。でもかと言って、恐竜や動物をそのまんまやっちゃったら面白くない。ある“ものさし”のなかで、半分は送り手と受け手の想定どおりなんだけど、残り半分のどこかで子供たちをびっくりさせて、なおかつリアリティを持たせるにはどうするべきか、っていうことなんですよね。
── 今回の『ゾイドワイルド』も幻獣とか架空の生物とかは、ナシってことですか?
徳山 真っ先にナシ、やっぱり原型があるやつじゃないと、ってことになりましたね。ちなみに、初代『ゾイド』を立ち上げたときの役割分担は、藤野(凡平・故人)がデザインで、ギミックの天才・二階堂(輝夫)がエンジニア。僕は当時マーケティングだったんですけど、こういう対立構造を作ろうという世界観を考えたり、小学館さんにほぼ毎日出入りをするという感じでした。夏休みには子供を連れて編集部に行ったり、撮影は全部立ち会いました。今と違ってチームの人数が少ないんで、全部やらないといけないんです。そういう意味では、3人が、世界観とデザインとギミックでうまく役割を分け合いながら揃っていたなって思います。
先輩方から『メカボニカ』とビガザウロを預かってから1982年頃までが、僕らが一番力を発揮した時代じゃないかな。そんときたぶん藤野も、半分は先輩から預かった制約の中でデザインをしていたと思うんですね。ただデザインだけで動くかっていうと動かないわけで、そこが難しいところなんです。だからもし彼が今も生きていたら、「よくちゃんと動いて、かつデザインもカッコいいものをつくったな」と、お互いに褒めあっていると思うんですよね(笑)。今、僕がやっているコンセプトデザインも、彼がやっていたんじゃないかなあ。
── その藤野さんのことも含め、もっとお話をしたいのはやまやまなのですが、残念ながらタイムアップです。藤野さん、二階堂さんのお話は、次回におじゃまするとき、ぜひよろしくお願いします。
徳山 そうだね、この次は3バカトリオの話をした方がいいかもしれない(笑)。
── 楽しみにしております! たくさん貴重なお話をしていただき、ありがとうございました。
※4 ケラトサウルス:角を持ったトカゲのような二足歩行の恐竜。フィクション作品では比較的ポピュラーな存在。
※5 タルボサウルス:ティラノサウルスによく似た巨大な肉食恐竜。
徳山 光俊(とくやま みつとし)
『ゾイド』立ち上げに携わったスタッフのひとり。『ゾイドワイルド』ではゾイドのデザイン原案を担当。溢れんばかりの『ゾイド』愛を若い世代に伝えるべく奮闘中。