──小学館の学年誌や『コロコロコミック』のディオラマストーリー記事に、トミーはどう関わっていたんですか?
徳山 えっとね、1985年頃から小学館の学年誌で、ディオラマを掲載していこうって企画が持ち上がったんですね。アニメじゃないんだし、僕らには商品を作るうえでの世界観があったんで、当然ディオラマでいこうとなったんです。で、僕らは次の年には年間を通じてどの商品をいつ出そうかと、スケジュールを立てているから、その予定に沿って試作品を作っているんです。だから形も数も揃っていました。
それで、あのディオラマストーリーを作るにあたり、僕らは出版社側に商品の年間スケジュールを見せるんです。そしてそれを元にディオラマを制作するわけなんですが、トミーにはまだ試作品しかないんですよ。だから、3体ずつ注型(※3)を取って、その注型品に色を塗って、ディオラマに使ったんです。それを出すしかなかったので。
──なるほど。
徳山 その頃の小学館さんは、『ゾイド』の前に『マクロス』(※4)のディオラマストーリーをやっていました。その制作スタッフのみなさんと、僕らが、雑誌のディオラマストーリーや、『ゾイド バトルストーリー』(※5)に取り組むことになるんです。当時の僕は監修というよりは、彼らと一緒に寝泊まりしていたという感じ。だから、当時のディオラマストーリー関係に、ほとんど僕が立ち会っていると記憶しています。昔は難しいイメージがあった模型という遊びが、その頃は子供たちの世界に降りてきて、ディオラマ制作も少し背伸びしたらできそうな時代でしたから、あのディオラマ記事の効果は大きかったと思います。
──『ゾイド』は自分で手にして動かしたとき、いろいろ妄想を膨らませやすいですね。
徳山 ああ、そうですね。そこが『ゾイド』のよさかもしれません。動きが想起できるし、組み立ててそれを達成できる。当時は、『ジュラシック・パーク』(※6)とかディスカバリーチャンネルもなかったから、ある程度達成感はあったと思います。
──徳山さんが関わっていた作業というと、どんなことがありますか?
徳山 パッケージの裏面の設定とか。これは今でも若手スタッフが作っているものですけど、初代『ゾイド』のときも、機体スピードがどうだとか、そういう細かな要素を入れていましたね。
あとCMもやりました。もうだんだん、特撮フイルムみたいなもの作りたい、みたいな気持ちになるわけじゃないですか(笑)。だから東宝さんで、すごい特撮のものを作ってもらいましたねえ。
──(CM『ZOIDS WORLD』を見ながら)このCMは東宝制作だったんですか?
徳山 これは東宝になる前の作品じゃないかな。TV特撮ヒーローものの監督にやってもらいました。あ、今(1:43頃)出てきた手は僕の手(笑)。
▲ガガーン! この手が徳山さんのものだったとは……。『ZOIDS WORLD』のCM を再チェックだ!
──今明かされる、新事実!(笑)
徳山 『サンダーバード』(※7)みたいにやりたかったんだよね(笑)。ディオラマベースを作って、コマ撮りとかもして頑張ったなあ。この時、店頭で流すためのビデオも作ったりしたんですけど、やっぱり実物の動きって説得力があるんですよね。それが『ゾイド』にはふさわしいなってことになって、それが東宝のすごいCMを作ることにつながるんです。『ゾイド』の本質を訴えていくうえで、非常に効果的でした。
※4 マクロス:1982〜1983年に放映されたTVアニメ『超時空要塞マクロス』のこと。市販のプラモデルに高度な加工を施した模型によるディオラマ記事が、学年誌や『コロコロコミック』に掲載されていた。
※5 『ゾイドバトルストーリー』:1987〜1990年に小学館から発行された、初代『ゾイド』シリーズのディオラマストーリームック。全5巻。同書の制作スタッフが、徳山さんの画集『ZOIDS concept art』のSF考証も手がけている。
※6 『ジュラシック・パーク』:1993年に公開された、スティーヴン・スピルバーグ監督によるSF映画。バイオテクロノジーによって現代に蘇った恐竜たちが騒動を起こすパニックものといった趣きだった。
※7 『サンダーバード』:1965〜1966年にイギリスで放送された、人形劇の特撮番組。手のカットだけが実写になったりする。
徳山 光俊(とくやま みつとし)
『ゾイド』立ち上げに携わったスタッフのひとり。『ゾイドワイルド』ではゾイドのデザイン原案を担当。溢れんばかりの『ゾイド』愛を若い世代に伝えるべく奮闘中。