初代『ゾイド』開発秘話第3弾!
『ゾイド』ディオラマ大作戦! コンテストや雑誌記事の裏側を初激白!?
初代『ゾイド』を手掛けたレジェンド、徳山光俊さんのインタビュー第7回!
前回は、初代の『ゾイド』が先輩方の技術を継承、改造するようにしてスタートしたこと。そして、レッドホーンの開発に至り、やっと本来めざしていた、共和国と帝国の二大勢力がしのぎを削る世界観に近づいたことなどを語っていただいた。
▲レッドホーンなど帝国側のゾイドが登場したことで、共和国軍vs.帝国軍の構図が確立!
今回は、『ゾイド』がより人気を極めていった激動の時期を振り返る。コンテストからCMまで、まさか!? と思うような衝撃の事実が続々と発覚したぞ!
──そういえば、最初の『ゾイド』には、フィギュアセットとか拡張パーツ、ディオラマセットといった商品もありましたよね?
徳山 今『ZOIDS concept art』(※1)で描いているのは、実はそうした商品の世界、デザインなんですよ。共和国側はちょっとアメリカ軍っぽいとか、帝国はちょっと飾り付けちゃってる、っていうようなコンセプトがあったりもしてね。
『ゾイド』を買った子供たちが改造してくれますようにという構想は商品を開発したときからあって、意図して仕掛けてたんですよ。ディオラマ関係については、舞台となるベース関係のものを用意しましたし。
▲『ディオラマベースデラックスセット』など、ディオラマづくりのための製品も発売された!
それに『ゾイド』は接着剤が不要、自在に分解と組み立てができるわけじゃないですか。改造も接着剤いらずなんで、うまくボス(筒状の突起)にはめられるような形式のパーツを製造して、互換性を持たせていたんですね。
そうしたら、この仕組みがかなりウケちゃって、「改造コンテスト」っていうものを小学館の学年誌や『コロコロコミック』さんで一斉に開催することになったんです。トミーでもお店に『ゾイドグラフィックス』(※2)っていう小冊子を配って、改造を呼びかけたりしました。それが1985年とか86年頃の話ですね。
ただ問題だったのが、改造コンテストで作品を募るにあたり「大賞、優勝した作品を商品化します」って文言を入れてしまったことですね(笑)。
──問題? 何かまずいところがあったんですか?
徳山 いや、もちろん優秀な作品を商品化しようという気持ちはあったんですけど……。ただ『ゾイド』って、次に来るだろうラインナップは、たいがい準備しちゃってるものなんです。なぜかというと、この玩具は制作に手間がかかる。それに、図鑑的な世界という共通の“ものさし”みたいなものがあり、僕らはそれを追っかけて図鑑を制覇するように、次に備えていくから、動きが早い。メカボックスが僕らなりのものになってきたなと思えば、では次はあの恐竜をやろう、となってくるわけです。
この想像の膨らませ方は、子供たちも同じだったと思うんですよ。図鑑を見たり、博物館に行ったりして、あれがメカになったらどうなるのだろう、と想像して。しかも小学館の雑誌を見れば、それを具現化したような写真が載っている。『ゾイド』を改造して、自分だったらこんな恐竜で戦わせたいなとか、こういうふうにパワーアップさせたい、みたいなことを考えると思うんですよ。
▲「キミも参加しよう!」と呼びかけたゾイド改造計画。子供たちの発想が徳山さんたちに近かった!?
──ああ、なるほど! 変な話、子供たちも一緒になって、徳山さんたちと競争するように、次のラインナップを開発するみたいな状況になっちゃってたんですね(笑)。
徳山 並行して作っている状況ですよね(笑)。だから大賞、優勝を獲得したした作品と同じテーマの商品が、実はコンテストの結果とは関係なしに、ほとんどが準備できちゃってたんですよ。「ああ、見ているところがお客さんといっしょだな」ということに気付いたときが、『ゾイド』が売れ始めていた頃でした。だから『ゾイド』が、誰もが共有できるモチーフである恐竜を題材にした玩具ですごくよかったなと、つくづく思います。
この「もうすぐ、吠える、動く。」っていうのは、売れ出した頃の広告ですね。
▲「もうすぐ、吠える、動く。」「つくる・動く」など、時代を感じさせるキャッチコピー。
──その広告、いいですよね。
徳山 ちょっとね、きどっちゃったの(笑)。でも、『ゾイド』が持っていたそもそものポテンシャルっていうのかな、分解組み立てができる、しかもその工程が、子供たちの想像の中でも模型を組むというより恐竜の骨を復元していくようなものだったってことで、ウケたんだと思うんですよね。その認識が、この広告には反映されていたと思います。
それはすごい普遍的なもので、だから『ゾイドワイルド』も僕は全然OKだと思っています。むしろ今の時代のほうが、よりディスカバリーチャンネルとかで動いてる恐竜の映像とか見られるから、もっとすごいものを見せなきゃいけないでしょうね。
※2 『ゾイドグラフィックス』:玩具店の店頭で配布されていた、初期『ゾイド』情報の小冊子。アイデアコンテストなども開催されていた。
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