By まつがん
デッキ作りにおいてあらゆる可能性を検証するためには、時にデッキを類似デッキへとスライドさせてみることも必要となる。
ここで言う「スライドさせる」とは、同様のコンセプトを別のカードで実現してみることを指す。
たとえば、前回は《ゴージャス☆グランピン/いきなり!フルコース》でパワード・ブレイカー持ちを強化するデッキを作り上げたわけだが……では、「クリーチャーに追加ブレイクを持たせること」をコンセプトとするデッキとしては、他にどんなものがあるだろうか?
ということで、今回は「追加ブレイク」をコンセプトとしたデッキをいくつか作ってみることにしよう。
1. QXボルト
「追加ブレイク」をコンセプトにするにあたり、まずは「追加ブレイク」と相性の良いカードについて考えてみよう。
好きなクリーチャーに自由に「追加ブレイク」を与えられるとして、一体どんなクリーチャーが「追加ブレイク」を得るのが最も強力だろうか?
それはもちろん、俗に言う「シールド焼却」能力を持つクリーチャーだろう。
普通のクリーチャーのブレイク数が増えたところで、どの道そのターン中にシールドを割りきってダイレクトアタックを決めるのであれば、元から足りない打点がそれによって足りるようになった場合以外は、シールド5枚分のS・トリガーリスクがあることに結局変わりはないので、そこまで恩恵があるわけではない。
だが「シールド焼却」能力を持つクリーチャーが「追加ブレイク」を得たならば、それは取りも直さずS・トリガーのリスクを1枚分多く回避できることを意味するからだ。
とはいえ、《ボルメテウス・ホワイト・ドラゴン》や《ボルメテウス・蒼炎・ドラゴン》といった重い「シールド焼却」能力持ちに「追加ブレイク」を持たせるというのは、それが概念的には意味があることだとしても、実戦的な意味はあまりにも薄い。
というのも、そもそもコストが重いこれらのクリーチャーを出せるターンになっているなら、シールドが何枚か残った状態で相手にターンを渡してしまうリスク自体がかなり大きいので、中途半端に3枚や4枚だけシールドを焼却してターンを返す羽目になるくらいなら、S・トリガーのリスクを受け入れてでもそのターン中に残りの楯を割りきってのダイレクトアタックまでチャレンジした方が、最終的な勝率は高まると考えられるからだ。
では、「シールド焼却」能力を持つクリーチャーに「追加ブレイク」を持たせる、という発想は全くの机上の空論なのだろうか?
否。重い「シールド焼却」能力持ちに「追加ブレイク」を持たせる意味がないというのなら、軽い「シールド焼却」能力持ちに「追加ブレイク」を持たせればいい。
だが、シールドブレイクを巡る攻防が醍醐味の一つであるデュエル・マスターズにおいて、「軽い『シールド焼却』能力持ちのクリーチャー」などという常識外のスペックを持つカードがはたして存在しているのだろうか?
いた。《Q.Q.QX/終葬 5.S.D.》だ。
《Q.Q.QX/終葬 5.S.D.》はその能力により、ブレイクされたシールドはS・トリガーを発動させる余地なく山札の4番目に行くので、実質的に「シールド焼却」と等しい。
ならば《Q.Q.QX/終葬 5.S.D.》に「追加ブレイク」を持たせることで、S・トリガーのリスクを負うことなしに早期決着が狙えるのではないか。
しかし、この発想には一つ問題があった。それは、《Q.Q.QX/終葬 5.S.D.》がデッキに4枚しか入れられないという点だ。
デュエマにおいて強力なデッキというのは再現性をも兼ね備えているところ、《Q.Q.QX/終葬 5.S.D.》が4枚しか入れられないと、「『シールド焼却』能力持ちに『追加ブレイク』を持たせる」というデッキコンセプトは全ゲームのうち3分の2くらいでしか実現できないこととなってしまうのだ。
とはいえ、これを解決する手段は簡単だ。4枚しか入れられないというのなら、8枚入れればいい。
すなわち、《Q.Q.QX/終葬 5.S.D.》の代替カードがあればいいのだ。
《ジギー”TND”ボルト/雷雲ドワン》。
ブレイク時に宣言した数字とそのシールドのコストが一致していれば、そのカードを手札に加えさせることなく直接墓地に送れるもう一種類の軽量「シールド焼却」能力持ちクリーチャーだ。
これにより、「追加ブレイク」を持たせるべき「軽い『シールド焼却』能力持ちのクリーチャー」は決まった。あとは実際に「追加ブレイク」を持たせる手段を考えるだけだ。
現在のところ、無条件で「追加ブレイク」を持たせることのできる最もマナコストの軽いカードは《エボリュート・パワー》と思われたので、まずはこれを4枚搭載。
さらに4枚では引かないときに再現性が(ry なので、《熱狂の加護》も5枚目以降の「追加ブレイク」を持たせるカードとして搭載することとしよう。
だが、ここで冷静に考えてみると、1打点のクリーチャーが「追加ブレイク」を一時的に得たところで、2打点にしかならない。そしてデュエル・マスターズは5枚ブレイク+ダイレクトアタックで計6打点を入れなければ勝てないゲームである。
ならばどうすればいいか?
「追加ブレイク」を持たせた状態で2回殴らせればいいのだ。
そう、一言で言えば筋肉はパワーということである。
というわけでこれが完成したデッキ、「QXボルト」だ!
『QXボルト』
《Q.Q.QX/終葬 5.S.D.》 | |
《ジギー“TND”ボルト/雷雲ドワン》 | |
4 | 《龍爪者“SVN”ムソウ/二爪流トレーニング》 |
《二刀流トレーニング》 | |
《エボリュート・パワー》 | |
《ホービット/壁キョーボリア》 | |
4 | 《虹彩奪取 トップラサス》 |
4 | 《フェアリー・ライフ》 |
3 | 《SMAPON》 |
3 | 《極楽轟破5.S.トラップ》 |
3 | 《龍装者 バルチュリス》 |
1 | 《“轟轟轟”ブランド》 |
「必殺!!マキシマム・ザ・マスターパック」に収録の 《極楽轟破5.S.トラップ》は《Q.Q.QX/終葬 5.S.D.》を使うときにはぜひともセットで投入したい1枚。相手がうっかり踏んだときに《Q.Q.QX/終葬 5.S.D.》からのカウンターのチャンスが生まれるかもしれない。
また、《熱狂の加護》を入れようと思ったら上位互換みたいなカードが最近出ていたことに気づいたのでそっちに差し替えておいた。地味にクリーチャー側がS・トリガー (ただし出るだけ) なので、防御には使えないものの殴り合いには多少の希望が持てそうだ。
2. ソイソイミルクボーイ
「追加ブレイク」を最も軽いコストで実現できるカードは何だろうか?
《D2B バブール》。アンタップした際に自分のクリーチャー全体に「追加ブレイク」を付与するという、強力極まりない効果を持っている。
アンタップにはD2フィールドが必要だが、《Dの揺籠 メリーボーイラウンド》はわずか1マナのD2フィールドであり、《D2B バブール》とともに《トレジャー・ナスカ》で探せるため、4枚ずつしか搭載できないとはいえ再現性という意味では大きな問題にはならないだろう。
全体に「追加ブレイク」を付加するので、自分のクリーチャーが並んでいれば並んでいるほど威力が増すことになる。《トレジャー・ナスカ》を使うのであれば、「外れ」が増えないように並べるクリーチャーたちもなるべく1マナで揃えた方がいいだろう。
だが、デュエル・マスターズの初期手札は5枚。クリーチャーを横に並べるにしても、1枚で1体ずつを並べていったのではそれほど数を並べることができないことになる。
ならば必要なのは、1枚で2体分のクリーチャーを担うことができるカードだ。
その答えは、超天篇を遊ぶ賢明な皆さんならおわかりだろう。
そう、GR召喚である。
《ソイソイミー》。vol.13-2ではうまく使いこなすことができなかったが、《D2B バブール》《ベイB ソーター》《ベイB ポレポレ》と3種12枚もパワー4000以上の1マナ域が入っているなら、安定して2ターン目にGR召喚することができるだろう。
というわけでこれができあがったデッキ、「ソイソイミルクボーイ」だ!
『ソイソイミルクボーイ』
《ベイB ソーター》 | |
《ベイB ポレポレ》 | |
4 | 《D2B バブール》 |
《スナイプ・モスキート》 | |
《冒険妖精ポレゴン》 | |
《ソイソイミー》 | |
4 | 《トレジャー・ナスカ》 |
4 | 《Dの揺籠 メリーボーイラウンド》 |
4 | 《チャケの応援》 |
3 | 《龍装者 バルチュリス》 |
1 | 《“轟轟轟”ブランド》 |
超GRゾーン | |
2 | 《鋼ド級 ダテンクウェールB》 |
2 | 《ドドド・ドーピードープ》 |
2 | 《全能ゼンノー》 |
2 | 《ロッキーロック》 |
2 | 《フォー・ユー》 |
2 | 《マシンガン・トーク》 |
ちなみに全くもって余談なのだが、《ソイソイミー》は醤油入れをモチーフにしたクリーチャーであるところ、英語で「soy」とは「大豆」を意味する。
この符合。
つまり「《ソイソイミー》はミルクボーイと組み合わせろ」というウィザーズの意思が含まれているであろうことは間違いない (?) のだ!!!
3. GRドラゴンの魂燃焼!
妄言はさておき、「追加ブレイク」を最も軽いコストで実現できるカードは、実は《D2B バブール》ではなかった。
そもそも《D2B バブール》は自身は1マナとはいえ、アンタップには《Dの揺籠 メリーボーイラウンド》など他のカードの手を借りる必要がある。となれば、「追加ブレイク」を実現するためには結局最低2マナ以上かかってしまうからだ。
だが、もしも。
もしも0マナで「追加ブレイク」を実現できるカードがあるとしたら?
《リンクウッドの魂燃焼!》。
vol.14-2ではデッキに入らず抜けていったカードだが、今こそこのカードを真面目に使うときが来た。
G・ゼロ条件である「自分のドラゴンが3体以上」というのは、ドラゴンのコストが重めに設定されていることから実質達成不可能であると思われていた。
だが、それをすり抜ける手段が存在したのだ。
その答えは……もちろん、超天篇を遊ぶ賢明な皆さんならば先刻承知のことだろうと思う。
そう、GR召喚だ。
《煌銀河 サヴァクティス》や《The ジョラゴン・ガンマスター》も立派なドラゴンである。GR召喚によってこれらのドラゴンを3体並べれば、《リンクウッドの魂燃焼!》を0マナで唱えることが可能となる。
GR召喚を3回すればドラゴンが3体並ぶ (かもしれない) のだから、《”魔神轟怒”万軍投》は1枚で条件を達成できるカードとして搭載しておくべきだろう。
また、「ガチヤバ4! 無限改造デッキセットDX!!『ジョーのビッグバンGR』」に収録されている《ザパンプ》によるコスト軽減は、GR召喚呪文を連打するのに最適なサポートと言える。
というわけでこれが《リンクウッドの魂燃焼!》を使用したデッキ、「GRドラゴンの魂燃焼!」だ!
『GRドラゴンの魂燃焼!』
《ザパンプ》 | |
《Wave All ウェイボール》 | |
4 | 《終末の時計 ザ・クロック》 |
《龍装者 “OGU”ヴァル/「静謐よ、世界に満ちよ」》 | |
《TOKKO-BOON!》 | |
《KAMASE-BURN!》 | |
2 | 《イェーガー a.k.a. 噴射》 |
4 | 《MANGANO-CASTLE!》 |
4 | 《知識と流転と時空の決断》 |
4 | 《”魔神轟怒”万軍投》 |
4 | 《リンクウッドの魂燃焼!》 |
超GRゾーン | |
2 | 《煌銀河 サヴァクティス》 |
2 | 《The ジョラゴン・ガンマスター》 |
2 | 《The ジョラゴンGS》 |
2 | 《全能ゼンノー》 |
2 | 《予知 TE-20》 |
2 | 《ロッキーロック》 |
《龍装者 “OGU”ヴァル/「静謐よ、世界に満ちよ」》はS・トリガーとしては《スパイラル・ゲート》として機能しつつも、《リンクウッドの魂燃焼!》との関係では4マナのドラゴンとしてカウントできる優れものだ。
というわけで、「追加ブレイク」というテーマから3つのデッキを作ってみた。
それぞれのデッキは別になんてことのない、取るに足らないデッキパワーしか持っていない未完成品かもしれない。
だが、こうして一つのテーマについて深く掘り下げた経験は、いつかのデッキ構築の際に発想のショートカットをもたらす。
そしてそうした蓄積こそが、デッキビルダーにとって何よりも大切な財産なのだ。
ではまた次回!
ライター:まつがん
フリーライター。クソデッキビルダー。
論理的な発想でカード同士にシナジーを見出すのだが、途中で飛躍して明後日の方向に行くことを得意とする。
オリジナルデッキでメタゲームに風穴を開けるべく日夜チャレンジを続けている(が、上記のような理由で大体失敗する)。