By ドブフクロウ
みなさんこんにちは。MtGライターのドブフクロウです。
先週末には愛知県常滑市でマジックフェスト・名古屋2019(スタンダード)が開催されました。結果は大方の予想通りスゥルタイフード(シミックフード)がトップメタで、2日目進出デッキのうちの6割弱がフード系デッキという、歴史に残るレベルの一強環境となりました。トップ8の中でも7名がフード系デッキです。恐ろしや……。
また、同週にはフランスのリヨンでもマジックフェスト・リヨン2019(スタンダード)も開催されており、そちらもトップ8のうち5名がフード系デッキ、優勝もバントフードとなっています。改めて《王冠泥棒、オーコ》を使用したデッキの強さが証明される週末となりましたね。
さて、さきほどからフードデッキの話ばかりしていますが、実はみなさまお気付きの通り、本連載ではこのフードデッキを取り上げたことがありません。決して忘れていたというわけではないのですが、まぁ、ちょっとこうも露骨にフードデッキばかりが話題になっていると今更紹介するのもね~……なんて、つい及び腰になっていました。あと単純に僕が逆張りクソ野郎なので、なるべく変わり種を紹介したいというひねくれた考えで後回し後回しになっていました。誠に申し訳ございません。
とはいえ、さすがにこれだけ勝っているのに取り上げないのは嘘でしょう!というか、取り上げるとしたらぼちぼちこのあたりでやっておかないともう一生記事にできないかもしれないし(禁止改定的な意味で)。というわけで、今回はマジックフェスト・名古屋2019で優勝を収めた最強のフードデッキをご紹介していきます!!
マジックフェスト・名古屋2019
先週末のマジックフェストを制したのは、宮城のプロプレイヤーである熊谷 陸選手でした。今回の入賞はグランプリ・東京2016に続いて二度目の戴冠です。
【MF名古屋】スタンダードにて行われたグランプリ・名古屋2019。2日間に渡る激闘の末、見事王座に輝いたのはシミック・食物デッキを華麗に操った熊谷陸選手でした!おめでとうございます!!https://t.co/cBUbMSYtMF#mtgjp #MTGNagoya pic.twitter.com/0jiejjwgNP
— マジック:ザ・ギャザリング (@mtgjp) November 3, 2019
私も公式カバレージのために現地で試合の模様を見ていましたが、終始冷静沈着なプレイで危なげなく優勝を決めており、ここに至るまで相当な量の練習をこなしてきたのが見て分かるようでした。以下宣伝ですが、決勝の模様をお届けする記事を書きましたので、お時間のある方はぜひ読んでみてくださいね(ダイマ)。
というわけで、今回熊谷選手が使用していたシミックフードを見ていきましょう!
シミックフード(使用者:熊谷 陸選手) | |
---|---|
枚数 | カード名(メインボード) |
11 | 《森》 |
6 | 《島》 |
4 | 《繁殖池》 |
2 | 《総動員地区》 |
2 | 《神秘の神殿》 |
4 | 《金のガチョウ》 |
4 | 《楽園のドルイド》 |
4 | 《厚かましい借り手》 |
4 | 《意地悪な狼》 |
4 | 《ハイドロイド混成体》 |
4 | 《むかしむかし》 |
3 | 《霊気の疾風》 |
4 | 《王冠泥棒、オーコ》 |
4 | 《世界を揺るがす者、ニッサ》 |
枚数 | カード名(サイドボード) |
2 | 《クロールの銛撃ち》 |
1 | 《打ち壊すブロントドン》 |
3 | 《大食のハイドラ》 |
3 | 《夏の帳》 |
2 | 《軽蔑的な一撃》 |
1 | 《霊気の疾風》 |
1 | 《否認》 |
2 | 《神秘の論争》 |
まず、「○○フード」と呼ばれるデッキにはメインボードに5種類の固定スロットがあります。それがこちら。
- 《金のガチョウ》
- 《意地悪な狼》
- 《ハイドロイド混成体》
- 《王冠泥棒、オーコ》
- 《世界を揺るがす者、ニッサ》
これら5種のカードが4枚ずつで20枚。これは色が変わってもそうそう減ることのないスロットです。僕がマジックフェストの会場で取材がてらお話したとあるプロプレイヤーは「スタンダードの強いカードを上から5枚入れたデッキ」と称していましたが、まさにそのとおりだと思います。それほどに個々のカードパワーが飛び抜けており、しかも相互にシナジーを持っているのだから弱い道理はありませんね。
これらのカードに共通するのは色が緑であるということ。これは『基本セット2020』に収録された色対策カードの《害悪な掌握》がメインボードに採用されるような偏った環境を作り出した要因とも言えます。実際、マジックフェストでも青緑の2色で組まれたシミックフードよりも《害悪な掌握》のために黒をタッチしたスゥルタイフードのほうがシェア率そのものは高かったです。
しかし、色を足せばそれだけ色事故を起こす危険性が高まるのもマジックの妙。それを防ぐためには、複数の色マナを出すことのできる多色地形を多く採用する必要性が出てきます。そこで《草むした墓》や《湿った墓》といった黒マナを供給することのできる土地を採用することになるのですが、それらを強く運用するためにはライフを支払う必要があります。
ライフを犠牲にした戦略を取るということは、当然自滅のリスクも高まります。そうした弱点を突くため、シミックフードもビートダウン戦略を取るようになりました。特に『エルドレインの王権』に収録されている《厚かましい借り手》は対戦相手の盤面展開を阻害しながらライフを攻めることができるという優れたクリーチャーで、シミックフードにもぴったり。当然、熊谷選手のデッキにも4枚採用されています。
しかも、それだけリスクを背負って《害悪な掌握》をプレイしてみても《夏の帳》される始末。この《夏の帳》、一見すると地味なカードかもしれませんが、黒の除去や青のバウンスに対応してプレイすれば実質的に1マナになった《放逐》(あるいは《謎めいた命令》)相当の呪文となります。テンポ面でもカードアドバンテージ面でも優れた、要するに狂った強さのカードで、現環境の緑の強さを支えている1枚と言っても過言ではありません。
それでいて、フードデッキの持ち味である《意地悪な狼》でのマウンティングや《ハイドロイド混成体》でのアドバンテージの獲得、そしてプレインズウォーカーである《オーコ》や《ニッサ》でフィニッシュを目指すというミッドレンジ戦略も得意としています。マジックについてあまり詳しくないという方は、ポケモンで例えるならミミッキュみたいなもんだと思ってください。タイプ、特性、能力、技など構成している要素のどこをとっても強いみたいな。あとまぁシミックフードだけにね。ミミッキュフードなんてね。すみません、今のなしで。
いや、しかしまぁ、一体どうやったらこのデッキを倒せるんでしょうね……? たぶん、世界中のプレイヤーが頭を抱えていると思います。
ライター:ドブフクロウ
青春時代のほぼ全てをテキストサイトやゲーム系サイトを徘徊することに費やしていた根暗ライター。人間としての軽薄さに定評があり、親しい間柄では「空っぽ」というあだ名で呼ばれることもある。
MtGプレイヤーとしての腕前は自他ともに認めるヘッポコだが、青春時代に (いろいろなものを犠牲にして) 培ったMtG知識量は他の追随を許さない。
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