By ドブフクロウ
みなさんこんにちは。MtGライターのドブフクロウです。
さて、先週チラッと「《死者の原野》禁止」のニュースをお伝えしましたが、これによりスタンダード環境はかえって《王冠泥棒、オーコ》を使用した「シミックフード」あるいは「スゥルタイフード」といった青緑系デッキに染まっていきました。
これらの中速系のデッキをメインボード・サイドボード後に安定して倒せるデッキが少なく、また青緑系のデッキはサイドボードの選択肢も豊富なので他勢力にも対抗しやすいのが原因の一つです。まだ『エルドレインの王権』がリリースされてから1ヶ月も経たないうちですが、ローテーション後の環境でこれだけメタゲームが固まるのが早いのは珍しい事態と言えます。
最近開催されたミシックチャンピオンシップVII予選などでは、半数以上のプレイヤーが青緑デッキを使用しているという、史上例を見ないほどの壮絶なメタゲームとなっています。今週末には名古屋で大規模トーナメントであるマジックフェスト・名古屋2019(スタンダード)も開催されますが、どのような結果になるのでしょうか? 案外、先日のミシックチャンピオンシップでグルールが勝ち上がったように、第三勢力が勝ち上がったりするかもしれませんね。
さて、ここ2~3週間ほどスタンダードは青緑デッキの話ばかりになってしまっていたので、今回は趣向を変えて「パイオニア」フォーマットのデッキを見ていきましょう。パイオニアについては先週もお伝えしましたが、まだよく分かっていない!という方は公式のこちらの記事をご覧ください。
PIONEER CHALLENGE(Magic Online)
Windows OS上でマジックをプレイできるアプリケーション「Magic Online」では、すでにパイオニアフォーマットのデッキを使用したリーグが開催されています。こちらは2012年に発売された『ラヴニカへの回帰』~現在の『エルドレインの王権』までの7年分のカードを使用できるフォーマットで、まだフォーマットが制定されて日も浅いことから、禁止カードがほとんどないことが特徴です。
たとえば、モダンのみならずレガシーからも締め出された極悪ドロー呪文である《時を越えた探索》や《宝船の巡航》はもちろん、スタンダードで禁止カードを乱発した悪名高い(?)『カラデシュ』ブロックの《密輸人の回転翼機》や《霊気池の驚異》といったカードなど、過去の非道カード満載のパワフルな環境となっています。
というわけで、そのデッキリストも歴代禁止カード詰め合わせという感じで非常に豪華。そのあたりの調整はこれからなのかもしれませんが、今はそんなバーリ・トゥードな環境が楽しいんですよね。前置きが長くなりましたが、このパイオニア環境のイカれたデッキをご紹介しましょう。
デッキ名(使用者:プレイヤー名選手) | |
---|---|
枚数 | カード名(メインボード) |
4 | 《寓話の小道》 |
4 | 《神聖なる泉》 |
2 | 《島》 |
1 | 《山》 |
1 | 《平地》 |
4 | 《聖なる鋳造所》 |
4 | 《尖塔断の運河》 |
4 | 《蒸気孔》 |
4 | 《サヒーリ・ライ》 |
4 | 《時を解す者、テフェリー》 |
4 | 《守護フェリダー》 |
3 | 《溶岩コイル》 |
4 | 《予期》 |
4 | 《時を越えた探索》 |
4 | 《焦熱の衝動》 |
4 | 《選択》 |
2 | 《呪文貫き》 |
3 | 《胸躍る可能性》 |
枚数 | カード名(サイドボード) |
3 | 《轟音のクラリオン》 |
2 | 《拘留の宝球》 |
2 | 《ドビンの拒否権》 |
3 | 《丸焼き》 |
2 | 《ゴブリンの熟練扇動者》 |
3 | 《神秘の論争》 |
このデッキは言わずとしれた「サヒーリコンボ」です……と言いたいところですが、この連載をご覧になっている方はご存じない方もいらっしゃるかもしれませんね。こちらは《サヒーリ・ライ》と2017年4月に禁止された《守護フェリダー》の2枚による即死コンボデッキです。どういうことかと言うと……
- 《サヒーリ・ライ》と《守護フェリダー》を戦場に並べる。
- 《サヒーリ・ライ》の-2能力で《守護フェリダー》のコピーを生成する。
- コピーされた《守護フェリダー》の能力で《サヒーリ・ライ》を戦場に出し直す。
- 2に戻る。
と、2~4の過程を無限に繰り返すことができるので瞬殺が可能。あまりにもお手軽ですね。まぁ、その手軽さゆえに当時スタンダードで禁止されたわけですが。更地の盤面からでも6マナ出る状況であれば即勝利することのできるコンボで、当時のスタンダードを荒らしていました。
そんなサヒーリコンボも(少なくとも今のうちなら)パイオニアで組むことができる……しかもフルパワーで!
スタンダードでは共存することのなかった《時を越えた探索》。こちらはモダンやレガシーといった下の環境で禁止されている超凶悪なドロー呪文です。「ライブラリーの上から7枚のカードを見て、好きな2枚を手札に加える」という、まぁ一見普通にありそうなカードですが、この呪文の問題点はマナコストを超手軽に軽減する能力がついていることなんですよね。
《時を越えた探索》と同等の能力を持つ《抽象からの抽出》というカードは4マナのソーサリー、ですが《時を越えた探索》はその「探査」能力によって実質的に2マナのインスタントとして唱えることができます。許されるわけがない。まぁ、許されるわけがないから下の環境では締め出しを食らっているわけですが。《時を越えた探索》によってコンボパーツを探したり、コンボ成立までに時間を稼げるカードを探したり、あるいはサイドボード後に対戦相手へのキラーカードを探したりと、状況に応じて必要なカードを探すことが可能です。
また、《時を解す者、テフェリー》は禁止こそされていないもののデッキに非常にフィットした1枚です。特にその常在型能力は、この手のクリーチャーを使ったコンボデッキの苦手とするインスタントの除去呪文を封じ込めます。もちろん《時を解す者、テフェリー》自体が打ち消されなければ以降は打ち消し呪文も効きません。
ただ弱点を補完するだけのカードであればまだしも、その-2能力も鬱陶しいことこの上なく、かつ《テフェリー》自体が3マナと非常に軽いのが厄介なところです。このカードの存在のせいで、現状では弱点らしい弱点が存在しないデッキと言えるでしょう。
しかし、パイオニア環境にはまだまだ開発部の作ったイカれた凄まじいカードパワーを秘めたカードも数多く眠っています。まだ始まったばかりのフォーマットですし、意外とこのサヒーリコンボもすぐに対抗馬が出てくるかもしれません。今後に期待が高まりますね。
ライター:ドブフクロウ
青春時代のほぼ全てをテキストサイトやゲーム系サイトを徘徊することに費やしていた根暗ライター。人間としての軽薄さに定評があり、親しい間柄では「空っぽ」というあだ名で呼ばれることもある。
MtGプレイヤーとしての腕前は自他ともに認めるヘッポコだが、青春時代に (いろいろなものを犠牲にして) 培ったMtG知識量は他の追随を許さない。
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