By ドブフクロウ
みなさんこんにちは。MtGライターのドブフクロウです。
先週末には紙の世界でも『エルドレインの王権』がリリースされ、アメリカはじめ各国で様々なイベントが開催されていました。みなさんも『エルドレインの王権』の新カードはすでに入手しましたか?ローテーション直後とあって、この時期は毎年マジック界が最も盛り上がるタイミングでもあるので、マジックをプレイしたことがないという方も、ぜひこの機会にマジックで遊んでみてほしいですね。
また、カナダ・ケベック州モントリオールでは世界でも最速となる『エルドレインの王権』環境のマジックフェストが開催されました。フォーマットはリミテッドだったようで、優勝を飾ったのはカナダのプロプレイヤーであるアレクサンダー・ヘイン/Alexander Hayne選手でした。
“I should have been testing for the Mythic Championship, but I couldn’t pass up a hometown GP.”
Congratulations to @InsayneHayne, champion of Grand Prix Montreal! #MTGMontreal pic.twitter.com/ZPp1FdwqTw
— ChannelFireball (@ChannelFireball) October 7, 2019
元々リミテッドというフォーマットは、デッキ構築技術やルールの理解度、ゲームプランの設計といったマジックの基礎力が問われる上、構築と比べて”当たり運”のようなものの影響も小さいため、実力が勝敗に直結しやすいゲームになりやすいです。その上、今回は世界中のほとんどのプレイヤーがあまりプレイを経験していない新セットでのトーナメントだったので、より実力を問われる戦いになったのでしょう。今回はヘイン選手の面目躍如といったところですね。
……さて、一応恒例(?)となっているマジック界のニュース要素も入れようと思ってカナダのマジックフェストの結果をお伝えしましたが、読者のみなさんが一番気になっているのはスタンダード構築の話だと思います。今回はさっそく日本国内で開催されたトーナメントの結果から、上位に入賞していたデッキをご紹介していきましょう。
『エルドレインの王権』環境初陣戦
先週末、東京・高田馬場にある日本最大級のMtG専門店「晴れる屋トーナメントセンター」では、『エルドレインの王権』環境初陣戦というトーナメントが開催されていました。
この環境初陣戦はあくまで「晴れる屋」が主催するローカルイベントではありますが、新セットが発売された週末に毎回開催されるイベントであり、国内では新セット発売直後の環境を占うイベントとして注目されています。先述の通り、今回はローテーション直後というタイミングでもあるので、様々な新デッキが火を噴いていたようです。
【#環境初陣戦】新環境という物語のはじまりを飾ったのはジェスカイファイアーズ。多様な敵があふれる大会で最後まで熱く駆け抜けた。『エルドレインの王権』環境初陣戦を優勝したのは三木 健大!!おめでとう!! pic.twitter.com/UH0w7p4Ht3
— 晴れる屋 (@hareruya_mtg) October 5, 2019
そんな中で見事に勝利を収めたのは、やはり新デッキだったようです。その名も「ジェスカイ・ファイアーズ」? どのようなデッキだったのか、早速見ていきましょう!
ジェスカイ・ファイアーズ(使用者:三木 健大選手) | |
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枚数 | カード名(メインボード) |
2 | 《島》 |
2 | 《山》 |
1 | 《平地》 |
4 | 《神聖なる泉》 |
4 | 《蒸気孔》 |
3 | 《聖なる鋳造所》 |
2 | 《寓話の小道》 |
4 | 《次元間の標》 |
3 | 《天啓の神殿》 |
1 | 《凱旋の神殿》 |
1 | 《ヴァントレス城》 |
4 | 《願いのフェイ》 |
3 | 《可能性の揺らぎ》 |
4 | 《轟音のクラリオン》 |
2 | 《抽象からの抽出》 |
2 | 《時の一掃》 |
2 | 《牢獄領域》 |
4 | 《創案の火》 |
4 | 《覆いを割く者、ナーセット》 |
4 | 《時を解す者、テフェリー》 |
3 | 《主無き者、サルカン》 |
1 | 《人知を超えるもの、ウギン》 |
枚数 | カード名(サイドボード) |
2 | 《神秘の論争》 |
1 | 《ドビンの拒否権》 |
1 | 《古呪》 |
1 | 《ケイヤの怒り》 |
1 | 《集団強制》 |
1 | 《真実の愛の口づけ》 |
1 | 《戦争の犠牲》 |
1 | 《戦慄衆の指揮》 |
1 | 《次元を挙げた祝賀》 |
1 | 《夢を引き裂く者、アショク》 |
1 | 《伝承の収集者、タミヨウ》 |
1 | 《龍神、ニコル・ボーラス》 |
1 | 《主無き者、サルカン》 |
1 | 《目覚めた猛火、チャンドラ》 |
ジェスカイ・ファイアーズは少し変わったコントロールデッキです。といっても、その基本戦略は「大量の除去で盤面を掌握し、ドロー呪文でアドバンテージ差をつける」という、いかにもコントロールデッキらしいものですが。
そうしたデッキの挙動をより安定して行えるようにするキーカードが、デッキ名にその名を冠す《創案の火/Fires of Invention》です。このエンチャントはマジック史上でも例を見ない特殊な能力を持っており、エンチャントのコントローラーは「自分のターンに2つまでしか呪文を唱えられない」という縛りを受けることになります。その代わりに受けられる恩恵も絶大で、「呪文のマナ・コストを支払わずに唱えてもよい」という強烈なルール破壊のもとにゲームを展開できるようになります。
もちろん唱えられる呪文も無制限というわけではなく、「自分のコントロールしている土地≧唱えたい呪文の点数で見たマナ・コスト」を満たす呪文のみという縛りがあります。とはいえ、仮に4枚の土地をコントロールしているなら4マナの呪文をタダで2回唱えられるようになるわけです。《創案の火》自体が4マナなので、設置時点で最低でも4枚の土地はコントロールしているものと考えると、いきなり4マナから8マナにジャンプしているようなものと言えるでしょう。
そして、そんな《創案の火》から繰り出す呪文として採用されているのが《願いのフェイ》と《抽象からの抽出》といった強力なサーチ&ドロー呪文。特に《願いのフェイ》は『エルドレインの王権』の新カードで、その「出来事」能力である《成就》は「ゲームの外部からカードを手札に加える」という特殊なサーチ能力を持っています。
ゲームの外部とはすなわちサイドボードのこと。《創案の火》を設置してから《成就》をプレイすることで、サイドボードから状況に合った1枚を探し出すことができるというわけです。サイドボードにやけに1枚挿しが多いのも納得ですね。
また、《抽象からの抽出》も《創案の火》設置後の最高の動きの一つと言えます。かつてスタンダード環境を荒らし回り、モダン以下のすべての環境で禁止・制限の縛めを受けている超凶悪呪文《時を超えた探索》の調整版で、これまでその”調整されすぎた”能力からスタンダードでは日の目を見なかった1枚ですが、このデッキならば0マナで唱えることができるようになるわけです。
《創案の火》によって圧倒的に手数を増やし、一気にゲームを掌握する。コントロールデッキが本来持ち得なかった、瞬発的なアドバンテージ力を手に入れたこのデッキは、環境随一のデッキとなるポテンシャルを秘めています。これからの『エルドレインの王権』環境の注目デッキの一つと言えるでしょう。
ライター:ドブフクロウ
青春時代のほぼ全てをテキストサイトやゲーム系サイトを徘徊することに費やしていた根暗ライター。人間としての軽薄さに定評があり、親しい間柄では「空っぽ」というあだ名で呼ばれることもある。
MtGプレイヤーとしての腕前は自他ともに認めるヘッポコだが、青春時代に (いろいろなものを犠牲にして) 培ったMtG知識量は他の追随を許さない。
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