By まつがん
前回冒頭で話したような「スケール」の観点からすると、実際のゲーム上ではほとんど使われえないようなカードも、デュエル・マスターズには存在する。
それがバニラだ。
バニラとは (ルールテキスト以外の) 能力を持たないクリーチャーのことで、主にゲームを始めたての初心者に向けて作られたカードと言える。
したがってある程度ゲームに慣れたプレイヤーならば、これらのカードが平均的なスケールに遠く及ばないことは一目でわかるだろう。
実際、能力を持たないバニラは大抵の場合においてスケールの最低値を定義する存在である。
そうしてバニラはストレージボックスの奥深くに眠り、日の目を見ないまま埃を被り続けていく……。
はずだった。
だがデュエル・マスターズというカードゲームが、そうはさせなかった。
能力を持たないことが特徴であるゆえに常に使用候補にはあがらないバニラ。だが、もし「バニラであること」を参照するカードがあったならどうだろうか?
バニラが出るたび1ドローできる《アクア・ティーチャー》や、3マナ以上のバニラのコストを軽くできる《駱駝の御輿》といったカードたちは、「能力がない」というそれ以上でも以下でもなかったバニラだけをかき集めた「バニラデッキ」を組む意義をもたらしただけでなく、バニラが実戦で活躍する可能性を与えてくれた。
だがそれでも、これらのバニラサポートが継続的に出続けることはなかった。開発部としても、バニラを環境トップにしたいはずもないだろうからだ。
そしてカードゲームのスケールの最低値を定義するバニラのスペックが大幅に更新されることは基本的にない以上、バニラデッキの限界値はバニラサポートの量に規定される。
ゆえにバニラはこれらのカードによって「遊ぶ」という選択肢こそ与えられたものの、それらの選択肢は合理的な競技プレイヤーであれば事実上選択されることのない、フレーバーテキストが長く書かれる単なるファンカードとしての位置づけを良くも悪くも確立していった。
しかし2019年。
新時代を告げるデュエマにおける新元号、超天篇において、そうした既成概念はついに覆されることとなったのだ。
そう、バニラGRクリーチャーたちの登場だ。
「カードゲームのスケールの最低値を定義するバニラのスペックが大幅に更新されることは基本的にない」……けれども、何事にも例外はある。
GR召喚によって登場するこれらのクリーチャーたちのスケールは、そのカード自体が持つマナコストではなく、GR召喚にかかるマナコストによって定義される。
そこへくるとGR召喚は通常のクリーチャーの召喚に比べてかなりお手軽にできるようになっているため、実質的にバニラのスペックが大幅に更新されたに等しい結果をもたらしたのだ。
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