みなさんこんにちは、MtGライターのドブフクロウです。
先週は5月3日に発売される新セット『灯争大戦』の情報が公開されました。このセットにはなんと36名ものプレインズウォーカーがカードとして登場するようで、しかもブースターパック一つにつき1枚のプレインズウォーカーが封入されているそうです。パックを剥くたびにプレインズウォーカーと対面できるというのは凄まじい体験ですね。
ちなみにマジックの主席デザイナーにして広告塔であるマーク・ローズウォーター氏曰く、収録されるプレインズウォーカーは全て新規カードだそう。まるでプレインズウォーカーのバーゲンセールだな……。
(意訳:「Q:36枚のプレインズウォーカーの中には再録カードが含まれますか?」「A:全て新カードです」)
まだ収録カードの詳細については明らかになっていませんが、慣例的には4月上旬ごろから徐々に全容が明らかになっていくはずです。
盤面に複数枚のプレインズウォーカーが並びことになりそう (?) なリミテッド環境はもちろん、スタンダードやモダンといった構築フォーマットにも大きな変革をもたらしそうな『灯争大戦』。どのようなセットになるのか今から楽しみですね!
さて。今回は少し趣向を変えて、ちょっと珍しいフォーマットであるパウパー/Pauperのデッキをご紹介したいと思います。
マジックプレイヤー諸兄からの「誰向けの記事やねん」というツッコミが聞こえてくるようですが、偉い人に怒られるまで自由にやっていきますのでよろしくお願いします。
ミシックチャンピオンシップ・ロンドン2019予選
というわけで、先週ご紹介したマジックフェスト・ロサンゼルス2019の併催イベントであるミシックチャンピオンシップ・ロンドン2019予選は、史上初となるパウパーでのミシックチャンピオンシップ予選 (旧プロツアー予選)となりました。ずらずらと意味不明な固有名詞を連発してしまいましたが、これの何がユニークかを説明しだすと無限に脱線するので、ここまで「なんかすごいっぽい」くらいのノリで読んでいただければ大丈夫です。
MTGアリーナでマジックを始めたという方でも、もしかするとパウパーについてはなんとなく知っている方がいらっしゃるかもしれませんね (※不定期でイベントが開催されているため。ちなみに次回のMTGアリーナでのパウパーイベントは明後日の3月15日から!) 。
パウパーはマジックのレギュレーションの中でも特に変則的なルールで、過去にコモンとして収録されたことのあるカードしか使えないというです。逆に言えば一部の禁止カードはあるもののコモンならば何でも使用することができ、スタンダードのように最新セットのカードしか使えないということもありません。
今さらっと流してしまいましたが、この「過去にコモンとして収録されたことのあるカードしか使えない」という点がポイントで、基本的にコモンのカードはCommon (一般的) と呼ばれるくらいなのでアンコモンやレアと比較して市場に流通している数が圧倒的に多いです。
つまりパウパーデッキは非常に組みやすい傾向にあり、ちょっとした飲み会の参加費くらいの金額があれば余裕でデッキが組めます。しかもローテーションの概念がないので一度組んだデッキはずっと使うことができる。なんて経済的!
とお金の話ばかりしていると安かろう悪かろうの精神でつい偏見の目を向けてしまいそうですが、ゲームとしての魅力は折り紙付き。
モダン以上に広大なカードプールと時代を超えたカードとカードが織りなす相互作用の数々はコモンだけでゲームをしているとは思えないほど環境の奥行きを感じさせてくれますし、コモン限定構築だけあって1枚で簡単に勝てるような凶悪なカードがほとんど存在しないので多くの駆け引きや読みあいが発生します。
フォーマットの特殊性からこれまでトーナメントフォーマットとして注目されたことはありませんでしたが、その人気はプレイヤー層を問わず絶大で、その魅力に憑りつかれる者は後を絶ちません。
今回はそんなパウパーのデッキから、ミシックチャンピオンシップ・ロンドン2019予選で上位に入賞していた「拷問生活」デッキをご紹介します。
拷問生活 (使用者:ポール・ジャシント選手) | |
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枚数 | カード名 (メインボード) |
7 | 《滑》 |
4 | 《森》 |
4 | 《ジャングルのうろ穴》 |
4 | 《ゴルガリの腐敗農場》 |
3 | 《ゴルガリの腐敗農場》 |
1 | 《やせた原野》 |
1 | 《灰のやせ地》 |
1 | 《広漠なる変幻地》 |
1 | 《ボジューカの沼》 |
1 | 《平穏な茂み》 |
4 | 《ゴルガリの茶鱗》 |
3 | 《臭い草のインプ》 |
3 | 《墓を掻き回すもの》 |
3 | 《煙霧吐き》 |
2 | 《胞子カエル》 |
2 | 《墓所のネズミ》 |
1 | 《枝細工下げの古老》 |
1 | 《耕すツリーフォーク》 |
1 | 《思考抜きの魔女》 |
1 | 《野生の雑種犬》 |
1 | 《危険なマイア》 |
1 | 《屍肉喰らい》 |
1 | 《リリアナの死霊》 |
1 | 《グルマグのアンコウ》 |
1 | 《遺棄地の恐怖》 |
4 | 《神々との融和》 |
4 | 《拷問生活》 |
1 | 《発生の器》 |
1 | 《骨までの齧りつき》 |
1 | 《死の重み》 |
枚数 | カード名 (サイドボード) |
2 | 《苛性イモムシ》 |
2 | 《顔なしの解体者》 |
1 | 《催眠の悪鬼》 |
1 | 《死の重み》 |
1 | 《死神頭のノスリ》 |
1 | 《暗影の蜘蛛》 |
1 | 《骨までの齧りつき》 |
1 | 《胞子カエル》 |
1 | 《黒薔薇の棘》 |
1 | 《カラスの罪》 |
1 | 《墓所のネズミ》 |
1 | 《チェイナーの布告》 |
1 | 《フェアリーの忌み者》 |
拷問生活……なにやら物騒なデッキ名ですが、これはデッキのキーカードである《拷問生活》に由来します (実際、デッキの挙動もサディスト向きのものではありますが) 。
これは黒マナを払って手札のクリーチャーカードを1枚捨てると墓地にあるクリーチャーカードを手札に加えることができるという能力を持ったエンチャントで、マナがある限り手札と墓地のクリーチャーカードを入れ替えることができます。
▲《拷問生活》
要するに《拷問生活》さえ戦場に設置することができれば以降のゲームは墓地にあるクリーチャーカードを何度でも使い回すことができる——つまり、いくらかの制限はあるにせよ実質的に墓地=手札であるかのようにゲームをすることができるというわけです。
よって拷問生活デッキはおおまかに
- 《拷問生活》をプレイする
- 墓地を肥やす
- 圧倒的なリソース差でゲームに勝つ
というゲームプランを取ることになります。この (1) と (2) の過程は時に並行して行われ、《神々との融和》や《発生の器》といったカードによって《拷問生活》を探しながら墓地を肥やしていくこともあります。
そんなこのデッキに入っているクリーチャーはいずれも《拷問生活》と強い相互関係を生み出すものばかりで構成されており、たとえば《胞子カエル》を繰り返しプレイすればそれだけで対戦相手の攻撃をシャットアウトすることができますし、ライフが減ってきたら《拷問生活》で何度も《ゴルガリの茶鱗》を墓地と手札を往復させ、《墓を掻き回すもの》が効率的にリソースの拡充を行うなど、状況に応じて多種多様な戦術を取ることができます。
強力なカードを何度も何度も使い回すことでイニシアチブを築いていく。アグロデッキのような爆発力やコンボデッキのような華やかさはないものの、《拷問生活》を起動するたびに真綿で絞め殺すように着実に対戦相手を追い詰めることができることでしょう。あと挙動がトリッキーなので中毒性も高いんですよね。
若干複雑なので最初のうちは慣れるのに苦労するかもしれませんが、次第に「コモンだけのデッキでこんなにいろんなことができるなんて!」と感動を覚えることでしょう。
楽しい! 楽しい!と思いながら《拷問生活》しているうちに対戦相手から煙も出なくなってしまい、もうちょっと拷問したかったのになと不満を感じることがあるのが玉に瑕。友達を失わない程度に、容量用法を守ってあなたも楽しい拷問ライフを!
※画像はマジック:ザ・ギャザリング 日本公式ウェブサイトより引用しました。引用元URL:https://magic.wizards.com/en/events/coverage/2019MC1
ライター:ドブフクロウ
青春時代のほぼ全てをテキストサイトやゲーム系サイトを徘徊することに費やしていた根暗ライター。人間としての軽薄さに定評があり、親しい間柄では「空っぽ」というあだ名で呼ばれることもある。
MtGプレイヤーとしての腕前は自他ともに認めるヘッポコだが、青春時代に (いろいろなものを犠牲にして) 培ったMtG知識量は他の追随を許さない。