ドブフクロウのMtGブレーキングアカデミー vol.3 〜モダン坂をのぼりはじめよう〜

By ドブフクロウ

みなさんこんにちは、MtGライターのドブフクロウです。

先週には兼ねてより予告されていたモダン向けの新セット『モダンホライゾン』(※リンク先は外部サイト)が発表されました! 現時点では《慈悲深きセラ》や《陰謀団の療法士》といった新録カードの存在が明らかになっており、他にも再録を含めて全254種類のカードが収録されるようです。

▲『ウルザ・ブロック』の舞台の一つである「セラの領土」の創造主・セラと、《陰謀団式療法》のイラストでお馴染み(?)の”謎のマッチョ”が待望のカード化!

特殊セットだけあってストーリー上はすでに死亡しているはずのセラや恐らく『オデッセイ・オンスロートブロック』時代の陰謀団の構成員がカード化されているのはワクワクしますね。まだその全容は明らかになっていませんがこれからも“マジックおじさん”歓喜の懐かしカードをお目にかかれるのでしょうか?

すでに公開されているこの2枚だけでも記事が書けそうなところではありますが、ひとまずは続報を待つとしましょう。とにかく現段階で言えるのは『モダンホライゾン』によってモダン環境には大きな影響がありそうということですね。

さて、この連載でも何度か「モダン」という名詞を使ってきましたが、最近マジックを始めた(あるいは復帰した)プレイヤーにとっては馴染みがない名前かもしれませんね。

モダンとはマジックのポピュラーなフォーマットの一つで、一部の禁止カードを除いて『第8版』ならびに『ミラディン』ブロック以降に印刷された基本セットとエキスパンションに収録されているすべてのカードを使用できるというレギュレーションです。

その性質上新セットが発売されるたびにカードプールも増えていくので、それに伴って参入障壁は年々上がってきてはいるものの、裏を返せばローテーションの概念が存在しないため好きなカードやデッキを長く使用することができます。

このことはモダンの最大の魅力の一つと言え、2011年にフォーマットが制定されてからというもの今やスタンダードに次ぐ競技人口を誇る大人気フォーマットとなっています。

また、先週末にはアメリカ・カリフォルニア州ロサンゼルスにてマジックフェストが行われていました。ここまでの前振りでお分かりかと思いますが、その開催フォーマットはモダン。

2019年1月21日に《クラーク族の鉄工所》が禁止されたばかり+『ラヴニカの献身』のリリースによって新たなアーキタイプが誕生したこのフォーマットで活躍した最新のデッキリストを見ていきましょう。

マジックフェスト・ロサンゼルス2019

世界有数の大都市であり、アメリカ映画産業の中心地・ハリウッドがあることでもおなじみのロサンゼルス。もちろん大勢のプレイヤーが集まり、中には日本から参戦したプレイヤーもいたようです。

残念ながらプレイオフへの進出はならなかったものの、ゴールドレベル・プロプレイヤーの高橋 優太選手などは青黒フェアリーデッキを使用してトップ32位に入賞するなど健闘していました。

ご存知の方も多いかもしれませんが、高橋選手といえばフェアリー愛好家として世界的に有名です。モダンのフェアリーデッキ自体決して弱いデッキではないのですが、かといってすごく強いというわけでもなく、体感ですが使用者は200人に1人いるくらい。

ましてその中で勝っているプレイヤーとなると世界でも高橋選手くらいでしょうか。さきほど「モダンでは好きなカードやデッキを長く使用することができる」と書いたばかりですが、高橋選手ほどそれを体現しているプレイヤーはいません。

青黒フェアリー(使用者:高橋 優太選手)
枚数 カード名(サイドボード)
3 《島》
1 《沼》
2 《湿った墓》
4 《汚染された三角州》
2 《沸騰する小湖》
4 《闇滑りの岸》
3 《忍び寄るタール坑》
3 《廃墟の地》
2 《変わり谷》
4 《瞬唱の魔道士》
3 《呪文づまりのスプライト》
4 《致命的な一押し》
4 《コジレックの審問》
4 《血清の幻視》
2 《呪文貫き》
2 《喪心》
3 《謎めいた命令》
3 《苦花》
4 《ヴェールのリリアナ》
3 《精神を刻む者、ジェイス》
3 《仕組まれた爆薬》
3 《虚無の呪文爆弾》
2 《外科的摘出》
1 《ヴェンディリオン三人衆》
1 《儀礼的拒否》
1 《呪文嵌め》
1 《軽蔑的な一撃》
1 《否認》
1 《大祖始の遺産》
1 《最後の望み、リリアナ》

 

長年フェアリーを愛好しているだけあって、高橋選手のリストでは細やかなカード枚数の調整が散見されます。特にサイドボードはおよそ半分が1枚挿しになっており専用機のような印象さえ受けますね。

昨年末に同デッキを使用してグランプリ・ポートランド2018でトップ8に入賞されていたことも記憶に新しいですが、今回のリストはメインボードが2枚、サイドボードが3枚の合計5枚だけカードが入れ替わっています。僕の技量ではその詳細な理由までは読み解けませんが、分かる範囲で考えていきましょう。

一般論として、フェアリーデッキは《呪文詰まりのスプライト》のような攻防一体のカードを使用するクロックパーミッションと呼ばれるデッキです。先週ご紹介した「青単テンポ」とも共通点が多い……というか、フォーマットの違いや色の差はあれど分類上はほぼ同一のデッキと言えます。つまり攻めながら守る、守りながら攻めるといった調子で対戦相手をかく乱していく戦略を取るのです。

モダンではカードプールが広い分攻めるカードも守るカードも一級品が揃っており、高橋選手のデッキには往年のフェアリーデッキのフィニッシャーの《苦花》はもちろん、着地さえしてしまえば1枚でゲームメイクが可能な《精神を刻む者、ジェイス》といったカードが多数採用されています。

もちろん対戦相手の使用してくるカードもスタンダード以上に強力で、わずかな判断ミスで簡単にゲームを落としてしまうこともあるでしょう。非常にプレイングの難易度が高いデッキですが、こうしたシビアなデッキを使いこなすのも”不屈のストイシズム”の異名をとる高橋選手のキャラが出ています。

なんかこう、僕はそもそもマジックがあまりうまくないので絶対このデッキは使いこなせないんですけどもしこれで勝てたらかっこいいなと思えるデッキです。スプラトゥーンで例えるならチャージャーみたいな、強い人が使うとすごい強いやつ。

まだ先のことではありますが、これから『モダンホライゾン』の発売も控えています。高橋選手のように好きなデッキを使い続けるもよし、環境に合わせて様々なデッキを使うのもよしというモダンフォーマット、まだプレイしたことがないなら今が始め時かもしれませんよ!

 

ライター:ドブフクロウ

青春時代のほぼ全てをテキストサイトやゲーム系サイトを徘徊することに費やしていた根暗ライター。人間としての軽薄さに定評があり、親しい間柄では「空っぽ」というあだ名で呼ばれることもある。
MtGプレイヤーとしての腕前は自他ともに認めるヘッポコだが、青春時代に (いろいろなものを犠牲にして) 培ったMtG知識量は他の追随を許さない。

次回は3/13(水)更新!!