世の中にあるホビーやゲームの仕事を紹介する「コロコロお仕事図鑑」! その記念すべき第1弾に登場してくれるのが、コロコロと親交の深いレゴ社だ!! 今回は、レゴランド®などにある大型モデルを制作している方が登場だ! みんなは、こうしてレゴ®ブロックに携わる大人になった! 参考にしてくれよな!!
プロフィール
リブシェ・プラシェロワ
レゴ社の中で、大型モデルを制作するチームに在籍。モデルビルダーとして、レゴ®ストアやレゴランド、おもちゃ店などに設置されている、レゴブロックを使った大型の3Dモデルをつくる業務に従事。レゴ社本社のあるビルンにあるレゴ®ハウスに展示されている、高さ6メートルのレゴブロックの滝や、レゴ®テクニックのパーツでつくられた実物大の恐竜などの大型モデルの制作にも携わった。
2,700時間掛けてつくった大型モデル
――レゴブロックとの出会いについて教えてください!
子どもの頃はレゴブロックを持っていませんでしたが、昔から組み立てたり、頭を使ってパズルを解いたりするのが好きでした。レゴブロックとの最初の出会いは、レゴ®グループの入社テストでビルディングしたときです。その時の一目惚れのような気持ちは今でも変わっていません。仕事が決まり、入社時の社員プレゼントとして、初めてレゴブロックのセットをもらいました。
――子どもの頃はレゴブロックを触っていなかったんですね、意外! そんなリブシェさんがレゴグループで働くことになった経緯を教えてください!
私は2006年に入社しました。当時、私はチェコ共和国の他の地域からクラドノに移り住み、仕事を探していました。実はすでに他企業から内定をもらっていたのですが、レゴグループからもお声が掛かりました。おもしろいことに、当時の私はモデルビルダーという仕事がどういうものかも知らなかったのですが、「やってみたら、おもしろいかもしれない」と思ったのです。その直感は私の期待を裏切らず、15年間ずっと好きな仕事に就くことができました。
――レゴグループでは、どのような仕事をしているのでしょうか!?
最初はモデルビルダーとして、レゴストアやレゴランド、おもちゃ店などに設置されている、レゴブロックを使った大型の3Dモデルをつくる仕事をしていました。その後、私は製造チームで働き、チームリーダーになりました。しかし、レゴブロックを使ってつくる仕事が恋しくなり、プロジェクトの工程管理をする「クイックチーム」に異動しました。ここでは、モデルビルダーとして長年学んできたことを生かしています。
クイックチームでは、早く処理しなければならないオーダーに取り組みます。これは、モデルだけでなく、課題の完成から梱包・発送までのすべてのプロセスを対象としています。
――これまでに、どのような大型モデルを制作してきたのですか!?
最近手掛けた大型モデルのひとつに、「Rebuild the World」というブランドのキャンペーン用の地球儀があります。これは非常に特別でおもしろいプロジェクトでした。この作品は35万個以上のピースで構成されており、制作には2,700時間を要しました。世界中の430人の子どもたちがつくったレゴ作品も含まれており、写真だけを参考にして再現しました。そのため、私たちは想像力と創造力を駆使して、子どもたちがつくった作品をコピーしながら、すべてが所定の位置に収まっていることを確認すると同時に、品質と安全性に関する会社としての基準も満たさなければなりませんでした。
ほかにも、ビルンのレゴ®ハウスで紹介されている、高さ6メートルのレゴブロックの滝や、レゴテクニックのパーツでつくられた実物大の恐竜なども印象的です。
――これまでに制作した大型モデルのなかで、特に印象深いものを教えてください!
長年にわたり、何百、何千ものモデルを手掛けてきたため、その中から一つを選ぶことは難しいですね。私はすべてのものの作成を楽しみ、それぞれが類を見ないものです。しかし、いわゆる「ミニランド」と呼ばれる、風景や建物のミニチュアを作るのはとても好きです。これらはどんどんレベルがあがり、細部にまでこだわっているので、つくるのがより難しくなります。ですが複雑であればあるほど楽しいですね。どうやってつくるかを考えるまでは、夜も眠れません。
――大型モデルをつくるメンバーには、どうすればなれるのでしょうか!?
モデルビルダーになるには、色の認識力、空間能力、想像力などを発揮するビルディングテストに合格しなければなりません。特別な勉強は必要ありませんが、新しいことを学ぼうとする姿勢が大切です。この仕事は非常にユニークで、練習しないと身につかないことがいくつもあります。新しいモデルをつくるたびに、新しいことを学ぶことができ、それは素晴らしいことです。自分自身を成長させるチャンスがあるので、仕事をしていても絶対に退屈しません。
――大型モデルといえば、今年の夏はレゴブロックでつくられたトヨタ社のスープラの実物大レプリカが話題でしたよね!こちらを制作した時のお話を聞かせてください!
残念ながら、私はこのモデルを担当しませんでしたが、このモデルがつくられていく過程を追うのはとても良い経験になりました。このような貴重なプロジェクトが徐々に形になっていくのを見るのはいつも楽しいことですが、今回は本当に特別でした。すべての工程が難しく、最後のブロックを積むまで誰もが息をひそめていました。だからこそ、最後の1台が動き出したときには、喜びの声が上がりました。この作品は、レゴブロックで何でも作れることを示す良い例だと思います。
――大型モデルを見た人の反応はすごそうですね!
その反応はとても素晴らしいものです。子どもたちがこれらのモデルを見ると、あごが下がり、目が大きくなるんです。大人も一瞬で、子どものようになります。その反応を見ると、自分の作品がどれだけ人を楽しませているかがわかるので、とても幸せです。何個のレゴブロックが必要だったのか、何時間かけてつくったのか、重さはどうだったのかなど、細部に興味を持ってもらえると嬉しいですね。
――大型モデルをつくるのと、一般の大きさの作品をつくるのとでは、どのような違いがありますか!?
レゴブロックの数やモデルのスケールなどが大きな違いですが、実はそれだけではありません。お店で購入した一般的なレゴ®セットを組み立てるときは、詳細な組み立て説明書に従って組み立てることが多いので、組み立て方やブロックの最適なつなぎ方などを考える必要はありません。時間はいくらでもあるし、自分でつくることもできるし、誰かと一緒につくることもできるし、誰にでも楽しめることです。一方で、大きなモデルでは、モデルビルダーが一つひとつのモデルをつくり始めるずっと前から、作成を支える大規模なチームが存在します。このプロセスには、デザイナー、エンジニア、プロジェクトマネージャー、品質や安全性のスペシャリストなど、多くの専門家が関わっています。大型モデルの注文はどれも希少でオリジナルなものです。正直なところ、スタンダードなレゴ®セットをつくりながらリラックスしたいと思うこともあります。
良いチームワークは“魔法”のようなもの
――うおお、すごい人数の方が関わることで大型モデルは成立しているのですね。大型モデルをつくる作業は、何名ほどで行うのでしょうか!? 可能であれば、これまでの最大人数、最長組み立て時間も知りたいです!
モデルの大きさ、アニメーションの細かさ、制作負荷、納品までの時間など、プロジェクトによって、さまざまです。最大かつ最も複雑なプロジェクトの一つが、ビルンにあるレゴハウスの「Tree of Creativity」です。高さは15.68m、根の部分は4×4mの広さがあり、幹の直径は最も広いところで2mです。ツリーは213枚の緑の葉で飾られており、それぞれの重さは16kgです。630万個以上のレゴブロックが使われており、1人でつくると12年かかると言われています。私たちは9ヶ月で完成させました。
――す、すげー……! 複数人でレゴブロックでできた作品をつくることの楽しさについて、教えてください!!
私はちょっとした工夫をできるのが好きで、それを楽しんでいます。そしてもちろん、自分の手の中でモデルがどのように成長していくのかと、完成したときの人々の反応を見ることも楽しみです。「楽しさ」は、私たちの価値観のひとつであり、企業文化の一部であり、プロジェクト全体に通じるものでもあります。そのような良い雰囲気と、良いチームワークは大変な日々を乗り切るための魔法のようなものです。
――魔法かぁ。コロコロオンラインの記事をつくるのも似ているかもしれません! あとは、大型モデルをつくる際、気を遣うポイントや苦労する点も教えてくれますか!?
ベースとなる部分をしっかりつくることで、最終的にすべてが完璧に調和します。大きなモデルは、輸送や安全基準に合わせて、いくつかの小さなパーツに分けられます。そのため、モデルビルダーはどこでパーツを組み合わせているのかわからないように、集中し、高い精度で作業しなければなりません。どのビッグモデルにも、オリジナルのユニークな側面があります。私たちは常に、長く使えるものをつくることを目指しています。
――レゴブロックの魅力や楽しさはどのような点だと思われますか!?
個人的には、無限の可能性と遊びの時間を提供してくれることです。想像できるものは何でもつくることができるのです。
さまざまな形を組み合わせて、すべてがうまく合致することを考えてみてください。私は、デザインチームの同僚を尊敬しています。彼らは、何千もの要素を頭の中で整理し、そこから信じられないような組み合わせを生み出し、私が思いつかないような方法で使っていきます。唯一の限界は想像力ですが、彼らの想像力は子どものそれと同じように無限です。
――うわぁ、レゴブロックで遊びたくなってきちゃいましたよ! ちなみに、この仕事をやっていてよかった、と感じるのはどんな時ですか?
新しい大型モデルを完成させ、それを見ることができた時です。もしくは、ある課題を解決して、次のステップに進むことができたとき。そして、もちろん、上司や同僚、子どもたちが私の仕事をほめてくれた時もです。
――最後に、これからつくってみたい大型モデルについて教えてください!!
私は特に「ミニランド」の仕事をするのが好きです。ですので、技術的に厳しい要求を叶え、洗練された大きな「ミニランド」をつくっているのです。でも、どんなモデルでも、つくるのは楽しいですよ。毎回異なるプロジェクトですので、いつも挑戦ですし、それが喜びです。