世の中にあるホビーやゲームの仕事を紹介する「コロコロお仕事図鑑」! その記念すべき第1弾に登場してくれるのが、コロコロと親交の深いレゴ社だ!! デンマーク本社のデザイナーやブロック開発の担当者、レゴ®認定プロビルダーの三井淳平さんなど、5名のインタビューを掲載していくぞ! みんなは、こうしてレゴブロックに携わる大人になった! 参考にしてくれよな!!
プロフィール
三井淳平(みつい・じゅんぺい)
1987年生まれ。日本人初のレゴ認定プロビルダー。幼少期からレゴブロックに触れ、高校時代にはテレビ番組『TVチャンピオン』にも出演。大学時代には「東大レゴ部」を創設し、つくった作品が話題に。大学院時代にレゴ認定プロビルダーに認定される。2015年に三井ブリックスタジオを創業。
レゴブロックはものづくりの入り口として優秀なツール
――三井さんとレゴブロックとの出会いについて教えてください!!
1歳になる前から遊んでいたと思います。3歳年上の兄がいるので、一緒に遊んでいました。レゴブロックって、いろいろと自分で試しながらつくって、納得がいかなければ、また自由に壊して新しいものをつくれるんです。その繰り返しがおもしろかった。モーターや歯車といったパーツもあったのも、子ども心に長く楽しめた理由だと思います。
――どんなレゴシリーズで遊んでいたんですか!?
今でいう「レゴ®シティ」シリーズや、宇宙シリーズ、お城シリーズ、パイレーツシリーズなどです。最初は説明書通りに組んで遊んで、後から自由に組んでいって……という具合ですね。小学校に入ってからは、説明書にないものをつくり始めるようになりました。車だったり、船だったり、人(人形)が中に入れるようなものをつくっていました。
――思春期になると、それまで遊んでいたものが急に子どもっぽく感じるようになったり、クラスメイトから「まだ、そんなので遊んでるの?」と言われるようなことがあったりしますが、三井さんもそういう経験はありますか?
レゴ界隈でもよくある話です。子どものおもちゃと見られやすくて、中学生くらいになると敬遠してしまうという。本当は好きなんだけど、周りの目が気になって「遊んでる」って言えなくなってしまうんですよね。界隈では「ダークエイジ(暗黒期)」なんて言い方をしています。自分の場合は、小学6年生の頃かな。「レゴ マインドストーム®」という、プログラミングできるレゴ®シリーズが出て、寄り道した結果、離れずに済みました。
――プログラミングできるレゴブロックですか!?
モーターやセンサーがブロック状になっているんです。壁にぶつかったら反対側に移動するロボットや、光を読み取るセンサー機能によって床に引いたラインに沿って動く車をつくることができたり、というものでした。ステップアップしていくと、本当に難しいものをつくれたんですよ。しばらくは「レゴ マインドストーム」シリーズを遊んで、中学3年生の頃から、また純粋にレゴブロックを組む遊び方に戻りました。
――おお〜、すごい! そこでレゴブロックから離れなかったからこそ、今の三井さんがあるわけですね!
今は大人向けのレゴシリーズが発売されているように、大人の趣味としても認知され始めているように思います。レゴブロックを組むことって、年齢問わずに楽しいものなんですよ。気軽なものづくりとして、すごく優秀なツールで。思春期になると周りの目が気になるというのはあるかもしれないですけど、世間の目も変わってきているので、あまり気にし過ぎずに楽しんでくれればうれしいです。
本気で楽しんでくれた親の存在
――三井さんが子どもの頃にレゴブロックで何かをつくった時、ご家族の反応ってどのようなものでしたか!?
楽しそうだね、とかすごいね、といった言葉を掛けてもらっていたように思います。自分自身、おもしろいものができると人に見せたい気持ちが強いので、そういう反応はうれしかったです。
――少年時代、レゴブロックのほかにも何か好きだった遊びはありましたか!?
小学生の頃は、基本的には外で遊んでいました。中学生の時も少し野球部をしていたり。一方で化学クラブにも入っていました。でも、余暇という意味での遊びは、もっぱらレゴブロックでしたね。兄弟合わせて、衣装ケース5個分くらいのレゴブロックがありました。
――その頃から、レゴブロックの個人輸入をしていたそうですね!
はい。当時は、送料を考えても、まだ海外のほうが圧倒的にレゴブロックを安く購入できたんです。大きい作品をつくりたかったので、それで個人輸入をするようになりました。
――ご両親は、作品づくりには肯定的でしたか!?
作品づくりをサポートしてくれたりと、肯定的でした。小さい頃から、一緒にペーパークラフトをつくってくれたりしましたね。特に父親は、一緒につくるのが楽しくて、やってくれていたみたいです。
――親が本気で楽しんでくれると、子どもも本気で楽しめますよね。
そう思います。親の楽しさが伝わってくるというか。
――そういう親の存在が、今の三井さんにつながっているんだろうなぁ〜。ところで、三井さんが初めてつくった大きい作品って、何だったんですか!?
アポロ計画のサターンV型ロケットです。白いロケットを、2メートルくらいのサイズで数ヶ月掛けてつくりました。大きい作品をつくりたいと思った理由は、いろいろな人に見てもらいたかったから。小学生の頃、段ボールで2メートルほどのエッフェル塔をつくった時に、地元の新聞に取り上げていただいたんです。その経験もあって、大きさというインパクトのある作品は、多くの人に見てもらえるんだ、と思って。
ちょうどその頃、自分のレゴブロックの作品をたくさんの人に見てもらいたくて、ホームページをつくったんです。なので、ロケットの写真はホームページに載せて。小さい頃から、つくったものを人に見てもらうのが好きだったんです。2002年頃の話だったと思います。ホームページをつくることによって、人との新しい交流が生まれたのは良い経験でした。学生時代って、同世代のコミュニティは学校や習い事でできますけど、大人とのコミュニケーションってなかなか取れないじゃないですか。いい刺激になったのを覚えています。
――大きい作品という点では、高校時代に等身大のドラえもんをつくっていますよね!
はい。高校生の時に、文化祭で自分の作品を展示するためにレゴサークル的なものを一人でつくって。その時に、等身大のドラえもんをつくって展示しました。
――その後、進学した東京大学では「東大レゴ部」をつくって、話題になりました!
もともと、学園祭の時に、レゴブロックを使って東大の安田講堂をつくろうという話があって、そこに私が乗っかった形なんです。私を含めて有志が5人ほど集まり、学園祭で作品を出すにあたって、仮の名前として「東大レゴ部」という名前を付けたんです。その評判がよかったので、そのままサークル活動として継続する形になりました。
レゴ認定プロビルダーになるには……?
――さあ、いよいよ、大学院時代に三井さんが「レゴ認定プロビルダー」になった話を聞きたいと思います! 三井さんは、どのようにして、日本でただ一人のレゴ認定プロビルダーになったのでしょうか!?
レゴ認定プロビルダーって、毎年、決まった時期に応募をする、という形ではないんですよ。過去のイベントや仕事などの実績が評価されるんです。私の場合、大学院生の時に、海外で自分の個展をやらせていただく機会があって、その時にレゴ社のデンマーク本社の方と直接お会いすることができました。そこで、レゴ認定プロビルダーの認定プログラムがあるよ、とお誘いいただいたんです。
――すっ、すげーーー!! 認定プログラムって、どのようなことをするんですか!?
どのようなビジネスモデルで自分の仕事をやっていきたいかをプレゼンする、というものでした。レゴブロックで作品をつくる、技術的なテストはありませんでした。
――そうなんですね、意外! そもそもの話になってしまいますが、レゴ認定プロビルダーって、何者なんでしょうか!?
レゴブロックを使ったアーティスト的な活動をしている人への、レゴ社からのお墨付きのようなものだと考えています。ミッションとしては、レゴブロックでおもしろいことをして、レゴブロックの可能性を示すことです。
――おぉ……かっちょいい……!! 今回の記事を見て、自分もレゴ認定プロビルダーになりたいと思う人もいると思うんですが、どうすればレゴ認定プロビルダーになれると思いますか!?
まずは、自分の作品をつくることです。そして、それらを発信して、いろいろな人に見てもらう努力をすることですね。仕事としてレゴブロックで作品をつくっていくには、自分の作品の良さをいろいろな人に知ってもらい、求められることが必要ですから、自分作品の魅力を発信していく必要があります。
――なるほどなぁ〜! ただつくるだけではなくて、認知されないといけないんですね。三井さんがレゴ認定プロビルダーに認定された時は、どのようなお気持ちでしたか!?
うれしかったです。それこそ、大学の合格発表より、うれしかった(笑)。
――よろこび具合がわかりやすいです(笑)。大学院卒業後は、鉄鋼メーカーに就職しています。最初からレゴ認定プロビルダー1本で活動していたわけではなかったんですね!
いくつか理由はあるのですが、どちらもできるのであれば、どちらもやりたいと思っていたんです。大学では専攻していた金属材料系のメーカーに就職できたので、どちらも非常にやりたいことで。二足の草鞋(わらじ)で継続できるなら、そうしたかったのですが、結果的に、途中から両方ともフルタイムレベルでこなしていくのが難しいと感じて、どちらかに絞る必要があるなと。時間的な制約で選択を迫られた感じです。
――レゴ認定プロビルダーになってからの作品で、思い出深いものを教えてください!!
どれも思い出深いのですが、大変だったという意味では、総重量1トン近い3メートル級のパックマンをつくったことです。中に鉄の構造物を入れないといけなくて、鉄の骨組みに絡ませる形でブロックを組んでいきました。大きくて重たいものは、強度の面もあってハードルが高いです。輸送の際に、どこで分割するかも事前に考えてつくっていかなければならないので。
――そういった大きい作品をつくる時、事前スケッチなどはしているのでしょうか!?
はい。自分は基本的に設計にはパソコンを使わずに、手描きのスケッチするようにしています。建物をつくるのであれば、スケッチをもとに、その建物のいろいろな角度からの写真を見ながら肉付けしていきます。大事にしているのは、パッと見た時の印象でそれが何かが分かること。縦横比などのバランスが本物と合っているかが大事なので、時には方眼紙を使って図面のようなものをつくります。
――バランスが大事なんですね!
たとえば縦長のビルをつくるとして、どのくらい縦長なのかが大事です。人間って、ちょっとした変化に敏感なんですよ。なので、そこからズレないようにしています。
――作品をつくるにあたって、スケッチが必要になるタイミングって、どういう時なんでしょうか。
人それぞれだとは思いますが、自分の場合は、スケッチを描くというステップを踏んだほうがスムーズにつくれることに気がついたんです。というのも、スケッチというのは、自分が頭のなかでつくりたいものをイメージできていないと描けないんですよね。要は、制作の途中段階のアウトプットなんです。頭のなかでイメージができていると、レゴブロックを組んでもうまくできるんです。
――スケッチを描くコツってありますか!?
何が、それの特徴になっているかを意識するのがポイントです。似顔絵なんかがわかりやすいですけど、その人のどこを強調するか考えて描きますよね。スケッチもそれと同じで、「ここがポイントなんだ」というのを意識すると描きやすくなります。たとえば、エッフェル塔なら少し反っているのが特徴なんです。極論、細かいところはどうでも良くて、反っていればエッフェル塔に見えるんです。
完成させることより、つくる過程が楽しい
――三井さんは、今、レゴブロックをどれくらい持っているんでしょうか!?
大体、400万ピースです。結構な数だと思います。レゴランド®に展示されている超巨大な作品に使われているのが1700万ピースほど。自分がよくつくる1メートル級の作品に必要なのが、400万ピースほどです。イメージとしては、2ヶ月単位の制作期間が必要なものをつくるのに必要な数が、それくらいです。
――すごい!! でも、必要だからこそ、それだけ所有していないといけないんですね。一度つくり上げた作品は、写真を撮ったら壊して次の作品のパーツに転用してしまうそうですね。なんだかもったいない気もしますが……!
レゴブロックを使って何かをつくるのが楽しいんです。要は、プロセスが大事で、完成させること自体が目的じゃないんです。自分にとっては、つくるところがメインパート。完成したものは記録として残っていればいい、くらいに思っています。最近、自分のYouTubeでメイキングの動画を載せているんですが、それこそが自分のメインコンテンツで。
今、子ども向けにレゴのワークショップを開いてるんですが、そこでもつくるプロセスを大事にしてほしいと思っています。完成品をつくることが目的なら、説明書を渡してつくってもらえばいいんですよ。そうではなくて、つくっている途中のパーツの使い方のコツで合ったり、どうしてこういう組み方をしているのかを説明したりするのが楽しいですね。試行錯誤を楽しんでほしい気持ちもあります。
――おぉ〜、小さい頃からスクラップアンドビルドを繰り返してきた三井さんだからこそ、説得力がありますね! 三井さんにとって、レゴブロックの魅力ってどのような点だと思いますか!?
2つあると思っています。1つは、ものづくりをするためのツールとしての側面。ブロックを1つずらすだけで出来栄えが変わるので、試行錯誤しやすいんですよ。元に戻すのも簡単ですし。たとえば粘土だと、そう簡単にはいかないじゃないですか。試行錯誤しやすいものづくり、という点ですね。
もう1つは、コミュニケーションツールとしての側面です。自分が学生時代にホームページをつくって大人の人とコミュニケーションを取っていたように、年齢・国に関係なく、新しい交流が生まれるところが魅力的です。少なくとも、自分の人生はレゴブロックによって、豊かになりました。
――最後に、レゴ認定プロビルダーとして、これからしたいことを教えてください!
いろいろな人に、レゴブロックのおもしろさを伝えていくことができれば。そのためにも、いろいろな人の目に届くようなおもしろい作品をつくっていきたいと思っています。大きい作品をつくれば、ある程度は人の目につくんですが、それだけですと、人のやっていることの焼き増しになってしまうので、新しいアプローチをしていきたいです。それこそ試行錯誤をして、新しい形で、自分でつくっているものをお見せしていければと思います。
■レゴ社ホームページ
https://www.lego.com/ja-jp