コロコロオンラインのライターたちが選ぶホラーゲームレビュー特集。第5夜は、Nintendo Switch、Steam(PC)、スマートフォンにて配信されているホラーアドベンチャー『返校 -Detention-』を紹介する。なお、本記事でプレイしたのはNintendo Switch版となる。
戒厳令下の台湾、その時代の中で起こってしまった悲劇とは……
『返校 -Detention-』は、2017年に発売された1960年代の台湾を舞台にしたホラーアドベンチャーだ。
戒厳令時代の情勢を描いた謎めくストーリーや、台湾の伝統文化要素などを再現した演出やアートは多くのプレイヤーを惹きつけ大ヒットを記録。ほかにも、ネットフリックスでのドラマ化や、実写映画の公開などメディアミックス展開も行われている人気作品である。
また映画版は今年7月から日本でも公開されている。
あぁ、できたら自分も観に行きたいなぁ……。
・映画『返校 言葉が消えた日』オフィシャルサイト
・ネットフリックス『返校』作品ページ
物語はとある授業のワンシーンからはじまる。授業中につい居眠りをしてしまった男子生徒・ウェイ(名前:ウェイ・チャンティン)は、生徒が下校し終わった後に目を覚ます。
どうやら台風警報で授業が打ち切りとなり、自分だけが学校に残っていたようだ。
そのまま帰ろうと校内を歩いていると、講堂で眠っていた女の子・レイ(名前:ファン・レイシン)と出会う。なぜレイがあんなところにいたのかは分からないのだが、とりあえずふたりで帰ることに。
しかし、帰り道に続く橋は崩壊しており、氾濫した川は血のような色になっていた……
このままでは家に帰れないので、ふたりは学校で夜を明かすことに。校内なら何か貯蓄はあるだろうとそれぞれ手分けして行動するのだが……ここからはとある事情により、レイをメインに操作して物語は進んでいく。
戻ってきた校内は、謎の血痕やお札がびっしり貼られた壁、さらには謎の怪異が徘徊するなど不気味な光景が広がっていた。
もちろんレイには対抗する手段が無く、息を殺してその場でやり過ごすしかない。悪夢のような恐怖が迫るなか、はたしてこの学校から脱出できるのだろうか……
ゲーム内では混沌と化した校内を歩き回り、校長室や音楽室、講堂など日本の学校でもよくあるロケーションを探索していく。
横スクロールのステージを移動しつつ、アイテムを使用して謎を解いたり、調査できる部分はポイント・アンド・クリック形式で調べるなど『クロックタワー』を思い出すゲーム性だ。
謎解きアイテムの使い方も、単に仕掛けの解除のためだけに存在しているのではなく、ストーリーの描写に合わせた理由付けがされていて面白い。ただ今からプレイする人は、少し難易度の高いポイントが2~3ヵ所あったので、重要そうな部分はスクリーンショット撮影をしておくといいかもしれない。
イラスト調のグラフィックも本作と非常にマッチしており、まるで異界に浸食されているようなジメ~っとした恐怖感がたまらない。プレイヤーを怖がらせる演出も「もう見たよそれ……」というような単調なものではなく、画面と音響の表現や怪奇現象、不気味な小道具などあらゆる方向からこのゲームを楽しませてくれるのだ。
また作中では、かつて「白色テロ」と呼ばれていた政治的弾圧が行われており、学校生活にまでその波が押し寄せてきていたことが、校内に落ちているメモから浮かび上がってくる。
本作はこのような時代背景、怪異系ホラー、そしてあとに語られるレイ自身の物語といった3つの要素で構成され、最初は謎に包まれていたストーリーも「ああ、あの時のはそういうことだったのか……」と徐々に明かされていき、真相が気になってしまい目が離せなくなる奥深さがある。
一見むずかしそうに思えてしまう『返校 -Detention-』だが、ホラー演出と学生ドラマを通して台湾の歴史を体験させる作品づくりは、どれも非常に噛み合っていて表現のユニークさに思わず唸ってしまう。明かされる真実も想像の余地が残されていて、ゲームクリアしたあとは誰かと語りたくなる1作だ。PVやストーリーの雰囲気に惹かれた人にはぜひオススメしたい。
作品概要
『返校 -Detention-』
■メーカー:PLAYISM
■開発:Red Candle Games
■配信日:2018年3月1日(Switch版)
■価格:1,296円(税込み)
※Nintendo Switch版の価格です。■ジャンル:アドベンチャー
■フォーマット:Nintendo Switch、Steam(PC)、スマートフォン
■CERO:D
■公式サイト
https://shop.redcandlegames.com/ja-JP/games/detention
(C)Red Candle Games Co.,LTD. 2015-2018. Licensed to and published by Coconuts Games Limited and Active Gaming Media Inc.