ドブフクロウのMtGブレイキングアカデミー vol.116 ~エッ……それって……負けられない戦い……ってコト!?~

By ドブフクロウ
みなさんこんにちは。MtGライターのドブフクロウです。

先週末の7月9日(金)には、紙のカードに先駆けてMagic OnlineとMTGアリーナで『フォーゴトン・レルム探訪』がリリースされました。みなさんの中にもすでにダンジョン探索をされたという方もいらっしゃるかもしれませんね。

▲《デミリッチ》
▲《アーチリッチ、アサーラック》

特に本セットで目玉であるこの2枚の神話レアは、主にモダン以下のフォーマットでの活躍に注目が集まっています。《デミリッチ》のようにコスト軽減能力を持ったカードは悪さをすることも多く、強力なインスタントやソーサリーが多い下の環境では猛威を振るいそうです。

また、《アーチリッチ、アサーラック》は《魔の魅惑》と組み合せることで即死コンボになります。レガシーやヴィンテージでしか実現できない組み合わせですが、たった2枚のカードだけで勝利することができる手軽なコンボとして注目されています。

▲《魔の魅惑》

これらのカードはカードパワーも高いため、スタンダードでも活躍してくれる可能性はありそうです。特に『エルドレインの王権』~『基本セット2021』までのセットがローテーションしてからの環境ではいろいろと活躍してくれるカードも多そうですね。

なお、MTGアリーナの日本語版カードではカードテキストの誤訳が複数確認されているので、これから遊ぶという方は注意が必要です。公式からも正誤表が公開されているので、事前に目を通しておくとよいでしょう。

さて、それでは今週も最新のスタンダードのデッキリストを見ていきたいと思います!

STANDARD CHALLENGE on July 12, 2021

先週末の日曜日、Magic Onlineで開催されたSTANDARD CHALLENGE。『フォーゴトン・レルム探訪​』発売後初となるトーナメントだったこともあり、前環境のデッキをそのまま持ち込んでいるプレイヤーも少なくなかったようですが、中には新カードを積極的に採用した意欲的なデッキも見られました。

中でも個人的に気になったのが、今回ご紹介するこちらの「白単天使」デッキです。なんとこのデッキには、マジックのルールを破壊する強烈なコンボが組み込まれているのです。一体どのようなコンボなのか?さっそく見ていきましょう!

白単天使(使用者:karatedom選手)
枚数 カード名(メインボード)
18 《冠雪の平地》
4 《不詳の安息地》
4 《命の恵みのアルセイド》
2 《ドラニスの判事》
4 《精鋭呪文縛り》
1 《軍団の天使》
4 《光輝王の野心家》
4 《正義の戦乙女》
3 《無私の救助犬》
1 《スカイクレイブの亡霊》
2 《スカイクレイブの僧侶》
4 《天界の語り部》
4 《若年の戦乙女》
4 《高貴なる行いの書》
1 《栄光の探索》
枚数 カード名(サイドボード)
2 《ドラニスの判事》
3 《軍団の天使》
2 《スカイクレイブの亡霊》
3 《悪斬の天使》
2 《黎明運びのクレリック》
3 《ポータブル・ホール》

前提として、マジックは勝敗という結果が存在するゲームです。しかし、もしも「あなたはこのゲームに敗北することができず、対戦相手はこのゲームに勝利することができない」という能力を持ったカードを使えるとしたら? このデッキに採用されている《高貴なる行いの書》は、天使クリーチャー1体にそんな理不尽な能力を付与するカードです。

▲《高貴なる行いの書》

この「あなたはこのゲームに敗北することができず、対戦相手はこのゲームに勝利することができない」という能力は、もともとマジックでは10年以上前から存在していた能力ではあります。初出は《白金の天使》というカードで、当時のプレイヤーはこの常識はずれの能力に度肝を抜かれたそうな(今となってはそこまで話題になりませんが)。なにせ《白金の天使》をコントロールし続けている限り、ライフがマイナスになろうとライブラリーが0枚になろうと毒カウンターを100個もらおうと《タッサの神託者》コンボを決められようと、どんなことがあってもゲームに敗北することはないのですから。

▲《白金の天使》

一見最強に見えるこのカード。しかし、実は4/4のアーティファクト・クリーチャーというのは意外と脆く、クリーチャー除去やアーティファクト破壊、火力呪文などなど、特別な対策をせずとも処理する手段は少なくありませんでした。オマケに本体が7マナと重いため、このクリーチャーがプレイされるころには対戦相手も何らかの除去や打ち消しなどを持っていることも多く、《白金の天使》自体をサポートしてあげるような構築にしないことにはなかなか場持ちしなかったのです。

しかし、このデッキの《高貴なる行いの書》は《白金の天使》とはいささか性質が異なります。このカードは”好きな天使クリーチャー”に半永続的に《白金の天使》能力を付与するというもので、たとえその能力を持ったカードがクリーチャーでなくなってしまった場合でも能力は維持されます。たとえば、《不詳の安息地》がその能力を得た場合でも。

▲《不詳の安息地》

《不詳の安息地》は土地カードですが、マナを支払うことでターン中すべてのクリーチャータイプを持った4/3のクリーチャーになることができます……つまり、天使でもあるということです。そしてターンを終えるときにはまた再び土地に戻ります。このとき、《高貴なる行いの書》で《不詳の安息地》に「悟りカウンター」を乗せておくと、「あなたはこのゲームに敗北することができず、対戦相手はこのゲームに勝利することができない」という能力を持った土地が爆誕することとなります。

さきほど《白金の天使》の弱点を述べましたが、《白金の天使》の場合は「アーティファクト」であり「クリーチャー」であるという非常に除去されやすいカードタイプを併せ持っていたのが弱点でした。しかしながら、土地カードはそうそうカンタンには破壊できません。実際、現環境でプレイアブルな土地破壊カードはせいぜいが《廃墟の地》程度しかなく、それも採用されていないデッキの方が圧倒的多数です。

▲《栄光の探索》

《高貴なる行いの書》は伝説のパーマネント、《不詳の安息地》は氷雪パーマネントなため、いずれも《栄光の探索》でサーチすることができるというのもポイントです。ただし、サーチ呪文はテンポを失う恐れがあるためこのデッキでは採用枚数は抑えられており、代わりに基本的には白単アグロデッキとして立ち回ることができるように調整されているようです。

コンボに必要なカード枚数が2枚のみと少ないので、《不詳の安息地》+《高貴なる行いの書》さえ採用されていればコントロールデッキのような構成にすることもできそうです。まだ環境初期ですが、こうした工夫あふれるデッキが出てきたのは非常に興味深いですね。来週以降も新カードを使ったデッキが出てくるのか?今から楽しみです!

ライター:ドブフクロウ
青春時代のほぼ全てをテキストサイトやゲーム系サイトを徘徊することに費やしていた根暗ライター。人間としての軽薄さに定評があり、親しい間柄では「空っぽ」というあだ名で呼ばれることもある。 MtGプレイヤーとしての腕前は自他ともに認めるヘッポコだが、青春時代に (いろいろなものを犠牲にして) 培ったMtG知識量は他の追随を許さない。

 

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