【ロックマン エグゼ20周年企画】まんが『ロックマン エグゼ』の作者・鷹岬諒先生へインタビュー! 連載当時の思い出を振り返る

2021年3月21日よりシリーズ20周年を迎えるカプコンの『ロックマン エグゼ』シリーズ。

第1作目となるゲームボーイアドバンス用ソフト『バトルネットワーク ロックマン エグゼ』(以下『ロックマン エグゼ』)は2001年3月21日に発売され、ネットワーク技術AIを取り入れた近未来的な世界観や、アクション×カードゲーム要素を融合させた戦略性のあるゲームシステム光熱斗ロックマンをはじめとした魅力あふれるキャラクターたちは「新世代のロックマン」として大注目を集めた。

そのほか、まんがやアニメをはじめとしたメディアミックス展開や、15年の時を経て「浅草花やしき」とのコラボなど、今も多くのファンに愛されている。

今回コロコロオンラインでは、本シリーズの20周年を記念して特別企画を実施!!

本記事では、月刊コロコロコミックにて連載されていたまんが『ロックマン エグゼ』の作者である、鷹岬諒先生への特別インタビューをお届け!! 20周年の想いや連載当時の思い出を聞いてみたぞ!

※インタビューは3月中旬にリモート取材で行われました。

プロフィール概要

鷹岬 諒(たかみさき りょう)

2001年から2006年のあいだ、月刊コロコロコミックにてまんが『ロックマン エグゼ』を連載。

ほか代表作は『劇場版ポケットモンスター キミにきめた!』、『ももいろ討鬼伝 モモタロウくん』など。
過去に、読み切りまんが『ロックマン11 運命の歯車!!』などほかシリーズのロックマン作品も執筆している。

『ロックマン エグゼ』を連載することになったきっかけ

──本日はよろしくお願いいたします! まずはじめの質問ですが、今年で『ロックマンエグゼ』の誕生から20周年となりますが、今の率直なご感想をお聞かせください!

鷹岬先生:や~けっこう実感が湧かないですね。 連載が終わったあともずっと熱斗くんやロックマンが自分の中に居続けているので、ずっといっしょにいる家族が成人式を迎えた気分です。この機会に昔のファンの人が、『ロックマン エグゼ』を思い出してくれたり、もういちど注目してくれたら嬉しいかなと思っています。

──家族だからこそ「久しぶり!」という感覚もあまりないみたいな。

鷹岬先生:ずっとそばにいるっていう感じなんですよね。今も復刊ドットコムさんで描かせていただいている最中なんですけども、もう全然違和感なくキャラクターたちが動いてくれるような……そんなイメージです。

──もう20年も経ったのかあ……って思いますね。今回「当時の思い出を振り返る」ということでまんがの始まりに関してお聞きしたいのですが、鷹岬先生が連載を担当されることになった経緯について教えてください!

鷹岬先生:あの頃はコロコロGOTTA(※1)に持ち込みをしていて、現コロコロ編集長である秋本さんに作品を見てもらっていました。

そのあたりで『ゴジラVSメカギラス』のまんがのお仕事をさせていただいているときに、「ロックマンとか描けるかな?」とお誘いがありまして、その時はまだ「コンテとかは決まってないから」ぐらいの話しか聞いていませんでしたね。

秋ぐらいになったら「カプコンさんの本社に行くからいっしょに来てください」みたいな感じで、いつのまにか本決まりになっていました。どういう経緯で決まったのかは、じつは僕自身もハッキリと知らないんです。

※1……当時発売されていた月刊コロコロコミックの兄弟雑誌

──なるほど……コミックスの著者紹介にも、別冊コロコロコミックにて『ゴジラVSメカギラス』を担当されていた記載がありますね。

鷹岬先生:そうですね。あの作品が初めてのコロコロのお仕事だったんですけども。『ゴジラVSメカギラス』の反響がそこそこ良かったので、そのつながりで声がかかったのかなぁ……とかも考えたりしたんですが、当時コロコロ編集長だった佐上さんに「あれっ?ゴジラってやったっけ?」と言われて「えっ!? 違うの!?」って思いました(笑)。

──謎ですね(笑)。ちなみにコロコロGOTTAでは何か掲載されていたのでしょうか?

鷹岬先生:車まんがを1本やっていました。当時のコロコロコミックは新人賞への募集とかはあったんですけど、持ち込み募集のページが見当たらなくて。コロコロGOTTAには持ち込み募集があったのでそちらのほうに……みたいな感じですね。

それより前は新声社さんの「コミックゲーメスト」にて、『ザ・キング・オブ・ファイターズ』のまんが連載を担当していました、コロコロの編集さんたちは、私がゲームまんがを描いていたことを知っていたので、「彼なら描けそうですね」みたいなそういうつながりが『ロックマン エグゼ』連載のきっかけになったのかもしれません。

▲2001年月刊コロコロコミック2月号より

まんがオリジナルストーリーの理由とは?

──続きまして、まんが『ロックマンエグゼ』では、サイトスタイルやソウルユニゾンなど原作の要素をなぞりつつ、まんがオリジナルのストーリーが展開されていますが、この構成は初めから決まっていたのでしょうか?

鷹岬先生:まんがを始めるにあたってカプコンのスタッフさんから言われていたことなんですが、「ゲームをそのままなぞっても面白くないので、なるべくまんがオリジナルの要素を入れてほしい」というお願いがありました。

ほかにも「ゲームを既にプレイしてる人も楽しめるように。そして、ゲームを知らない人もロックマンの世界に入り込めるような作品づくりをしてほしい」と、当時の担当さんから言われたのを覚えています。

ゲームとまったく違うことをやってしまうと「あれ?ゲームと全然違う……」と読者は感じてしまうので、作品の設定を活かしつつオリジナルのストーリー展開を広げていきました。

──カプコンさんからは、お話はコロコロ側にお任せしますという感じだったんでしょうか?

鷹岬先生:「コロコロさん主導で話を進めても大丈夫ですよ」みたいな話はありましたね。カプコンさんも、こちらがどんな料理をしてくれるのか楽しみにされている部分もあったのではないでしょうか。メーカーさんによりますが、カプコンさんとは割と自由にやらせてもらっていました。

▲まんがでしか見られないオペレーターとナビのドラマも魅力のひとつ!

 

──なるほど。オリジナル展開の裏側にはそういうやり取りが……ちなみにカプコンさんとは事前にキャラクター設定の共有などはあったのでしょうか?

鷹岬先生:資料をいただくのは一般公開の少し前あたりでしたね。そこからストーリーなどを考えていって、ゲームが発売したら速攻でプレイして、大きな矛盾がありそうな部分はその都度修正していく……という流れですね。

ゲームとの違いですが、まんがの熱斗くんはかなりやんちゃでしたね(笑)。ゲームやアニメだと割と良い子なんですけど、当時の編集部では「面白いから熱斗くんはもう少しやんちゃにしよう」みたいな話があったのは覚えてます。

──たしかに今思うと熱斗くんはかなりムチャをしていたイメージが(笑)。

鷹岬先生:そうなんです(笑)。

▲貸し切り新幹線をジャックしてしまうことも。ムチャすぎる!

──登場するキャラクターの基準は鷹岬先生が選んだのでしょうか? それともカプコンさんからの指定でしょうか?

鷹岬先生:それがあまりなかったんですよね。ただ、シリーズが進むにつれていろんなキャラクターが出てくるんですけど、やっぱり全部出すのは難しいじゃないですか。

なので、カプコンさんに「次のシリーズが始まりますが、どのキャラクターを出したほうがいいですか?」って聞いたりしたんですけど、「そうですねあえて言うならこの女の子キャラを……」っていう指定はありました。でもコロコロは元気な男の子キャラクターをプッシュしているので、どうやって描こうかなと(笑)。

──難しいですね(笑)。質問が変わりますが、当時の読者からの反応で印象的だったことはありますか?

鷹岬先生:いろいろありますが……当時のサイン会で、読者であるお子さんが重そうな病気で来れなくて、その子のお母さんがいらっしゃったことがあったんですね。「入院している子どもを励ましたくて」と……。

その子のことは詳しくは知らないんですが、いろんなところで私の連載を楽しみにしている読者たちを元気づけられるようなまんがを届けたいと思いました。

人間とナビとの関係性、カッコいいキャラクターたちなどまんがの魅力に迫る!!

──今回の企画を始めるにあたって本作を改めて拝見したのですが、主人公である熱斗くんとロックマンだけでなく、キャラクター同士の関係性に注目した友情描写がこの作品の魅力だと感じました。鷹岬先生はストーリーを考える上でどのようなことを意識されていたのでしょうか?

鷹岬先生:友情の部分は最初からかなり意識していましたね! 『ロックマン』自体はいままではロボットだったじゃないですか。いちおう「個」として存在しているんですけど、『ロックマン エグゼ』の場合は「オペレーター」と「ナビ」という形でペアになっているヒーロー像なので、キャラクターの関係性や友情といった部分は、いままでのロックマンと違うものだと思っていたので、そこはとにかく強調してメインテーマとして考えていました。

──彼らはふたりでひとりですからね。

鷹岬先生:ただ、オペレーターとナビは「絆」という形で結ばれているにもかかわらず、それぞれ現実世界電脳世界という決定的な壁があるんですね。それがあるからこそ、演出面ではその関係性を強めるような作品づくりをしていました。

──キャラクター面だと、大人っぽい雰囲気の「ロックマンサイトスタイル」はまんがの魅力のひとつだと思うのですが、当時の反応はどんな感じでしたか?

鷹岬先生:やっぱり「カッコいい!」とか、フォルテと並んで評判が良かったのは覚えています。

自分の子どものころを思うと、子どもの時は等身大のキャラクターがいちばん感情移入しやすいんですけど、仮面ライダーみたいにカッコよくて大人っぽいものにも憧れがあったんですよね。そういった部分がサイトスタイルなどに表れていると思います。

ただ、あまりにも大人すぎるとピンとこないかもしれないので、キャラクターのさじ加減に気を付けました。

──子どもも憧れるキャラクターとして意識されていたんですね。

鷹岬先生:サイトスタイルがああいったキャラクターなのは、「変身」というか「いつものロックマンと違うんだ」、というインパクトのある演出として分かりやすく魅せるために描いています。

ほかにもフォルテに関しては、自分がカッコいいと思う要素を詰め込んでいましたね!

──ありがとうございます。続いての質問ですが、鷹岬先生が作品内の中で印象に残っているエピソードがあればぜひ教えてください!

鷹岬先生:これは悩んでしまうので難しいですね……(笑)。何巻の何話で~という話であれば、フォルテの番外編はかなり好きなお話ですね。

──フォルテの過去について描かれたエピソードですね。

鷹岬先生:はい。あのエピソードはもうちょっとページ数が欲しかったんですけど……限られた中で上手く描けたかなと今も思っています。彼は孤独なキャラクターなので……キャラクター像も仲のいい熱斗くんたちとは違い、全てにおいて対比させるような形で描いていました。

▲完全自立型ネットナビのフォルテ。無差別暴走事故の罪を着せられてしまい、人間を激しく憎むようになる。

──ありがとうございます。今の質問に合わせてですが、鷹岬先生のお気に入りのキャラクターをぜひ教えていただけないでしょうか? 好きなコンビでも大丈夫です!

鷹岬先生:うーんそうですね……なんといっても熱斗くんとロックマンの主人公コンビはもちろん、フォルテはお気に入りですね!

あとは炎山、ブルース、セレナード、サーチマンも! サーチマンは印象的なエピソードがありまして、初登場の時に女性ファンからの反響が凄かったのを覚えています。

──えっ! そうだったんですか!?

鷹岬先生:ええ。私もお気に入りなのですが、同じ時期にやっていたアニメでも出番のあるキャラクターだったので、かなり人気があったんじゃないかなと思います。

▲軍事用ネットナビのサーチマン。はじめは敵対していたが、誤解が解けてからはロックマンの戦いをサポートした。

今だからこそ明かせる連載時のエピソード!!

──続いての質問ですが、今だからこそ明かせる連載時のエピソードなどはありますか? 考えていたけど都合により没になってしまったとか…

鷹岬先生:ありますね。コミックス8巻あたりで「ロックマンDS(ダークソウル)」と戦うエピソードがあるじゃないですか。あの戦いはソウル・ユニゾンのブルースソウルなどが登場するんですが、最初は「フォルテと合体して敵を倒す!」みたいな展開を考えていました。

▲ロックマンそっくりの闇のナビ・ロックマンDS(ダークソウル)

──フォルテと合体……!?

鷹岬先生:はい。ロックマンとフォルテの力がひとつになり、ソウル・ユニゾン「フォルテソウル」の姿でロックマンDSに勝利する……という展開に合わせてこれまでのストーリーを描いてきたんですが、あとにアニメ映画で「フォルテ・クロス・ロックマン」の発表が控えていたんです。なので、「その展開はちょっと待ってください」となりまして。「ストーリーどうしよう!」って思いました(笑)。

──似たような展開が被ってしまったと。

鷹岬先生:フォルテと力を合わせるという展開は、同時にカプコンさんも考えていたんだなぁと……。

ということもあり、そのあとのネビュラグレイとの戦いはフォルテ・クロス・ロックマンで倒す展開を考えていたのですが、今度は編集さんから「『ロックマン エグゼ6』が始動するので、獣化(ビーストアウト)ロックマンを描いてください」と言われました(笑)。

ゲームのコミカライズは場合によって求められているものが違うので、大変だなぁと思いつつも今となっては印象深い思い出ですね。

▲ロックマンとフォルテが融合したフォルテ・クロス・ロックマン

──獣化ロックマンでネビュラグレイを倒したのはそういった理由だったんですね……!

鷹岬先生:いろんな要素が絡み合って物語が進行していくところも、ゲームコミカライズの面白さだと思います。

▲電脳獣グレイガの力を取り込んだ獣化(ビーストアウト)ロックマン

──ちなみに「あの部分描いてみたかったな~」と思うエピソードはありますか?

鷹岬先生:それはいっぱいありますね! 当時描けなかったものもあれば、連載が終わった後にあのエピソードを描いてみたいなと思ったり。

4~5年ほど前に復刊ドットコムさんで新装版コミックスを出す機会があったので、その時に描き下ろしエピソードを描かせていただきました。

描きたいなぁと思っているものはたくさんありますが、新装版のようにいつか描けるチャンスはあるんじゃないかなと思っています。いま描いている新作エピソードも、ずっと前から描きたいなと考えていたものですね。

──20周年記念のトレジャーBOXに付属するまんがでしょうか?

鷹岬先生:はい。記念商品なので、いつも以上に気合を入れて執筆しています。ぜひ楽しみにしててください!

・復刊ドットコム『ロックマンエグゼ トレジャーBOX -祝! 20周年の玉手箱-』商品ページ

──ありがとうございます。私も発売を楽しみにしております! 続きまして、最後の質問ですが、当時のコロコロ読者や『ロックマン エグゼ』のファンに向けてメッセージをお願いします。

鷹岬先生:いままでの話とつながりますが、現在もそのような感じで新作を描かせてもらっていて、これからも何らかの形で『ロックマン エグゼ』に関わる機会があるんじゃないかなと思っています。

根拠はありませんが、いつも応援してくれている皆さんへ、いつかもう一度、ゲームの熱斗くんとロックマンに会える日もあるかと。私もその時を楽しみにして待っています!

──ありがとうございました!!

 


 

以上、鷹岬先生への記念インタビューをお届け!!

現在、復刊ドットコムではまんが『ロックマン エグゼ』を再編集した『新装版 ロックマン エグゼ』が発売中だ!

ほかにも『ロックマン エグゼ』20周年を記念して、復刻版『カプコンオフィシャル設定資料集 ロックマンエグゼのすべて』、描き下ろしイラスト複製原画や、鷹岬先生による描き下ろしまんがなどが付属した『ロックマンエグゼ トレジャーBOX -祝! 20周年の玉手箱-』が予約受付中!! 

描き下ろしまんがの内容はなんと……「ブルースの家出」!? 限定商品となっているため、ぜひお見逃しなく!!

※『ロックマンエグゼ トレジャーBOX -祝! 20周年の玉手箱-』にはコミック『ロックマン エグゼ』各巻は付属しておりません。

関連リンク
・復刊ドットコム『新装版 ロックマンエグゼ』全8巻 商品ページ
・復刊ドットコム『ロックマンエグゼ トレジャーBOX -祝! 20周年の玉手箱-』商品ページ

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(c)Ryo Takamisaki

 

 

 

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