ポケモン映画最新作『劇場版ポケットモンスター ココ』(以下、『ココ』)が、12月25日(金)にいよいよ公開されるぞ!
今回、映画の公開を記念して、コロコロオンラインではスタッフ・キャストインタビューを実施!!
本記事では、本作の監督を務める矢嶋哲生氏へのインタビュー内容をお届け! 試写会で本編を鑑賞した記者が『ココ』の制作秘話や、これから作品を観る人へのメッセージなど、本作の魅力をたっぷりと聞いてきたぞ!
プロフィール概要
矢嶋哲生(やじま てつお)
『劇場版ポケットモンスター ココ』の監督を務める。過去にテレビアニメ『ポケットモンスター XY』、映画『劇場版ポケットモンスター みんなの物語』などの監督も担当。
監督自身の体験談から生まれた『劇場版ポケットモンスター ココ』
──本日はよろしくお願いいたします! まず初めの質問ですが、本作は「親子」、「父と子」というテーマが採用されていると思うのですが、今回のテーマが採用された経緯をお聞かせください
矢嶋哲生氏(以下、矢嶋):『劇場版ポケットモンスター みんなの物語』(※1)(以下、『みんなの物語』)が終わってすぐに「なにかやりたいのある?」って聞かれまして、「まだ考えさせてください」って言ったんですけど、「自分が次に映画を作るときに何が描けるんだろう……?」と考えました。そこで、個人的な話ですが僕にはいま息子と娘がいまして、当時3歳くらいかな? その子たちがいることによって僕の人生観がすごく変わったんです、それを『ポケモン』に落とし込んだ時に、何か良い化学反応が起きるんじゃないかなと思って、提案させていただいたって感じですね。
──まさに育児を経験されつつあるときだったんですね。今回の作品ですが、「父と子」というテーマに基づいて、ココやザルードの存在や関係性など、非常に挑戦的な試みだと感じました。その点を踏まえて、工夫した部分だったり苦労したエピソードなどはありますか?
矢嶋:大変だった部分はそうですね……そんなに苦労したかな? ザルードとココ自体は僕の体験談から取り入れていったので……。ザルードを描くのは結構簡単でしたね。
──ザルードは父親目線で作られたのでしょうか?
矢嶋:はい。僕の体験談を結構盛り込んでいきました。ココに関しても自身の子供時代を思い描いて作っていったので、そこまで大変だったイメージはあんまり無いですね。
──本作を見ていて、私にも1歳半になる息子がいるので思いっきり刺さりましたね……! ザルードからは親として、ココ目線だと父親のことを考えてしまうというか。こういったキャラクターの関係性はどうやって作っていったのでしょうか?
矢嶋:まず、そもそも「家族」を扱うときにいろんな形があるじゃないですか。「どうして家族になったのか」、「この家族がどういう状態なのか」とかいろいろあると思うんですけど、親子の本質みたいなものはそこに一切関係がないんじゃないかと思っているんですよね。
例えば、妻ともよく話しますが「自分の子どもが病院で取り違いがあったときにどうする?」って話があったときに、やっぱりその子が好きなのであって、そこに血縁関係じゃない何かがあるよねと。そして、親子を描くうえで「形でもない経緯でもない」となったときに、この想いをポケモンと人間で描けたら素敵だよね、というところから探っていった……みたいな感じですね!
──たしかに異種族の親子関係が見事に描かれていて、いまお話を聞いてすごく納得しました……! 『ココ』は、矢嶋監督が担当された『みんなの物語』の制作から2年半ほどありましたが、担当作品を経て本作に活きた点などはありますか?
矢嶋:活きた点ですか! そうですね……『みんなの物語』の手ごたえや評判を聞いていたので、「2作目になって矢嶋やっちまったな」って言われたくないなと思っていました。皆さんに満足してもらえるのがいちばんだと思うので、『みんなの物語』を超えようと考えていましたね。
※1……2018年に公開されたポケモン映画。矢嶋哲生氏が映画で初監督を務めた。
ザルードの育児描写に込められた想いとは
──続きまして本作の内容についての質問です。冒頭のシーンですがココとザルードの出会いから物語が進み、音楽とともにザルードが子育てに苦心する描写から始まっていくのを見て、子育ての大変さがしっかりと表現されていてとても印象に残りました! 矢嶋監督があのシーンに込めた想いなどあればぜひお聞かせください。
矢嶋:いや~、本当にあのシーンは子どもがいるとわかると思うんですけど、話でよく聞きますよね。「2時間ごとに起きるから寝られない」みたいな。あれ嘘だと思いきや本当に寝られないんですよね(笑)。
子どもってやっぱり愛が必要なんだなって思ったり、「無理だ~」ってなるときもありますね。ザルードの場合は家を燃やされてましたけど、僕はベッドで寝て起きたら、ベッド中がふりかけの「のりたま」だらけだったんですよ。のりたまがザーッとリビングまで続いていて……(笑)。
──「のりたまの道が出来てる!?」みたいな。
矢嶋:はい(笑)。そういう子どもに「やられた~!」みたいな描写を盛り込んでいきました。音楽もとてもよかったので、すごくノリノリで大変な記録をギュッと詰め込んで観せられたかなと。
──あそこは良いシーンでしたね(笑)。改めてお聞きしたいのですが、「父と子」という部分を描きながら、矢嶋監督が本作でいちばん伝えたかったテーマや、それがいちばん現れているシーンを教えてください!
矢嶋:先ほどにも少し言っていましたが、血縁だけじゃない家族の形、あなたの親だからこそ見れた景色、「あなただから意味がある」みたいなものが伝わればいいなと思っています。ネタバレになるので詳しくは言えませんが、ココが活躍するとあるシーンは、ザルードに育てられたココにしかできない、初めて垣根を超えたところなので、いちばん気合いを入れて臨んだシーンになっています!
魅力的なゲスト声優の収録エピソード
──今回、魅力的なゲスト声優の方々が出演されていましたが、中村勘九郎さんと上白石萌歌さんの演技に関しまして、矢嶋監督の感想をお聞かせください!
矢嶋:勘九郎さんは、演じてもらったそばから「ザルードだ……!」って思いました! なんでしょう……最初のアニメーションを付ける段階から、荒っぽい江戸っ子みたいなイメージだったんですけど、勘九郎さんの声を当ててますますそれが顕著に出てきたというか、キャラに乗せていただいたと思うので、聞いてて本当にザルードにピッタリだと思いましたね!
──親から子に受け継がれていく……という歌舞伎にちなんだ縁を見ていて感じましたね。上白石さんのほうはいかがだったでしょうか?
矢嶋:上白石さんは声がすごく純粋で素敵だったので、ココにピッタリだなと思ってお願いしました。最初は苦労されていたんですけど、それが時間を追うごとにどんどん良くなっていって……最後のほうは役にばっちりハマっていました!
岡崎体育氏とともに作り上げた『劇場版ポケットモンスター ココ』の音楽
──次に音楽に関しての質問ですが、今回、岡崎体育さんが音楽プロデュースを務めたことが話題になっていますが、監督とどういった打ち合わせをされて本作の音楽が出来上がったのでしょうか?
矢嶋:そうですね。シナリオのプロット段階で、お願いしたいシーンの曲を発注しました。コロコロコミックさんの岡崎体育さんへのインタビューも見せていただいたんですけど、岡崎さんが本当に作品を大事にしてくれていて、すごく寄り添ってくれていたのはひしひしと感じました!
──ありがとうございます……! かなり早い段階から進められていたんですね。音楽も合わさった最終形の本作を見て、改めて音楽についてどう感じられましたか?
矢嶋:作っている最中もめちゃくちゃ大変で、この曲をいかに最大限引き出せるかみたいな思いがありました。最高の曲がメチャクチャいいところで流れるので、カット割りのタイミングとテンポの調整もいろいろやって、「これだ!」って決まるまでが大変でしたね……!
──私もギリギリまで泣くのをこらえていましたが、思わず泣いてしまいました……!
矢嶋:そのシーンは歌もじ~んとくるので、サビでみんなが泣き崩れてくれたかなって思いながら、それに倍掛けできる映像を作りました!
親子へ送る本作のメッセージ
──最後になりますが、本作を子どもたちにどのような気持ちで観てほしいですか?
矢嶋:そうですね。子どもたちには、単純にピカチュウがすごいアクションをしたりしますし、楽しめるところはたくさんあると思うんですけど、10年後とか20年後にもう1回観てもらえるといいのかなって思います。頭の片隅に、キミのお父さんたちもこんな思いなんだよっていうのを、思ってもらえたらこの作品は成功なのかなと。
──親になったときにまた観てほしいみたいな。
矢嶋:はい! 見え方は変わってくるのかなと。ザルードはああ思っていたけど、お父さんはどんな思いなんだろうなって感じてくれたりするといいですね。
──ありがとうございます。では、お子さんと一緒に来る親御さんにはどのような気持ちで観てほしいですか?
矢嶋:そうですね……なんだろう、例えば年齢が上がってくると、子どもに「愛してるよ」とか「好きだよ」とか言いづらいじゃないですか。恥ずかしいみたいなところもあって。今はガンガン言っちゃってますけど!(笑) 本作を観たときに今も同じ気持ちなんだよという想いが、裏メッセージというか親子をつなぐ何かになると願ってこの映画を作ったので、そう感じていただけるといいなと思っています。
──ありがとうございました!
映画最新作『劇場版ポケットモンスター ココ』は、2020年12月25日(金)に公開だ! ココとザルード、ちょっと変わった親子の物語をぜひ劇場で!!
※映画館に足を運ぶ際は、新型コロナウイルスをはじめとする感染症の予防と拡散防止のため、マスクを着用し、アルコール消毒を忘れないようにしよう!!
作品概要
劇場版ポケットモンスター ココ
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