パイオニア新妄想紀行 vol.11 ~ゼンディカーの夜明けで遊ぼう~

3. Sanity Check

 『ゼンディカーの夜明け』において青というカラーリングに割り当てられたコンセプトとして、対戦相手のライブラリーを削るというものがある。
 

▲《遺跡ガニ》

 《遺跡ガニ》に代表されるように、『ゼンディカーの夜明け』は自分のライブラリーこそ削れないものの、対戦相手のライブラリーに限ればかなり効率よく削れるカードが久しぶりに数多く収録されたセットでもあった。
 
 これを生かし、前回とは違って今度こそ対戦相手のライブラリーを削りきる正統派ライブラリーアウトが組めないものか。そう考えたのはまたしても実に自然な成り行きと言えるだろう。
 
 だが、一つ問題があった。
 
 たとえ『ゼンディカーの夜明け』の新カードの力をもってしても、対戦相手のライブラリーを削りきれる算段が一向につかなかったのである。
 
 モダンにおいてすら、ライブラリーアウトというコンセプトが成立しているのは《書庫の罠》という0マナ13枚削りと《催眠の宝珠》という恒久的削り置き物のカードパワーに大きく依存している。ならばそれらがないパイオニアにおいてライブラリーアウトの成立を望むべくもない。
 
 やはり無謀だったのか……カードパワーという身も蓋もない壁にぶつかり、私は諦めかけていた。
 
 しかし、そこで気が付いたのである。
 

▲《正気減らし》
▲《荒れ狂う騒音》

 《正気減らし》を貼ってから《荒れ狂う騒音》をキッカーで唱えれば勝つのでは???🤔🤔🤔
 
 そう、何も《遺跡ガニ》などでチマチマ削る必要はない。2枚コンボで対戦相手のライブラリーを墓地へと根こそぎダンクシュートしてしまえばいいのだ。
 
 こうしてできあがったのがこちらの「Sanity Check」だ!
 
『Sanity Check』
 

枚数 カード名
4 《島》
1 《沼》
4 《湿った墓》
3 《寓話の小道》
3 《異臭の池》
4 《清水の小道》
1 《水没した地下墓地》
1 《ヴァントレス城》
1 《ロークスワイン城》
2 《マキンディの玉座》
4 《ヴリンの神童、ジェイス》
4 《選択》
4 《思考囲い》
4 《血の長の渇き》
4 《荒れ狂う騒音》
1 《取り除き》
1 《乱動への突入》
4 《神秘の論争》
1 《中和》
4 《時を越えた探索》
4 《正気減らし》
1 《覆いを割く者、ナーセット》

 

 
2枚コンボを軸に、除去や手札破壊といったリソース交換と軽量ドローで固めた構成……これこそ現代に蘇った《真実を覆すもの》コンボに違いない。
 
 ……と、思考の果てに考えついたアイデアゆえにすっかりそう思い込んでしまっていた。
 
 だが。
 

▲《心の傷跡》

 パイオニアのカードプールに既に《心の傷跡》があるじゃねーか!!!
 
 一応こっちは「切り下げ」なので相手のライブラリーが奇数のときに打つと1枚残ってしまうという弱点はあるのだが、残るかどうかわからない1枚のために常に1マナ余分に払うというのは本末転倒が過ぎるだろう。
 
 残念ながら、正気が足りてないのは私の方だったようである。
 

4. SCS

 モダンはもちろん、パイオニア環境にも大きな影響を与えた「モードを持つ両面カード」だが、「土地なのにデッキ内で土地として扱われない」という他にも、また別の機能があるのをご存知だろうか。
 

▲《アガディームの覚醒》
▲《髑髏砕きの一撃》

 それは、自らのライフを能動的に3点支払える土地であるということだ。
 
 すなわち。
 

▲《スカイクレイブの災い魔》
▲《ティムールの激闘》

  《スカイクレイブの災い魔》に《ティムールの激闘》を打てば実質モダンの《死の影》アグロでは???🤔🤔🤔
 
 こうしてできあがったのがこちらの「Super Crazy Scourge」だ!
 
『Super Crazy Scourge』
 

枚数 カード名(メインボード)
4 《血の墓所》
2 《踏み鳴らされる地》
2 《草むした墓》
4 《マナの合流点》
4 《アガディームの覚醒》
4 《髑髏砕きの一撃》
4 《僧院の速槍》
4 《損魂魔道士》
4 《ギトゥの溶岩走り》
4 《スカイクレイブの災い魔》
4 《ヴィーアシーノの紅蓮術師》
4 《乱撃斬》
4 《思考囲い》
4 《タイタンの力》
4 《魔術師の稲妻》
4 《ティムールの激闘》
枚数 カード名(サイドボード)
1 《夢の巣のルールス》(相棒)

 

 
ぶっちゃけアイデア一発勝負で特にデッキ構築に悩む部分がなかったため、取り立てて語る部分のないデッキではある。
 
 おまけに実際のところマナベースに多少の無理が生じているのは確かなので、まだ見ぬ赤黒の両面土地が出てからが本番かもしれない。
 

おまけ:タフネスシュート

 『ゼンディカーの夜明け』はマナベースの面でパイオニアに多大な影響を与えた一方で、クソデッキという観点では魅力的なカードがそこまで多いセットというわけでもなかった。
 
 しかしそんな中でも、一際可愛いマスコットキャラとして私の心を掴んで離さないカードがあったのである。
 

▲《怒り狂う島嶼、キャリクス》

 《怒り狂う島嶼、キャリクス》
 
 この「17」というあまりに雑なタフネスを生かす方法はないものか……。
 
 あった。
 

▲《突撃陣形》
▲《太陽の義士、ファートリ》

  《突撃陣形》《太陽の義士、ファートリ》を出したら4マナ17/17の怪物が爆誕するのでは???🤔🤔🤔
 
 こうしてできあがったのがこちらの「タフネスシュート」だ!
 
『タフネスシュート』
 

枚数 カード名
3 《島》
1 《森》
4 《繁殖池》
4 《マナの合流点》
4 《植物の聖域》
4 《ヤヴィマヤの沿岸》
4 《変わり谷》
4 《樹上の草食獣》
4 《シディシの信者》
4 《亢進する亀》
4 《神盾の海亀》
4 《マーフォークの秘守り》
4 《龍の眼の学者》
4 《砂の造形》
4 《突撃陣形》
4 《太陽の義士、ファートリ》

 

 
キャリクス抜けてんじゃねーか!!!
 
 それはそうである。マナ効率的にはいつでもチャンプブロックされうる4マナ17/17よりも、1マナ4/4や5/5を出して殴る方に軍配が上がるに決まっている。
 
 かくしてキャリクスくん救済計画は3秒で破綻したため、せめてここのスペースに掲載することで供養することにしたのであった。


 『ゼンディカーの夜明け』は両面カードをはじめとする様々な強力カードをもたらし、パイオニア環境に激震をもたらした。
 
 だが、他にもまだ見ぬクソデッキの種はたくさん眠っているはずである。
 
 それらを見つけ出し、環境に風穴を開ける可能性のある新デッキを皆さんの手でぜひ開発してもらいたい。
 
 ではまた次回!
 

ライター:まつがん フリーライター。クソデッキビルダー。 論理的な発想でカード同士にシナジーを見出すのだが、途中で飛躍して明後日の方向に行くことを得意とする。 オリジナルデッキでメタゲームに風穴を開けるべく日夜チャレンジを続けている(が、上記のような理由で大体失敗する)。

 

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