ホラー特集の思い出
今回はマジメに書く。
いや、いつも不真面目ってわけじゃないんだけど、通常比1.5倍くらいマジメにつづらせていただく。
マジメに……怖い話を書く!!w ナゼならいま、コロコロオンライン上でホラーゲーム特集をやっているから!!
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「夏なので、ホラーゲームの特集をやりましょうよ!」
と提案したのは何を隠そう俺なのだが、これにはもちろん、深い理由がある。
それはこのワタクシが……怖い話が大好きだから!!!
以上、理由オワリ。
夏のこの時期になると、俺が長年所属していたファミ通でも毎年欠かさずホラー特集が組まれたりしていたが、いまはどうなんだろうな。当時のファミ通はいま以上に自由気ままで、
「こんな記事を作りたいんですけど」
と編集長に直訴すればたいていのものは作らせてもらえたんだけど、ホラー特集もそんな流れで恒例化していったんだと思う。メーカーさんのノリもよくて、「社内であった怖い話を教えてください!」なんてアンケートを採ろうものなら、瞬時に100本くらいはおどろおどろしい“本当にあった怖い話”が集まったものだ。ホラーを扱ったゲーム自体もいま以上にたくさんリリースされていたので、そういった特集を作るのもそれほどたいへんじゃなかったんだよな。思えば、いい時代であった。
でも、これはあくまでも“ホラーゲームを特集した記事”の話。
俺はオカルトマニアとしてホラーなゲームも大好きだけど、それ以上に、心霊写真とか心霊スポット、洒落にならない怖い話といった“一般的なホラー話”に子どものころから魅了されていた。なので、いまから20年ほど前の夏の日、当時の編集長(バカタール加藤さんだった)に直談判したのである。
「加藤さん、心霊系の記事を作りたいのですが」
加藤さんとは以前、スクウェア(当時)の新作ゲームを紹介する小特集でタッグを組んだときに、
「オカルト誌『ムー』をモジった『スー』っていう特集タイトルにして、誌面のアチコチに幽霊とかUFOの写真を散りばめようぜ!」
と相談して、ふたりでゲーム内容とまったく関係のないムーっぽい誌面を作ったことがあった。俺の申し出に、加藤さんはつぎのように反応した。
「それは、ホラーゲームの特集?」
当然の返しである。しかし、俺はプルプルと首を振る。
「いえ……。ゲームとはまったく関係なく、心霊スポットをガチ取材して、そこであったことをドキュメンタリー記事にする感じです」
ゲーム専門誌で心霊スポット突撃ツアーなんて、ふつうの感覚だったら企画を出すことすらはばかられる暴挙であろう。はたして、編集長は机に身を乗り出してこう言ったのである。
「いいね!!! やろうやろう!! すぐにやろう!!!w」
思えば、いい時代であった(笑)。
15年続く霊障?
自席に戻った俺は、あっさりと企画が通ったことを数人の部下に話して聞かせた。当時、俺はファミ通のニュースチームの責任者をしていて、その下に中目黒目黒(現ファミ通Appのボス)を始めとする10人ほどの記者が所属していたのである。
「いいっすね! さっそく心霊スポットのピックアップと担当割をしましょう!」
うれしそうに目黒が言った。彼も俺と同じく“怖がりの怖いもの好き”で、オカルト系の話には目がなかった。
「よし!! じゃあ、有名な心霊トンネルは、俺と稲葉とカメラマンで回ります。一応、ビデオも回しますね」
女尻笠井という、現在は某有名ゲームメーカーで働いている部下が言った。ちなみに、くり返しになるがゲーム系のロケ取材ではなく、半分以上は趣味の心霊スポット巡りの話だ。
でもこういうとき、若かった俺たちのチームワークは抜群であった。それはふだん、E3や東京ゲームショウと言ったビッグイベントのときに本領発揮されるものではあったが、イレギュラーな心霊スポット取材においても軽快なフットワークと鋭い立ち回りは“活きた”のである。
そして実際、俺たちは関東近郊の10ヵ所ほどの心霊スポットを取材し、きっちりと成果(後述する)も上げて戻ってきて、大塚角満・著による3週連続の企画記事“あなたは、幽霊を信じますか?”を上梓するに至るのである。このときの気合と集中力は、ファミ通での25年に及ぶ取材活動の中でも最高レベルのものがあったと思う。PS3がお披露目された2006年のE3並みに、筆に力が入ったわ。
この取材活動において、もっとも大きな成果を上げたのは、前出の中目黒目黒と、もっとも下っ端だった百人乗っても稲葉という若手記者だったと思う。
ふたりは俺といっしょに群馬県に赴き、地元の最恐心霊スポット巡りを敢行していた。ナゼ群馬を選んだのかと言えば俺の実家があるからで(笑)、そこを拠点に地元民(俺の兄貴だけど)が恐れるスポットに案内してもらったのだ。
取材後、無類のオカルト好きのくせに極めつけの怖がりでもある俺と目黒は、
「心霊スポットに行っておいて、お祓いもしないのは恐ろしすぎる」
と震えて、テレビや雑誌でも活躍していた有名霊能者を訪ねてお祓いをしてもらった。そのとき、霊能者は目黒を見るや、
「あなた……最近、赤い橋の上から身を乗り出したりしたでしょう? べつの人の視点から、その風景が見えるんだけど」
※写真はイメージです
とサラリと告げ、深夜の赤い吊り橋の上から上半身を乗り出し、数十メートル下を流れる川を覗き込んでいた目黒を涙目にさせた。さらに、「そのときからね、女の人が憑いてきちゃっているの」と事も無げに言って、俺たちをチビらせたのであった。
でも、本当の悲劇はここからだった。
心霊スポット巡りをしてから……15年ほどが経ったある夏。久しぶりに当時のメンバーで集まって酒を飲んでいたとき、稲葉がいきなりこんなことを言ったのだ。
「そういえば、ズルいっすよ。大塚さんと目黒さんだけとっととお祓いしちゃって。俺は仕事で行かれなくて、いまだに祓っていないんですから!」
そういえば、そんな展開だったなぁ……と懐かしみながら、俺と目黒は稲葉をたしなめた。「まあまあ、怒るなって。いまのところ、実害みたいなものはないんだろ??」。すると稲葉、ここぞとばかりに気色ばんでつぎのように言ったのである。
「いや!! ありますよ!! 俺がいまだにカノジョができたことがないのは、あのときの霊障です!! 絶対に、お祓いしていないせいっすよ!!!(怒)」
皆さん、夏だからといって、むやみにそういうところに近づいてはいけませんよ。
大塚 角満
1971年9月17日生まれ。元週刊ファミ通副編集長、ファミ通コンテンツ企画編集部編集長。在職中からゲームエッセイを精力的に執筆する“サラリーマン作家”として活動し、2017年に独立。現在、ファミ通Appにて“大塚角満の熱血パズドラ部!”、ゲームエッセイブログ“角満GAMES”など複数の連載をこなしつつ、ゲームのシナリオや世界観設定も担当している。著書に『逆鱗日和』シリーズ、『熱血パズドラ部』シリーズ、『折れてたまるか!』シリーズなど多数。株式会社アクアミュール代表。
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