ドブフクロウのMtGブレイキングアカデミー vol.73 ~ゴブリンスレイヤーさん早くこっち来て~

By ドブフクロウ
先週の記事の中で、熊谷 陸選手を関西のプレイヤーとご紹介しましたが、正しくは東北のプレイヤーでした。失礼いたしました。
 
みなさんこんにちは。MtGライターのドブフクロウです。
 
先週末はプレイヤーズツアーファイナルが終了しました。しましたが、それより大きなニュースが入りました。すでにマジックファンの方はみなさんご存知かもしれませんが、非常に衝撃的な「禁止制限改定告知」が発表されたのです。
 


スタンダードで《荒野の再生》《成長のらせん》《時を解す者、テフェリー》《大釜の使い魔》禁止!!!
パイオニアで《真実を覆すもの》《隠された手、ケシス》《歩行バリスタ》《死の国からの脱出》禁止!!!!!
 
失礼、文字が大きくなってしまいました。いやでも文字くらい大きくなるよ実際。ヒストリックとブロールでも小さなアップデートはありましたがそれは一旦置いておいて、スタンダードとパイオニアでフォーマットの前提が変わるほどの大きな変更が行われました。
 
具体的には、この連載の中で何度も取り上げてきた「ティムール再生」のキーカードである《荒野の再生》《成長のらせん》が、そして「バント・ランプ」のキーカードである《時を解す者、テフェリー》がそれぞれ禁止され、さらにこれらのデッキがメタゲーム上から姿を消すことでトップメタに台頭することになるであろう「ジャンド・サクリファイス」のキーカード《大釜の使い魔》も禁止されました。これにより、スタンダードはローテーションまで残すところ2ヶ月弱というタイミングで事実上の新環境に差し掛かったと言っても過言ではありません。
 
また、パイオニアでもフォーマット開始当初から環境のトップメタデッキだった「青黒《真実を覆すもの》」のキーカードである《真実を覆すもの》や、「4色ケシス」のキーカードである《隠された手、ケシス》、「白単ライフゲイン」のコンボ要員である《歩行バリスタ》、「ロータスコンボ」のキーカードである《死の国からの脱出》が禁止されました。これによって事実上パイオニアのコンボデッキのほとんどが否定される形となり、今後はビートダウンやミッドレンジ系のフェアデッキが流行することになりそうです。
 
というわけであまりにも大きな変化があったため紹介できるデッキがなくなってしまいました。
 

完!!!

 
というわけにもいかないので、久しぶりにレガシーのデッキをご紹介しようかと思います。禁止カードこそなかったものの、実はレガシー環境も『Jumpstart』の影響で様変わりしています。
 

Paper Legacy Discord Saturday tournament

本トーナメントについてはあまり詳しくはないのですが、おそらく名前から察するにコミュニティで発足されたDiscord上でのテーブルトップトーナメントのようです。
 
MTGアリーナではレガシーで遊ぶことはできないため、コロナ禍の中ではレガシープレイヤーたちは非常にフラストレーションを溜めていました。そのためか、Discordなどを活用して紙のカードで遊ぶイベントも実施されているようですね。
 
そんなトーナメントで優秀な成績を収めていたとされるデッキは、なんと「ゴブリン」でした。ゴブリンデッキは10年以上前にトップメタの一角だったものの、現在はファンデッキの向きが強いデッキです。一体ゴブリンに何があったのでしょうか?
 

ゴブリン(使用者:不詳)
枚数 カード名(メインボード)
1 《Badlands》
1 《血の墓所》
4 《血染めのぬかるみ》
4 《魂の洞窟》
1 《カラカス》
4 《山》
3 《リシャーダの港》
4 《不毛の大地》
2 《樹木茂る山麓》
4 《ゴブリンの従僕》
2 《スカークの探鉱者》
2 《ゴブリンのクレーター掘り》
1 《ゴブリンの群衆追い》
3 《モグの戦争司令官》
3 《飛び道具の達人》
1 《宝石の手の焼却者》
1 《ゴブリンの鎖回し》
4 《ゴブリンの女看守》
3 《ゴブリンの戦長》
1 《パシャリク・モンス》
3 《ゴブリンの首謀者》
2 《投石攻撃の副官》
2 《上流階級のゴブリン、マクサス》
4 《霊気の薬瓶》
枚数 カード名(サイドボード)
2 《虚空の杯》
1 《トーモッドの墓所》
1 《真髄の針》
2 《紅蓮破》
1 《大祖始の遺産》
2 《外科的摘出》
1 《ゴブリンの損壊名手》
2 《精神壊しの罠》
3 《紅蓮操作》

 
新型コロナウイルスの影響で物流に影響があり、日本では発売日が遅れることとなった新セット『Jumpstart』。しかし、北米ではすでに販売が開始されており、このデッキでも早速新カードが使用されています。

▲《上流階級のゴブリン、マクサス》

《上流階級のゴブリン、マクサス》は「出たら勝つ」を体現するかのようなクリーチャー。6マナと少しコストは重いながら、ライブラリーの上から6枚を見て、その中にいる点数で見たマナ・コストが5以下のゴブリンを全て戦場に出すことができるという凶悪無比な能力を持っています。手札に加えるだけの《ゴブリンの首謀者》でさえゴブリンデッキの主力として長い間使われていたことを考えると、《マクサス》がいかにデタラメな能力なのか分かるというものです。

▲《ゴブリンの首謀者》

当然、ゴブリンクリーチャーが30枚以上も採用されたこのデッキなら期待値は普通に考えて3枚程度。上振れたら6枚のゴブリンが戦場に出てくるなんてこともありえます。《マクサス》から《マクサス》が連鎖しないようになっているのはこのカードに残された唯一の良心と言えるでしょう。

▲《ゴブリンの従僕》
▲《スカークの探鉱者》

戦場に出るだけで多大なアドバンテージを稼ぎ出し、殴れば一撃で10点以上の打点を叩き出すこともざらにある《マクサス》。これを戦場に出す手段としては、《ゴブリンの従僕》によるマナ・コスト踏み倒しか《スカークの探鉱者》による瞬間的なマナ加速が有効です。特に《ゴブリンの従僕》はもともとゴブリンデッキのキーカードでしたが、《マクサス》の存在によって一段と価値が上がりました。今後は1ターン目にプレイされた《ゴブリンの従僕》を除去できなければ2ターン目にほぼほぼゲームが決まってしまう可能性もあります。
 
また、《スカークの探鉱者》はやや効率が悪く見えますが、ゴブリンデッキでは《霊気の薬瓶》を使ってスピーディにクリーチャーを展開することができるので、盤面にゴブリンが並びやすいです。《パシャリク・モンス》がいればついでに対戦相手のクリーチャーを焼き払うこともできますし、そうでなくとも1ターン目に《スカークの探鉱者》、2ターン目に《モグの戦争司令官》と展開すれば、3ターン目には無理なく《上流階級のゴブリン、マクサス》に辿り着くことも可能です。

▲《パシャリク・モンス》
▲《ゴブリンの女看守》

ゴブリンデッキは他の部族デッキと比べても部族サポートカードの種類も多く、レガシーの部族デッキの中でもカードに恵まれています。青くないせいでコンボデッキなどには押されがちでしたが、コンボデッキにも対抗し得るだけの爆発力も手に入れた(?)新生ゴブリンがレガシー環境を蹂躙することもあるかもしれませんね。
 

  ライター:ドブフクロウ     青春時代のほぼ全てをテキストサイトやゲーム系サイトを徘徊することに費やしていた根暗ライター。人間としての軽薄さに定評があり、親しい間柄では「空っぽ」というあだ名で呼ばれることもある。 MtGプレイヤーとしての腕前は自他ともに認めるヘッポコだが、青春時代に (いろいろなものを犠牲にして) 培ったMtG知識量は他の追随を許さない。

 

『ドブフクロウのMtGブレイキングアカデミー』バックナンバーは次のページをチェック!!