パイオニア新妄想紀行 vol.9 ~基本セット2021で遊ぼう~

By まつがん

1. まさかの禁止解除と基本セット2021の登場

 2週間前に禁止改定が行われ、パイオニアフォーマットにも変更が加わることとなった。

▲《ニッサの誓い》

 《ニッサの誓い》が解禁。
 
 《真実を覆すもの》や《時を越えた探索》の禁止が噂されていた中でのこの発表はかなり意外だったというのが、大多数のパイオニアプレイヤーの意見の一致をみるところだろう。
 
 《ニッサの誓い》というカードに関しては、どちらかといえば同時に禁止された《豊穣の力線》の方がバグっていたため、戻ってきたところで緑系の信心デッキが大幅に強化となるかというと、もちろん堅実に強化はするだろうけれども、そこまで壊れることはなさそうではある。ただ後述のケシスコンボにおいては、早速唯一無二のパーツとして採用され、結果を残しはじめている点が要注目だ。
 
 また、『基本セット2021』の発売というのも大きなトピックではあるのだが、パイオニアのメタゲームという観点で見ると、新たなアーキタイプをメタ上位に送り出すほどのカードは残念ながらなかった……というのが実情に即した評価だろう。
 
 では、前回から一か月経ってパイオニアのメタゲームはどのように変化したのだろうか。
 
・Tier1
黒単アグロ
青黒《真実を覆すもの》コンボ
・Tier2
白単信心
赤白ルールスバーン
ロータスストーム
・Tier3
スゥルタイ昂揚
ニヴミゼット再誕
エスパーヨーリオン
ナヤウィノータ
緑単信心
青赤魂込め
青白スピリット
ケシスコンボ
緑黒カンパニー
 
 青黒《真実を覆すもの》コンボ一強に近かった環境から、直対で相性が良いとされる黒単アグロが復権してきたことで、ちょうど4~5か月ほど前のプレイヤーズツアーが終わった後くらいの頃のメタゲームに回帰してきている印象である。
 
 ここでは、Tier3で太字にした3つのアーキタイプを紹介しておこう。
 
『サンプルデッキ:青白スピリット (Mcleskey チャレンジ4位)』

枚数 カード名(メインボード)
8 《島》
4 《平地》
4 《神聖なる泉》
4 《港町》
2 《氷河の城砦》
4 《大渦の放浪者》
4 《幽体の船乗り》
4 《鎖鳴らし》
4 《至高の幻影》
2 《無私の霊魂》
2 《鎖霊》
4 《天穹の鷲》
4 《呪文捕らえ》
3 《ネベルガストの伝令》
1 《亡霊招き》
4 《高尚な否定》
2 《翼の結集》
枚数 カード名(サイドボード)
4 《神秘の論争》
4 《減衰球》
2 《正義のうねり》
2 《絹包み》
2 《不可解な終焉》
1 《亡霊招き》

 


 
『基本セット2021』で最も恩恵を受けた既存アーキタイプといえば、スピリットが挙げられるだろう。アグロ耐性のある《鎖霊》とゲーム中盤~後半も腐りづらい《高尚な否定》の獲得は、マナベースに不安がありライフプレッシャーに弱かったバントスピリットを青白2色にまとめあげるという変化をもたらした。
 
『サンプルデッキ:ケシスコンボ (genmatsu チャレンジ優勝)』

枚数 カード名(メインボード)
3 《神聖なる泉》
2 《寺院の庭》
1 《繁殖池》
4 《マナの合流点》
4 《花盛りの湿地》
4 《植物の聖域》
2 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》
4 《ギラプールの希望》
4 《万面相、ラザーヴ》
4 《精励する発掘者》
4 《湖に潜む者、エムリー》
4 《隠された手、ケシス》
2 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
1 《夢の巣のルールス》
1 《祖神の使徒、テシャール》
4 《ニッサの誓い》
4 《モックス・アンバー》
1 《魂標ランタン》
3 《時を解す者、テフェリー》
1 《最後の望み、リリアナ》
1 《夢を引き裂く者、アショク》
1 《伝承の収集者、タミヨウ》
1 《神秘を操る者、ジェイス》
枚数 カード名(サイドボード)
2 《思考囲い》
2 《致命的な一押し》
2 《突然の衰微》
2 《夢を引き裂く者、アショク》
1 《アゾリウスの造反者、ラヴィニア》
1 《配分の領事、カンバール》
1 《ウルザの殲滅破》
1 《魂標ランタン》
1 《ゴルガリの女王、ヴラスカ》
1 《悪夢の詩神、アショク》
1 《呪われた狩人、ガラク》

 


 
ほぼ唯一と言っていい、《ニッサの誓い》の解禁によって多大なる恩恵を受けたアーキタイプ。ドロー操作でありながら伝説のエンチャントなので、デッキ内の伝説カードの割合を高く保ったまま《隠された手、ケシス》や《精励する発掘者》を探しにいけるというのが、デッキにこれ以上なく噛み合っている。
 
 また地味だが「土地の色マナを無視してプレインズウォーカーをプレイできる」という効果は、たとえ4色のうち特定の色が出ていなくてもその色のプレインズウォーカーさえ出せれば《モックス・アンバー》を通じてクリーチャーの召喚にも使える色マナへと変換できることを意味しているので、上3枚から土地を持ってこれる能力と合わせて4色の不安定性が解消される結果にもなった。
 
『サンプルデッキ:緑黒カンパニー (Wizard_2002 チャレンジ7位)』

枚数 カード名(メインボード)
8 《森》
4 《草むした墓》
4 《花盛りの湿地》
4 《ラノワールの荒原》
1 《ハシェプのオアシス》
1 《変わり谷》
4 《ラノワールのエルフ》
3 《エルフの神秘家》
1 《金のガチョウ》
4 《屑鉄場のたかり屋》
2 《漁る軟泥》
2 《クロールの銛撃ち》
4 《ガラクの先触れ》
4 《鉄葉のチャンピオン》
4 《恋煩いの野獣》
2 《不屈の神ロナス》
2 《致命的な一押し》
1 《無情な行動》
4 《集合した中隊》
1 《アーク弓のレインジャー、ビビアン》
枚数 カード名(サイドボード)
4 《思考囲い》
3 《虚空の力線》
2 《クロールの銛撃ち》
2 《障壁突破》
1 《致命的な一押し》
1 《無情な行動》
1 《影槍》
1 《アーク弓のレインジャー、ビビアン》


 
『基本セット2021』で登場した《ガラクの先触れ》は、《思考囲い》と《致命的な一押し》に定義されたパイオニア環境に革命を起こしうる1枚である。Tier1のデッキ2種に対してテンポをとられることがないためメインに入る黒対策になるということで、ほぼパイオニアフォーマットのメタゲームを動かすためだけの刺客として作られたんじゃないだろうかと思わず勘繰ってしまうほどだ。
 
 ……などという環境の動きとは一切関係なく、今回もクソデッキを元気に作っていくことにしよう。
 

2. 墓地アグロ

『基本セット2021』では、地味に墓地利用デッキを強化するパーツが何枚か収録されているのをご存知だろうか。
 
 《銀打ちのグール》は既にモダンの発掘デッキなどで採用されているが、そんな中で私が注目したのは《魔王の器》だ。

▲《魔王の器》

 わずか1マナクリーチャーが5/5飛行に変貌するというのは、実現すればかなり勝利に近づくだろうと思われたこともあり、「デッキを作ってみたい」と思わせる効果だった。
 
 だが、「墓地から出したり召喚する」などというアクションがそんな簡単に可能なのか?とも思える。
 
 しかし、私が《魔王の器》というカードに着目したのにはきちんとした根拠があった。

▲《立身+出世》
▲《回生+会稽》

 そう、パイオニアには2マナ以下で唱えられるリアニメイト呪文が2種類存在しているのだ。
 
 このあたりの着想は著大化シュートの経験が生きている。《立身+出世》はともかく、《回生+会稽》とかいうマニアックなカードがすぐに思いつくのはクソデッキを作っていたおかげだろう。
 
 それはともかく、これで「高速で墓地を肥やしまくって《立身+出世》《回生+会稽》で《魔王の器》を釣る」というデッキコンセプトが見えてきた。ちなみになぜ「高速」なのかというと、5/5飛行トークンを出して勝てるのはゲームの序盤だけで、中盤以降は相手のアクションも強くなるため、5/5飛行トークンを出したくらいでは勝てなくなると想定されるからである。
 
 とはいえ、このコンセプトには一つ問題があった。
 
 モダンと違い、パイオニアには「発掘」のようにマナを使わずに墓地を自動的に肥やせるギミックが存在しない。ならばマナを使って墓地を肥やすしかないが、それで「高速」というコンセプトの要求を達成できるのか、という問題だ。
 
 だが、これについて私は既に解決策を持っていた。

▲《マーフォークの秘守り》
▲《強行+突入》

 手動で高速で掘ればいいのでは???🤔🤔🤔
 
 そう、開き直りである。
 
 どの道墓地を肥やすスピードには限界があるのだから、まずは速度の限界に挑戦してみるしかない。それでダメなら諦めて別の道を探るだけの話だ。
 
 というわけで、ひとまず仮組みしてみたデッキがこちらである。
 

 
 しかし、無謀にもこのデッキでパイオニアチャレンジに出場してみたところ、重大な欠陥を発見してしまうこととなった。

 それは、ドローが半分以上の確率でゴミになるこのデッキでは、手動の一時的な墓地肥やしではどこかで必ず手詰まりになるという欠陥だ。
 
 また、《致命的な一押し》が標準装備されているパイオニア環境で《ヴリンの神童、ジェイス》の脆弱性も気になった。
 
 つまりここで必要なのは、除去が当たらず継続的な墓地肥やしができるカードなのだ。
 
 だがそんな都合の良いカードがパイオニア環境にあるはずも……。
 
 あった。

▲《慢性的な水害》
▲《終わりなき時計》

 《慢性的な水害》、そして《終わりなき時計》。この2種の除去が当たらない継続的な墓地肥やしパーツを軸に、デッキを再構築すればいいのだ。
 
 というわけで、できあがったのがこちらのデッキだ!
 
『墓地アグロ』

枚数 カード名(メインボード)
3 《島》
4 《沼》
4 《湿った墓》
4 《マナの合流点》
4 《詰まった河口》
4 《査問長官》
4 《縫い師への供給者》
4 《ナルコメーバ》
1 《屑鉄場のたかり屋》
4 《銀打ちのグール》
4 《秘蔵の縫合体》
4 《憑依された死体》
1 《致命的な一押し》
3 《悪戦+苦闘》
4 《這い寄る恐怖》
4 《慢性的な水害》
4 《終わりなき時計》
枚数 カード名(サイドボード)
4 《魂剥ぎ》
4 《原初の夜明け、ゼタルパ》
4 《思考囲い》
3 《致命的な一押し》

▲《銀打ちのグール》
▲《悪戦+苦闘》

 《魔王の器》は抜けてしまったが、代わりに《銀打ちのグール》を最大限に生かせる形になった。ゲーム終盤まで墓地を安定して肥やし続けられるので、《悪戦+苦闘》の「余波」で威迫を与えて殴れば相手のライフは簡単に消し飛ぶに違いない (※脳内)。
 
 改良前のレシピでプレリミナリーに出てみたが、最初のレシピよりは断然可能性を感じた。墓地対策が少ないタイミングで持ち込めればチャンスはありそうだ。