3. クレイジー果敢
話は変わるが、現在モダン環境のトップメタは赤黒果敢である。
レガシー以下の環境で禁止になるほどのカードパワーを持った《夢の巣のルールス》は、アンフェアな動きに関してはレガシーとそう変わらないモダンにおいても当然ながら猛威を振るい続けている。
そんな《夢の巣のルールス》のポテンシャルを支えているのが、《ミシュラのガラクタ》や《炎の印章》といった、《夢の巣のルールス》と合わせると「使いまわせるドロー」や「使いまわせる火力」になるパーマネントカードたちだ。
翻って本筋であるパイオニアに話を戻すと、《ミシュラのガラクタ》や《炎の印章》のような軽くて自発的に生け贄に捧げられることで《夢の巣のルールス》でアドバンテージが得られるようなカードが存在しないので、《夢の巣のルールス》はもっぱら除去されたクリーチャーのリカバリーとして用いられることがほとんどとなっている。
昂揚ベースのデッキなどで《枷はずれな成長》が使われたこともあるが、《ミシュラのガラクタ》の場合は「攻撃的なデッキのリソースが尽きない」というところに主な価値があるのであり、防御的なリソース交換を目的とするデッキにおけるそれは、結局《夢の巣のルールス》の制約のせいで長期戦に向いたデッキに対しては機能せず、いまいち環境に定着しなかった。
だが、私は考えた。もしパイオニアでも《ミシュラのガラクタ》に代わるような、攻撃的なデッキにおける継続的なリソース提供を約束する2マナ以下のパーマネントが存在したなら。
それはアグロデッキに尽きないリソースを提供し、約束された勝利をもたらすこととなるだろう。
しかしパイオニアに「ゼロ」は存在しないというのは大前提である。ゆえに《ミシュラのガラクタ》は存在しない。
けれど、それに限りなく近いカードが存在するとしたらどうだろうか?
《発火器具》ってパイオニアの《ミシュラのガラクタ》では???
そう、新たな境地に至るために必要な発想のクレイジーさとは、頭の悪さと紙一重なのである。
だが私がたどり着いた新境地はもちろんこれだけではない。
パイオニアには「ゼロ」が存在しないと言ったが、vol.2で見てきたように、厳密に「ゼロ」が全く存在しないというわけではない。「ゼロ」は確かに存在するのだ。ただ、その生かし方が見つけられていないだけで。
今回私が見出した「ゼロ」。それは。
《骨の鋸》で果敢を誘発させたらそれはもはや実質《ミシュラのガラクタ》では???🤔🤔🤔
というわけですべての理性をかなぐり捨てて完成したのがこちらのデッキだ!
『クレイジー果敢(相棒:ルールス)』
4 | 《聖なる鋳造所》 |
4 | 《感動的な眺望所》 |
4 | 《戦場の鍛冶場》 |
2 | 《マナの合流点》 |
3 | 《陽焼けした砂漠》 |
4 | 《模範的な造り手》 |
4 | 《損魂魔道士》 |
4 | 《僧院の速槍》 |
4 | 《ケラル砦の修道院長》 |
4 | 《乱撃斬》 |
3 | 《ショック》 |
4 | 《突破》 |
4 | 《舞台照らし》 |
4 | 《骨の鋸》 |
4 | 《バネ葉の太鼓》 |
4 | 《発火器具》 |
色マナ出る土地がまたしても14枚しかなくて確率を冒涜している感がハンパないが、そこはかとなくモダンのデッキに近づいたような気がしなくもなくもなくもない。……ともあれ、人は決して理性を失ってはならないという当たり前の事実を再確認させてくれるデッキだ。
4. ソリューション2020
かつて、「ソリューション」と呼ばれる芸術的なデッキが存在した。
かの有名な殿堂プレイヤー、Zvi Mowshowitzが『インベイジョン』ブロック構築のメタゲームを完璧に読みきり、大胆にもメインから《真紅の見習い僧》と《ガリーナの騎士》というプロテクション (赤) 持ちのクリーチャーたちを採用して、見事2001年のプロツアー東京で優勝を果たしたデッキ。それこそが「ソリューション」である。
時は流れ、2020年。私は「ソリューション」の意志を継ぐべく、デッキ構築に乗り出したのである。
メインから《浄光の使徒》と《紺碧のドレイク》を両方入れたら現代のソリューションが爆誕するのでは???
というわけで (?) できあがったのがこちらのデッキだ!
『ソリューション2020』
4 | 《平地》 |
2 | 《島》 |
4 | 《神聖なる泉》 |
4 | 《マナの合流点》 |
4 | 《港町》 |
2 | 《氷河の城砦》 |
4 | 《ラゴンナ団の先駆者》 |
4 | 《浄光の使徒》 |
4 | 《紺碧のドレイク》 |
4 | 《天上の鎧》 |
4 | 《執着的探訪》 |
4 | 《液態化》 |
3 | 《グリフの加護》 |
2 | 《結束のカルトーシュ》 |
4 | 《きらきらするすべて》 |
4 | 《圧倒的洞察》 |
3 | 《神聖の力線》 |
20年前のコンセプトが現代マジックで通用するわけないだろというのがまずもってツッコミとして期待されるところであるが、さらにプロテクションの色も赤と黒とでズレているのでもはや完全に意味不明である。
一応vol.2で紹介した呪禁オーラはマナベース的な欠陥があったことは否めなかったので、呪禁ではなくプロテクションで代用できないかと思って組んでみたわけだが、《真実を覆すもの》コンボに対して《紺碧のドレイク》ばかり引いたり、《夢の巣のルールス》バーンに対して《浄光の使徒》を引いてしまうと一瞬で憤死するので、赤黒2色のデッキがトップメタになるまで封印しておいた方が良いだろう。
多くの場合、「〇〇って、もしかして××では!?」というような突拍子のないアイデアがデッキ構築の源泉となる。
そこで「いやでも△△だし……」と冷静に踏みとどまってしまうようだと、いつまで経ってもデッキは形にならない。「△△かもしれんが、それでもヨシ!」と突っ走る無謀さ、すなわちたとえクレイジーな発想に見えても一旦は形にしてみせる勇気こそ、真にイノベーティブなデッキを作る際の礎となるのだ。
ではまた次回!
ライター:まつがん
フリーライター。クソデッキビルダー。
論理的な発想でカード同士にシナジーを見出すのだが、途中で飛躍して明後日の方向に行くことを得意とする。
オリジナルデッキでメタゲームに風穴を開けるべく日夜チャレンジを続けている(が、上記のような理由で大体失敗する)。