By ドブフクロウ
みなさんこんにちは。MtGライターのドブフクロウです。
さて、今週の頭には非常に大きな発表が行われました。みなさんもご存知かもしれませんが、レガシーで《夢の巣のルールス》と《黎明起こし、ザーダ》が禁止され、さらにヴィンテージで《夢の巣のルールス》が禁止されました(他、ブロールで《ドラニスの判事》と《軍団のまとめ役、ウィノータ》も禁止に)。
【お知らせ】 2020年5月18日発表の、禁止・制限カードの告知をお伝えいたします。ヴィンテージ、レガシー、ブロールに変更があります。前記フォーマットの変更に関する判断と見解についてお知らせいたします。 https://t.co/Q4xSbeVE5n #mtgjp
— マジック:ザ・ギャザリング (@mtgjp) May 18, 2020
特にヴィンテージでの禁止措置は非常に珍しいです。ヴィンテージは過去にマジックで印刷されたほぼ全てのカードを使用できるというフォーマットで、禁止されているのは『Unglued』の系譜を受け継ぐ一部のジョークセットのカードや、そもそも構築戦で使用することが想定されていない「策略」カード、あるいはアンティ(賭けカード)に関するカードや、《Shahrazad》のように処理が非常に困難なカードなど、「存在していては正常にゲームをプレイすることに支障をきたす」レベルのカードのみでした。
《ルールス》は《Black Lotus》などのヴィンテージ特有の非常に強力なパーマネントカードを使い回すことができる非常に強力なクリーチャーです。とはいえ、まさか禁止になるとは予想できなかったプレイヤーも多いのではないでしょうか。「相棒」メカニズムがあるため、たしかに制限することにほとんど意味がないカードではあるのですが……この異例の措置からも、「相棒」がマジック界にもたらしたインパクトの大きさが伺えます。
また、レガシーでも《ルールス》に加えて先週お伝えした《ザーダ》も禁止されてしまいました。こちらもお手軽コンボなので、禁止になるのは妥当なところでしょう。滑り込みでデッキを紹介できて本当によかった……! とはいえvol.59でご紹介した《ジャイルーダ》は相変わらず野放しになっているので、今後も「相棒」自体は見かけることになるでしょう。
さて、ヴィンテージやレガシーの今後も気になるところですが、今回は禁止・制限告知(※リンク先は外部サイト)による変化のなかったフォーマット、パイオニアのデッキを見ていきたいと思います。
PIONEER CHALLENGE May 17, 2020
デッキをご紹介する前に、今回のデッキの使用者についてお話していきましょう。ローガン・ネトル選手/Logan Nettlesはアメリカに住むトッププロプレイヤーの一人で、Magic Onlineでのユーザーネーム“Jaberwocki”の名がよく知られています。特に構築戦では無双と言えるほどの強さをほこり、世界中のプロたちが彼のデッキリストを参考にしているほどです。
なんといってもローガン選手の特徴は、デッキ構築は非常に確度が高く、みっちりと練り込まれた“強いデッキリスト”を編みだすことです。ビルダーとしてもチューナーとしても一目置かれた存在ゆえ、興味がある方は「Logan Nettles Tournament Result」や「Jaberwocki decklist」などで検索してみるのもよいでしょう。
そして今回、そんなローガン選手がパイオニアで使用したデッキは「スゥルタイ昂揚」と呼ばれるデッキです。このデッキの原型である「黒緑昂揚」は『戦乱のゼンディカー』~『異界月』がスタンダードで使用できた2016年のデッキですが、パイオニアではさらに広いカードプールを利用できることもあり、青を足したスゥルタイカラーのデッキに生まれ変わったようです。
スゥルタイ昂揚(使用者:Jaberwocki選手) | |
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枚数 | カード名(メインボード) |
4 | 《繁殖池》 |
2 | 《水没した地下墓地》 |
4 | 《寓話の小道》 |
2 | 《森》 |
1 | 《内陸の湾港》 |
1 | 《イプヌの細流》 |
2 | 《島》 |
4 | 《草むした墓》 |
2 | 《沼》 |
4 | 《湿った墓》 |
2 | 《森林の墓地》 |
4 | 《ゼイゴスのトライオーム》 |
1 | 《裏切りの工作員》 |
1 | 《半真実の神託者、アトリス》 |
1 | 《約束された終末、エムラクール》 |
1 | 《ゲトの裏切り者、カリタス》 |
1 | 《残忍な騎士》 |
4 | 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》 |
3 | 《覆いを割く者、ナーセット》 |
3 | 《肉儀場の叫び》 |
4 | 《思考囲い》 |
4 | 《ウルヴェンワルド横断》 |
1 | 《ヤヘンニの巧技》 |
2 | 《突然の衰微》 |
1 | 《食らいつくし》 |
4 | 《致命的な一押し》 |
4 | 《選択》 |
1 | 《魂標ランタン》 |
4 | 《海の神のお告げ》 |
4 | 《サメ台風》 |
4 | 《野望の試練》 |
枚数 | カード名(サイドボード) |
1 | 《空を放浪するもの、ヨーリオン》 |
1 | 《魂標ランタン》 |
2 | 《集団的蛮行》 |
3 | 《減衰球》 |
1 | 《強迫》 |
1 | 《無情な行動》 |
4 | 《神秘の論争》 |
2 | 《霊気のほころび》 |
こちらは《空を放浪するもの、ヨーリオン》を相棒に据えたスゥルタイ(青緑黒)カラーのミッドレンジデッキです。
スタンダードの《ヨーリオン》デッキについてはvol.61でご紹介しましたが、パイオニアでも結果を残しているようです。構築の制限が「奇数のカードしか使ってはいけない」や「マナ・コスト3以上のカードしか入れてはいけない」など特定のカードしか採用できない縛りと異なり、デッキ枚数だけ80枚で構築すればどのようなデッキでも「相棒」に指定できるため、比較的縛りが薄いのでしょう。
しかし、デッキに搭載されているカードはどれもスタンダードとは比較にならないほど強いものばかりです。黒緑というカラーリングを使う最大のメリットの一つでもある強力な除去《突然の衰微》をはじめ、序盤から終盤にかけて便利なサーチ呪文である《ウルヴェンワルド横断》など、歴代のスタンダードで使用されてきた数々の凶悪な呪文の数々を使用して盤面の優位を築くのがこのデッキの特徴です。
さらに、過去に「昂揚」デッキで大暴れして禁止カードに指定されたこともある《約束された終末、エムラクール》も採用されています。このカードは「青黒《真実を覆すもの》」(詳細はvol.47)にも非常に強く、虎視眈々とコンボの準備を進めていた対戦相手の手札や墓地、ライブラリーに至るまでを一発でめちゃくちゃにすることができるのです。
特にコントロールやコンボなど、アドバンテージを積み重ねて勝利を目指すデッキや、勝つために準備が必要なデッキへの効果は絶大。少し重いのが欠点ではありますが、「昂揚」メカニズムとの相性もよく、《ウルヴェンワルド横断》でサーチしてそのまま叩きつける展開もあるでしょう。
とにかく相手にできるデッキの幅が広いこのデッキ。「相棒」の《ヨーリオン》によって様々なパーマネントのETB能力を使い回すこともでき、いやらしさも倍増していますレアリティが高いカードも多いため、デッキを組むのは少し骨が折れますが、コストに見合った強さを発揮できることでしょう。
ライター:ドブフクロウ
青春時代のほぼ全てをテキストサイトやゲーム系サイトを徘徊することに費やしていた根暗ライター。人間としての軽薄さに定評があり、親しい間柄では「空っぽ」というあだ名で呼ばれることもある。
MtGプレイヤーとしての腕前は自他ともに認めるヘッポコだが、青春時代に (いろいろなものを犠牲にして) 培ったMtG知識量は他の追随を許さない。
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