グラフィックが進化すると……
――では、今後の展望について。今年はプレイステーション®5も控えているので、いろいろと動く年になるんじゃないかと思うんですが、いかがですか?
2020年……自分的にはまずは、『The Last of Us Part II』です!
――そうかそうか。『The Last of Us Part II』は、もうすぐですよね?
はい、5月末の予定です。いまちょうど詰めの段階で、ここ来る前もずっとプレイしていました。
――あら、すみません。お忙しいところなのに。
いえいえ、とんでもない!ホラーは苦手なんで、いつもビビりながら作業をしているんですが、おそらくこれが、私的にはいちばん大きいタイトルになりますね。そのあとは、関り的には少ないですけど、『Ghost of Tsushima』(ゴースト・オブ・ツシマ)にも注目していてください!
――ああ、はいはい! 『Ghost of Tsushima』、E3(※毎年北米で開催される世界最大級のゲーム見本市)で見ましたけど、おもしろそうですね!
そうなんです! 海外作品ですけど、実際に日本の対馬まで行ってロケをしています。
――海外の開発からですよね? 気合入っているなあ!
今年は忙しくなりそうです。
――ちなみにプラットフォームが進化すると、ローカライズの作業って変わるんですか?
そりゃあもう! やっぱり容量が増えるので、ゲームのボリュームもどんどん増しているんです。それに比例して、我々の作業も2倍、3倍と……。
――確かに、単純に物量は増えそうだ……。
ある程度の制限があるとセリフも絞られてきますけど、プレイステーション®4くらいになると、「ここ、もっとセリフを増やせるね!」ってことになって、実際にシーンが丸ごと増えたりします。
――うんうん。
あと、大きいのが、グラフィックがキレイになったこと。
――グラフィック? それがどのような影響を?
グラフィックが進化したことで、キャラの口元がすごくよく見えるようになったじゃないですか。これにより、口の動きとセリフを違和感なく合わせる必要が出てきたんです。
――!! なるほど! それは確かに!!
谷口 昨今は、セリフに合わせて自動で口を動かす……という技術もあるんですけど、こだわりの強い開発者だと、口元はすべて役者の演技をキャプチャーして取り込んでいるんですね。なので自動ではなく、すべて口の動きを見ながらセリフをハメないといけないわけです。
――でもそれ、英語の口の動きでしょう?
英語の口に合わせて、日本語もその長さにハマるようにしなければいけないんですよ。間合いとかも、すべて。たとえば、「うん、そうだね」という短いセリフも、“うん”と“そうだね”の谷間にある間は、口の動きに合わせるようにしています。
――うわ、そうなんだ!! めっちゃおもしろいなこの話!(笑)
プレイステーション 4以前は、英語版も口がパクパク動いているだけだったので、それほど気にしなくてよかったんですけどね。いまはもう、超リアルに動くから……「やめてーーー!!」って(笑)。
――そこまで考えて、日本語のセリフを作らなきゃいけないんですね!
英語の発音で口をすぼめることがありますけど、最近のゲームはそこまでクッキリと表現されています。ですのでそこのセリフは日本語も、口をすぼめる文言にしないと違和感が生まれますよね。文末の母音をあわせたり、とにかく気を遣います。
――今日は驚いてばかりだなぁ。
それと、英語ってすごくコンパクトな言語なんですけど、逆に日本語は長いんです! 英語ではすっきり収まっているセリフも、そのまま日本語にしただけでは尺が収まらないことも多くて。ですので英語の音声と日本語の音声を比べたとき、言っていることが若干違ったりすることもあると思います。その“差”をできるだけ埋めるべく、我々はセリフに可能な限りの情報を詰め込みつつ違和感を消す努力をしているんです。
――今回のインタビューではちゃんとこういうことも書いて、セリフをひとつ作るのにこれだけ苦労しているんだよ……ってことを伝えようと思います。
ぜひ伝えてください!
――いやあ、たいへんな仕事ですね。