コロコロオンライン超特集!! 外山圭一郎ディレクターに聞く 『GRAVITY DAZE』開発秘話!!

 

好きなことを、がんばって!

――ではここから、プレイステーション 4についてお聞きします。まず、最初にハードのスペックを知ったとき、どのように思われましたか?
 
「質実剛健なハードが出るな!」と思いました。プレイステーション 3まではハードの作りが独自路線というか……扱いづらい部分もあったんですけど、プレイステーション 4はPCベースで、奇をてらっていませんでした。
 
――作り手からすると、作りやすいハードなんですか?
 
めちゃくちゃ作りやすいです! プレイステーション 3のときはたいへんだったので……。
 
――そういうお話は、クリエイターさんからよく聞きます(笑)。
 
メモリがたくさん積まれているのがありがたかったですし、基本的なミドルウェア(※ゲーム開発時に活用するツールのようなもの)の整備も本当に早くて、必要なもの揃っていた印象です。ひと言で言うなら“バランスのいいハード”でしょうか。
 
――それでも、『GRAVITY DAZE 2』は完成まで5年を要したと……。
 

 
逆に言うと、たくさん盛り込めるし、いろんなことができてしまうのがネックでもあるんです。とくにオープンワールド的な構造だと物量がものすごいことになって、なんて言うか……公共事業をしている感じです(苦笑)。
 
――あははは! 公共事業か(笑)。超大規模工事って感じですね。
 
そうですそうです。だって背景とか、設定画を描いて指示書を作って発注して……というのを、向こう2年先くらいの工程を積み上げるんですよ!? ですので、最初の1歩目で間違うととんでもないことになっちゃうんです。制作の途中で根本から変えるなんて、ほぼできませんから。
 
――恐ろしい話だなぁ……。
 
最初の段階で、「こういう世界があって、こんなゲームにする」ってことをキッチリ決めて、最後までブレずに突き進むしかないです。それは『GRAVITY DAZE』に限らず、最近のゲーム作りはみんなそうだと思いますよ。
 
――「みんなのGOLF」の本村さんにもインタビューをしたんですけど、「クリエイターがやろうと思っていることがいろいろできちゃうから、途中で誰かが止めないと永遠に作り続けちゃう」っておっしゃっていました。
 
その通りです!(笑) ゲーム上だと、まったく行く必要がない場所なのに延々と作っていたりとか(苦笑)。逆に、「これだけ作り込んじゃったんだから、使わないともったいないよね」ってことになって、予定になかった作業が増えたり……。
 
――おもしろいなあ。ハード的な制約があると割り切れる分、作り切れないジレンマが生まれるし、その逆だとずっと作っちゃう……。落としどころはどこなんだ(笑)。
 
『GRAVITY DAZE』みたいなオープンワールド系だと、ゲームの中を歩き回って「ここ、イベントで使ったらおもしろいかも」なんて話したりします。ゲームの中でロケハンをしているんですよ(笑)。
 
――ちなみに、外山さんが遊ばれたプレイステーション 4のゲームで、「これはすごい!」と思ったものは?
 

 
たくさんあるからなぁ……。(しばし考えて)象徴的だなと思ったのは『人喰いの大鷲トリコ』ですね。(※SIEから発売されたアクションアドベンチャー。『ワンダと巨像』などでおなじみの、上田文人さんの作品)これもジャパンスタジオの作品なので、プレイステーション 3で作っていたころから見せてもらっていたんですが、当時は、(上田さんの思い描いているものが実現できるのかなぁ……)と思ったりしていたんです。それがプレイステーション 4というハードを得たことによって完成にこぎつけたので、なんだか……感慨深いものがありました。
 
――高スペックなハードの登場で、クリエイターの力が解放された……と。
 
はい、まさにその通りですよ。
 
――一方で、ゲームクリエイターとお酒を飲んでいるときによく出るのが、「高スペックのハード向けに大人数で作るのもいいけど、やっぱり少人数で、ひとり何役もこなして作るほうが楽しい」という意見です。
 
すごくわかります。昔は、スピード感がいまとは比べ物にならなかったですもん。ある日思い付いたことを、「じゃ、作ってみようか」ってことになって、1週間後には動くものができていたりしましたし。それが、いまは公共事業化しているんですから。思いつきで何かをする……ってことは、ほぼできなくなりましたよね。
 
――どのハードの時代に、ゲーム作りは変わってきたんですか? プレイステーション 3?
 
明確に、そこです。初代のプレイステーションの時代では気にしなくてよかったことにまで、手を入れなきゃいけなくなりましたから。たとえば、動かしていなかったキャラの表情もリアルに再現する必要がでてきたり……。『SIREN』って、人の顔を撮影したものをつなぎ合わせて動いているように見せていたんですけど、いまはすべて、役者さんの表情演技もモーションキャプチャーしてつけているんですもん。言うなれば、ちょっとしたアイデアとかハッタリが効かない時代になりました。
 
――なんか……映画作りの話を聞いているみたいです。
 
完全に同じです。でも一方で、ここ数年でインディーズのゲームが脚光を浴びるようにもなりましたよね。個人のワンアイデアがおもしろいゲームになる土壌ができてきたことに、プレイステーション 4もひと役買ったのではと思います。
 
――外山さんも、そういうゲームを作ってくださいよ。
 
いつかやりたいんですよねー。50歳になって、この先いつまでゲームが作れるかわかりませんけど、老後の楽しみでそういった作品を作りたいなと(笑)。
 
――そうゆうのいいですね。気の合う仲間と、縁側で作っちゃいました、みたいなの。
 
そうそう(笑)。ガツガツせず、本当に好きなものを作るのはそういうタイミングなのかもしれないですね。
 
――でもこれからプレイステーション 5の時代が来るんですから、まだ老け込むわけにもいかないんじゃないですか?
 
そうですね! なかなか得難いチャンスだと思うので、縁側的なゲームは憧れとして持ちつつ、大きな集団で取り組む挑戦をしていきたいと思います。何が何でも、食らいついて。
 
――今後の展望としてはどうですか?
 
ここ数年でこれまでにない変化が起こっていくと思うんです。20数年にわたってゲームを作ってきましたけど、その中でも最大の変化が。がむしゃらにやっていこうと思います。
 
――では最後に、ゲームを作る仕事に携わりたい……と思っている子どもたちに向けてメッセージをお願いしたいのですが!
 
ゲームって基本はプログラムとアートですけど、開発への関わり方って本当に多様化しているんです。自分の好きなことに全力投球して、何かが身に付けば、ゲームのような複合的な娯楽を作るときに必ず活かせるはずですよ。がんばってください!
 
――わかりました! 貴重なお話、ありがとうございました! これからも期待しております!
 
こちらこそ、ありがとうございました!
 

 

作品概要
『GRAVITY DAZE』
発売元 (株)ソニー・コンピュータエンタテインメント
ジャンル 重力アクション・アドベンチャー
ゲームデータセーブ先 メモリーカード
CERO(対象年齢) CERO C
プレイヤー 1人

©2012 Sony Interactive Entertainment Inc.